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4.獅子身中の虫
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「おそらくこれは魔導士ではないでしょう。魔導士になれる力のある魔力持ちです」
シルアは美しい眉間に皺を寄せて言った。
「寮の内部に入り込んで、事を成せるもの…」
シルアは考えに沈み込んだ。
「あの、先生?」
デーティアは遠慮がちに申し出た。
「女子寮に男が入りこめるものでしょうか?」
「なぜですか?」
「あの…」
デーティアは口ごもったが思い切って言った。
「この素からは男の匂いがします」
シルアは驚いた。
「なぜそう思うのですか?」
「思うのではなくそうなのです。あたしはエルフの村で女性の魔法も男性の魔法もたくさん触れてきました。その特徴がわかりますし、先生に素の解き方を教わって、術者の性別もわかるようになったのです」
シルアはたちまち顔面蒼白になった。
「なんですって。女子寮に男が!?」
そわそわと歩き回りながらシルアは独り言のように低い声を出した。
「最初に消えたのはミリアム・アンデラ、次がクラリッサ・ガネア、三番目はエリアーヌ・ルーディン、四番目はヒルダ・ホーンベリー、最後がミランダ・ソルシア」
シルアの様子に焦れたデーティアは声を上げた。
「あたし、この匂いを知っています」
シルアは驚いてデーティアを見た。
「誰なの!?」
「正確には術者のものかどうかまではわからないんですが…これに絡みついた匂いを知っています」
一拍おいて続ける。
「洗濯メイドのエリザです。最初にすれ違った時に、とても嫌な匂いがすると感じたんです。体臭とかつけている香水とかではなく、とにかく嫌な匂い」
デーティアは最初にエリザが替えのシーツなどを運んできた時に、騒ぎを起こしたことをシルアは思い出した。
エリザは去年の秋に雇われた新参者だ。
エリザに部屋に入るな、持ってきたものを持ち帰れと癇癪を起したのだ。風を起こしてエルザの持ってきたものを吹き飛ばし、エルザの入室を頑なに拒んで罵った。
去年の冬のことだ。
今までおとなしかったデーティアの癇癪に周囲は驚き、メイドの数は多かったので、以来デーティアにはエリザを近づけなかった。変わり者のハーフ・エルフの子供だが、今までこのようなことはなく、むしろ静かで親切だったため、エリザが何か気に障るようなことを言うかしたかなのだろうと解釈された。
「あの嫌な臭いは、悪意だったんです。この素からはあの悪意の臭いがします」
デーティアは続けた。
「洗濯メイドならどの部屋にも入れます。そうやって品定めをしていたのでしょう」
「間違いありませんか?」
「間違いありません」
早速シルアはメイド長のところへ赴き、エリザのことを聞いたが、事既に遅くエリザは学園から去っていた。曰く「怖い事件が続いているから」と職を辞していた。エリザの行方もわからなくなっていた。
「ああ、なんてこと」
シルアは頭を抱えた。
「まさかメイドが関わっていたとは」
一見、捜査は暗礁に乗り上げてしまったかのように思えた。
シルアは美しい眉間に皺を寄せて言った。
「寮の内部に入り込んで、事を成せるもの…」
シルアは考えに沈み込んだ。
「あの、先生?」
デーティアは遠慮がちに申し出た。
「女子寮に男が入りこめるものでしょうか?」
「なぜですか?」
「あの…」
デーティアは口ごもったが思い切って言った。
「この素からは男の匂いがします」
シルアは驚いた。
「なぜそう思うのですか?」
「思うのではなくそうなのです。あたしはエルフの村で女性の魔法も男性の魔法もたくさん触れてきました。その特徴がわかりますし、先生に素の解き方を教わって、術者の性別もわかるようになったのです」
シルアはたちまち顔面蒼白になった。
「なんですって。女子寮に男が!?」
そわそわと歩き回りながらシルアは独り言のように低い声を出した。
「最初に消えたのはミリアム・アンデラ、次がクラリッサ・ガネア、三番目はエリアーヌ・ルーディン、四番目はヒルダ・ホーンベリー、最後がミランダ・ソルシア」
シルアの様子に焦れたデーティアは声を上げた。
「あたし、この匂いを知っています」
シルアは驚いてデーティアを見た。
「誰なの!?」
「正確には術者のものかどうかまではわからないんですが…これに絡みついた匂いを知っています」
一拍おいて続ける。
「洗濯メイドのエリザです。最初にすれ違った時に、とても嫌な匂いがすると感じたんです。体臭とかつけている香水とかではなく、とにかく嫌な匂い」
デーティアは最初にエリザが替えのシーツなどを運んできた時に、騒ぎを起こしたことをシルアは思い出した。
エリザは去年の秋に雇われた新参者だ。
エリザに部屋に入るな、持ってきたものを持ち帰れと癇癪を起したのだ。風を起こしてエルザの持ってきたものを吹き飛ばし、エルザの入室を頑なに拒んで罵った。
去年の冬のことだ。
今までおとなしかったデーティアの癇癪に周囲は驚き、メイドの数は多かったので、以来デーティアにはエリザを近づけなかった。変わり者のハーフ・エルフの子供だが、今までこのようなことはなく、むしろ静かで親切だったため、エリザが何か気に障るようなことを言うかしたかなのだろうと解釈された。
「あの嫌な臭いは、悪意だったんです。この素からはあの悪意の臭いがします」
デーティアは続けた。
「洗濯メイドならどの部屋にも入れます。そうやって品定めをしていたのでしょう」
「間違いありませんか?」
「間違いありません」
早速シルアはメイド長のところへ赴き、エリザのことを聞いたが、事既に遅くエリザは学園から去っていた。曰く「怖い事件が続いているから」と職を辞していた。エリザの行方もわからなくなっていた。
「ああ、なんてこと」
シルアは頭を抱えた。
「まさかメイドが関わっていたとは」
一見、捜査は暗礁に乗り上げてしまったかのように思えた。
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