68 / 90
ノートや手帳、下書きやアイデアはいつまで取っておく?
しおりを挟む紙が重い。
本好きの人の部屋の床が歪んだとか、引っ越しで段ボールに詰めた書類の束の入れ直しを命じられるとか、そんな話をときどき見聞きするくらいだから、紙を重いと思っているのは私だけじゃない。だからそれを悩むのも、私だけじゃないと思う。
蓄積されていく紙を、みんなどうしているのだろう。
過去何年ぶんにもわたる、ふくよかに育った手帳を重ねた写真をたびたび目にする。だいじに保管しているのだなぁと思う。
これまで書いたもの、ぜんぶを保管しているのかしら。それともお気に入りだけ? 期限を区切ってどのくらいかのあいだのぶんだけ?
手帳だけじゃない。日々描きとめたスケッチは、下書きは、アイデアは、プロットは、みんなどうしているの?
気づくと増えている紙類のことが、私はときどきどうしても気になってしまう。
こんなにいっぱい、どうしよう。持っていていいのかな。片付けなくていいのかな。ずっと持ってるの? いつまで?
書くことが好きでいっぱい書いているけれど、ぜんぶがぜんぶ、残しておく必要があるのかと問われると、わからない。
当たり前かもしれないけれど、ぜんぶを覚えているわけじゃない。パラパラと見てみれば、こんなこと書いている、とか、なんだこれ恥ずかしい、とか、思ったり気付いたりがいっぱいある。だから取っておいたらいいのかもしれない。
けれどじゃあ、取っておいて頻繁に見るのかと訊かれたら、あんまり見ないかもしれないと答える。もう何年も開いてすらいないノートもあるから。ならばどうしてそれが必要と言えるのだ、と問われたら、必要じゃない気もする、としか答えられない。
なんだよ、どっち? どうなの?
って、自分のことなのにね。わからなくなる。
書きものを再開したばかりのころ、自身の創作スタイルやアイデアの使い方について、情報交換をすることが多かった。たくさん読んでもらえるように、いつかは出版を、なんて考えているメンバーだから、「将来、これがあの作品のアイデアを書き留めたノートですか、なんて言われる取材を受けちゃったりして」と、見せ合いっこしたノートの保管について話し合ったりした。
なんてかわいいことを考えていたんだ、と微笑ましく思いつつ、でも、と考える。
取材は無いにしても、あの小説をもう一度書き直してみたい、とか、あの話の続きを考えていたことがたしかあったはずだよな、なんて思いが湧いたとき、そのときのノートがあったら、どんな行動にも移しやすいだろうと思う。逆に、資料になるものがなかったら、なにもできないと涙するかもしれない。考えたことや気持ちは、ずっと頭の中に残っていてくれない。「ノートさえ取っておけば」と頭を抱えることになるかも。
ならばやはり取っておかねばなるまい。
でも本当に?
また別のタイミングで私は考える。何年も書きものを続けているけれど、そんなこと一度も思いつかなかったよね。初めて電子書籍にしてもらった、あのお話のプロットノートは、あれから開いていないよね。他のノートもおんなじじゃない。それでも、取っておく?
じゃあ、さようならするの? いいの? おなじものは二度と書けないよ?
また別のタイミングに思う。そうなんだよ。少しばかり離れている、ってなるんじゃない。一生の別れになっちゃうんだよ。取り戻したいと思ってもどうにもならなくなる。
あれ?
戻せない、というならば、下書きも、修正前の文章もおんなじじゃない? えっ、もしかして、原稿用の電子データなんかも、毎回バージョンごと保存するべきだったのかも?
ああああ、なんだよもう。どうしたらいいんだ!
考えれば考えるほと考えが発散してしまう私には、結論という終着点は無いらしい。
紙は重い。質量としての重さと、思いや想いといった見えない含有物の重さと、どちらもが重い。とても重い。みんな、こんな悩みはないのだろうか。
どうしてますか?
ノートや手帳、下書きやアイデアは?
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。



「B1・・・」~小さなレオの奮闘記~
フォアグラ肝臓
エッセイ・ノンフィクション
2025年春、高等支援学校を卒業するレオは、小学生並みの知識と能力しかない知的障害者。
何も知らない、何もできないレオの療育手帳には「B1」の判定が・・・
レオは地元のとある企業に有期雇用の契約社員として入社が内定した。
そこで出会う親方。そして同じ知的障害の同僚N。
仕事と友情、そして親方とのかかわりを通じて成長を遂げていく、小さなレオの成長日記。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる