希望の黒 〜狼の館から連れ出せ〜

番傘と折りたたみ傘

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ゲームのルール

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 白い部屋から出て、廊下にあるランタンを引っ張り隠し通路を出した。暗闇の中を進み、隠し通路の奥にある監視室へと向かった。

 縦横無尽に走っているこの隠し通路は、子供の頃に使って遊んでいた事もある為、どう行けばいいか頭の中に完璧な地図が入っている。

 監視室に着くと、皆んなの視線が俺に向いた。無視し、監視室を見渡す。監視室という名の通り、この屋敷に仕掛けられた隠しカメラを壁一面にあるモニターで一望できる部屋だ。

「遅かったな。てっきり逃がしていたのかと思っていたが」

 良太兄さんの瞳が虚無に戻っている。さっきまでの狂気はどこに行った。

「隠しカメラで見ていただろ」

 あの白い部屋にも隠しカメラが付いているはずだ。以前の部屋の隠しカメラの位置そのままならば、見えない様に背を向けていたから、俺が彰の額にキスしていたのは気付かれていない筈だ。

「まあな。海斗も来たから、犯す順番を決めるぞ」

 どうやらバレていない様だ。犯す順番って……。

「どういう事だ」

「生贄……白くんには、この屋敷で脱出ゲームをして貰う。謎や問題を解き、鍵を集めて玄関から出たら白くんの勝ち。だが、僕達を躱しながらだ。僕達は、始めに一人で、三時間置きに一人ずつ増え最大で六人で館内を探す。白くんを見つけ次第犯し、快楽落ちさせ壊せば僕達の勝ちだ」

 舌なめずりをしながら、うっとりとしている良太兄さんを見てゾッとした。狂ってやがる。捕らえたまま犯すのではなく。希望を与えて壊す気でいる。

「謎と問題は?」

 俺の問いに拓也兄さんが答えた。

「良太の兄貴と俺が考えて、もうセットしてある」

 謎解き……。彰は解けるのだろうか。

「それでだ。順番を決めようと思ってね。誰が一番初めに白くんを犯そうか。拓也どうだ」

 ふざけんな。拓也兄さんは体格が半端なくでかい。それに比例し萎えた状態のアソコも当然デカイ。それが勃ち上がって突っ込まれたら、彰は一発で壊れちまう。拓也兄さんだけは、絶対ダメだ。

「俺が行く」

 拓也兄さんが返事をする前に、慌てて立候補した。

「へぇ、処女は面倒だぞ。まあ、慣らさないで貫いてもそれはそれで面白いけどな」

 鬼畜だ。そんなの全然面白くない。どっちかと言うと、甘々トロトロに蕩けさせて、気持ち良くて堪らないって感じの顔を見る方が好きだ。

 以前の良太兄さんはこんなに鬼畜じゃなかったのに。優しかった良太兄さん、本当にどこに行ってしまったんだ。

「それでは、一番目は海斗ですね」

「海斗が一番なら、次は俺が行くよ」

 聖司兄さんの言葉に続く様に大地が言ってきた。二番目が大地なら協力を得られそうだ。

「分かりました。では、後は適当に決めますか」

 こうして決まった順番は、俺、大地、聖司、幸平、拓也、良太だ。聖司兄さんになる前に何とかして脱出させないと。

「おっ、目覚めたみたいだ」

 拓也兄さんの声に、皆モニターを見た。

 彰が目を覚まし、寝台の上で周りを見ている。知らない内に誘拐されてしまって怖い筈だ。今の彰の気持ちを考えると切なくなってくる。おどおどと寝台から立ち上がって、扉に近づいて行っている。

 そんな時、良太兄さんがマイクを手に取った。

「起きた様だね。仔羊ちゃん」

 突然の声に驚いたように彰の身体が跳ねた。愛らしい瞳が恐怖を表す様に揺らめいている。

「誰だ!」

 それでも、強くあろうとしているのだろうか。以前よりも低くなった声を張り上げている。

「怯えた顔も可愛いね。我々は狼。君は神聖なる生贄に選ばれた。ここは我々の巣穴さぁ」

「ふざけるな!ここからだせ!」

「ふざけてなぞいないさぁ。ここから出たければゲームをしよう。我々から逃げ、巣穴から脱出できれば君の勝ち。我々に捕まれば負け。単純なゲームだ」

「何?!」

「君が扉から出たら始まる。我々は始めに一人で君を探そう。三時間毎に一人ずつ増え最大で六人になる」

「捕まると……。殺すのか」

 強く張り上げていた声が萎んでいく。恐怖を煽られて切なそうに眉が少し下がっている。何とかして、助けてあげたい。

「そんな野蛮な事はしないさぁ。だが、君を美味しく頂くけどね」

「どういう意味だ!」

「それは捕まった時にわかる事だ。健闘を祈るよ、仔羊ちゃん」

 そう言って良太兄さんは、マイクのスイッチを切った。それから、モニターから目線を外し俺達に向けてきた。

「俺達の決まりは、三つ。一つ、射精は一回だけ。あ、白くんは何度イかせてもいい。二つ、ヤった後はタオルと着替えを渡す事。汚れてたら次のヤる奴が可哀想だからな。三つ、アフターはしないだ」

 その言葉に俺と大地以外が頷いた。

「さぁ、俺達の狩が始まるぞ。まずは、海斗行け」

 表情は愉しそうなのに、何処か切なそう声をだした良太兄さんに違和感を覚えながらも、俺は監視室を後した。
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