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最後に聞きたい言葉
しおりを挟む「あきくん……」
大地が優しげに微笑んだ。あっ、俺笑えたんだ。大地の返してくれた表情を見て、そう思った。
その後に、驚かされたのは俺だった。気付けば、大地に唇を奪われていた。驚いた拍子に開いた口の中に舌が差し入れられて、口腔内を念入りに舐られ舌が絡まり合う。普通、フェラチオされた後にキスしたくないだろ。自分の味とか嫌じゃないのか。そんな疑問で頭が一杯だった俺に、後孔からの快感が襲う。
「んん!!」
「あきちゃん、そろそろ俺も構ってよ」
海斗の屹立が緩慢に抽送してくる。甘えるように、構ってと訴えてくる。その動きに合わせて中が嬉しいと収縮する。
「ん、ん、んん」
大地とキスしながら、海斗の屹立を締め付けた。気持ちが良くて頭がくらくらしてくる。
大地の舌が抜けて、優しいキスが落とされた。そこから、頬、首筋にかけてキスを落とされていく。耳まで辿り着き、耳朶を甘噛みされる。
「あぁ! あ、ふぁ、ん、ん」
どちらの手なのかもう分からない。背中や腰をなぞられ、胸の飾りを弾かれる。ゆっくりと背中を舐られ、勃ち上がった陰茎も優しく扱かれて全身が敏感になっていく。四本の手と二つの舌に愛されて、もう耐えられない。
「あぁ! もう、だ、めぇぇ、んん!!」
「好きだよ、あきくん」
「愛してる、あきちゃん」
二人の愛の言葉を聞きながら、俺はイった。大地の両腕の中に包まれて、お腹の中に海斗の熱いものを感じる。身体の外も中も愛された俺は、もう何も望まない。望んではいけない。
満足した身体とこの愛がずっと欲しいと泣く心の板挟みで、整理がつかない。俺も返したい。好きだと伝えられたらどんなに楽だろう。言ってしまわない様に、唇を噛みしめた。それでも、想いを伝えたいと願った心の反抗だろうか。泣かないと決めたのに、我慢できない涙が頬を濡らした。
大地の腕の中で、ほろほろと溢れる涙を隠す様に大地の胸に縋りつく。爽やかな香りが慰めてくれた。海斗の屹立が抜け、寂しいと後孔が疼く。まるで、これから失う前振りの様で心が苦しくなった。
「あきちゃん、おいで」
声の聞こえた方を見ると、海斗が柔らかく微笑んでいた。大地を見上げる。
「行っておいで」
少し切なそうな微笑みを浮かべた大地に、自ら触れるだけのキスをして、大地の腕から出た。
海斗の暖かな腕の中に包まれる。甘い香りを思う存分に肺に入れたくて、海斗の胸に縋りつく。
「ねぇ、海斗。ダメ……なのかな」
大地の不満げな声が聞こえる。
「ダメだ」
海斗の少し諦めた様な言葉が苦しそうに聞こえた。
「だって、俺達我慢してきたんだ。我儘言ったっていいんじゃ」
「諦めろ。俺も、諦めるから」
何を海斗達は話しているんだ。何を我慢してきて、諦めるのだろう。
「何かあったのか?」
不安の気持ちが声にも現れてしまったのか、海斗と大地が困った様な表情を浮かべた。
「何もないよ。不安にさせてごめんな」
「大丈夫だよ。ごめんね」
言葉と裏腹に二人の表情は晴れてはいなかった。
「そんな事よりも、アフターしますか!」
張り切っている様子の大地が、タオルを持って迫ってきた。さっきまでの雰囲気はどこに行ったのか、ニコニコとしている。
「俺、自分でする!!」
逃げようとしたが、海斗に強く抱きしめられ逃げれない。
「あきちゃん、無駄な抵抗はやめて、俺たちにヤらせなさい」
海斗兄さん、やらせなさいの音がやばい方の奴に聞こえます。
「そうだよ。二人で優しくしてあげるからね」
この時の大地は優しくない。徹底的に攻めてくる。
「ふざけるな! やめろ!!」
この後、俺は二人の手によって徹底的に綺麗にされた。散々喘がされ、もう一度イかされました。さっぱりした事については、感謝してる。だが、やはりアフターは自分で処理したい。
「あきくん、怒ってる?」
「怒らないでよ。あきちゃん」
二人がとても楽しそうに言ってくるので、許しません。しかし、これが最後かも知れないと思うと、やはり許そうかな。
「別に……!」
二人が急に抱きついてきた。
「もう、行かないと」
「あきくん、元気でね」
両頬に二人からキスが落とされる。もう、二人は行ってしまうのか。これで、お別れなのか。
「あきちゃん、最後に何か言いたい事や聞きたい事ある?」
言いたい事、聞きたい事。沢山ある。話したい事が一杯ありすぎて、時間が足りない。それなのに、俺はある言葉が聞きたくて、沢山言ってもらったのにそれでも足りなくて。求めてしまった。
「海斗、大地。俺の事好き? ずっと覚えていてくれる?」
ふと気づいた。重すぎるだろ。俺、何聞いてるんだよ。言ってしまってから、後悔した。取り消そうとしたその瞬間。
「大好きだよ。あきちゃんの事、忘れられないさ」
「俺も、あきくん大好き。ずっと覚えてるよ」
即答の愛の言葉。二人は俺の欲しい言葉を、表情を、行動をくれる。
「ありがとう」
二人の記憶の中の俺が笑顔である様にと、願いを込めて笑った。
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