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たんす貯金かな
しおりを挟む妄想と偏見を多分に含む。
暑さを避け、なおかつなるべく人での少ない時間を、と思って午前中、早い時間にスーパーへ。
人手が足りないのか、昨日カラになったのであろう棚のメンテナンスが行き届かず、これから出される商品の箱が、あちこちに積まれている状態ながらも、想像以上にお客さんが入っていてびっくりした。
でもまあ、連休中だし、考えることはみんなおなじだろう。
広告の品の野菜や、我が家の定番食糧をポンポンとカゴに入れ、ときどき欲しくなるジュースや季節のスイーツのコーナーもザーッとチェックしてレジに並んだ。
数人で順番はやってきた。
けれど、すぐにスキャンは始めてもらえなかった。
直前のお客さん、カゴいっぱいに商品を入れ、自動支払機に向かうおじいさんが、お札の投入に失敗し、ピコンピコンとアラーム音を鳴らしていた。
レジのお姉さんがすぐに反応し、投入口から戻ってしまっていたお札を再度、読み込ませる。
ピコンピコン。やっぱりお札は入らない。
レジのお姉さんが、お札の折りシワを伸ばし、もう一度、投入口へお札を差し込む。
ん?
お姉さんの手元を見て、びっくりした。
お札の色味がなんだかちがって見える。あれは。。。伊藤博文!
最新の自動支払機に伊藤博文、それは無理なんじゃないかなぁ、と思う。
またまた、ピコンピコンとアラーム音が鳴り、お札は読み込まれなかった。
「少々お待ちください」
お姉さんはお札を手に、その場を離れた。サービスカウンターのほうへ歩いて行くのが見える。
そうだね、お札を交換してくるしか、方法はなさそうだね。
そう思って、見ていた。
その後、伊藤博文は、現行の青緑っぽい千円札に交換され、おじいさんは無事に支払いを終えた。
久しぶりに伊藤博文のお札を見た。
しかも支払いに使われようとしていた。
珍しい光景にであった。
そう思いつつ、
「たんす貯金」
私の頭にはそんな言葉が浮かんでいた。
あれは、おじいさんの、たんす貯金だったのだろうか?
今のATMから伊藤博文は出金されないだろうから、お家から持ち出すくらいしか、考えられない。だとすると、おじいさんは、なんで今、たんす貯金を持ち出したのだろう?
たまたま、お金があることに気が付いたから?
連休で銀行がお休みで、手持ちがなかった?
まさか、たんす貯金を持ち出さなければならない経済状況に?
いろいろ勝手に考えて、昨今の情勢も思うと、なんだか胸が苦しい方向へと妄想してしまった。
のほほんと気ままに暮らしている私も、どんどん歳は重ねている。
誰もが裕福ではなくても困らずに暮らしていける、そんな社会であってほしい。。。
ところで、今の千円札って誰が描かれていたっけ?
夏目漱石?
広がるばかりの妄想を止めるべく、次に頭は別のことを考えた。
お財布を確認すると、野口英世だった。
そっか、夏目漱石は一つ前の千円札だ。
検索してみたら、2004年から野口英世の千円札が使われ始めたそう。
社会になにかを望むまえに、自分がもっと社会に関心を持ち、注意深く生きなければなぁ、と反省した。
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