5 / 13
5.亡霊と呪い
しおりを挟む
「どうもベロニカの方が気味が悪いね」
デーティアは眉根を寄せる。
「だいたい、学園でも気に入らなかったんだ。イザベラは単純なおばかさんだったから、人目も気にせずベロニカを虐めていたけど、ベロニカは逃げもしなければ助けを求めもしない。その上…なんていうか無防備すぎた。まるで虐めてくださいと言わんばかりに…」
デーティアはブツブツ言う。
「教本や小物を置きっぱなしだったし、ぼんやりとイザベラの傍を歩くし、噴水の事件だってあんなところに立っていたらイザベラが何をするかわかりそうなもんじゃないか」
デーティアは記憶を辿る。
「おばあさま!じゃあ、虐められていたベロニカが悪いとおっしゃるの?」
フンとデーティアは鼻を鳴らした。
「あたしにしてみればどっちもどっちさ。虐める方の根性は曲がっていたし、虐められた方はてんで不甲斐ないと思っていたよ」
ベアトリスは目を見開いて、驚きを隠せない。
「おばあさまはベロニカがイザベラに虐めるように誘導していた、とおっしゃるの?」
「そうかもしれないね。今日のビーの話を聞くと、ベロニカはきな臭いよ」
右手をひらひらさせるデーティア。
「で?」
デーティアがベアトリスに向き直る。
「あんたはどうしたいんだい?この謎に鼻をつっこむ気かい?」
「あ…」
そう聞かれてベアトリスは言葉に詰まった。そこまで考えていなかったのだ。デーティアに言えば解決してくれるという、甘い考えを持っていた自分に気づいた。
「いいかい?あたしは亡霊や死とはあまり縁がないし、そっち方面は決して強くない。できることと言ったら呪いの解除くらいだね。それも」
一拍置いて強く言う。
「誰がどういう呪いをかけたか。それを探らなきゃ話にならない。呪いを解くも解かないも、あんたの力次第だよ」
「わたくし!?」
「何を驚くことがあるんだい?あんたが始めたことだよ。決まったら連絡をおくれ。解呪に必要なものを用意しておくけどね、一応」
ベアトリスは困り果てた。
あれ以上、亡霊から話を聞けそうもない。どうしたらいいのだろう。
その表情を見てデーティアが笑う。
「ワイアット家のことはワイアット家の者に聞けばいいだろう。あんたの婚約者は誰なんだい?」
ああ!そうだったわ。ベアトリスは早速行動に移すことにした。
デーティアは
「やれやれ。結果も考えずに猛獣の洞穴に飛び込んだってことにならないといいね」
と呆れたが、可愛いベアトリスのために加護の魔法を強化した。
ベアトリスは週末ごとに行われる、婚約者のユージーン・ワイアット公爵とのお茶の席で事の顛末を話した。
「ベロニカ・カタリナか。確か嫁いで子供もなさずに死んだから、イザベラとの学園でのいざこざの話と絡めて聞いたことはあるけれど、ワイアットの系譜から外されている人だね」
「お願い。わかることがあったら調べて欲しいの」
ベアトリスのおねだりにユージーンは笑って約束した。
「家の書庫の本を調べてみましょう」
ベアトリスが婚約者のユージーン・ワイアット公爵に、学園の二人の亡霊の話を語った翌週。ユージーンとベアトリスの午後のお茶の日。
ユージーンが予想していた通り、ベアトリスは好奇心ではち切れそうな様子で彼を待っていた。
彼女の可愛い我儘や気まぐれは、彼にとっては魅力的だった。
物怖じしない真っすぐな気性、火花のように煌めく才気や瞳に現れる変わりやすい機嫌すらも、ユージーンにとっては可愛くてたまらないらしい。
デーティアは眉根を寄せる。
「だいたい、学園でも気に入らなかったんだ。イザベラは単純なおばかさんだったから、人目も気にせずベロニカを虐めていたけど、ベロニカは逃げもしなければ助けを求めもしない。その上…なんていうか無防備すぎた。まるで虐めてくださいと言わんばかりに…」
デーティアはブツブツ言う。
「教本や小物を置きっぱなしだったし、ぼんやりとイザベラの傍を歩くし、噴水の事件だってあんなところに立っていたらイザベラが何をするかわかりそうなもんじゃないか」
デーティアは記憶を辿る。
「おばあさま!じゃあ、虐められていたベロニカが悪いとおっしゃるの?」
フンとデーティアは鼻を鳴らした。
「あたしにしてみればどっちもどっちさ。虐める方の根性は曲がっていたし、虐められた方はてんで不甲斐ないと思っていたよ」
ベアトリスは目を見開いて、驚きを隠せない。
「おばあさまはベロニカがイザベラに虐めるように誘導していた、とおっしゃるの?」
「そうかもしれないね。今日のビーの話を聞くと、ベロニカはきな臭いよ」
右手をひらひらさせるデーティア。
「で?」
