12 / 27
11
しおりを挟む
私は今、エステル様達の後ろに隠れています。
───なぜ隠れているのかって?
それはですね…。
エステル様達を挟んだ向こう側に、会いたくなかった御方が居るからですよ…。
───ええ、ええ、そうですとも。
…向こう側には今。
〈冷黒王子〉が仁王立ちしてるんですよ…。
しかもですね、王子の両脇には。
青Fの攻略キャラが二名…控えて居るんですよ…。
一人は青Fで
第一王子の[護衛騎士長]として登場する、
イーギル-バレンシュタイン・ココット。
もう一人は青Fで
第一王子の幼馴染であり[宮廷魔導士]として登場する、
クリストファ-エイベル・ドートン。
エステル様の後ろからこっそりと覗き見れば。
騎士らしい風体の人物───
青Fと同じ容姿の〈ギル様〉と目が合った。
で。ササッと目を逸らされた。
(‥え・・・何で逸らされたん??)
えーーーと・・・。
(…んんん?? 何だこれ…。)
…なんか…何だか、
(すごくモヤモヤするんだけど…。)
私は何とも表現に困る感情の不快感に口が“への字”になった。
(‥何でこんなにモヤモヤするんだろう…。)
まるで〈ギル様〉から目を逸らされたことに私自身が不満を感じてるみたいな──‥
(!!!!??────ないないないない!有り得ないから!!!)
光希の時ならまだしも今世の私は〈ギル様〉とは初対面なんだよ?!
なのに今の私が〈ギル様〉に不満を感じるなんて、はっきり言っておかしすぎる状態だから!
(こわいコワイ怖いぃ~~~~ッッ!!)
この見えない何かが干渉してきてる感じ!!
絶対アレでしょ!
創世神様とかの神的な力が影響してるとかでしょ!?
今はこの状況をどうにか突破することが大事なのに、なんてことすんじゃ~いっ!!
(この感情は違う!今の私は〈ギル様〉に不満なんて感じてない!感じてないんだ!お願い私っ‥正気に戻れぇ~~~~~っ!!)
私はギュウゥっと目を瞑って、脳内で自分の両頬をバチンバチンとぶっ叩いた。
火花が飛び散るぐらいに叩きまくった。
で。深く深~~~く深呼吸すること数十回。
(スーーッハーーーッスーーッハーーーッ・・・あ‥危うく〈ギル様〉に意識が持ってかれるところだった…。。これが前世の記憶を取り戻した弊害か・・・。)
半ば無理やり気持ちはねじ伏せたけど。
(うん…これは凄いな…。ちょっと自分でもビックリだわ…。)
得体の知れない恐怖がじっとりと全身を蝕んでるのが分かる。
ありとあらゆる毛穴から嫌な汗が出まくってるし。
ふと手元を見ると、握った掌の手汗が凄まじいことになっていた。
(うわ‥すっごい汗だく…。)
手からこんなに汗って出るんだ‥そう思ったら、少しだけ意識が逸れて冷静になれた。
(き‥気を取り直そう‥とにかく現状を把握しないことには行動できないんだから…。)
私はゆっくりと深呼吸してから、恐怖で竦む気持ちをなんとか奮い立たせて、今度はしっかりと現実の〈ギル様〉を観察することにした。
───そう、〈ギル様〉。
イーギルのことを前世の光希がそう呼んでいた彼は、じっくり見てみれば、前世の記憶よりも数十倍‥いや数百倍は増々のイケメンだった。
普段から容姿端麗な母や兄で目が肥えてる私から見ても、ギル様はビックリするほどの男前だった。
だけどちょっと待って欲しい。
(えーーーと…‥何だこれ…?)
改めてしっかりとギル様を見た私は、彼が放つ雰囲気に嫌な現象が見えたのだ。
(・・・多分これ、勘違いとかじゃないよなぁ…。)
もう一度目を瞑って、それから深呼吸して──‥。
…チラり。
(ははは‥・・・マジで?)
