51 / 90
アボカドの色
しおりを挟む食べものの好き嫌いが驚くほど多い。私のことだ。
加えて、気に入ったものならば、ずーっとそればっかりを食べたがる傾向にあるので、気をつけないと、ものすごい偏食になってしまう。
性格に問題もある。「身体にいいから食べてみろ」などと言われることを好まない。ましてや、強く勧められたり、強要されたりすると、大爆発する。過去にあったそれらの経験が、頑なに拒むという頑固姿勢を何十倍にもパワーアップさせてもいる。私のことだ。
だから好き嫌いが直ることはない。そう思っていた。けれどちがった。たぶん、初めて直ったと思う。
ねっとりと濃厚な口当たりなのに味がしない。サラダ油を舐めているような感じがする。そう思って拒否していたアボカドを、最近私は食べるようになった。不思議だ。
なんとなく、食べてみてもいいかな、という気持ちが湧き、自らサラダを所望し、作ってもらった。口に入れたアボカドに、以前のような拒否反応は全くなく、さっぱりとしすぎたトマトが許せるくらいに、サラダのグレードをあげていた。
そしてついに今夜は、ネットで見かけた韓国風のサーモンアボカド丼を食べてみたいと思い、所望して、作ってもらった。お刺身に絡んだコチュジャンの赤とアボカドのグリーンが見た目にも麗しく、ピリッと辛い丼が美味しかった。
長年の不仲を経て、私はアボカドと和解した。
こうして和解してみると、もしかしたら始めからこうなる運命だったのではないかと思う。好きになることは決まっていたような気がする。
なぜって、アボカドの色が好みだから。熟成度と共に黒くなっていく皮の色ではなく、身のライトグリーンが、私は好きだ。これはそう、大好きなピスタチオの色でもある。好きにならないはずがないと思う。まあ、だいぶ長いこと時間はかかりましたが。
「アボカドを克服したから、次は、しいたけかな」
そんなふうにいう旦那さまに、「ぜったいイヤ」と意思表明をしつつ、確信する。あれはライトグリーンじゃないから無理だ。
そもそも論として、昔からライトグリーンが特別に好きだったわけではない。だから、ピスタチオを好きになって、ライトグリーンも好きになったのだと思う。それから今、アボカドへとつながった。好きになるのには正しい順番というものがあるのだと思う。そして、偉大なのはピスタチオだ、と。
ちょうど今、我が家にはピスタチオのお菓子が溢れている。あちこちにある、キレイなライトグリーンを見て、「やっぱアボカドもこの色だよなぁ」と、なぜかニヤニヤが止まらない。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。




「B1・・・」~小さなレオの奮闘記~
フォアグラ肝臓
エッセイ・ノンフィクション
2025年春、高等支援学校を卒業するレオは、小学生並みの知識と能力しかない知的障害者。
何も知らない、何もできないレオの療育手帳には「B1」の判定が・・・
レオは地元のとある企業に有期雇用の契約社員として入社が内定した。
そこで出会う親方。そして同じ知的障害の同僚N。
仕事と友情、そして親方とのかかわりを通じて成長を遂げていく、小さなレオの成長日記。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる