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私は今、エステル様達の後ろに隠れています。
───なぜ隠れているのかって?
それはですね…。
エステル様達を挟んだ向こう側に、会いたくなかった御方が居るからですよ…。
───ええ、ええ、そうですとも。
…向こう側には今。
〈冷黒王子〉が仁王立ちしてるんですよ…。
しかもですね、王子の両脇には。
青Fの攻略キャラが二名…控えて居るんですよ…。
一人は青Fで
第一王子の[護衛騎士長]として登場する、
イーギル-バレンシュタイン・ココット。
もう一人は青Fで
第一王子の幼馴染であり[宮廷魔導士]として登場する、
クリストファ-エイベル・ドートン。
エステル様の後ろからこっそりと覗き見れば。
騎士らしい風体の人物───
青Fと同じ容姿の〈ギル様〉と目が合った。
で。ササッと目を逸らされた。
(‥え・・・何で逸らされたん??)
えーーーと・・・。
(…んんん?? 何だこれ…。)
…なんか…何だか、
(すごくモヤモヤするんだけど…。)
私は何とも表現に困る感情の不快感に口が“への字”になった。
(‥何でこんなにモヤモヤするんだろう…。)
まるで〈ギル様〉から目を逸らされたことに私自身が不満を感じてるみたいな──‥
(!!!!??────ないないないない!有り得ないから!!!)
光希の時ならまだしも今世の私は〈ギル様〉とは初対面なんだよ?!
なのに今の私が〈ギル様〉に不満を感じるなんて、はっきり言っておかしすぎる状態だから!
(こわいコワイ怖いぃ~~~~ッッ!!)
この見えない何かが干渉してきてる感じ!!
絶対アレでしょ!
創世神様とかの神的な力が影響してるとかでしょ!?
今はこの状況をどうにか突破することが大事なのに、なんてことすんじゃ~いっ!!
(この感情は違う!今の私は〈ギル様〉に不満なんて感じてない!感じてないんだ!お願い私っ‥正気に戻れぇ~~~~~っ!!)
私はギュウゥっと目を瞑って、脳内で自分の両頬をバチンバチンとぶっ叩いた。
火花が飛び散るぐらいに叩きまくった。
で。深く深~~~く深呼吸すること数十回。
(スーーッハーーーッスーーッハーーーッ・・・あ‥危うく〈ギル様〉に意識が持ってかれるところだった…。。これが前世の記憶を取り戻した弊害か・・・。)
半ば無理やり気持ちはねじ伏せたけど。
(うん…これは凄いな…。ちょっと自分でもビックリだわ…。)
得体の知れない恐怖がじっとりと全身を蝕んでるのが分かる。
ありとあらゆる毛穴から嫌な汗が出まくってるし。
ふと手元を見ると、握った掌の手汗が凄まじいことになっていた。
(うわ‥すっごい汗だく…。)
手からこんなに汗って出るんだ‥そう思ったら、少しだけ意識が逸れて冷静になれた。
(き‥気を取り直そう‥とにかく現状を把握しないことには行動できないんだから…。)
私はゆっくりと深呼吸してから、恐怖で竦む気持ちをなんとか奮い立たせて、今度はしっかりと現実の〈ギル様〉を観察することにした。
───そう、〈ギル様〉。
イーギルのことを前世の光希がそう呼んでいた彼は、じっくり見てみれば、前世の記憶よりも数十倍‥いや数百倍は増々のイケメンだった。
普段から容姿端麗な母や兄で目が肥えてる私から見ても、ギル様はビックリするほどの男前だった。
だけどちょっと待って欲しい。
(えーーーと…‥何だこれ…?)
改めてしっかりとギル様を見た私は、彼が放つ雰囲気に嫌な現象が見えたのだ。
(・・・多分これ、勘違いとかじゃないよなぁ…。)
もう一度目を瞑って、それから深呼吸して──‥。
…チラり。
(ははは‥・・・マジで?)
だってこんな…いやいや落ち着け。もう一回だもう一回。
ス~ッハ~。ス~ッハ~‥‥。
…チラり。。
(・・・・ははははは‥…。)
何だろうこの幻覚症状は…。
(…なんかギル様の体が、ほんのり『光って見える』んですけど…?)