だってこんな…いやいや落ち着け。もう一回だもう一回。
ス~ッハ~。ス~ッハ~‥‥。
…チラり。。
(・・・・ははははは‥…。)
何だろうこの幻覚症状は…。
(…なんかギル様の体が、ほんのり『光って見える』んですけど…?)
私の顔は今、盛大に引き攣ったぞ。
だって右目から右頬にかけてピクピクと痙攣してるからね。
(いくら何でもこの現象は‥“無さすぎる”わーー…。)
ダメだ‥ガチで頭が痛くなってきた。。
(‥───そりゃ~光希があの人を“様”付けで呼んでいたのも納得できるほど、彼の容姿は精悍で凛々しいと私も思うよ?‥でも、いくら光希がゲーム画面で見てた記憶の〈ギル様〉よりも格好良く見えるからってこれは…。)
『光って見える』とか、こんなの…こんなの…
(ど~~~考えても “ヤバすぎる” でしょお~~~~…。)
はははは・・・もうヤダ…ぐすん。。
エステル様が心配そうにこちらを振り向いて私の様子を窺ってる気配を感じるけど、無視して俯く私をどうか許してください…ぐすん。。
だって何がどうしてこうなってるか、上手く表現できないんだもんっ!
だからアイリナ様ぁ…っ
ちゃんと悪いと思ってますから、そんなに殺気を向けないでぇ~~~っっ
あとマーリン様は、お願いだからちょっと放っておいてください…。
私の耳元に口を寄せて『大丈夫?』って聞かないでください…。
ちゃんと聞こえてるし、色んな意味で伝わってないのが泣けてくるからぁ~~~っっ!!
ってか、この奇っ怪な現象は何なのさ!?
確かに実際のギル様はゲーム画面で見てた記憶よりも見惚れる容姿だっては思うけど!
そりゃ青Fと同じく左耳の一房を残して短く切り揃えられた焦茶の髪型が、よぉ~く似合ってらっしゃるわぁ~とは思うけど!
でもでも、でもでも、だからって!!
魔術も魔法も使ってない状態の、フッツーな状態の人間が、『光って見える』とか!!
(いやいやいやいや、“無さすぎる”でしょーーーーよ!!!!)
もうイヤだぁ~~~!!!
何でこ~次から次へとトラブルが舞い込んでくるかなぁ~~~!!!?
………あ~、そうそう。
ギル様の左耳の一房の髪を止めてるアレ、銀のカフスだっけ?
あのカフスって確かティタ二ア王家の臣下の証として王冠と百合、それから騎士の象徴である剣と盾の紋章が入ってるんだよねー。
それでいくとギル様はこの世界でも、青Fと同じ“冷黒王子の護衛”で、“王国を守る騎士”になる訳か…なるほど、うん分かったわー。
ここまでの情報から整理すると、
[容姿]と[年齢]
それから
[家柄]に[職業]や[階級]
これは青Fと同じと推測できるわね。うんうん。
そして
彼ら(彼女ら)の[性格]と
《イベント》が起きる[場所]や[内容]
には相違点がある‥ってことか!
(でもって、青Fだと私以外の登場人物は皆、王族貴族だから‥おおおお? ───ということは!)
学院内では、
“各教室” と “合同演習” 、そして “院内の通路” に気を付けてれば、
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・--・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
『攻略対象の[フラグ]は回避できたも同然』
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・--・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
───ってことに、なるんじゃないの?
だって。
[王立アカデミー学院]の中は、先生方の(監視の)目が届く“各教室”や“合同演習”と“院内の通路”以外の全ての場所が、『王族貴族専用』『庶民用』とで利用スペースが分けられているのだ。
もっと詳しく言うと、[食堂]や[カフェテラス]、[休憩所]、[演習場]に[シャワールーム]、[図書館]に[素材管理庫]、[学生寮]、そして[学院の門]にまで『王族貴族専用』『庶民用』が設けられている。
しかも特別な理由がない限り、王族貴族階級の者は『王族貴族専用』を、庶民階級の者は『庶民用』を利用するようにと、〈学院の規律が記載された冊子〉の最初の方に明記までされている徹底ぶりだ。
入学式後に渡された冊子の『双方の利用はできないものとする』って一行を読んで、どれだけ私が安堵したことか。
ほんと“学院の規則”様々だわ。
それで。
(青Fでは『王族貴族専用』の利用スペースが《イベント》が起きる[場所]だったから‥。)
つまり、つまりよ?
