希望の黒 〜狼の館から連れ出せ〜

番傘と折りたたみ傘

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彰を優先に

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 落ち着け……この場所がどこか探さないと……。

 モニターの中を隈なく探し、どこの階か見極めようとした。

 モニターの中で、幸平が彰から離れた。犯された事でぼんやりとした彰。開かれた両足、自らの白濁に濡れた陰茎、孔から溢れる白濁。頬を赤く染め虚になった瞳が可哀想で見ていられない。

 俺の葛藤を知らない幸平は、そそくさと自分だけ衣服を整えていた。

「旨かったぜ、綿菓子ちゃん。ご馳走様」

 そう吐き捨てた幸平は意気揚々と部屋を出て行った。

 は? 着替えやタオルは? 事前に置いてあったはずの水差しはどこだ!?

 アフターをしろとまでは言わない。だが、あいつ!!

 彰に何も渡さないで放置して行きやがった!!

 落ち着こうとしていた俺の怒りは噴火した。

 モニターを見ている時間が惜しい! さっさと探しに行った方が早い!!

 聖司兄さんが何かを叫んでいたが、怒りに染まった俺の耳には届かなかった。

 監視室を出て、隠し通路を走り抜けた。どこでもいい! 屋敷に出る入り口から出ようとした時。

「うわ!」

「わぁ!」

 誰かとぶつかり、尻もちをついた。

 ぶつけた部分を摩りながら、相手を見ると相手も同じく痛めた場所を摩っていた。

「大地……」

「全く、気を付けろよ! あれ? 海斗? どうかしたのか、そんなに焦って……」

 こんなにも、大地に会えて嬉しかった事はない。唖然とした大地に俺はさっきまで見た事を話した。

「嘘だ……」

「今すぐ! 幸平の野郎をぶっ飛ばしに行かないと!!」

 怒り治らない俺は大地の横を抜けていこうとした時、大地に右手を掴まれた。

「待ってよ! 幸平はいつでもぶっ飛ばせるけど、あきくんはそうじゃないだろ!」

「え?」

「幸平に襲われたんだとしたら、精神的にやられているかも知れない。あきくんを探す方が先だよ!」

 そう大地に言われて、落ち着いてきた。そうだ……幸平なんかより彰の方を優先しなければならないのに、俺はなんて馬鹿な事を……。

「そうだな」

「手分けして探そう!」

「おう!」

 大地と共に客室から廊下に出て二手に別れた。

 一階から二階へと向かう階段で、よりにもよって怒りの原因の張本人に会うとは思わなかった。
 二階から降りて来たその人物は幸平だった。

「あ、海斗」

「お前!!」

 幸平の胸ぐらを掴む。

「な、何だよ!」

「あきちゃんに! 何で着替え渡さなかった!!」

「あ。忘れてた」

 あっからんとした表情を見せた幸平に鎮静化していた怒りに火がついた。

「てめえ!!」

「別に良いだろ。どうせ壊すんだから」

「だとしても! ルールを守れ!」

「それ、逆に言ってもいいかなぁ」

 それを言われて、自分が矛盾している事に気づいた。そうだ、彰のアフターをするなと言われてルールを破っているのに、幸平にルールを守れなんて言えない。

「くっ」

「それに、可愛いじゃん。汚れたままも」

 汚された彰が椅子に座っている姿が脳裏に浮かんだ。あんな姿を可愛いとは言わない。笑った顔こそが可愛いと言うのだ。

「この、ドSの変態が!」

「変態? 海斗お兄ちゃんだけだよ。甘いの」

「は?」

 どう言う意味だ……。俺だけじゃない、大地だって彰に甘い筈だ。

「大地お兄ちゃんだって、あの子に突っ込んだまま動かさないでイかせ続けてたよ。それは変態じゃないのかな?」

「大地がそんな事……」

 嘘だ。大地にそんな特殊性癖があったなんて。聞いた事ない……。

「嘘じゃない」

 その幸平の表情は真面目に物事を言っている時の幸平の姿だった。

 俯き、大地この事を考えた。大地にそんな……。彰は大丈夫だったのだろうか。いや、大丈夫だ。だって、彰は大地にも懐いているように見えた。そうでなければ、大地の胸の中で眠ったりしないだろう。

「それじゃ、俺は行くよ! また後でねー!」

 その声に気付き、顔を上げると幸平が一階の廊下に消えて行くところだった。

 幸平を掴んでいた手がいつの間にか外されていて、逃れられてしまっていた。

「お前!!」

 幸平を追おうとしたが、大地の言葉を思い出し立ち止まった。

 今はこんな事をしている場合じゃない。彰が先だ!

「幸平……後で覚えてろ……」

 静かに燃える怒りを抑えながら、彰の捜索へと向かった。
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