私の顔は今、盛大に引き攣ったぞ。
だって右目から右頬にかけてピクピクと痙攣してるからね。
(いくら何でもこの現象は‥“無さすぎる”わーー…。)
ダメだ‥ガチで頭が痛くなってきた。。
(‥───そりゃ~光希があの人を“様”付けで呼んでいたのも納得できるほど、彼の容姿は精悍で凛々しいと私も思うよ?‥でも、いくら光希がゲーム画面で見てた記憶の〈ギル様〉よりも格好良く見えるからってこれは…。)
『光って見える』とか、こんなの…こんなの…
(ど~~~考えても “ヤバすぎる” でしょお~~~~…。)
はははは・・・もうヤダ…ぐすん。。
エステル様が心配そうにこちらを振り向いて私の様子を窺ってる気配を感じるけど、無視して俯く私をどうか許してください…ぐすん。。
だって何がどうしてこうなってるか、上手く表現できないんだもんっ!
だからアイリナ様ぁ…っ
ちゃんと悪いと思ってますから、そんなに殺気を向けないでぇ~~~っっ
あとマーリン様は、お願いだからちょっと放っておいてください…。
私の耳元に口を寄せて『大丈夫?』って聞かないでください…。
ちゃんと聞こえてるし、色んな意味で伝わってないのが泣けてくるからぁ~~~っっ!!
ってか、この奇っ怪な現象は何なのさ!?
確かに実際のギル様はゲーム画面で見てた記憶よりも見惚れる容姿だっては思うけど!
そりゃ青Fと同じく左耳の一房を残して短く切り揃えられた焦茶の髪型が、よぉ~く似合ってらっしゃるわぁ~とは思うけど!
でもでも、でもでも、だからって!!
魔術も魔法も使ってない状態の、フッツーな状態の人間が、『光って見える』とか!!
(いやいやいやいや、“無さすぎる”でしょーーーーよ!!!!)
もうイヤだぁ~~~!!!
何でこ~次から次へとトラブルが舞い込んでくるかなぁ~~~!!!?
………あ~、そうそう。
ギル様の左耳の一房の髪を止めてるアレ、銀のカフスだっけ?
あのカフスって確かティタ二ア王家の臣下の証として王冠と百合、それから騎士の象徴である剣と盾の紋章が入ってるんだよねー。
それでいくとギル様はこの世界でも、青Fと同じ“冷黒王子の護衛”で、“王国を守る騎士”になる訳か…なるほど、うん分かったわー。
ここまでの情報から整理すると、
[容姿]と[年齢]
それから
[家柄]に[職業]や[階級]
これは青Fと同じと推測できるわね。うんうん。
そして
彼ら(彼女ら)の[性格]と
《イベント》が起きる[場所]や[内容]
には相違点がある‥ってことか!
(でもって、青Fだと私以外の登場人物は皆、王族貴族だから‥おおおお? ───ということは!)
学院内では、
“各教室” と “合同演習” 、そして “院内の通路” に気を付けてれば、
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・--・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
『攻略対象の[フラグ]は回避できたも同然』
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・--・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
───ってことに、なるんじゃないの?
だって。
[王立アカデミー学院]の中は、先生方の(監視の)目が届く“各教室”や“合同演習”と“院内の通路”以外の全ての場所が、『王族貴族専用』『庶民用』とで利用スペースが分けられているのだ。
もっと詳しく言うと、[食堂]や[カフェテラス]、[休憩所]、[演習場]に[シャワールーム]、[図書館]に[素材管理庫]、[学生寮]、そして[学院の門]にまで『王族貴族専用』『庶民用』が設けられている。
しかも特別な理由がない限り、王族貴族階級の者は『王族貴族専用』を、庶民階級の者は『庶民用』を利用するようにと、〈学院の規律が記載された冊子〉の最初の方に明記までされている徹底ぶりだ。
入学式後に渡された冊子の『双方の利用はできないものとする』って一行を読んで、どれだけ私が安堵したことか。
ほんと“学院の規則”様々だわ。
それで。
(青Fでは『王族貴族専用』の利用スペースが《イベント》が起きる[場所]だったから‥。)
つまり、つまりよ?
庶民な私は『庶民用』のスペースしか利用しないから、
『王族貴族専用』のスペースを利用する攻略対象とは、
“各教室” と “合同演習” 、そして “院内の通路” 以外では 出会うことがない。
ってことになるのよ!!
(…ただまぁ、今みたいに知らずに出会う場所へと誘導されるケースは有り得るけどね‥。)
そうなんだよなぁ~~。
今居るこの[裏庭]って“院内の通路”扱いなんだよなぁ~~~。
(私自身が避けたとしても、こういった感じで誰かしらに誘導されて、気づけば攻略対象と遭遇することは今後も起こりうるのかぁ~…ハァ~。。)
───ちなみに、今の[裏庭]での私達はというと。
エステル様達が通路の中央で、私はアイリナ様に視線で促されて壁側寄りに立ってる。
こういった “共有の場所” では、市井の常識『王族貴族が中心を、庶民は端へ』が暗黙の了解で適用されるらしかった。
‥ふんふん。なるほど、なるほどねーーー。
────で。
…チラり。。
…………うん。。。
(真面目に現状を分析してみたけど、やっぱりダメだわ…。)
幻覚を打ち消すべく目の前の嫌な現象から意識を切り離してみたけど、ギル様は光って見えるままだわ…。
(‥ハァ~~~っ。も~~‥。)
自分が置かれてる今の状態が面倒くさすぎてもはや溜息しか出てこないんですけど?…ぐすん。。
‥正直考えたくない。考えたくはないんだけど。
(ハァ‥このままじゃ本当にお先は真っ暗だし、仕方ないか…。)
私は頭の中で盛大に溜息を吐きながら、ギル様が光って見える理由を分析してみることにした。
(…えーっと。。)
青F情報を参照するとギル様は今年で18歳のはずだから。
ラルフ兄みたく大人の魅力?的なオーラが滲み出ていると仮定して‥。
そのオーラを私が『体内の魔力量が“膨大”だから見えている』のだと仮定すれば──‥。
(…いや、待てよ‥。)
それなら私は数多の女性を虜にしてるラルフ兄のオーラも見える筈だから、この考えは成立しないか。
(──あ‥こういうのはどうだろう‥。)
私が気づかない間に何者かに[魅了]の魔術をかけられてて、それで視界がおかしくなったーとか。
(あー…いや‥こっちの線も無いか。。)
だって私は例の〈晶鏡石〉を肌身離さず今も身に付けている。
この〈晶鏡石〉は私の魔力を抑えるのと同時に、私の魔力が暴発しないように、外部からの攻撃魔術や攻撃魔法の類は全て跳ね返す“守りの機能”も備わっているんだった。。
…てゆーか、さっきから脳内で考えてるこの問答だけど。
(実は『無意味』だって分かってるんだよねー…。)
こんな問答、したところで結局、現実は否定できないってね…。トホホ‥。
────えぇ、はい…。
ものすごぉ~~~く認めたくないんだけど。
真面目に自分を分析した結果、どうやら私の脳内は『光希の記憶を取り戻した反動でそっちに引き摺られて、視界がおかしくなってる』らしい。
しかもギル様の瞳の色は『あの色』ときたもんだ。
あの色──『碧緑』は、光希の記憶を思い出す前から『私の一番好きな色』なんだよ…。
(あぁ~も~、ほんと何の嫌がらせだよ…。)
ここまで【恋愛ルート】に入る要素をお膳立てられると、全力で拒否したい私としては顔を覆って項垂れたくもなるわよ。
だって私は、生まれた時から“青みがかった緑色”が一番ホッと感じて落ち着ける色で、小さな頃から集めてきた洋服や小物類は私の部屋中にあって、つまり私の持ち物は碧色や翠色の物ばかりなんだよ…。
今着ている服だって、学院に通う規定に『庶民は学院支給の制服を着る規定』がなかったら、普段着ている白シャツに青緑色のロングスカートだったかんね?
“そのことが何を意味するのか。” ───は後で説明するけどさ。
ギル様が持つ瞳の色を認識した私は、そのせいで現状が最悪のケースに陥っていることを突きつけられたんだよコンチクショウ。
ギル様に会うまでは全然これっぽっちも気にしてなかった事実を突きつけられた今の私の心境は天変地異だよ。
荒れに荒れ狂ってますよ。
だってこんなの、ちょっとでもギル様に気を許そうものなら『【恋愛ルート】へようこそ~ウフフ♪』になるんだぞ!?
このまま私が光希の感覚に引き摺られ続けたら・・・ガクブル。。
それこそジェットコースターのように【恋愛ルート】もとい【お先真っ暗ルート】へ急降下一直線だよ、終着地点は地獄だよ!!
(あぁ~も~~~!勘弁してよ過去の私ぃ~~~~~っ!!!)
光希のギル様への想いとゆーか記憶が今、途轍もなく邪魔なんですけどぉ~~~っ!!!
────とまぁ、私がこんなにも胸中で荒れ狂って絶叫を上げてる理由は簡単だ。
私の前世である光希は、ギル様の『瞳の“色”が特に好き』だった。
ゲーム画面のギル様を見ながら「吸い込まれそうに綺麗な色だわぁ~‥」と、ギル様のドアップでプレイ中の画面を止めて見続けるくらい、光希は『碧緑』が大大大好きな“色”だった。
そして私は、生まれた時から“青みがかった緑色”が一番ホッと感じて落ち着ける色だ。
【問題】
“そのことが何を意味するのか。”
前世の光希の“色”の好みと、現世の私の好きな“色”が、
光希の記憶を取り戻す前から、一緒だったってことはよ?
────つまり私は。
【回答】
光希の好みを
『そのまま“引き継いでる”』ことになるんだよおおおぉぉおぉーーーー…。
だけならまだしも、光希の記憶まで取り戻しちゃった私の脳内は、相乗効果でギル様が光って見えちゃってる訳だよおおおぉぉおぉーーーー…。
‥はははは…。‥くっそ笑えないジョークだわ‥。
本当にマジで私の人生、終わったわ・・・・泣。。
───なぜ隠れているのかって?
それはですね…。
エステル様達を挟んだ向こう側に、会いたくなかった御方が居るからですよ…。
───ええ、ええ、そうですとも。
…向こう側には今。
〈冷黒王子〉が仁王立ちしてるんですよ…。
しかもですね、王子の両脇には。
青Fの攻略キャラが二名…控えて居るんですよ…。
一人は青Fで
第一王子の[護衛騎士長]として登場する、
イーギル-バレンシュタイン・ココット。
もう一人は青Fで
第一王子の幼馴染であり[宮廷魔導士]として登場する、
クリストファ-エイベル・ドートン。
エステル様の後ろからこっそりと覗き見れば。
騎士らしい風体の人物───
青Fと同じ容姿の〈ギル様〉と目が合った。
で。ササッと目を逸らされた。
(‥え・・・何で逸らされたん??)
えーーーと・・・。
(…んんん?? 何だこれ…。)
…なんか…何だか、
(すごくモヤモヤするんだけど…。)
私は何とも表現に困る感情の不快感に口が“への字”になった。
(‥何でこんなにモヤモヤするんだろう…。)
まるで〈ギル様〉から目を逸らされたことに私自身が不満を感じてるみたいな──‥
(!!!!??────ないないないない!有り得ないから!!!)
光希の時ならまだしも今世の私は〈ギル様〉とは初対面なんだよ?!
なのに今の私が〈ギル様〉に不満を感じるなんて、はっきり言っておかしすぎる状態だから!
(こわいコワイ怖いぃ~~~~ッッ!!)
この見えない何かが干渉してきてる感じ!!
絶対アレでしょ!
創世神様とかの神的な力が影響してるとかでしょ!?
今はこの状況をどうにか突破することが大事なのに、なんてことすんじゃ~いっ!!
(この感情は違う!今の私は〈ギル様〉に不満なんて感じてない!感じてないんだ!お願い私っ‥正気に戻れぇ~~~~~っ!!)
私はギュウゥっと目を瞑って、脳内で自分の両頬をバチンバチンとぶっ叩いた。
火花が飛び散るぐらいに叩きまくった。
で。深く深~~~く深呼吸すること数十回。
(スーーッハーーーッスーーッハーーーッ・・・あ‥危うく〈ギル様〉に意識が持ってかれるところだった…。。これが前世の記憶を取り戻した弊害か・・・。)
半ば無理やり気持ちはねじ伏せたけど。
(うん…これは凄いな…。ちょっと自分でもビックリだわ…。)
得体の知れない恐怖がじっとりと全身を蝕んでるのが分かる。
ありとあらゆる毛穴から嫌な汗が出まくってるし。
ふと手元を見ると、握った掌の手汗が凄まじいことになっていた。
(うわ‥すっごい汗だく…。)
手からこんなに汗って出るんだ‥そう思ったら、少しだけ意識が逸れて冷静になれた。
(き‥気を取り直そう‥とにかく現状を把握しないことには行動できないんだから…。)
私はゆっくりと深呼吸してから、恐怖で竦む気持ちをなんとか奮い立たせて、今度はしっかりと現実の〈ギル様〉を観察することにした。
───そう、〈ギル様〉。
イーギルのことを前世の光希がそう呼んでいた彼は、じっくり見てみれば、前世の記憶よりも数十倍‥いや数百倍は増々のイケメンだった。
普段から容姿端麗な母や兄で目が肥えてる私から見ても、ギル様はビックリするほどの男前だった。
だけどちょっと待って欲しい。
(えーーーと…‥何だこれ…?)
改めてしっかりとギル様を見た私は、彼が放つ雰囲気に嫌な現象が見えたのだ。
(・・・多分これ、勘違いとかじゃないよなぁ…。)
もう一度目を瞑って、それから深呼吸して──‥。
…チラり。
(ははは‥・・・マジで?)
だってこんな…いやいや落ち着け。もう一回だもう一回。
ス~ッハ~。ス~ッハ~‥‥。
…チラり。。
(・・・・ははははは‥…。)
何だろうこの幻覚症状は…。
(…なんかギル様の体が、ほんのり『光って見える』んですけど…?)
私の顔は今、盛大に引き攣ったぞ。
だって右目から右頬にかけてピクピクと痙攣してるからね。
(いくら何でもこの現象は‥“無さすぎる”わーー…。)
ダメだ‥ガチで頭が痛くなってきた。。
(‥───そりゃ~光希があの人を“様”付けで呼んでいたのも納得できるほど、彼の容姿は精悍で凛々しいと私も思うよ?‥でも、いくら光希がゲーム画面で見てた記憶の〈ギル様〉よりも格好良く見えるからってこれは…。)
『光って見える』とか、こんなの…こんなの…
(ど~~~考えても “ヤバすぎる” でしょお~~~~…。)
はははは・・・もうヤダ…ぐすん。。
エステル様が心配そうにこちらを振り向いて私の様子を窺ってる気配を感じるけど、無視して俯く私をどうか許してください…ぐすん。。
だって何がどうしてこうなってるか、上手く表現できないんだもんっ!
だからアイリナ様ぁ…っ
ちゃんと悪いと思ってますから、そんなに殺気を向けないでぇ~~~っっ
あとマーリン様は、お願いだからちょっと放っておいてください…。
私の耳元に口を寄せて『大丈夫?』って聞かないでください…。
ちゃんと聞こえてるし、色んな意味で伝わってないのが泣けてくるからぁ~~~っっ!!
ってか、この奇っ怪な現象は何なのさ!?
確かに実際のギル様はゲーム画面で見てた記憶よりも見惚れる容姿だっては思うけど!
そりゃ青Fと同じく左耳の一房を残して短く切り揃えられた焦茶の髪型が、よぉ~く似合ってらっしゃるわぁ~とは思うけど!
でもでも、でもでも、だからって!!
魔術も魔法も使ってない状態の、フッツーな状態の人間が、『光って見える』とか!!
