14 / 27
13
しおりを挟む
あぁ神様…創世神様…。
(これは夢だと…幻だと、誰か言って…。。)
前世の記憶をひっくり返しても、王子のこんな燦々しい笑顔は無かったんですけどっ!
青Fでさえ見たことがないセノヴァス-ロル-レーゼンデルク・ティタ二ア第一王子の極上の笑顔を、私は頂戴しましたよっ!
ははーん。さては王子ってば、笑顔で私をノックアウトするつもりだねっ☆
アハハハハ~っ☆
(‥だ、ダメだ‥現実逃避ムリだわ…あんな黒々しいオーラを放つ王子の笑顔とか、ノックアウト以前に精神がおかしくなるわ…。)
冷黒王子の笑顔は絶対に良からぬことを考えてる顔だよ…。
(あぁ~~も~~~っ 次から次へと勘弁してよ、創世神様ぁ~~~っ!!)
─────とにかく!
時は一刻を争うから、今は冷黒王子の方は後回しだ!
今はギル様の方を何とかしないと、今世の私が!この世界が終わるんだよ!!
────ってことで王子よ、その面もろとも完全無視させていただきますんで!
私はギル様に集中させてもらいますんで悪しからず!!!
冷黒王子のことは一旦思考の外に追いやり、私は深呼吸してギル様へと意識を切り替えた。
スーーーッハーーーーッスーーーッハーーーーッ‥。
(よ‥よし‥‥‥。)
さっき私が感じたことが“正しい”なら。
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
私はギル様に、
《敵》認定されたってことになるよね?
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
そう自分に問いかけたら、案の定、胸の奥がズキリと痛んだ。
(ッッ…。うへぇ~~…マジですかぁ‥。。)
まさかギル様に敵視されたらこんな風に私の体がなるとは…。
(…これも光希の記憶を取り戻した弊害かぁ~…。)
それにしても…。
ヤバいな‥。
(…さっきから胸痛のせいで、感情の箍が外れそうになってるし‥。)
今はエステル様の影に隠れて何とか凌いでいるけど、私は自分が平常心を保てなくなっていることに焦りを感じていた。
(今はまだ〈晶鏡石〉で抑えられてるけど‥このままじゃ私の魔力が暴走するかも…。)
──この世界に存在する魔力というものは、感情に呼応して膨れ上がる性質がある。
四元素[火][風][水][土]の魔力だと、それぞれに特化した場所や物が活性化するのに対して。
空を構成する[光]と[闇]は、場所や物を問わずに活性化する──この世界との親和性が高い魔力として重宝される一方で『危険な魔力』でもある。
私の魔力は、そんな『危険な魔力』に分類される“[光]属性”なんだよ…。(ちなみに青Fどおりなら悪役令嬢も危険な魔力に分類される[闇]属性の持ち主だ。)
何が言いたいかというと。
私がこのまま感情を爆発させてしまえば、〈晶鏡石〉じゃ抑えきれずに本来の魔力が漏れ出て色々と面倒事になるどころか、ともすれば私の[光]属性の魔力が危険な事象を起こして、最悪この場に居る全員を吹き飛ばすかもしれないってことなんだよ!!
(──あぁもう!光希のギル様好きが重症なのがいけないんだーーーっ!!)
今の私はギル様のことは何とも思ってないのに!!
(ってか思うほどの仲でもないし、交流する気もないのに、何でこんな‥‥ッッ)
なんでこんな痛い思いをしなきゃなんないのさ~~~~っ!!
(ゔぅ~~っ マジで泣きたいぃ~~~っ…。)
分かってるよ、泣いても状況は改善しないってことは!
私の心の問題だってことは!
(けど分かってるからこそ辛いんだよぉ~~~っっ!!)
─── 私が私である為には、光希の気持ちに引き摺られないようにする必要がある。
その為には胸の痛みの原因を齎してるギル様が『挑戦的に笑った』意図を、私は明確にするしか道はない。
(分かってる‥分かってますよ…。やるしかないんだ…。)
正直ギル様を見るのはもう嫌だ。
けど、過去の記憶と決別する為には、現実を確認しないといけないんだ。
──── 私が私である為に ────
私は光希じゃなくて今世を生きてるリリアンだ。
今を生きる自分を保つ為に、私はしっかりと現実を意識した上で、ギル様が笑った意図を確かめる必要があるんだ。
(‥っっ頑張れ私!‥気合いだ私ぃ!!)