庶民な私は『庶民用』のスペースしか利用しないから、
『王族貴族専用』のスペースを利用する攻略対象とは、
“各教室” と “合同演習” 、そして “院内の通路” 以外では 出会うことがない。
ってことになるのよ!!
(…ただまぁ、今みたいに知らずに出会う場所へと誘導されるケースは有り得るけどね‥。)
そうなんだよなぁ~~。
今居るこの[裏庭]って“院内の通路”扱いなんだよなぁ~~~。
(私自身が避けたとしても、こういった感じで誰かしらに誘導されて、気づけば攻略対象と遭遇することは今後も起こりうるのかぁ~…ハァ~。。)
───ちなみに、今の[裏庭]での私達はというと。
エステル様達が通路の中央で、私はアイリナ様に視線で促されて壁側寄りに立ってる。
こういった “共有の場所” では、市井の常識『王族貴族が中心を、庶民は端へ』が暗黙の了解で適用されるらしかった。
‥ふんふん。なるほど、なるほどねーーー。
────で。
…チラり。。
…………うん。。。
(真面目に現状を分析してみたけど、やっぱりダメだわ…。)
幻覚を打ち消すべく目の前の嫌な現象から意識を切り離してみたけど、ギル様は光って見えるままだわ…。
(‥ハァ~~~っ。も~~‥。)
自分が置かれてる今の状態が面倒くさすぎてもはや溜息しか出てこないんですけど?…ぐすん。。
‥正直考えたくない。考えたくはないんだけど。
(ハァ‥このままじゃ本当にお先は真っ暗だし、仕方ないか…。)
私は頭の中で盛大に溜息を吐きながら、ギル様が光って見える理由を分析してみることにした。
(…えーっと。。)
青F情報を参照するとギル様は今年で18歳のはずだから。
ラルフ兄みたく大人の魅力?的なオーラが滲み出ていると仮定して‥。
そのオーラを私が『体内の魔力量が“膨大”だから見えている』のだと仮定すれば──‥。
(…いや、待てよ‥。)
それなら私は数多の女性を虜にしてるラルフ兄のオーラも見える筈だから、この考えは成立しないか。
(──あ‥こういうのはどうだろう‥。)
私が気づかない間に何者かに[魅了]の魔術をかけられてて、それで視界がおかしくなったーとか。
(あー…いや‥こっちの線も無いか。。)
だって私は例の〈晶鏡石〉を肌身離さず今も身に付けている。
この〈晶鏡石〉は私の魔力を抑えるのと同時に、私の魔力が暴発しないように、外部からの攻撃魔術や攻撃魔法の類は全て跳ね返す“守りの機能”も備わっているんだった。。
…てゆーか、さっきから脳内で考えてるこの問答だけど。
(実は『無意味』だって分かってるんだよねー…。)
こんな問答、したところで結局、現実は否定できないってね…。トホホ‥。
────えぇ、はい…。
ものすごぉ~~~く認めたくないんだけど。
真面目に自分を分析した結果、どうやら私の脳内は『光希の記憶を取り戻した反動でそっちに引き摺られて、視界がおかしくなってる』らしい。
しかもギル様の瞳の色は『あの色』ときたもんだ。
あの色──『碧緑』は、光希の記憶を思い出す前から『私の一番好きな色』なんだよ…。
(あぁ~も~、ほんと何の嫌がらせだよ…。)
ここまで【恋愛ルート】に入る要素をお膳立てられると、全力で拒否したい私としては顔を覆って項垂れたくもなるわよ。
だって私は、生まれた時から“青みがかった緑色”が一番ホッと感じて落ち着ける色で、小さな頃から集めてきた洋服や小物類は私の部屋中にあって、つまり私の持ち物は碧色や翠色の物ばかりなんだよ…。
今着ている服だって、学院に通う規定に『庶民は学院支給の制服を着る規定』がなかったら、普段着ている白シャツに青緑色のロングスカートだったかんね?