(いやいやいやいや、“無さすぎる”でしょーーーーよ!!!!)
もうイヤだぁ~~~!!!
何でこ~次から次へとトラブルが舞い込んでくるかなぁ~~~!!!?
………あ~、そうそう。
ギル様の左耳の一房の髪を止めてるアレ、銀のカフスだっけ?
あのカフスって確かティタ二ア王家の臣下の証として王冠と百合、それから騎士の象徴である剣と盾の紋章が入ってるんだよねー。
それでいくとギル様はこの世界でも、青Fと同じ“冷黒王子の護衛”で、“王国を守る騎士”になる訳か…なるほど、うん分かったわー。
ここまでの情報から整理すると、
[容姿]と[年齢]
それから
[家柄]に[職業]や[階級]
これは青Fと同じと推測できるわね。うんうん。
そして
彼ら(彼女ら)の[性格]と
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には相違点がある‥ってことか!
(でもって、青Fだと私以外の登場人物は皆、王族貴族だから‥おおおお? ───ということは!)
学院内では、
“各教室” と “合同演習” 、そして “院内の通路” に気を付けてれば、
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だって。
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もっと詳しく言うと、[食堂]や[カフェテラス]、[休憩所]、[演習場]に[シャワールーム]、[図書館]に[素材管理庫]、[学生寮]、そして[学院の門]にまで『王族貴族専用』『庶民用』が設けられている。
しかも特別な理由がない限り、王族貴族階級の者は『王族貴族専用』を、庶民階級の者は『庶民用』を利用するようにと、〈学院の規律が記載された冊子〉の最初の方に明記までされている徹底ぶりだ。
入学式後に渡された冊子の『双方の利用はできないものとする』って一行を読んで、どれだけ私が安堵したことか。
ほんと“学院の規則”様々だわ。
それで。
(青Fでは『王族貴族専用』の利用スペースが《イベント》が起きる[場所]だったから‥。)
つまり、つまりよ?
庶民な私は『庶民用』のスペースしか利用しないから、
『王族貴族専用』のスペースを利用する攻略対象とは、
“各教室” と “合同演習” 、そして “院内の通路” 以外では 出会うことがない。
ってことになるのよ!!
(…ただまぁ、今みたいに知らずに出会う場所へと誘導されるケースは有り得るけどね‥。)
そうなんだよなぁ~~。
今居るこの[裏庭]って“院内の通路”扱いなんだよなぁ~~~。
(私自身が避けたとしても、こういった感じで誰かしらに誘導されて、気づけば攻略対象と遭遇することは今後も起こりうるのかぁ~…ハァ~。。)
───ちなみに、今の[裏庭]での私達はというと。
エステル様達が通路の中央で、私はアイリナ様に視線で促されて壁側寄りに立ってる。
こういった “共有の場所” では、市井の常識『王族貴族が中心を、庶民は端へ』が暗黙の了解で適用されるらしかった。
‥ふんふん。なるほど、なるほどねーーー。
────で。
…チラり。。
…………うん。。。
(真面目に現状を分析してみたけど、やっぱりダメだわ…。)
幻覚を打ち消すべく目の前の嫌な現象から意識を切り離してみたけど、ギル様は光って見えるままだわ…。
(‥ハァ~~~っ。も~~‥。)
自分が置かれてる今の状態が面倒くさすぎてもはや溜息しか出てこないんですけど?…ぐすん。。
‥正直考えたくない。考えたくはないんだけど。
(ハァ‥このままじゃ本当にお先は真っ暗だし、仕方ないか…。)
私は頭の中で盛大に溜息を吐きながら、ギル様が光って見える理由を分析してみることにした。
(…えーっと。。)
青F情報を参照するとギル様は今年で18歳のはずだから。
ラルフ兄みたく大人の魅力?的なオーラが滲み出ていると仮定して‥。
そのオーラを私が『体内の魔力量が“膨大”だから見えている』のだと仮定すれば──‥。
(…いや、待てよ‥。)
それなら私は数多の女性を虜にしてるラルフ兄のオーラも見える筈だから、この考えは成立しないか。
(──あ‥こういうのはどうだろう‥。)
私が気づかない間に何者かに[魅了]の魔術をかけられてて、それで視界がおかしくなったーとか。
(あー…いや‥こっちの線も無いか。。)
だって私は例の〈晶鏡石〉を肌身離さず今も身に付けている。
この〈晶鏡石〉は私の魔力を抑えるのと同時に、私の魔力が暴発しないように、外部からの攻撃魔術や攻撃魔法の類は全て跳ね返す“守りの機能”も備わっているんだった。。
…てゆーか、さっきから脳内で考えてるこの問答だけど。
(実は『無意味』だって分かってるんだよねー…。)
こんな問答、したところで結局、現実は否定できないってね…。トホホ‥。
────えぇ、はい…。
