ひらたい日々

ちょこ

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鳥って足が速いよね

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私の行手、数メートルのところに鳥が舞い降りた。舞い降りたと思うと、鳥は、ものすごい勢いで走り始めた。広い歩道の右側から左端まで、だいたい一メートルくらいの距離を、ちょこちょこちょこっとダッシュし、それから、止まることなく右折したと思うと、こちらに向かって猛スピードで迫ってきた。
え、どうしよう。ちょっと怖い。
思わず私が足を止めると、鳥は急に飛び上がった。羽を広げたりして飛行準備の仕草を見せることなく、突然、飛び立った。飛び立って、車道を挟んだ反対側の、歩道の脇のガードレールの上に舞い降りた。
鳥はグレーと白にほんの少し茶が入った毛並みの、どこででもよく見かけるような鳩だった。ガードレールから歩道に降りても、鳩はもう私の方を向かなかった。
さっきのあれは、なんだったのだろう。知らんぷりを決め込み、道路を突いて歩く鳩を遠目に見ながら思う。私に用事があったわけではなさそうだ。(用事があってもらっても困るのだけれど)
鳥って足が速いよね。あんなに勢いよく来られたら怖い。いや、人にだって迫って来られたら怖いけれど、人間ならば、近距離を前触れなく、あんな速度で走ってはこない。足の速さと、突然の行動と、こんなにも怖いのはそこが原因だろうか。鳥のほうは怖くないのかしら。わかっていてやる分には恐怖心なんてわかないのかしら。
鳥の気持ちはわからないけれど、とにかく鳥は足が速い。そして怖いから、急に走ってくるのはやめて欲しい。

鳥にお願いするのだから、私も気をつけないといけないな。
昔から、「なにをするかわからない」と知人に怖がられることがあった。「予測不能」、そう言われて、そんなことはないだろうと思っていたけれど、たぶん、今日私が鳩に対して思ったような感じだったのかなって、今になって思う。気遣いの前置きとか、仕草の発信とか、苦手だから、突然何かを始めるように見えるのだと思う。思いつきでなにかするのも好きだし。うん、そうだ。確かに予測不能なときがあると思う。だから気をつけよう。なるべく誰かを怖がらせないように。

そしてできれば、歩いていて急に立ち止まったり、ショッピングカートを急旋回させたり、突然奇声をあげたりする人も気を付けてくれると嬉しい。
脇腹に不意にカートの突撃を喰らって、ちょっと鳩の恐怖を忘れた。やっぱり人間も恐ろしい。

鳥って足が速いよね。迷惑な人の逃げ足も。


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