私は脳内でグッと両拳を握ると、もはや気力のみでエステル様の脇から前方をしっかりと見据えた。
(──私のこの感覚が間違いなければ、きっとギル様は───…。)
そうして最終確認するべくギル様を注意深く見てみたら‥‥。
私が持つ魔力量のおかげか、ギル様の纏うオーラが臨戦体制になっているのが判った。
つまりは────そういう事だ。
…うん。
私が “ギル様に敵視されてる” のはこれで確認できた。
…しっかりと受け止めさせて頂きました。
確認が終わった私は、ギル様から静かに目線を外して…下を向いた。
相変わらず胸はズキズキと痛むけど‥うん、もう大丈夫かな。
現実を目の当たりにした私はもう、ギル様を想う光希の感情に引き摺られることはない。
未だにギル様は光って見えるけど、アレは光希の想いとはまた別問題だと思うしね‥。
私は地面を見つめたままで、深呼吸を2回3回と繰り返した。
こうして脳内に酸素をいっぱい取り込んで冷静に考えてみれば…うん。この流れは至極当然だと納得できる。
“打首”発言をしてきた冷黒王子に、
ギル様は[護衛騎士長]として紐付いてる人なのだから。
冷黒王子が私のことを心良く思ってないなら、
ギル様にも『敵視される』のは当たり前───ってね。
ただちょっと言わせてもらっていいかな?
入学早々に次から次へと《敵》が増えていくって、青Fの【イチャラブ推進ストーリー】は何処行った?
そりゃあ【恋愛ルート】に入らないようにしたかったけどもさぁー。
あの夢見る乙女心を集約したともいうべき青Fのストーリー展開では有り得ない、まさかの【敵対ルート】。
(…恋愛ゲーム的にも現実的にもどーかと思うわ…。)
このまま行けば黒々しいオーラを湛えた笑顔の〈冷黒王子〉様が何かしらアクションを起こしてきて、私が不利益を被る確率は100%。
ほぼ確定と言っていいと思う。
(‥頭痛くなってきたわ‥。)
【恋愛ルート】を回避したら【敵対ルート】って…どっちにしろ私の未来はトラブルだらけかよ…トホホ。。
(ここまでくると、もはや諦めの境地だわ…。)
青Fには【敵対ルート】なんて無かったから、予備知識が一切ない状態では回避なんてできる訳ない。
(てゆーか青Fの記憶を持つ私と彼等を敵対させて、一体何をやらせたいんだ創世神様は…。)
いよいよ〔神降ろし〕ができる神官様に相談するしかなくなってきたかも‥お金ないけど…。
私は痛む頭を押さえながら、青Fには無い【敵対ルート】に入ったと思われるこの状況では、もう何も青F情報は参考にならないことに天を仰ぐしかないのだった…。
・・・・────ってゆ~かさぁ!
(傍観してないで何とか言ってよーーーっ 創世神様ぁ~~~~!! )
‥──────…。
(‥ハァ~~~。やっぱり返答は無しか…。)
ダメ元で募る思いの丈を創世神様に念じて訴えてみたけど、神様からの返事はやっぱり聴こえず…ぐすん。。
見上げた昼空はただただ静かに薄い雲が流れているだけだ。
(ハァ~‥だんだん虚しくなってきたわ‥。)
自分の能力である〔読心〕を最大限まで広げて一抹の可能性に賭けてみたみたけど、な~んにも聴こえないし‥。
(‥これからどう動けば正解なんだろ~ね‥。)
だって【敵対ルート】って言ったら、どう考えても冷黒王子とぶつかり合う悪路なストーリー展開しか思い付かない。
下手したら他の恋愛ゲームにありがちな断罪とか牢獄行きとか奴隷落ちとか、狂科学者の研究材料にされるとかの【Bad End】になる可能性だってある。
そんな末路は絶対に嫌だし、そうなった時は私の全魔力を使って逃亡するけど。
(ただなぁ…。)
思い起こせば青Fでの【Bad End】って、実は主人公ではなくライバルの女性側に感情移入してしまう、青Fファンにとってはこちらが本命とも醍醐味とも言えるルートになるんだよね…。
──青Fでの【Bad End】は、基本的にはどのルートであれ主人公は最終章で攻略対象を1人選んで告白をするんだけど、その際に攻略対象から色々な手痛い振られ方をして学院追放となる結末が【Bad End】になってて。(当然スチルの一枚絵は無し)
