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ダイスキ、でもダイキライ
しおりを挟む悪口ではない。もたいまさこさんの出演作を見て、すごいなぁと思った、という話。
芸能や演劇に明るくないので、詳しいことも、理論的なことなんかもわからない。ただ、ある時期から、ときどきお見かけるする、もたいまさこさんを好きだと思った。
ふんわり優しそうで、ときにピリリとしていらして、シャンと伸びた背が凛々しく思えるけれど、ほんの少しのちがいで、淋しげでちんまりと見えることもあって。
遠くの芸能人ではなく、とても身近な人のような感じちゃう。熱烈に追いかけるような存在ではないのだけれど、会えたらホッとする人。
私の思う、もたいまさこさんは、そういう感じだ。
けれど、先日、とある映画を観て、もたいまさこさんが、とても憎たらしく思えた。「バーバー吉野」という映画だった。
わかってるよ、それはもたいさんではなく、映画の中のキャラクターなのだって。けどもう、ほんとイヤ、勘弁して、って思ってしまった。顔を見るだけでムカつく、って。
理由はわかっている。私は他人から服装や髪形について、とやかく言われるのが大嫌いだ。
細かい部分は忘れてしまったのだけれど、小学生のとき、
「そんなだらしない格好をしているから、ほかのこともだらしなくなるんだ」
みたいなお小言を担任の先生からもらって、猛烈に腹が立った。髪の色だのなんだのって、中学生になっても誰かしらからのお小言は続き、それが心底イヤだった。そういう記憶を、映画を観て久しぶりに思い出した。
その後、数日を経て、記憶というブースターを得たとはいえ、どうしてあんなにも、もたいまさこさんのことが憎たらしく見えたのか、と不思議に思った。ダイスキ、でもダイキライって思った。学校もののお話の中ではよくある子どもらしさ、校則、しきたり、そんなお話だったのに。
やっぱり、もたいさんがすごかったんだろうなぁ。
言葉にしないことを、表情で伝える、顔をみればわかる、ということがある。だけれど、失礼ながら、もたいまさこさんの表情は、いつもそんなに変わらない。目力バリバリアイメイク、などというものはない。大げさにどこかに皺が寄る、なんてこともない。それなのに、笑っているようにも怒っているようにも、どちらにも見える独特なものだ。
おなじ顔で、優しくも恐ろしくもある、愛しくも憎たらしくもある、ということだ。すごいなぁと思った。
ということは、人間、いくら笑顔でとりつくろってもダメってことだろう。内から滲み出るなにか、人はそれで本心を感じ取ってしまう。
ただ、内からなにかを滲み出させることができる人は、そうそう居ないようにも思える。だって笑顔で騙されているもの。
他から見えている私の姿は、見たまんまかもしれないし、まったく別のなにかかもしれない。私が他に見る姿もしかり。だからなにってわけじゃないけど、そういうことを意識しておきたいな、と思った。
まあ、誰しもが大女優とおんなじではないだろうけれど。
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