“そのことが何を意味するのか。” ───は後で説明するけどさ。
ギル様が持つ瞳の色を認識した私は、そのせいで現状が最悪のケースに陥っていることを突きつけられたんだよコンチクショウ。
ギル様に会うまでは全然これっぽっちも気にしてなかった事実を突きつけられた今の私の心境は天変地異だよ。
荒れに荒れ狂ってますよ。
だってこんなの、ちょっとでもギル様に気を許そうものなら『【恋愛ルート】へようこそ~ウフフ♪』になるんだぞ!?
このまま私が光希の感覚に引き摺られ続けたら・・・ガクブル。。
それこそジェットコースターのように【恋愛ルート】もとい【お先真っ暗ルート】へ急降下一直線だよ、終着地点は地獄だよ!!
(あぁ~も~~~!勘弁してよ過去の私ぃ~~~~~っ!!!)
光希のギル様への想いとゆーか記憶が今、途轍もなく邪魔なんですけどぉ~~~っ!!!
────とまぁ、私がこんなにも胸中で荒れ狂って絶叫を上げてる理由は簡単だ。
私の前世である光希は、ギル様の『瞳の“色”が特に好き』だった。
ゲーム画面のギル様を見ながら「吸い込まれそうに綺麗な色だわぁ~‥」と、ギル様のドアップでプレイ中の画面を止めて見続けるくらい、光希は『碧緑』が大大大好きな“色”だった。
そして私は、生まれた時から“青みがかった緑色”が一番ホッと感じて落ち着ける色だ。
【問題】
“そのことが何を意味するのか。”
前世の光希の“色”の好みと、現世の私の好きな“色”が、
光希の記憶を取り戻す前から、一緒だったってことはよ?
────つまり私は。
【回答】
光希の好みを
『そのまま“引き継いでる”』ことになるんだよおおおぉぉおぉーーーー…。
だけならまだしも、光希の記憶まで取り戻しちゃった私の脳内は、相乗効果でギル様が光って見えちゃってる訳だよおおおぉぉおぉーーーー…。
‥はははは…。‥くっそ笑えないジョークだわ‥。
本当にマジで私の人生、終わったわ・・・・泣。。
───なぜ隠れているのかって?
それはですね…。
エステル様達を挟んだ向こう側に、会いたくなかった御方が居るからですよ…。
───ええ、ええ、そうですとも。
…向こう側には今。
〈冷黒王子〉が仁王立ちしてるんですよ…。
しかもですね、王子の両脇には。
青Fの攻略キャラが二名…控えて居るんですよ…。
一人は青Fで
第一王子の[護衛騎士長]として登場する、
イーギル-バレンシュタイン・ココット。
もう一人は青Fで
第一王子の幼馴染であり[宮廷魔導士]として登場する、
クリストファ-エイベル・ドートン。
エステル様の後ろからこっそりと覗き見れば。
騎士らしい風体の人物───
青Fと同じ容姿の〈ギル様〉と目が合った。
で。ササッと目を逸らされた。
(‥え・・・何で逸らされたん??)
えーーーと・・・。
(…んんん?? 何だこれ…。)
…なんか…何だか、
(すごくモヤモヤするんだけど…。)
私は何とも表現に困る感情の不快感に口が“への字”になった。
(‥何でこんなにモヤモヤするんだろう…。)
まるで〈ギル様〉から目を逸らされたことに私自身が不満を感じてるみたいな──‥
(!!!!??────ないないないない!有り得ないから!!!)
光希の時ならまだしも今世の私は〈ギル様〉とは初対面なんだよ?!
なのに今の私が〈ギル様〉に不満を感じるなんて、はっきり言っておかしすぎる状態だから!
(こわいコワイ怖いぃ~~~~ッッ!!)
この見えない何かが干渉してきてる感じ!!
絶対アレでしょ!
創世神様とかの神的な力が影響してるとかでしょ!?
今はこの状況をどうにか突破することが大事なのに、なんてことすんじゃ~いっ!!
(この感情は違う!今の私は〈ギル様〉に不満なんて感じてない!感じてないんだ!お願い私っ‥正気に戻れぇ~~~~~っ!!)
私はギュウゥっと目を瞑って、脳内で自分の両頬をバチンバチンとぶっ叩いた。
火花が飛び散るぐらいに叩きまくった。
で。深く深~~~く深呼吸すること数十回。
(スーーッハーーーッスーーッハーーーッ・・・あ‥危うく〈ギル様〉に意識が持ってかれるところだった…。。これが前世の記憶を取り戻した弊害か・・・。)
半ば無理やり気持ちはねじ伏せたけど。
(うん…これは凄いな…。ちょっと自分でもビックリだわ…。)
得体の知れない恐怖がじっとりと全身を蝕んでるのが分かる。
ありとあらゆる毛穴から嫌な汗が出まくってるし。
ふと手元を見ると、握った掌の手汗が凄まじいことになっていた。
(うわ‥すっごい汗だく…。)
手からこんなに汗って出るんだ‥そう思ったら、少しだけ意識が逸れて冷静になれた。
(き‥気を取り直そう‥とにかく現状を把握しないことには行動できないんだから…。)
私はゆっくりと深呼吸してから、恐怖で竦む気持ちをなんとか奮い立たせて、今度はしっかりと現実の〈ギル様〉を観察することにした。
───そう、〈ギル様〉。
イーギルのことを前世の光希がそう呼んでいた彼は、じっくり見てみれば、前世の記憶よりも数十倍‥いや数百倍は増々のイケメンだった。
普段から容姿端麗な母や兄で目が肥えてる私から見ても、ギル様はビックリするほどの男前だった。
だけどちょっと待って欲しい。
(えーーーと…‥何だこれ…?)
改めてしっかりとギル様を見た私は、彼が放つ雰囲気に嫌な現象が見えたのだ。
(・・・多分これ、勘違いとかじゃないよなぁ…。)
もう一度目を瞑って、それから深呼吸して──‥。
…チラり。
(ははは‥・・・マジで?)
だってこんな…いやいや落ち着け。もう一回だもう一回。
ス~ッハ~。ス~ッハ~‥‥。
…チラり。。
(・・・・ははははは‥…。)
何だろうこの幻覚症状は…。
(…なんかギル様の体が、ほんのり『光って見える』んですけど…?)
私の顔は今、盛大に引き攣ったぞ。
だって右目から右頬にかけてピクピクと痙攣してるからね。
(いくら何でもこの現象は‥“無さすぎる”わーー…。)
ダメだ‥ガチで頭が痛くなってきた。。
(‥───そりゃ~光希があの人を“様”付けで呼んでいたのも納得できるほど、彼の容姿は精悍で凛々しいと私も思うよ?‥でも、いくら光希がゲーム画面で見てた記憶の〈ギル様〉よりも格好良く見えるからってこれは…。)
『光って見える』とか、こんなの…こんなの…
(ど~~~考えても “ヤバすぎる” でしょお~~~~…。)
はははは・・・もうヤダ…ぐすん。。
エステル様が心配そうにこちらを振り向いて私の様子を窺ってる気配を感じるけど、無視して俯く私をどうか許してください…ぐすん。。
だって何がどうしてこうなってるか、上手く表現できないんだもんっ!
だからアイリナ様ぁ…っ
ちゃんと悪いと思ってますから、そんなに殺気を向けないでぇ~~~っっ
あとマーリン様は、お願いだからちょっと放っておいてください…。
私の耳元に口を寄せて『大丈夫?』って聞かないでください…。
ちゃんと聞こえてるし、色んな意味で伝わってないのが泣けてくるからぁ~~~っっ!!