主人公の告白失敗→学院追放→テロップで【Bad End】と出て終わりかと言えばそうではなくて。
その後に流れるエンドロールの方に話の重きを置かれていたのだ。
エンドロールが流れる画面中央では(左端には制作スタッフとかの名前が流れてる中で)、落とそうと思って失敗した攻略対象に紐付くライバルの悪役令嬢や女性キャラと攻略対象との、第1章からダイジェストで最終章までの裏エピソードが流れて、その間に線画の一枚絵まで何枚か出るんだよ。(しかも小憎らしいことにこれらの一枚絵は習得した[スチル一覧]のフォルダには入らないってゆーね。)
その裏エピソードがまた、攻略対象とライバルの女性が結ばれるかと言えばそうでない場合もあって、泣ける話だったり心温まる話だったり、どれも胸アツなストーリーだったから、主人公に感情移入してた私でさえエンドロールの秀逸さに感動して、意図的に何度も【Bad End】を迎えたほどだ。
…まぁそうは言っても、実際に主人公の立場となってる今は、学院追放なんて何の得にもならない【Bad End】は迎えたくないんだけどさ。。
(‥それにしてもさっきから何か見落としてるような違和感?があるんだよなぁ~…。)
彼等と“敵対する”には=彼等と“交流が必要になる”と思うんだ。
けれども。
そもそも私は、攻略対象である彼等とは交流したくない訳で…。
(‥彼等とは関わり合いたくないんだよなぁ…。)
そんな私が、彼等との交流を全力で避けようとする私が、彼等とこの先どう敵対できるんだか…。
(・・・・ん?…ちょっと待てよ…。)
─────そうか!!何か見落としてると思ったら‥っ!!
青Fでは悪役令嬢との《遭遇イベント》が起きる[裏庭]に何故か王子が来たり、ギル様が人知を超えて光ってたり、光希の想いが作用して胸が痛むわで、そっちに気を取られて気づいてなかったけど!
そもそも論で私は『彼等と関わり合う気がない』んだった!!
(あはは…私ってばかなり動揺しまくってたんだな…。)
よくよく考えてみれば、この展開って嬉しい展開じゃないの!
彼等に敵視されるということは、つまり【恋愛ルート】は回避できたも同然で、しかもこのまま【敵対ルート】に身を置けば、まぁ彼等との好意的な関係は望めないだろうけど、そもそも私は『彼等と関わり合う気がない』んだから、
───これ以上のストーリーは進みようがないんだわ!!
(うわーっうわーっ 創世神様に散々愚痴っちゃったけど、謝ります前言撤回します!ありがとうございます~~~~っ!!)
私がとことんゲンキンな奴だな~って?
うん、私もそう思う。
けど、さっきまでの悪寒がすっかり消えてなくなったんだもん。
【Bad End】を迎えた時に流れるBGMも聴こえなくなったんだもん。
嬉しくって仕方ないんだもん、だってさぁ~~~っ!
(あーーーーほんと気づいて良かったぁ!!)
そうかぁ~なるほど、そういう事かぁ~♪
(…あ。じゃあじゃあ、冷黒王子とギル様と一緒に来たもう一人の彼とも?!)
光希が呼んでた愛称を使わせてもらうと、あの〈クリス〉との【恋愛ルート】も、[フラグ]回避できたってことになるんじゃ!?
(やった‥やったよ私ぃーーーー!!)
思わず胸元で両手をぐっと握ってガッツポーズを作ってしまい、私の両隣に立ってるアイリナ様やマーリン様に変な目で見られてしまった。…静かに両手を下ろしました。空気を読まずにごめんなさい。。
(‥ま、まぁエステル様の後ろに隠れてるから王子達にはバレてないみたいだし、良っかぁ!)
───だってさぁ~。
私は青Fの登場人物の中でも、特にクリスとの関係性を懸念してたんだもん‥。
というのもクリスの青Fでの設定が、
『学院長の息子』であり『王国一の魔術の使い手』というものだからだ。
つまりクリスは私が目指している〔魔法薬剤師〕の免許取得に、少なからず関わるだろう人なのよ。
(っっハァ~~~~良かったぁ~~~。。)
私はここに来て初めて創世神様に対して、溢れる感謝の気持ちを抑えきる事ができないのだった。
──────さぁて!
それじゃあ、形勢逆転、巻き返しと行きますかぁ~~っ♪
(これは夢だと…幻だと、誰か言って…。。)
前世の記憶をひっくり返しても、王子のこんな燦々しい笑顔は無かったんですけどっ!
青Fでさえ見たことがないセノヴァス-ロル-レーゼンデルク・ティタ二ア第一王子の極上の笑顔を、私は頂戴しましたよっ!
ははーん。さては王子ってば、笑顔で私をノックアウトするつもりだねっ☆
アハハハハ~っ☆
(‥だ、ダメだ‥現実逃避ムリだわ…あんな黒々しいオーラを放つ王子の笑顔とか、ノックアウト以前に精神がおかしくなるわ…。)
冷黒王子の笑顔は絶対に良からぬことを考えてる顔だよ…。
(あぁ~~も~~~っ 次から次へと勘弁してよ、創世神様ぁ~~~っ!!)
─────とにかく!
時は一刻を争うから、今は冷黒王子の方は後回しだ!
今はギル様の方を何とかしないと、今世の私が!この世界が終わるんだよ!!
────ってことで王子よ、その面もろとも完全無視させていただきますんで!
私はギル様に集中させてもらいますんで悪しからず!!!
冷黒王子のことは一旦思考の外に追いやり、私は深呼吸してギル様へと意識を切り替えた。
スーーーッハーーーーッスーーーッハーーーーッ‥。
(よ‥よし‥‥‥。)
さっき私が感じたことが“正しい”なら。
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
私はギル様に、
《敵》認定されたってことになるよね?
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
そう自分に問いかけたら、案の定、胸の奥がズキリと痛んだ。
(ッッ…。うへぇ~~…マジですかぁ‥。。)
まさかギル様に敵視されたらこんな風に私の体がなるとは…。
(…これも光希の記憶を取り戻した弊害かぁ~…。)
それにしても…。
ヤバいな‥。
(…さっきから胸痛のせいで、感情の箍が外れそうになってるし‥。)
今はエステル様の影に隠れて何とか凌いでいるけど、私は自分が平常心を保てなくなっていることに焦りを感じていた。
(今はまだ〈晶鏡石〉で抑えられてるけど‥このままじゃ私の魔力が暴走するかも…。)
──この世界に存在する魔力というものは、感情に呼応して膨れ上がる性質がある。
四元素[火][風][水][土]の魔力だと、それぞれに特化した場所や物が活性化するのに対して。
空を構成する[光]と[闇]は、場所や物を問わずに活性化する──この世界との親和性が高い魔力として重宝される一方で『危険な魔力』でもある。
私の魔力は、そんな『危険な魔力』に分類される“[光]属性”なんだよ…。(ちなみに青Fどおりなら悪役令嬢も危険な魔力に分類される[闇]属性の持ち主だ。)
何が言いたいかというと。
私がこのまま感情を爆発させてしまえば、〈晶鏡石〉じゃ抑えきれずに本来の魔力が漏れ出て色々と面倒事になるどころか、ともすれば私の[光]属性の魔力が危険な事象を起こして、最悪この場に居る全員を吹き飛ばすかもしれないってことなんだよ!!
(──あぁもう!光希のギル様好きが重症なのがいけないんだーーーっ!!)
今の私はギル様のことは何とも思ってないのに!!
(ってか思うほどの仲でもないし、交流する気もないのに、何でこんな‥‥ッッ)
なんでこんな痛い思いをしなきゃなんないのさ~~~~っ!!
(ゔぅ~~っ マジで泣きたいぃ~~~っ…。)
分かってるよ、泣いても状況は改善しないってことは!
私の心の問題だってことは!
(けど分かってるからこそ辛いんだよぉ~~~っっ!!)
─── 私が私である為には、光希の気持ちに引き摺られないようにする必要がある。
その為には胸の痛みの原因を齎してるギル様が『挑戦的に笑った』意図を、私は明確にするしか道はない。
(分かってる‥分かってますよ…。やるしかないんだ…。)
正直ギル様を見るのはもう嫌だ。
けど、過去の記憶と決別する為には、現実を確認しないといけないんだ。
──── 私が私である為に ────
私は光希じゃなくて今世を生きてるリリアンだ。
今を生きる自分を保つ為に、私はしっかりと現実を意識した上で、ギル様が笑った意図を確かめる必要があるんだ。
(‥っっ頑張れ私!‥気合いだ私ぃ!!)