デーティアがベアトリスに向き直る。
「あんたはどうしたいんだい?この謎に鼻をつっこむ気かい?」
「あ…」
そう聞かれてベアトリスは言葉に詰まった。そこまで考えていなかったのだ。デーティアに言えば解決してくれるという、甘い考えを持っていた自分に気づいた。
「いいかい?あたしは亡霊や死とはあまり縁がないし、そっち方面は決して強くない。できることと言ったら呪いの解除くらいだね。それも」
一拍置いて強く言う。
「誰がどういう呪いをかけたか。それを探らなきゃ話にならない。呪いを解くも解かないも、あんたの力次第だよ」
「わたくし!?」
「何を驚くことがあるんだい?あんたが始めたことだよ。決まったら連絡をおくれ。解呪に必要なものを用意しておくけどね、一応」
ベアトリスは困り果てた。
あれ以上、亡霊から話を聞けそうもない。どうしたらいいのだろう。
その表情を見てデーティアが笑う。
「ワイアット家のことはワイアット家の者に聞けばいいだろう。あんたの婚約者は誰なんだい?」
ああ!そうだったわ。ベアトリスは早速行動に移すことにした。
デーティアは
「やれやれ。結果も考えずに猛獣の洞穴に飛び込んだってことにならないといいね」
と呆れたが、可愛いベアトリスのために加護の魔法を強化した。
ベアトリスは週末ごとに行われる、婚約者のユージーン・ワイアット公爵とのお茶の席で事の顛末を話した。
「ベロニカ・カタリナか。確か嫁いで子供もなさずに死んだから、イザベラとの学園でのいざこざの話と絡めて聞いたことはあるけれど、ワイアットの系譜から外されている人だね」
「お願い。わかることがあったら調べて欲しいの」
ベアトリスのおねだりにユージーンは笑って約束した。
「家の書庫の本を調べてみましょう」
ベアトリスが婚約者のユージーン・ワイアット公爵に、学園の二人の亡霊の話を語った翌週。ユージーンとベアトリスの午後のお茶の日。
ユージーンが予想していた通り、ベアトリスは好奇心ではち切れそうな様子で彼を待っていた。
彼女の可愛い我儘や気まぐれは、彼にとっては魅力的だった。
物怖じしない真っすぐな気性、火花のように煌めく才気や瞳に現れる変わりやすい機嫌すらも、ユージーンにとっては可愛くてたまらないらしい。
10
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ
こな
恋愛
公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。
待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。
ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
誰もがその聖女はニセモノだと気づいたが、これでも本人はうまく騙せているつもり。
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・クズ聖女・ざまぁ系・溺愛系・ハピエン】
グルーバー公爵家のリーアンナは王太子の元婚約者。
「元」というのは、いきなり「聖女」が現れて王太子の婚約者が変更になったからだ。
リーアンナは絶望したけれど、しかしすぐに受け入れた。
気になる男性が現れたので。
そんなリーアンナが慎ましやかな日々を送っていたある日、リーアンナの気になる男性が王宮で刺されてしまう。
命は取り留めたものの、どうやらこの傷害事件には「聖女」が関わっているもよう。
できるだけ「聖女」とは関わりたくなかったリーアンナだったが、刺された彼が心配で居ても立っても居られない。
リーアンナは、これまで隠していた能力を使って事件を明らかにしていく。
しかし、事件に首を突っ込んだリーアンナは、事件解決のために幼馴染の公爵令息にむりやり婚約を結ばされてしまい――?
異世界恋愛・10万字ほどの長編です。完結まで予約投稿済み!
クズ聖女を書きたくて、こんな話になりました(笑)
いろいろゆるゆるかとは思いますが、よろしくお願いいたします!
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

絵姿
金峯蓮華
恋愛
お飾りの妻になるなんて思わなかった。貴族の娘なのだから政略結婚は仕方ないと思っていた。でも、きっと、お互いに歩み寄り、母のように幸せになれると信じていた。
それなのに……。
独自の異世界の緩いお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる