ひらたい日々

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ノートや手帳、下書きやアイデアはいつまで取っておく?

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紙が重い。

本好きの人の部屋の床が歪んだとか、引っ越しで段ボールに詰めた書類の束の入れ直しを命じられるとか、そんな話をときどき見聞きするくらいだから、紙を重いと思っているのは私だけじゃない。だからそれを悩むのも、私だけじゃないと思う。

蓄積されていく紙を、みんなどうしているのだろう。


過去何年ぶんにもわたる、ふくよかに育った手帳を重ねた写真をたびたび目にする。だいじに保管しているのだなぁと思う。

これまで書いたもの、ぜんぶを保管しているのかしら。それともお気に入りだけ? 期限を区切ってどのくらいかのあいだのぶんだけ?

手帳だけじゃない。日々描きとめたスケッチは、下書きは、アイデアは、プロットは、みんなどうしているの?


気づくと増えている紙類のことが、私はときどきどうしても気になってしまう。

こんなにいっぱい、どうしよう。持っていていいのかな。片付けなくていいのかな。ずっと持ってるの? いつまで?


書くことが好きでいっぱい書いているけれど、ぜんぶがぜんぶ、残しておく必要があるのかと問われると、わからない。

当たり前かもしれないけれど、ぜんぶを覚えているわけじゃない。パラパラと見てみれば、こんなこと書いている、とか、なんだこれ恥ずかしい、とか、思ったり気付いたりがいっぱいある。だから取っておいたらいいのかもしれない。

けれどじゃあ、取っておいて頻繁に見るのかと訊かれたら、あんまり見ないかもしれないと答える。もう何年も開いてすらいないノートもあるから。ならばどうしてそれが必要と言えるのだ、と問われたら、必要じゃない気もする、としか答えられない。

なんだよ、どっち? どうなの?
って、自分のことなのにね。わからなくなる。


書きものを再開したばかりのころ、自身の創作スタイルやアイデアの使い方について、情報交換をすることが多かった。たくさん読んでもらえるように、いつかは出版を、なんて考えているメンバーだから、「将来、これがあの作品のアイデアを書き留めたノートですか、なんて言われる取材を受けちゃったりして」と、見せ合いっこしたノートの保管について話し合ったりした。

なんてかわいいことを考えていたんだ、と微笑ましく思いつつ、でも、と考える。

取材は無いにしても、あの小説をもう一度書き直してみたい、とか、あの話の続きを考えていたことがたしかあったはずだよな、なんて思いが湧いたとき、そのときのノートがあったら、どんな行動にも移しやすいだろうと思う。逆に、資料になるものがなかったら、なにもできないと涙するかもしれない。考えたことや気持ちは、ずっと頭の中に残っていてくれない。「ノートさえ取っておけば」と頭を抱えることになるかも。

ならばやはり取っておかねばなるまい。


でも本当に?

また別のタイミングで私は考える。何年も書きものを続けているけれど、そんなこと一度も思いつかなかったよね。初めて電子書籍にしてもらった、あのお話のプロットノートは、あれから開いていないよね。他のノートもおんなじじゃない。それでも、取っておく?


じゃあ、さようならするの? いいの? おなじものは二度と書けないよ?

また別のタイミングに思う。そうなんだよ。少しばかり離れている、ってなるんじゃない。一生の別れになっちゃうんだよ。取り戻したいと思ってもどうにもならなくなる。

あれ?

戻せない、というならば、下書きも、修正前の文章もおんなじじゃない? えっ、もしかして、原稿用の電子データなんかも、毎回バージョンごと保存するべきだったのかも?


ああああ、なんだよもう。どうしたらいいんだ!


考えれば考えるほと考えが発散してしまう私には、結論という終着点は無いらしい。
紙は重い。質量としての重さと、思いや想いといった見えない含有物の重さと、どちらもが重い。とても重い。みんな、こんな悩みはないのだろうか。


どうしてますか?
ノートや手帳、下書きやアイデアは?


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