絶望の白 〜狼の館から脱出せよ〜

番傘と折りたたみ傘

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笑いと決意

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 嵐が過ぎ去った様だった。
 一気に犯されて、放置された。椅子から立ち上がると後孔から白濁が溢れ落ち、太腿を伝う。
 タオルも着替えもない。

 あぁ、前の三人はまだマシの分類だったのか。これが本当の強姦だ。身体よりもいたぶる様な言葉の数々に心が疲弊した。

 溢れそうな涙を乱暴に拭い、扉へ向かう。一歩一歩進むたびに、白濁が後孔から溢れる。惨めで気持ち悪い。

 扉を開けて廊下に出た。外はすっかり夜になっていた。森の中は真っ暗だ。所々に吊されたランタンが廊下を照らすが薄暗い。

 さっきまでの明るい気分はどこに行ってしまったのだろう。すっかり意気消沈し、肩を落としながら歩く。

 隣の部屋の扉を開ける。そこは客室だった。クローゼットを見つけ扉を開ける。中に、タオルと白のワンピースが畳んで置いてあった。海斗達はクローゼットから着替えを出していた。その為、タオルと着替えは各部屋に用意されていると推測していた。

 タオルを使い、後孔や太腿を拭う。拭いても拭いても後孔からこぼれ落ちてくる白濁が、俺を惨めにさせる。
 男ならなんでもいいだという男の言葉が、頭の中で木霊する。ヤられて嬉しくなんてない。それなのに体は俺を裏切り快楽に染まっていく。淫乱と囁かれた事を思い出し、否定する様に頭を振る。

違う。俺は、淫乱なんかじゃない。ぽたぽたとこぼれ落ちる涙を放って置き、体を拭い続けた。


 涙も枯れて少し落ち着いてから、汗や白濁諸々に汚れたワンピース脱ぎ捨て、再度体を拭う。畳まれていた新しいワンピースを着て少しだけさっぱりした。できれば、水で濡らしたタオルで拭きたい所だけど、水が何処にあるのかわからない為、諦めた。

 大丈夫、気分も落ち着いた。俺なら、大丈夫だと自分に言い聞かせて探索を開始する。ベットの下や、書棚を漁るが何も特に変な所はない。ここには何もないのかもしれない。そういえば一階の探索がまだ途中だった。一階に鍵が隠されているのかもしれない。二階の探索も後半分だ。二階の探索が終わったら一階に戻ろう。そう決めてから次へと向かおうと、扉を開けようとした。だが、カチャリと扉が開けられる音が廊下から聞こえた。
 ここの部屋じゃない部屋を誰かが探しているのか。次期にここにも来る。まずい、隠れなければ。何処に隠れる。ベットの下か、それともクローゼットか! どんどんと音が近づいてくる。もう、ここに隠れるしかない。俺は、急いで隠れた。


 カチャリと扉の開けられる音が部屋に響く。体を縮こませて、荒い呼吸を隠す様に両手で口元を押さえる。

「あきちゃん! どこ!」

 海斗だ! 出て行きたい。ぎゅっと抱きしめてもう大丈夫だと言われたい。責め立てられて疲弊した心を慰めて欲しい。出て行こうとした時、あの男の言葉が頭に蘇る。海斗と大地が好きなんだという言葉が俺を渦巻く。違う。俺は、ただ犯された被害者だ。海斗と大地が優しいから、だから……俺は、彼らが好き? 分からない。相手は犯罪者で、俺は被害者なのに。出て行く訳にはいかない。海斗だって強姦魔だ。出ていけば、甘やかされ流されてヤられるかもしれない。

 海斗はベットの下やクローゼットの中、書棚の裏などを探している。流石に書棚の裏には隠れないと思うけど。

「海斗! あきくん、いた!?」

 大地の声。海斗より若干低音の優しい声に誘われ出て行きたくなる。ダメだ。大地だって強姦魔なんだ。俺はただ、慰めて欲しいだけであっても、彼らがそう思ってくれる可能性は低い。捕まって、また二人に犯されるかもしれない。出て行く訳にはいかない。

「いねぇ。違う階に行ったのかもしれん。たく、幸平こうへいの野郎。着替えを用意しないでトンズラするとか、許されると思ってんのか!」

「あきくん、今頃追い詰められてないといいけど」

「それにあいつの性癖、Sっ気の変態だから最悪だしな」

「やめろ、言うな。耳が腐れる。それに、海斗も十分変態だよ」

「俺は、普通だ! 好きな子は、甘やかして可愛がりたいんだよ」

「それにしては、随分と変態チックな行為してたと思うけど」

「突っ込んだまま動かずに、手淫で相手を散々イかせて喜ぶおまえにだけには言われたくないね」

「なに!」

 いやいや、お前ら全員変態だよ。どうでもいい事で喧嘩する海斗と大地の会話を聞いているだけで、傷ついた心が少し癒された様な気がする。馬鹿らしくて、笑って声を出さない様にするのに一生懸命だった。彼らは口喧嘩しながら、部屋を出て行った。
 重厚感のあるカーテンから出て俺は、俯いていた顔をあげた。少しだけ笑ったおかげか、前向きの感情が蘇る。ここで諦めてなるものか。絶対ここから脱出してやる。決意を新たにした。
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