私は脳内でグッと両拳を握ると、もはや気力のみでエステル様の脇から前方をしっかりと見据えた。
(──私のこの感覚が間違いなければ、きっとギル様は───…。)
そうして最終確認するべくギル様を注意深く見てみたら‥‥。
私が持つ魔力量のおかげか、ギル様の纏うオーラが臨戦体制になっているのが判った。
つまりは────そういう事だ。
…うん。
私が “ギル様に敵視されてる” のはこれで確認できた。
…しっかりと受け止めさせて頂きました。
確認が終わった私は、ギル様から静かに目線を外して…下を向いた。
相変わらず胸はズキズキと痛むけど‥うん、もう大丈夫かな。
現実を目の当たりにした私はもう、ギル様を想う光希の感情に引き摺られることはない。
未だにギル様は光って見えるけど、アレは光希の想いとはまた別問題だと思うしね‥。
私は地面を見つめたままで、深呼吸を2回3回と繰り返した。
こうして脳内に酸素をいっぱい取り込んで冷静に考えてみれば…うん。この流れは至極当然だと納得できる。
“打首”発言をしてきた冷黒王子に、
ギル様は[護衛騎士長]として紐付いてる人なのだから。
冷黒王子が私のことを心良く思ってないなら、
ギル様にも『敵視される』のは当たり前───ってね。
ただちょっと言わせてもらっていいかな?
入学早々に次から次へと《敵》が増えていくって、青Fの【イチャラブ推進ストーリー】は何処行った?
そりゃあ【恋愛ルート】に入らないようにしたかったけどもさぁー。
あの夢見る乙女心を集約したともいうべき青Fのストーリー展開では有り得ない、まさかの【敵対ルート】。
(…恋愛ゲーム的にも現実的にもどーかと思うわ…。)
このまま行けば黒々しいオーラを湛えた笑顔の〈冷黒王子〉様が何かしらアクションを起こしてきて、私が不利益を被る確率は100%。
ほぼ確定と言っていいと思う。
(‥頭痛くなってきたわ‥。)
【恋愛ルート】を回避したら【敵対ルート】って…どっちにしろ私の未来はトラブルだらけかよ…トホホ。。
(ここまでくると、もはや諦めの境地だわ…。)
青Fには【敵対ルート】なんて無かったから、予備知識が一切ない状態では回避なんてできる訳ない。
(てゆーか青Fの記憶を持つ私と彼等を敵対させて、一体何をやらせたいんだ創世神様は…。)
いよいよ〔神降ろし〕ができる神官様に相談するしかなくなってきたかも‥お金ないけど…。
私は痛む頭を押さえながら、青Fには無い【敵対ルート】に入ったと思われるこの状況では、もう何も青F情報は参考にならないことに天を仰ぐしかないのだった…。
・・・・────ってゆ~かさぁ!
(傍観してないで何とか言ってよーーーっ 創世神様ぁ~~~~!! )
‥──────…。
(‥ハァ~~~。やっぱり返答は無しか…。)
ダメ元で募る思いの丈を創世神様に念じて訴えてみたけど、神様からの返事はやっぱり聴こえず…ぐすん。。
見上げた昼空はただただ静かに薄い雲が流れているだけだ。
(ハァ~‥だんだん虚しくなってきたわ‥。)
自分の能力である〔読心〕を最大限まで広げて一抹の可能性に賭けてみたみたけど、な~んにも聴こえないし‥。
(‥これからどう動けば正解なんだろ~ね‥。)
だって【敵対ルート】って言ったら、どう考えても冷黒王子とぶつかり合う悪路なストーリー展開しか思い付かない。
下手したら他の恋愛ゲームにありがちな断罪とか牢獄行きとか奴隷落ちとか、狂科学者の研究材料にされるとかの【Bad End】になる可能性だってある。
そんな末路は絶対に嫌だし、そうなった時は私の全魔力を使って逃亡するけど。
(ただなぁ…。)
思い起こせば青Fでの【Bad End】って、実は主人公ではなくライバルの女性側に感情移入してしまう、青Fファンにとってはこちらが本命とも醍醐味とも言えるルートになるんだよね…。
──青Fでの【Bad End】は、基本的にはどのルートであれ主人公は最終章で攻略対象を1人選んで告白をするんだけど、その際に攻略対象から色々な手痛い振られ方をして学院追放となる結末が【Bad End】になってて。(当然スチルの一枚絵は無し)
主人公の告白失敗→学院追放→テロップで【Bad End】と出て終わりかと言えばそうではなくて。
その後に流れるエンドロールの方に話の重きを置かれていたのだ。
