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ガタゴト。‥ガタゴト。。
エステル様とアイリナ様と合流した私は、マーリン様も含めた四人が座る馬車の中で、さっそく自分の髪をネタにフォートレック商店が扱う、うちの母特製の洗髪専用石鹸や整髪オイルの話を持ち出した。
というか、こんなにすぐに話題にするつもりじゃなかったんだけど、合流してからもマーリン様が私の髪を撫でるのを一向に止めなかったんだよね‥。
それを見たエステル様が
「わたくしの親愛を寄せるリアさんが‥幾許もなくマノンに取られたわ…。」
とショックを受けた顔になって。
そんなエステル様を見て慌てたアイリナ様が、
マーリン様の撫でる手を止めて、私をギロッと睨んできて…いや私のせいじゃなくない?
それで、撫でる手を止められたマーリン様は、しょうがないわね的に一つ溜息をつくと、掴んできたアイリナ様の手はそのままに、空いてる逆の手を掴んで、私の髪をアイリナ様にも触らせたんだよね。
後は・・・…うん。。
カオスってこういうことを言うのねー…みたいな状態になったわ。。
アイリナ様が、少女漫画に出てくる一コマみたいな電撃を受けた顔になって固まって。
数秒後に正気に戻ったと思ったら、
「何ですの?!何なんですの、この極上な手触りは?!」
とか言いながら、私の髪を撫で回してきて。
呆気にとられて、アイリナ様にされるがままになってたら、
エステル様に腕を引っ張られて抱きしめられて…
そう、抱きしめられたんだよ。。
エステル様に
「アイリもマノンもズルいですわ。わたくしが一番にリアさんと仲良くなったのに…。」
と嫉妬心まる出しで言われて、ギュウギュウと抱きしめられて。
もはや戸惑うしかない私を見て、アイリナ様とマーリン様は顔を見合わせて、困ったような顔になってた。
…てゆーかさぁ。
アイリナ様は三人の中では唯一、青Fと変わらない取り巻き的な態度だったのに、
そのアイリナ様までもが私の髪を『撫で回してきた』んだよ。
もはや疑いようもない【ゲーム補正】の為せる技だよ。
でもって、実生活上で考えると非常に学院生活を過ごしにくくなる“危機的状況”だよ。。
────そんな訳で。
私は今、彼女達に私との適切な距離感を取り戻してもらうべく、フォートレック商店の洗髪専用石鹸と整髪オイルを絶賛売り込み中なのだ。
「───なるほど、判りましたわ。貴女の髪の極上な質感は、お母様が作られてる洗髪専用石鹸や整髪オイルを使っているからですのね。(確かにフォートレックさんの髪の手触りは、ステルやマノンが触りたがるのも頷けるものでしたけど…、私の髪もその商品を使えば彼女の髪のようになるのかしら…。)」
(おおおお!?)
早くもアイリナ様は食い付かれたご様子だわ!
まだ“心の声”だけど、この分だとあと一押しもすればアイリナ様からは良い返事が貰えるんじゃないの?
(よーしよしよし。狙い通りだ‥ぐふふ。)
そんじゃ、被せてセールストーク行きますかね!
「はいスタッドリー様。私の生来の髪質もあるかもしれませんが、母が作る洗髪専用石鹸や整髪オイルを購入されたお客様は、他の品はもう使えないと言ってくださり、ほぼ100%と言っていいほど定期購入者となってくれています。あとこれは自慢じゃないのですが、母は国有数の薬剤師ですから、品質は折り紙付きです。」
「ふふふっ そうなのですね。わたくしもその品を使えばリアさんの髪質のようになるかしら? (わたくしの髪はうねりが酷いから、いつも侍女には手間をかけて梳いてもらっているのだけれど、どうしても絡みやすいのは避けられなくて悩みなのよね。。)」
(…へ?)
───いやいやちょっとエステル様よ。
公爵令嬢の壁は何処へやった?
常に本音を隠して会話するのが王族貴族の慣わしなのに。
出会ったばかりの、それも庶民の私なんかに、包み隠さずストレートに聞いてくるって…
(これも【ゲーム補正】のせいなのか‥?)
