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自分の部屋のベッドで寝ていたはずだった。木造二階建一軒家の自分の部屋は、クリーム色の壁紙に茶色の絨毯が敷いてあって、机にベッド、本棚があるごく普通の部屋だ。だが、今は壁と天井が真っ白な部屋にベッド一台と言う状況に戸惑った。
ここはどこだ。
自分の服装も着ていたパジャマから、真っ白で膝下まである長袖ワンピース一枚になっている。下着や靴も無かった。
ベッドから立ち上がる。床は冷たく壁と同様に大理石の様に真っ白だ。歩くと足音がぺたぺたと響いた。一つある扉に近づく、両開きの扉も白く目が痛い。
「起きた様だね。仔羊ちゃん」
急に聞こえた声に驚き歩みを止めた。部屋を見渡すが誰もいない。
「誰だ!」
「怯えた顔も可愛いね。我々は狼。君は神聖なる生贄に選ばれた。ここは我々の巣穴さぁ。」
「ふざけるな! ここからだせ!」
「ふざけてなぞいないさぁ。ここから出たければゲームをしよう。我々から逃げ、巣穴から脱出できれば君の勝ち。我々に捕まれば負け。単純なゲームだ」
「何!?」
「君が扉から出たら始まる。我々は始めに一人で君を探そう。三時間毎に一人ずつ増え最大で六人になる。」
「捕まると……。殺すのか」
「そんな野蛮な事はしないさぁ。だが、君を美味しく頂くけどね」
「どういう意味だ!」
「それは捕まった時にわかる事だ。健闘を祈るよ、仔羊ちゃん」
ブッという音と共に男の声が聞こえなくなった。
ゲームだと! 人を誘拐しておきながらなんて奴だ。ここに居ても何もならない。仕方なしに扉の取っ手を見ると、狼の頭部の形で不気味だった。意を決して握り回した。
扉を開けると薄暗い廊下に出た。ワインカラーの絨毯と紺の壁、天井が所々にかけられているランタンの光に照らされ不気味な様子に見える。
廊下は長く左右に続いていて、所々に扉がある。窓が無い為、薄暗く地下なのかもしれない。目指すは地上に出て玄関を探し、脱出する事だ。とりあえず、階段又はエレベーターを探そう。
左か右か、悩んでいると。パーンポーンと学校で呼び出しとかに使われる音が響いた。
「只今より、ゲームを始めます」
「第一の狼が放たれます。羊さんは全力で逃げてください」
柔らかな女性の声だが、機械の様に淡々と言う感じには冷たさを感じる。
ピーンポーンパーンポーンと放送終了の合図が廊下に響いた後、静寂が包み込んだ。高校生にもなって、恐怖で足が竦む。
俺は静かなのは嫌いだ。家に居る時はテレビやCDプレーヤーをつけて過ごすことが殆どだ。
俺の家は両親が共働きで、父さんは単身赴任、母さんも朝一から仕事に行き夜遅くまで帰らない為、学校から帰っても誰もいない。友達は親が居なくて羨ましいと言うが、朝から深夜まで一人なのは寂しいし、家に一人でいるのは心細かった。
幼稚園の頃は父方のばあちゃんが面倒を見てくれていたが、小学三年生の夏に亡くなってしまった。母方の祖父母も他界している。それからはずっと一人ぼっちだ。
寂しさを紛らわせようと友達と公園や図書館、児童館などに行って遊ぶが、門限で友達は17時には帰ってしまう。俺は小学生の頃、親が迎えに来るのに憧れを持っていた。友達が母親と手を繋いで帰るのを見て羨ましかった。だが、高学年になって俺は諦めた。
放課後友達と遊び、友達が帰った後で自分の家に向かう。家は常に暗く、明るかった事はない。電気をつけ、風呂を洗い湯を溜め、冷蔵庫に入っている温めて食べてのメモが貼ってある手作り弁当を取り出す。電子レンジで温め直して食べてからお風呂に入って、歯を磨き寝る。母親に会えるのは朝仕事に行くのを見送る時だけだ。両親は仕事を頑張って養ってくれているだから、心配をかけてはいけない。寂しくても心細くても泣いてはいけない。誰かに言われたわけではなく、自分のプライドが両親に甘えるのを許さないのだ。
誘拐されてしまったのは自分のせいであって、早く脱出して家に帰らなければ。両親に心配をかけてしまう。
意を決して、右の方へと歩いていく。足音も毛足の長い柔らかな絨毯に吸い込まれて、無音だ。後ろが気になり振り向くが誰もいない。
早く、階段を見つけようと駆け足になる。
ガチャっと音が廊下に響いた。前方の二つ先の扉が開いていく。まずいと思い、近くの扉の中に飛び込む。ゆっくりと音を立てない様に扉を閉めた。
「さぁて、どこかなぁ~」
少し高めの男の人の声が聞こえた。
声は段々と遠ざかって行った。
ほっと息を吐き、部屋を見渡す。どうやら、客室の様だ。ベットに机と椅子、クローゼット、書棚がある。必要最低限の物しかない。
袋小路のここに留まってはいられない。さっきの男の発言によって彼奴が味方とは思えない。捕まれば何をされるか分かった物ではない。殺しはしないと言っていたが、腕や足を切り落とすなどするかもしれない。切り落とされた事を想像をしてしまい寒気がした。
ここはどこだ。
自分の服装も着ていたパジャマから、真っ白で膝下まである長袖ワンピース一枚になっている。下着や靴も無かった。
ベッドから立ち上がる。床は冷たく壁と同様に大理石の様に真っ白だ。歩くと足音がぺたぺたと響いた。一つある扉に近づく、両開きの扉も白く目が痛い。
「起きた様だね。仔羊ちゃん」
急に聞こえた声に驚き歩みを止めた。部屋を見渡すが誰もいない。
「誰だ!」
「怯えた顔も可愛いね。我々は狼。君は神聖なる生贄に選ばれた。ここは我々の巣穴さぁ。」
「ふざけるな! ここからだせ!」
「ふざけてなぞいないさぁ。ここから出たければゲームをしよう。我々から逃げ、巣穴から脱出できれば君の勝ち。我々に捕まれば負け。単純なゲームだ」
「何!?」
「君が扉から出たら始まる。我々は始めに一人で君を探そう。三時間毎に一人ずつ増え最大で六人になる。」
「捕まると……。殺すのか」
「そんな野蛮な事はしないさぁ。だが、君を美味しく頂くけどね」
「どういう意味だ!」
「それは捕まった時にわかる事だ。健闘を祈るよ、仔羊ちゃん」
ブッという音と共に男の声が聞こえなくなった。
ゲームだと! 人を誘拐しておきながらなんて奴だ。ここに居ても何もならない。仕方なしに扉の取っ手を見ると、狼の頭部の形で不気味だった。意を決して握り回した。
扉を開けると薄暗い廊下に出た。ワインカラーの絨毯と紺の壁、天井が所々にかけられているランタンの光に照らされ不気味な様子に見える。
廊下は長く左右に続いていて、所々に扉がある。窓が無い為、薄暗く地下なのかもしれない。目指すは地上に出て玄関を探し、脱出する事だ。とりあえず、階段又はエレベーターを探そう。
左か右か、悩んでいると。パーンポーンと学校で呼び出しとかに使われる音が響いた。
「只今より、ゲームを始めます」
「第一の狼が放たれます。羊さんは全力で逃げてください」
柔らかな女性の声だが、機械の様に淡々と言う感じには冷たさを感じる。
ピーンポーンパーンポーンと放送終了の合図が廊下に響いた後、静寂が包み込んだ。高校生にもなって、恐怖で足が竦む。
俺は静かなのは嫌いだ。家に居る時はテレビやCDプレーヤーをつけて過ごすことが殆どだ。
俺の家は両親が共働きで、父さんは単身赴任、母さんも朝一から仕事に行き夜遅くまで帰らない為、学校から帰っても誰もいない。友達は親が居なくて羨ましいと言うが、朝から深夜まで一人なのは寂しいし、家に一人でいるのは心細かった。
幼稚園の頃は父方のばあちゃんが面倒を見てくれていたが、小学三年生の夏に亡くなってしまった。母方の祖父母も他界している。それからはずっと一人ぼっちだ。
寂しさを紛らわせようと友達と公園や図書館、児童館などに行って遊ぶが、門限で友達は17時には帰ってしまう。俺は小学生の頃、親が迎えに来るのに憧れを持っていた。友達が母親と手を繋いで帰るのを見て羨ましかった。だが、高学年になって俺は諦めた。
放課後友達と遊び、友達が帰った後で自分の家に向かう。家は常に暗く、明るかった事はない。電気をつけ、風呂を洗い湯を溜め、冷蔵庫に入っている温めて食べてのメモが貼ってある手作り弁当を取り出す。電子レンジで温め直して食べてからお風呂に入って、歯を磨き寝る。母親に会えるのは朝仕事に行くのを見送る時だけだ。両親は仕事を頑張って養ってくれているだから、心配をかけてはいけない。寂しくても心細くても泣いてはいけない。誰かに言われたわけではなく、自分のプライドが両親に甘えるのを許さないのだ。
誘拐されてしまったのは自分のせいであって、早く脱出して家に帰らなければ。両親に心配をかけてしまう。
意を決して、右の方へと歩いていく。足音も毛足の長い柔らかな絨毯に吸い込まれて、無音だ。後ろが気になり振り向くが誰もいない。
早く、階段を見つけようと駆け足になる。
ガチャっと音が廊下に響いた。前方の二つ先の扉が開いていく。まずいと思い、近くの扉の中に飛び込む。ゆっくりと音を立てない様に扉を閉めた。
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少し高めの男の人の声が聞こえた。
声は段々と遠ざかって行った。
ほっと息を吐き、部屋を見渡す。どうやら、客室の様だ。ベットに机と椅子、クローゼット、書棚がある。必要最低限の物しかない。
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