ものすごぉ~~~く認めたくないんだけど。
真面目に自分を分析した結果、どうやら私の脳内は『光希の記憶を取り戻した反動でそっちに引き摺られて、視界がおかしくなってる』らしい。
しかもギル様の瞳の色は『あの色』ときたもんだ。
あの色──『碧緑』は、光希の記憶を思い出す前から『私の一番好きな色』なんだよ…。
(あぁ~も~、ほんと何の嫌がらせだよ…。)
ここまで【恋愛ルート】に入る要素をお膳立てられると、全力で拒否したい私としては顔を覆って項垂れたくもなるわよ。
だって私は、生まれた時から“青みがかった緑色”が一番ホッと感じて落ち着ける色で、小さな頃から集めてきた洋服や小物類は私の部屋中にあって、つまり私の持ち物は碧色や翠色の物ばかりなんだよ…。
今着ている服だって、学院に通う規定に『庶民は学院支給の制服を着る規定』がなかったら、普段着ている白シャツに青緑色のロングスカートだったかんね?
“そのことが何を意味するのか。” ───は後で説明するけどさ。
ギル様が持つ瞳の色を認識した私は、そのせいで現状が最悪のケースに陥っていることを突きつけられたんだよコンチクショウ。
ギル様に会うまでは全然これっぽっちも気にしてなかった事実を突きつけられた今の私の心境は天変地異だよ。
荒れに荒れ狂ってますよ。
だってこんなの、ちょっとでもギル様に気を許そうものなら『【恋愛ルート】へようこそ~ウフフ♪』になるんだぞ!?
このまま私が光希の感覚に引き摺られ続けたら・・・ガクブル。。
それこそジェットコースターのように【恋愛ルート】もとい【お先真っ暗ルート】へ急降下一直線だよ、終着地点は地獄だよ!!
(あぁ~も~~~!勘弁してよ過去の私ぃ~~~~~っ!!!)
光希のギル様への想いとゆーか記憶が今、途轍もなく邪魔なんですけどぉ~~~っ!!!
────とまぁ、私がこんなにも胸中で荒れ狂って絶叫を上げてる理由は簡単だ。
私の前世である光希は、ギル様の『瞳の“色”が特に好き』だった。
ゲーム画面のギル様を見ながら「吸い込まれそうに綺麗な色だわぁ~‥」と、ギル様のドアップでプレイ中の画面を止めて見続けるくらい、光希は『碧緑』が大大大好きな“色”だった。
そして私は、生まれた時から“青みがかった緑色”が一番ホッと感じて落ち着ける色だ。
【問題】
“そのことが何を意味するのか。”
前世の光希の“色”の好みと、現世の私の好きな“色”が、
光希の記憶を取り戻す前から、一緒だったってことはよ?
────つまり私は。
【回答】
光希の好みを
『そのまま“引き継いでる”』ことになるんだよおおおぉぉおぉーーーー…。
だけならまだしも、光希の記憶まで取り戻しちゃった私の脳内は、相乗効果でギル様が光って見えちゃってる訳だよおおおぉぉおぉーーーー…。
‥はははは…。‥くっそ笑えないジョークだわ‥。
本当にマジで私の人生、終わったわ・・・・泣。。
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兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
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幼い頃から兄を溺愛する母。
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母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
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婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?
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「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」
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さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。
荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります!
第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。
表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

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