‥いやまぁ、ここまで全面的に私を信じて話してくれるエステル様に、私も悪い気はしないけども。
なんてゆーか、自分の保身の為にうちの商品を売り付けようとしてることが、心苦しくなってきたわ。。
とは言え、私の一進一退が掛かっているから、セールストークは続けるんだけどね。
むしろエステル様の誠意に応えるべく、私もしっかりと商品の効果を嘘偽りなくご説明させていただきますよ!
「もちろんです。母が作る洗髪専用石鹸や整髪オイルは一種類ではなく、アストリア様のようにウェーブがかった髪質に合う品もございます。定期購入者の方からは、指通りが随分と滑らかになったと好評の品ですので、ぜひアストリア様にも試していただけると嬉しく思います。」
「まぁ。それは期待できそうね。‥リアさんさえ良ければ、すぐにでもお勧めの品を購入したいのだけれど、これから向かうフォートレック商店での取り扱いはありまして?(‥ふふふっリリさんとこれでまた仲良くなれそうですわ。)」
「はい!あります。ありがとうございます!‥ただその…、肌につける品は稀に合わないこともある為、母の意向で洗髪専用石鹸や整髪オイルは、購入前に試供品を試していただいてから購入していただく形となるのです。なので今日の所は、アストリア様にお勧めの試供品をお渡しする形でも‥宜しいでしょうか?」
「ふふっ もちろんよ。‥リアさんのお母様は、商売の前に購入者の健康をきちんと思いやれる、とても素晴らしい薬剤師なのですね。(益々リアさんのことが好きになりましたわ。)」
(ぶっっっっ?!//)
‥わ、わ、私を…、
(す、す、好きとな~~~っ?!!)
「ぁ、あり、がとう‥ございます…。…。…。」
───っていや待て、ちょっと待てぃっ!!
さらっと返事してる場合じゃないから私!!
…え、エステル様が‥エステル様が‥、
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
私のことを『好き』って
言ったよーーーーー?!!
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
(どどどどうしようーーーーーーー!!!)
これは、もしかして、もしかしなくても…
(やらかしちゃった感じだよね~~~っ?!!)
【Ture End】に至るまでの、攻略キャラ以外の裏ストーリーは、当然ながら青Fでは語られてなかったから、この展開は全くの想定外なんですけど!!
ってか、攻略キャラ達と関わるのを全力で拒否ると、こんな女同士でアハ~ンな展開になるとか極端過ぎるでしょーーー!?
(何とか言ってよ、創世神様ぁーーーーーーーー!!)
エステル様の衝撃告白(“心の声”でだけど)を聴き、赤くなったり青くなったりしてワタワタと焦る私を見て、エステル様はうっとりするような『柔らかな表情』でクスクスと笑ってらっしゃるけど、貴女のその顔、ダメすぎる案件だってば!
(冷黒王子に向けるべき“極上の笑顔”が私に向けられてるとか、どうするよコレ~~~!!)
こんな甘い表情を女である私に向けて、今後どうしろってゆーのさあーーーっ!うがーーーーー!!
「フフッ (リリアンさんは褒められると照れる方ですのね…フフフ‥可愛い…。)…ねぇリリアンさん。エステル様だけでなく、わたくしにも是非、お勧めの品をご紹介くださいね?」
(ふぎゃ?!!//)
か、かわ…『可愛い』ってちょっ…
マーリン様までどうしたーーーーーーー?!!
「‥‥っ、はい、ノイゼン様にまでそうまで言っていただけて‥嬉しい、です…。…。」
(うわああああ!!ヤバいヤバいヤバすぎる~~~~~っっ)
これはもう確実に【ゲーム補正】のせいだ、創世神様のせいだ!
じゃなきゃ、私なんかにエステル様やマーリン様が、好きとか可愛いとか‥‥っっおかしすぎるし!!