エンドロールが流れる画面中央では(左端には制作スタッフとかの名前が流れてる中で)、落とそうと思って失敗した攻略対象に紐付くライバルの悪役令嬢や女性キャラと攻略対象との、第1章からダイジェストで最終章までの裏エピソードが流れて、その間に線画の一枚絵まで何枚か出るんだよ。(しかも小憎らしいことにこれらの一枚絵は習得した[スチル一覧]のフォルダには入らないってゆーね。)
その裏エピソードがまた、攻略対象とライバルの女性が結ばれるかと言えばそうでない場合もあって、泣ける話だったり心温まる話だったり、どれも胸アツなストーリーだったから、主人公に感情移入してた私でさえエンドロールの秀逸さに感動して、意図的に何度も【Bad End】を迎えたほどだ。
…まぁそうは言っても、実際に主人公の立場となってる今は、学院追放なんて何の得にもならない【Bad End】は迎えたくないんだけどさ。。
(‥それにしてもさっきから何か見落としてるような違和感?があるんだよなぁ~…。)
彼等と“敵対する”には=彼等と“交流が必要になる”と思うんだ。
けれども。
そもそも私は、攻略対象である彼等とは交流したくない訳で…。
(‥彼等とは関わり合いたくないんだよなぁ…。)
そんな私が、彼等との交流を全力で避けようとする私が、彼等とこの先どう敵対できるんだか…。
(・・・・ん?…ちょっと待てよ…。)
─────そうか!!何か見落としてると思ったら‥っ!!
青Fでは悪役令嬢との《遭遇イベント》が起きる[裏庭]に何故か王子が来たり、ギル様が人知を超えて光ってたり、光希の想いが作用して胸が痛むわで、そっちに気を取られて気づいてなかったけど!
そもそも論で私は『彼等と関わり合う気がない』んだった!!
(あはは…私ってばかなり動揺しまくってたんだな…。)
よくよく考えてみれば、この展開って嬉しい展開じゃないの!
彼等に敵視されるということは、つまり【恋愛ルート】は回避できたも同然で、しかもこのまま【敵対ルート】に身を置けば、まぁ彼等との好意的な関係は望めないだろうけど、そもそも私は『彼等と関わり合う気がない』んだから、
───これ以上のストーリーは進みようがないんだわ!!
(うわーっうわーっ 創世神様に散々愚痴っちゃったけど、謝ります前言撤回します!ありがとうございます~~~~っ!!)
私がとことんゲンキンな奴だな~って?
うん、私もそう思う。
けど、さっきまでの悪寒がすっかり消えてなくなったんだもん。
【Bad End】を迎えた時に流れるBGMも聴こえなくなったんだもん。
嬉しくって仕方ないんだもん、だってさぁ~~~っ!
(あーーーーほんと気づいて良かったぁ!!)
そうかぁ~なるほど、そういう事かぁ~♪
(…あ。じゃあじゃあ、冷黒王子とギル様と一緒に来たもう一人の彼とも?!)
光希が呼んでた愛称を使わせてもらうと、あの〈クリス〉との【恋愛ルート】も、[フラグ]回避できたってことになるんじゃ!?
(やった‥やったよ私ぃーーーー!!)
思わず胸元で両手をぐっと握ってガッツポーズを作ってしまい、私の両隣に立ってるアイリナ様やマーリン様に変な目で見られてしまった。…静かに両手を下ろしました。空気を読まずにごめんなさい。。
(‥ま、まぁエステル様の後ろに隠れてるから王子達にはバレてないみたいだし、良っかぁ!)
───だってさぁ~。
私は青Fの登場人物の中でも、特にクリスとの関係性を懸念してたんだもん‥。
というのもクリスの青Fでの設定が、
『学院長の息子』であり『王国一の魔術の使い手』というものだからだ。
つまりクリスは私が目指している〔魔法薬剤師〕の免許取得に、少なからず関わるだろう人なのよ。
(っっハァ~~~~良かったぁ~~~。。)
私はここに来て初めて創世神様に対して、溢れる感謝の気持ちを抑えきる事ができないのだった。
──────さぁて!
それじゃあ、形勢逆転、巻き返しと行きますかぁ~~っ♪
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。
あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!?
ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど
ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。
※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる