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蘇る強気
しおりを挟むその声に安心していた心に恐怖が染み渡る。
海斗が俺を大地に、押し付け立ち上がった。その顔は苛立ちを隠そうともしない。
「聖司兄さん、俺は反対だ。別に構わないだろ」
「いけません。これでは計画に差し支えます」
「このままだと、壊れちまう」
「壊れてなんぼです。壊れれば壊れるほど良い贄となります」
冷たい視線を受けて、体が強張り震えてしまう。その視線から俺を隠そうと大地が俺を抱き寄せる。
「大地、お前も歯向かうのですか」
「聖司兄さんの言ってる事は分かる。でも、俺は海斗の意見に賛成だ。お願いだ、もう少しだけ慈悲をあげてよ」
「そうは行きません。私が良くても、あの人が良いと言わないでしょ。とりあえず、子羊ちゃんは私達に捕まりました。4Pでもしましょうか」
海斗と聖司と呼ばれた男が、俺を見る。え? どうして、こうなったの。一気に絶望がやってくる。三人で俺を犯すって事? 大地の緩んだ腕の中から出て、背後に二、三歩下がる。背中に階段が当たる。聖司が進んで、手を俺に伸ばしてくる。嫌だ……。怖くて足が動かない。逃げられない。壊れてしまいそうな自分を抱きしめた。
「大地、行け!」
張り上げた海斗の声が聞こえたと思った瞬間に、俺は大地に抱え上げられて連れ去られていた。
海斗と聖司が取っ組み合いをしているのが見えたが段々と遠くなり見えなくなった。
大地に連れられて来たのは地下の二階の客室だった。
「ごめんね。急にここまで連れて来ちゃって」
椅子に下され座った。申し訳なさげにこちらを見る大地。そんな顔するなら、この屋敷から逃してほしいよ。
「大地……俺は、どうなっちゃうの?」
聖司の言っていた言葉が頭から離れない。俺は壊されて、どうなる。
「それは……言えない」
大地の言葉が刃となって俺の心に突き刺さる。
「帰りたい」
呟いた言葉は部屋の中に消えていった。俺は、だいぶ弱くなった。強気な俺は何処にってしまったのだろう。壊れたくない。壊されたくない。
「ごめん」
静寂が俺たちを包み込む。海斗や大地の行動に段々と怒りが湧いてくる。逃してくれないのに、どっち付かずの行動をするなら。それなら……それなら、優しくするな。
「もう良い! 俺は自分でこの屋敷出てやる! 大人しく壊されるなんてごめんだ!」
大地は俺の言葉に驚いていたが、すぐに微笑んだ。
「そうだね。それが、本当の君だ」
怒り心頭だった俺は、大地の言葉を無視し、部屋を出ようと椅子から立ち上がった。
その時、部屋の扉が勢いよく開けれ、現れたのは無傷の聖司だった。
「ここにいましたか。大地」
大地が俺を聖司から隠す様に立ち塞がった。
「聖司兄さん、海斗は?」
「階段裏で伸びてますよ。貴方達のコンビネーションは本当に厄介です」
「聖司兄さん、お願いだ。今だけでも良い、あきくんに慈悲をあげてよ」
「……」
部屋が静寂に包まれる。その静寂を破ったのは聖司の溜息だった。
「分かりました。但し、あまり計画に差し支えない程度にしなさい。あまり懐に入れてしまうと、最後は、貴方達にとって辛い事になるのですから」
聖司の言葉に、大地は頷いてから、振り返って俺を見た。
「じゃあね。あきくん。また捕まえに行くから全力で逃げてね」
そう言って、聖司と共に部屋を出ていった。
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