(ってか【ゲーム補正】の影響が凄すぎて、明日以降、無事に生きていけるか不安になってきたんですけどぉ~~~っっ)
マーリン様の言葉に、さらに真っ赤になったり真っ青になったりして焦る私を見て、エステル様は隣で楽しそうに笑っているけど、いやコレ他人事じゃないからね?!
エステル様の『好き』発言は、一歩間違えば“危険区域もの”だって自覚して欲しいよ、いやマジで!!!!
(っっああああもう!!!)
あとは、私に対して態度がまだ余所余所しい、斜め向かいのアイリナ様だけが頼みの綱だけど、大丈夫だよね!? …ね!?
私はガバっと、勢いをつけてアイリナ様の方を見た。
きっとアイリナ様なら大丈夫!
商品の魅力は別として、私に対してはきっと冷ややかな“心の声”を聞かせてくれるに違いない!
「…その‥わたくしにも…。」
わたくしにも、何々、はやく早く!
期待する思念を送りながら、懇願の目でアイリナ様を見た。
「‥わたくしにも、お勧めの品を紹介していただきたいですわ!‥それで、(二人ともフォートレックさんと仲良さげでズルいですわっ 私だって彼女の髪の触り心地の虜ですのに… 一度触るとまた触りたくなる魔性の魅力とでもいうのかしら‥ああまた触りたくなってきま──)「もちろんです!スタッドリー様の髪質に合う品をぜひ!是非ご紹介させてください!!」‥…ありがとう? 」
────────‥ダメだった。…撃沈。。。
ってかアイリナ様の“心の声”、ツッコミどころが満載すぎるよ!!
話の途中で返事を無理矢理ねじこんだけど、完っっ全に『ヤバすぎ』だった。
変質者レベルだった。
さっきまでのアイリナ様の余所余所さは何処に行った!?何処に行ったよ!?
(ってか、アイリナ様にまで【ゲーム補正】かけないでよ創世神様ーーーーーっ!!)
アイリナ様は、ワキワキと両手を広げて閉じてを繰り返してるけど、いやちょっ…あの、止めて・・・・泣。
今髪を触られると、隣に座ってるエステル様からまた抱きしめられそうだし、マーリン様も何か不穏なオーラを出してるから、絶対に止めてくださいね?アイリナ様…。。
「ふふっ‥アイリもマノンも試すのね。とても楽しみだわ。──それはそうとリアさん。わたくしのことはエステルとお呼びになって?(せっかくリアさんと仲良くさせていただくんですもの。今後の事もありますし、それにわたくしも名前で呼ばれたいですわ。)」
「─── へ?」
いやあの‥、仲良く~は分かったけども…。
実際に公爵令嬢様を庶民が名前で呼ぶって…なんて無理ゲー?
いくら【ゲーム補正】がかかってるとはいえ(てゆーかこれだけ不可解な[好感度]上昇が揃えば、創世神様に訊かずとも【ゲーム補正】がかかってるのは確定だけど)、階級社会の現実を考えたら、周囲の反応が恐ろしすぎて無理すぎる案件ですから!
「あ、それわたくしも言おうと思ってましたの。わたくしのことは、これからはマーリンと呼んでくださいね。(彼女がわたしを名前で呼べば周囲の“牽制”にもなりますし。)」
「えぇと‥あの…‥。」
マーリン様まで何を言って…、とゆーか“牽制”って、何に対してだ?
「…仕方ないわね。わたくしのこともアイリナと呼んで構いませんわ。その代わり、わたくしもフォートレックさんのことはリリアンさんと呼ばせてもらうわね。(そうなのよ。マノンったらいつの間にかリリアンさんと呼んでいたから、聞くタイミングが欲しかったのよね。)」
「えぇええっ?!!」
だから、何でアイリナ様まで名前呼びを肯定するのさ!!?
「───何よ…わたくしに呼ばれるのはイヤですの?(‥二人には許したのに私はダメってこと?)」
‥違っっ‥ああもぉーーーっっ!!
「イヤじゃないです!ないですから!!どうぞリリアンとお呼びください!・・・ただその…ちょっと戸惑ってて‥。」
だから、そんなションボリした顔しないでくださいよアイリナ様~~~~っ!!
「‥そう。まぁそうよね、貴女は貴族ではなく庶民の出自ですものね。知らないのでしたらご説明をしなくてはなりませんわね。(ご自分の“能力の価値”がどれ程のものかも把握していないようですし…。)」
今までの強気なアイリナ様に慣れてたから、泣きそうな顔されて、めっちゃ焦ったじゃん。。
(一庶民が貴族を泣かせそうになるとか【ゲーム補正】どんだけだよ、恐ろしすぎるわ…。)
でも・・・私の“能力の価値”がどれ程のものか‥って、どういうこと?
「──待ってアイリ。その話は明日改めましょう。(今リアさんに話すと混乱を招きそうですし…。)」
え? え? 何で名前呼びが混乱に繋がるの?
「‥そうですね。エステル様のおっしゃる通り、明日が良さそうですわね。(彼女の顔を見る限り、全く分かってないようだから、話すと長くなりそうですしね…。)」
(えーと。‥えーと。…えーと。)
隣に座るエステル様を見て、斜め向かいに座るアイリナ様を見て、正面に座るマーリン様を見ると、ニッコリと笑顔を向けられた。
…うん。
教室で髪を撫でられてからずっと、マーリン様がナチュラルに甘い。甘さがナチュラルとか相当ヤバい。。
チラリと隣を見ると、エステル様からふんわり優しく微笑まれたけど、この人は抱きしめてきたし、『好き』とか(“心の声”でだけど)衝撃告白されたし、言わずもがなで輪をかけてヤバい。
唯一、私に貴族然として接してくるアイリナ様は、変質者まがいの“心の声”はともかく、私の髪質に執着してるっぽいし、二人ほどの好意を私自体に抱いている感じはしないけど、それでも認められた感じになっちゃってるしな。。
ガタゴトと馬車に揺られながら、もうすぐ着くフォートレック商店での商品紹介が上手くいくかよりも、私は明日からの学院での生活に頭を悩ませるのだった。。
エステル様とアイリナ様と合流した私は、マーリン様も含めた四人が座る馬車の中で、さっそく自分の髪をネタにフォートレック商店が扱う、うちの母特製の洗髪専用石鹸や整髪オイルの話を持ち出した。
というか、こんなにすぐに話題にするつもりじゃなかったんだけど、合流してからもマーリン様が私の髪を撫でるのを一向に止めなかったんだよね‥。
それを見たエステル様が
「わたくしの親愛を寄せるリアさんが‥幾許もなくマノンに取られたわ…。」
とショックを受けた顔になって。
そんなエステル様を見て慌てたアイリナ様が、
マーリン様の撫でる手を止めて、私をギロッと睨んできて…いや私のせいじゃなくない?
それで、撫でる手を止められたマーリン様は、しょうがないわね的に一つ溜息をつくと、掴んできたアイリナ様の手はそのままに、空いてる逆の手を掴んで、私の髪をアイリナ様にも触らせたんだよね。
後は・・・…うん。。
カオスってこういうことを言うのねー…みたいな状態になったわ。。
アイリナ様が、少女漫画に出てくる一コマみたいな電撃を受けた顔になって固まって。
数秒後に正気に戻ったと思ったら、
「何ですの?!何なんですの、この極上な手触りは?!」
とか言いながら、私の髪を撫で回してきて。
呆気にとられて、アイリナ様にされるがままになってたら、
エステル様に腕を引っ張られて抱きしめられて…
そう、抱きしめられたんだよ。。
エステル様に
「アイリもマノンもズルいですわ。わたくしが一番にリアさんと仲良くなったのに…。」
と嫉妬心まる出しで言われて、ギュウギュウと抱きしめられて。
もはや戸惑うしかない私を見て、アイリナ様とマーリン様は顔を見合わせて、困ったような顔になってた。
…てゆーかさぁ。
アイリナ様は三人の中では唯一、青Fと変わらない取り巻き的な態度だったのに、
そのアイリナ様までもが私の髪を『撫で回してきた』んだよ。
もはや疑いようもない【ゲーム補正】の為せる技だよ。
でもって、実生活上で考えると非常に学院生活を過ごしにくくなる“危機的状況”だよ。。
────そんな訳で。
私は今、彼女達に私との適切な距離感を取り戻してもらうべく、フォートレック商店の洗髪専用石鹸と整髪オイルを絶賛売り込み中なのだ。
「───なるほど、判りましたわ。貴女の髪の極上な質感は、お母様が作られてる洗髪専用石鹸や整髪オイルを使っているからですのね。(確かにフォートレックさんの髪の手触りは、ステルやマノンが触りたがるのも頷けるものでしたけど…、私の髪もその商品を使えば彼女の髪のようになるのかしら…。)」
(おおおお!?)
早くもアイリナ様は食い付かれたご様子だわ!
まだ“心の声”だけど、この分だとあと一押しもすればアイリナ様からは良い返事が貰えるんじゃないの?
(よーしよしよし。狙い通りだ‥ぐふふ。)
そんじゃ、被せてセールストーク行きますかね!
「はいスタッドリー様。私の生来の髪質もあるかもしれませんが、母が作る洗髪専用石鹸や整髪オイルを購入されたお客様は、他の品はもう使えないと言ってくださり、ほぼ100%と言っていいほど定期購入者となってくれています。あとこれは自慢じゃないのですが、母は国有数の薬剤師ですから、品質は折り紙付きです。」
「ふふふっ そうなのですね。わたくしもその品を使えばリアさんの髪質のようになるかしら? (わたくしの髪はうねりが酷いから、いつも侍女には手間をかけて梳いてもらっているのだけれど、どうしても絡みやすいのは避けられなくて悩みなのよね。。)」
(…へ?)
───いやいやちょっとエステル様よ。
公爵令嬢の壁は何処へやった?
常に本音を隠して会話するのが王族貴族の慣わしなのに。
出会ったばかりの、それも庶民の私なんかに、包み隠さずストレートに聞いてくるって…
(これも【ゲーム補正】のせいなのか‥?)
‥いやまぁ、ここまで全面的に私を信じて話してくれるエステル様に、私も悪い気はしないけども。
なんてゆーか、自分の保身の為にうちの商品を売り付けようとしてることが、心苦しくなってきたわ。。
とは言え、私の一進一退が掛かっているから、セールストークは続けるんだけどね。
むしろエステル様の誠意に応えるべく、私もしっかりと商品の効果を嘘偽りなくご説明させていただきますよ!
「もちろんです。母が作る洗髪専用石鹸や整髪オイルは一種類ではなく、アストリア様のようにウェーブがかった髪質に合う品もございます。定期購入者の方からは、指通りが随分と滑らかになったと好評の品ですので、ぜひアストリア様にも試していただけると嬉しく思います。」
「まぁ。それは期待できそうね。‥リアさんさえ良ければ、すぐにでもお勧めの品を購入したいのだけれど、これから向かうフォートレック商店での取り扱いはありまして?(‥ふふふっリリさんとこれでまた仲良くなれそうですわ。)」
「はい!あります。ありがとうございます!‥ただその…、肌につける品は稀に合わないこともある為、母の意向で洗髪専用石鹸や整髪オイルは、購入前に試供品を試していただいてから購入していただく形となるのです。なので今日の所は、アストリア様にお勧めの試供品をお渡しする形でも‥宜しいでしょうか?」
「ふふっ もちろんよ。‥リアさんのお母様は、商売の前に購入者の健康をきちんと思いやれる、とても素晴らしい薬剤師なのですね。(益々リアさんのことが好きになりましたわ。)」
(ぶっっっっ?!//)
‥わ、わ、私を…、
(す、す、好きとな~~~っ?!!)
「ぁ、あり、がとう‥ございます…。…。…。」
───っていや待て、ちょっと待てぃっ!!
さらっと返事してる場合じゃないから私!!
…え、エステル様が‥エステル様が‥、
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
私のことを『好き』って
言ったよーーーーー?!!
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(どどどどうしようーーーーーーー!!!)
これは、もしかして、もしかしなくても…
(やらかしちゃった感じだよね~~~っ?!!)
【Ture End】に至るまでの、攻略キャラ以外の裏ストーリーは、当然ながら青Fでは語られてなかったから、この展開は全くの想定外なんですけど!!
ってか、攻略キャラ達と関わるのを全力で拒否ると、こんな女同士でアハ~ンな展開になるとか極端過ぎるでしょーーー!?
(何とか言ってよ、創世神様ぁーーーーーーーー!!)
エステル様の衝撃告白(“心の声”でだけど)を聴き、赤くなったり青くなったりしてワタワタと焦る私を見て、エステル様はうっとりするような『柔らかな表情』でクスクスと笑ってらっしゃるけど、貴女のその顔、ダメすぎる案件だってば!
(冷黒王子に向けるべき“極上の笑顔”が私に向けられてるとか、どうするよコレ~~~!!)
こんな甘い表情を女である私に向けて、今後どうしろってゆーのさあーーーっ!うがーーーーー!!
「フフッ (リリアンさんは褒められると照れる方ですのね…フフフ‥可愛い…。)…ねぇリリアンさん。エステル様だけでなく、わたくしにも是非、お勧めの品をご紹介くださいね?」
(ふぎゃ?!!//)
か、かわ…『可愛い』ってちょっ…
マーリン様までどうしたーーーーーーー?!!
「‥‥っ、はい、ノイゼン様にまでそうまで言っていただけて‥嬉しい、です…。…。」
(うわああああ!!ヤバいヤバいヤバすぎる~~~~~っっ)
これはもう確実に【ゲーム補正】のせいだ、創世神様のせいだ!
じゃなきゃ、私なんかにエステル様やマーリン様が、好きとか可愛いとか‥‥っっおかしすぎるし!!
(ってか【ゲーム補正】の影響が凄すぎて、明日以降、無事に生きていけるか不安になってきたんですけどぉ~~~っっ)
マーリン様の言葉に、さらに真っ赤になったり真っ青になったりして焦る私を見て、エステル様は隣で楽しそうに笑っているけど、いやコレ他人事じゃないからね?!
エステル様の『好き』発言は、一歩間違えば“危険区域もの”だって自覚して欲しいよ、いやマジで!!!!
(っっああああもう!!!)
あとは、私に対して態度がまだ余所余所しい、斜め向かいのアイリナ様だけが頼みの綱だけど、大丈夫だよね!? …ね!?
私はガバっと、勢いをつけてアイリナ様の方を見た。
きっとアイリナ様なら大丈夫!
商品の魅力は別として、私に対してはきっと冷ややかな“心の声”を聞かせてくれるに違いない!
「…その‥わたくしにも…。」
わたくしにも、何々、はやく早く!
期待する思念を送りながら、懇願の目でアイリナ様を見た。
「‥わたくしにも、お勧めの品を紹介していただきたいですわ!‥それで、(二人ともフォートレックさんと仲良さげでズルいですわっ 私だって彼女の髪の触り心地の虜ですのに… 一度触るとまた触りたくなる魔性の魅力とでもいうのかしら‥ああまた触りたくなってきま──)「もちろんです!スタッドリー様の髪質に合う品をぜひ!是非ご紹介させてください!!」‥…ありがとう? 」
────────‥ダメだった。…撃沈。。。
ってかアイリナ様の“心の声”、ツッコミどころが満載すぎるよ!!
話の途中で返事を無理矢理ねじこんだけど、完っっ全に『ヤバすぎ』だった。
変質者レベルだった。
さっきまでのアイリナ様の余所余所さは何処に行った!?何処に行ったよ!?
(ってか、アイリナ様にまで【ゲーム補正】かけないでよ創世神様ーーーーーっ!!)