ってか、この奇っ怪な現象は何なのさ!?
確かに実際のギル様はゲーム画面で見てた記憶よりも見惚れる容姿だっては思うけど!
そりゃ青Fと同じく左耳の一房を残して短く切り揃えられた焦茶の髪型が、よぉ~く似合ってらっしゃるわぁ~とは思うけど!
でもでも、でもでも、だからって!!
魔術も魔法も使ってない状態の、フッツーな状態の人間が、『光って見える』とか!!
(いやいやいやいや、“無さすぎる”でしょーーーーよ!!!!)
もうイヤだぁ~~~!!!
何でこ~次から次へとトラブルが舞い込んでくるかなぁ~~~!!!?
………あ~、そうそう。
ギル様の左耳の一房の髪を止めてるアレ、銀のカフスだっけ?
あのカフスって確かティタ二ア王家の臣下の証として王冠と百合、それから騎士の象徴である剣と盾の紋章が入ってるんだよねー。
それでいくとギル様はこの世界でも、青Fと同じ“冷黒王子の護衛”で、“王国を守る騎士”になる訳か…なるほど、うん分かったわー。
ここまでの情報から整理すると、
[容姿]と[年齢]
それから
[家柄]に[職業]や[階級]
これは青Fと同じと推測できるわね。うんうん。
そして
彼ら(彼女ら)の[性格]と
《イベント》が起きる[場所]や[内容]
には相違点がある‥ってことか!
(でもって、青Fだと私以外の登場人物は皆、王族貴族だから‥おおおお? ───ということは!)
学院内では、
“各教室” と “合同演習” 、そして “院内の通路” に気を付けてれば、
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・--・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
『攻略対象の[フラグ]は回避できたも同然』
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・--・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
───ってことに、なるんじゃないの?
だって。
[王立アカデミー学院]の中は、先生方の(監視の)目が届く“各教室”や“合同演習”と“院内の通路”以外の全ての場所が、『王族貴族専用』『庶民用』とで利用スペースが分けられているのだ。
もっと詳しく言うと、[食堂]や[カフェテラス]、[休憩所]、[演習場]に[シャワールーム]、[図書館]に[素材管理庫]、[学生寮]、そして[学院の門]にまで『王族貴族専用』『庶民用』が設けられている。
しかも特別な理由がない限り、王族貴族階級の者は『王族貴族専用』を、庶民階級の者は『庶民用』を利用するようにと、〈学院の規律が記載された冊子〉の最初の方に明記までされている徹底ぶりだ。
入学式後に渡された冊子の『双方の利用はできないものとする』って一行を読んで、どれだけ私が安堵したことか。
ほんと“学院の規則”様々だわ。
それで。
(青Fでは『王族貴族専用』の利用スペースが《イベント》が起きる[場所]だったから‥。)
つまり、つまりよ?
庶民な私は『庶民用』のスペースしか利用しないから、
『王族貴族専用』のスペースを利用する攻略対象とは、
“各教室” と “合同演習” 、そして “院内の通路” 以外では 出会うことがない。
ってことになるのよ!!
