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なにもなかったことに感謝しつつ、マジックライスを食す
しおりを挟むもしもに備え、もう少し水を買い足しておいた方がいいかもしれない。
ニュースを見ていて、急に買い物に出掛けられなくなるかもしれない、という恐怖に駆られ、そんなことを考えた。水は何本あっただろうか。こんな時ばかりはスッと上がる腰に、普段は使わないストック棚をチェックする。
あ、切れてる。
ペットボトルが入ったダンボールの側面に手書きしておいた賞味期限が過去の日付となっていた。水の期限は、切れても問題なく飲めると知っている。とはいえ、気にはなるから、少しずつ入れ替えが必要かな。図らずも、買い増しの前に買い替えをする必要が出た。
あれ、ということは?
気になった私は、おなじく保管しているマジックライスの賞味期限をチェックした。これも期限が切れているではないか。そうか、あれから5年が経ったのだ。これらのストックは、だいたいおなじ頃に用意していた。
なにごともなく、買い備えている防災食材の賞味期限が切れた。喜ばしいことである。とても良かったのだけれど、だからと言って、はい期限切れ、と、これらを無駄にするわけにはいかない。なにもなかったことに感謝しつつ、私はマジックライスを食すことにした。
水で作るんだっけ? お湯?
災害時でも用意しやすい食事になる、そう思って買ったものの、考えて見れば、しっかりと作り方についての検討はしていない。それくらい世の中では定番となっている商品だということだろうけれど、自分の適当さにちょっと悲しくなる。読んでおけよ、と思いつつ、都度読めばいいんだから気にするな、と思いもする。カップラーメンを食べるとき、かやくやスープを入れる順番だとか、待ち時間だとか、毎回確認する。それとおんなじじゃないか。
うん、確かに。
そんなことを考えているあいだにさっさと進めたらいいものを、新しいものを試すとなるとだいたいこんな調子で時間がかかる。
お湯または水を入れる量を調整することで、「ごはん」と「おかゆ」、二種類の食べ方ができるらしい。私は、ごはんを選択する。160ccほどのお湯を注ぎ、待つこと15分。ごはんの完成だ。ものすごく膨らんだりするわけでもないんだけど、一食にはちょっと多いかな、と思う量のごはんが出来上がった。
え? 本当に多い?
大きさから考えて、ちょっと足りないくらいの量だろうと想像して買い置きしている。たくさん食べる我が家では一度に一つずつなんてことはあり得ないだろうと予測していた。もしかしてそうじゃない? また意外なところで立ち止まる。
パッケージには100gとある。恥ずかしながら、お米の状態でも、ごはんの状態でも、重さを聞いただけでは量を想像できない私である。ということで検索する。
一合は150gなのだそう。お茶碗一杯が、お米で65g、ごはんで約150g。なるほど。多少の具材も入っているとはいえ、お茶碗一杯以上の量なのね。ということは、見た感じの印象ほどの量ではないわね。相変わらず、目分量がまちがっている自分の感覚を再確認する形となり、少し虚しいのだけれど、まあ、事実がわかってスッキリだ。
そして実食。
結論から言うと、まあまあいける。パッサリ系のごはんがダメ、という人でなければ、まあまあいけると思う。味付けはごはんにしては少々濃いかな、と感じるところ。でも少々。イヤだって思うほどではない。常に食べたいか、と問われれば、まあときどきなら、と答える。そんな感じかしら。
正直、私が非常食に抱いていた想像の味よりはずっと美味しくって、ビックリした。幾つか食べてみたので、全体的にまあまあいけるんだろうと思う。美味しくいただきました。ありがとうございました!
これが備えて置けるのならば続けられる。常に必要が騒がれる非常時の備について、不安だったり、面倒だったり、の気持ちが先に立つのだけれど、食べてみたらちょっとだけモヤモヤが晴れたように思う。これからの暮らしに、気楽な感じで取り入れておけばいいのかもしれない。やらなくっちゃ、どうしよう、なんて重たく構えず、そうだなぁ、お腹が空いたら食べちゃってもいいのかも、みたいに。ふざけているわけではなく、非常非常って特別にしないで、日常にちょこっと追加するみたいな感じかな。
色々調べている過程で、このマジックライスはドライカレーと、えびピラフが美味しいと言われているようだった。残念ながら今回の賞味期限切れ食材の中に、この二つはなかったから試してはいないのだけれど、買い替えにはこれも要検討。美味しいなら食べてみたい。
そしてできればまた、5年使うことなく、ありがとうって思いながら、食べてみたいものである。
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