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あるのは裏心だけで、オチもない
しおりを挟むおもてなしの気持ちが足りない。
そう言われた。少し前のことだ。
ああ、ハイハイ、そうですね。
できる限りのことを一生懸命にやっていた私は心の中でそうつぶやいて、やり過ごした。
すぐに私の中の別の私が声を上げる。
おもてなしがない。おもて、が、ない、がない。無いが無いっていうのは「ある」なんじゃないの。
また別の私も声を口を挟む。
おもて、なし。表が無い。なら合ってるよ。裏ばっかりだもの。
ああ、ハイハイ、そうですね。暴走する妄想にブレーキをかけるべく、私は考える。
たしかに私には裏心がある。腹に一物ありますわよ。根も暗いし、腹黒い。そこまでは言われていないけれど、その通りだ。
別に卑屈になっているのではなく、それこそが私の原動力。妄想から書きものをしているのだもの、裏がなくなったらツマラナイ!
けど、待って。
昨今の引きこもりに拍車がかかる生活で、私の中の私たちは登場スピードが速くなっている。
新たな私が私に問う。
表が無いっていうことは、それって、裏しかないってことじゃない?
裏しかない?
そう、裏しかないっていうことは、裏だけってこと。
ううむ。裏だけ。
私の頭はこんがらがる。
それじゃあ、裏表がある、ということにはならないのか。裏表なし、とおなじこと?
ううむ、そうか。
だからなにっていうのではないけれど、腹に一物はあれど、表が無いかバレバレで、素直でよろしい、ということだな、たぶん。
そして今度は、表が無いからツマラナイんじゃない?
少しはおもてなしに努めよう。
そんな結論を出したところで、私たちによる私内会議が終了した。
ちなみに、ここがオチだ。
私の好む文章は坦々として、山や谷、起伏の少ない文章で、そういうものを書く。オチはない。
以前、そんな話をしたことがある。
「オチっていうのは笑いだけじゃないぞ。結論があればオチがついている。落としどころがついている。それのどこに問題があるのだ?」
年配の知り合いに言われて、ハッとした。
このときの私も卑屈になっていたわけではないし、自分を客観視して端的に説明しているつもりだったのだけれど、自虐に聞こえしまうのだな、と思った。私の望まない裏心が、この発言にはついてしまう。あるいは、やっぱり心の奥のどこかに、卑屈になるような気持ちがあるのかも。
気をつけようと思った。望まない裏は要らない。
坦々とした文章を書いています。それでいいじゃないか。
あれ、そうしたら、これは表だろうか?
やっぱりおもてなしはある?
結論に至ったはずの、私たちによる私内会議はどうやら再招集がかかるもようだ。
結局、オチがない。
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