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海斗と大地 俺はどこであったの

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 大地の陰茎がゆるゆると俺の中をかき混ぜる。名残惜しいという様に、肩にキスが落とされた。時折、ぴりっと走る痛みに鬱血痕が増えるなと若干諦めてしまった。

「あぁ、もう少しゆっくりヤりたかったのになぁ。あきくん、可愛すぎてがっついちゃったよ」

「俺の所為にすんな。それよりも、終わったんだろ。抜けって!」

「えー、あきくんの中にまだ居たいよー」

 そう言いながら、腰を押し付けてくる大地の顔面目掛けて蹴りを喰らわせようとしたが、躱されて肩に当たった。だが、ニヤニヤと笑う大地見ると、効果は今ひとつだった様だ。

「痛い~」

 わざと臭い声を出した大地の陰茎が後孔から抜ける。

 わざと臭い事言うなと文句を言おうとして、離れていく大地を見た。この時、初めて大地の体を意識した様な気がする。

 Yシャツのボタンが外れて、合間から見えるお腹はしっかりと鍛えているか引き締まり、腕まくりして見える腕もそれなりの筋肉が見える。大地の体をじっくり見すぎた様だ。大地がにこにこと俺を見ている。

「これでも、健康の為に海斗とジムに行ってるんだよ」

「そうなんだ」

「モテたいし、それに非力じゃ、あきくんのお世話できないしね」

「うるさい! そんな事よりなんで、Yシャツのボタン外してんだよ! 下だけでいいだろ!」

 大地が自らを見下ろす。首を傾げ、理解できないと言いたげな表情を俺に向ける。

「え? そんなのやだよ! あきくんの体を肌で感じたいし、それにただヤるだけなんて、寂しいじゃん」

「なんで……」

 俺を襲う為だけに、なんでそんなに時間をかける。誠司や幸平は俺をあっという間に犯した。それなのに、お前達はなんでそんなにも手間暇をかける。ただ、面倒なだけなのに。
 それなのに、なんでこんなにも俺の胸はふわふわするのだろう。

「俺はあきくんに好かれたいの」

 真剣な瞳が俺を見つめる。断言された言葉が、俺の胸を苦しませる。

「俺と大地はどっかで会った事あるの?」

 少し俯き何かを考えていた大地が、顔をあげる。

「……あるよ」

「え?」

 俺は、いつ大地と会ったんだ。こんなにもイケメンだったら印象に、残っていてもおかしくないのに。覚えていない。

「俺が、あきくんを好きになったのは、誘拐して犯した時だけどね。海斗はそれよりも前からだ。随分と片思いが長いよね」

「海斗が……」

 俺は、海斗とも会っているのか。それに、海斗の方は俺を頻回にどこかで見ている様だ。どこだ、学校の通学路か。それとも、友人とよく行くコンビニか。分からない。

「そう、だから俺は負けないよ。海斗よりも早く君の心を手に入れる」

「!」

 柔らかく笑う表情と瞳が合っていない。俺を欲する感情が大地の瞳の奥に見えて、身震いがする。

「さぁ、話はいいから、アフターしようね」

 そう言って調理台の引き出しから、タオルと着替えを取り出す大地から逃げようとした。だが、あと一歩で扉という所で、捕獲されて胡座をかく大地の上に座らされる。いつ、濡らしたのか分からないが、暖かく濡れたタオルで体を拭かれるのはとても気持ちが良かった。


 この後、俺は大地に体の隅々まで拭かれて綺麗にされた。普通にスッキリして気持ちが良かった。後孔を拭かれた時に、悪戯されて喘がされたのがなければもっと良かったのに。

「あぁ、もう終わりか。あきくんとまだ居たいなぁ」

 俺を膝に乗せたまま、新しいワンピースを着させてくれるコイツは召使か。

「もう、良いからとっと報告に行けよ」

 心にもない事を言って、嬉しく思ってしまった自分を隠そうとした。

「ふふ、本当はそう思ってないくせに」

「は?」

 大地がニタニタと笑っている。俺、もしかしてヤられている時に何か言ったのだろうか。

 大地の右手が頬に添えられる。

「可愛い頬が真っ赤だよ」

 そう言われて、急いで大地の膝から立ち上がり距離をとる。

「行けって!」

 そんな俺を見て微笑んでいた大地が、少し残念そうに呟いた。

「仕方ないか」

 大地が立ち上がり、扉までいく。行ってしまうのかと残念がり、苦しく思う胸を誤魔化す様に撫でた。だが、大地は扉の前で止まり、振り向き俺を見つめる。

「そういえば、なんであきくんは俺だって分かったの? 背後から抱きついたから顔は見えてないよね」

「え? なんでって、声とか香水かな」

 二人を見分けるポイントは瞳の色と声、つけている香水の匂いだ。瞳の色と声は分かるかどうかの違いだが、香水は二人ともを見分ける大きいなポイントだ。

「え!?」

 驚かれている。あれ、俺なんか変なこと言ったかな。何かを考えていた大地が思い付いたのか微笑む。

「そうか。やっぱりあきくん好きだな。あぁ、それとそのパネルのヒントは、ここの為に整えるものだよ」

 舌を出し指差してそう言った大地は、扉から出て行った。
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