アイリナ様は、ワキワキと両手を広げて閉じてを繰り返してるけど、いやちょっ…あの、止めて・・・・泣。
今髪を触られると、隣に座ってるエステル様からまた抱きしめられそうだし、マーリン様も何か不穏なオーラを出してるから、絶対に止めてくださいね?アイリナ様…。。
「ふふっ‥アイリもマノンも試すのね。とても楽しみだわ。──それはそうとリアさん。わたくしのことはエステルとお呼びになって?(せっかくリアさんと仲良くさせていただくんですもの。今後の事もありますし、それにわたくしも名前で呼ばれたいですわ。)」
「─── へ?」
いやあの‥、仲良く~は分かったけども…。
実際に公爵令嬢様を庶民が名前で呼ぶって…なんて無理ゲー?
いくら【ゲーム補正】がかかってるとはいえ(てゆーかこれだけ不可解な[好感度]上昇が揃えば、創世神様に訊かずとも【ゲーム補正】がかかってるのは確定だけど)、階級社会の現実を考えたら、周囲の反応が恐ろしすぎて無理すぎる案件ですから!
「あ、それわたくしも言おうと思ってましたの。わたくしのことは、これからはマーリンと呼んでくださいね。(彼女がわたしを名前で呼べば周囲の“牽制”にもなりますし。)」
「えぇと‥あの…‥。」
マーリン様まで何を言って…、とゆーか“牽制”って、何に対してだ?
「…仕方ないわね。わたくしのこともアイリナと呼んで構いませんわ。その代わり、わたくしもフォートレックさんのことはリリアンさんと呼ばせてもらうわね。(そうなのよ。マノンったらいつの間にかリリアンさんと呼んでいたから、聞くタイミングが欲しかったのよね。)」
「えぇええっ?!!」
だから、何でアイリナ様まで名前呼びを肯定するのさ!!?
「───何よ…わたくしに呼ばれるのはイヤですの?(‥二人には許したのに私はダメってこと?)」
‥違っっ‥ああもぉーーーっっ!!
「イヤじゃないです!ないですから!!どうぞリリアンとお呼びください!・・・ただその…ちょっと戸惑ってて‥。」
だから、そんなションボリした顔しないでくださいよアイリナ様~~~~っ!!
「‥そう。まぁそうよね、貴女は貴族ではなく庶民の出自ですものね。知らないのでしたらご説明をしなくてはなりませんわね。(ご自分の“能力の価値”がどれ程のものかも把握していないようですし…。)」
今までの強気なアイリナ様に慣れてたから、泣きそうな顔されて、めっちゃ焦ったじゃん。。
(一庶民が貴族を泣かせそうになるとか【ゲーム補正】どんだけだよ、恐ろしすぎるわ…。)
でも・・・私の“能力の価値”がどれ程のものか‥って、どういうこと?
「──待ってアイリ。その話は明日改めましょう。(今リアさんに話すと混乱を招きそうですし…。)」
え? え? 何で名前呼びが混乱に繋がるの?
「‥そうですね。エステル様のおっしゃる通り、明日が良さそうですわね。(彼女の顔を見る限り、全く分かってないようだから、話すと長くなりそうですしね…。)」
(えーと。‥えーと。…えーと。)
隣に座るエステル様を見て、斜め向かいに座るアイリナ様を見て、正面に座るマーリン様を見ると、ニッコリと笑顔を向けられた。
…うん。
教室で髪を撫でられてからずっと、マーリン様がナチュラルに甘い。甘さがナチュラルとか相当ヤバい。。
チラリと隣を見ると、エステル様からふんわり優しく微笑まれたけど、この人は抱きしめてきたし、『好き』とか(“心の声”でだけど)衝撃告白されたし、言わずもがなで輪をかけてヤバい。
唯一、私に貴族然として接してくるアイリナ様は、変質者まがいの“心の声”はともかく、私の髪質に執着してるっぽいし、二人ほどの好意を私自体に抱いている感じはしないけど、それでも認められた感じになっちゃってるしな。。
ガタゴトと馬車に揺られながら、もうすぐ着くフォートレック商店での商品紹介が上手くいくかよりも、私は明日からの学院での生活に頭を悩ませるのだった。。
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