(…ただまぁ、今みたいに知らずに出会う場所へと誘導されるケースは有り得るけどね‥。)
そうなんだよなぁ~~。
今居るこの[裏庭]って“院内の通路”扱いなんだよなぁ~~~。
(私自身が避けたとしても、こういった感じで誰かしらに誘導されて、気づけば攻略対象と遭遇することは今後も起こりうるのかぁ~…ハァ~。。)
───ちなみに、今の[裏庭]での私達はというと。
エステル様達が通路の中央で、私はアイリナ様に視線で促されて壁側寄りに立ってる。
こういった “共有の場所” では、市井の常識『王族貴族が中心を、庶民は端へ』が暗黙の了解で適用されるらしかった。
‥ふんふん。なるほど、なるほどねーーー。
────で。
…チラり。。
…………うん。。。
(真面目に現状を分析してみたけど、やっぱりダメだわ…。)
幻覚を打ち消すべく目の前の嫌な現象から意識を切り離してみたけど、ギル様は光って見えるままだわ…。
(‥ハァ~~~っ。も~~‥。)
自分が置かれてる今の状態が面倒くさすぎてもはや溜息しか出てこないんですけど?…ぐすん。。
‥正直考えたくない。考えたくはないんだけど。
(ハァ‥このままじゃ本当にお先は真っ暗だし、仕方ないか…。)
私は頭の中で盛大に溜息を吐きながら、ギル様が光って見える理由を分析してみることにした。
(…えーっと。。)
青F情報を参照するとギル様は今年で18歳のはずだから。
ラルフ兄みたく大人の魅力?的なオーラが滲み出ていると仮定して‥。
そのオーラを私が『体内の魔力量が“膨大”だから見えている』のだと仮定すれば──‥。
(…いや、待てよ‥。)
それなら私は数多の女性を虜にしてるラルフ兄のオーラも見える筈だから、この考えは成立しないか。
(──あ‥こういうのはどうだろう‥。)
私が気づかない間に何者かに[魅了]の魔術をかけられてて、それで視界がおかしくなったーとか。
(あー…いや‥こっちの線も無いか。。)
だって私は例の〈晶鏡石〉を肌身離さず今も身に付けている。
この〈晶鏡石〉は私の魔力を抑えるのと同時に、私の魔力が暴発しないように、外部からの攻撃魔術や攻撃魔法の類は全て跳ね返す“守りの機能”も備わっているんだった。。
…てゆーか、さっきから脳内で考えてるこの問答だけど。
(実は『無意味』だって分かってるんだよねー…。)
こんな問答、したところで結局、現実は否定できないってね…。トホホ‥。
────えぇ、はい…。
ものすごぉ~~~く認めたくないんだけど。
真面目に自分を分析した結果、どうやら私の脳内は『光希の記憶を取り戻した反動でそっちに引き摺られて、視界がおかしくなってる』らしい。
しかもギル様の瞳の色は『あの色』ときたもんだ。
あの色──『碧緑』は、光希の記憶を思い出す前から『私の一番好きな色』なんだよ…。
(あぁ~も~、ほんと何の嫌がらせだよ…。)
ここまで【恋愛ルート】に入る要素をお膳立てられると、全力で拒否したい私としては顔を覆って項垂れたくもなるわよ。
だって私は、生まれた時から“青みがかった緑色”が一番ホッと感じて落ち着ける色で、小さな頃から集めてきた洋服や小物類は私の部屋中にあって、つまり私の持ち物は碧色や翠色の物ばかりなんだよ…。
今着ている服だって、学院に通う規定に『庶民は学院支給の制服を着る規定』がなかったら、普段着ている白シャツに青緑色のロングスカートだったかんね?
“そのことが何を意味するのか。” ───は後で説明するけどさ。
ギル様が持つ瞳の色を認識した私は、そのせいで現状が最悪のケースに陥っていることを突きつけられたんだよコンチクショウ。
ギル様に会うまでは全然これっぽっちも気にしてなかった事実を突きつけられた今の私の心境は天変地異だよ。
荒れに荒れ狂ってますよ。
だってこんなの、ちょっとでもギル様に気を許そうものなら『【恋愛ルート】へようこそ~ウフフ♪』になるんだぞ!?
このまま私が光希の感覚に引き摺られ続けたら・・・ガクブル。。
それこそジェットコースターのように【恋愛ルート】もとい【お先真っ暗ルート】へ急降下一直線だよ、終着地点は地獄だよ!!
(あぁ~も~~~!勘弁してよ過去の私ぃ~~~~~っ!!!)
光希のギル様への想いとゆーか記憶が今、途轍もなく邪魔なんですけどぉ~~~っ!!!
────とまぁ、私がこんなにも胸中で荒れ狂って絶叫を上げてる理由は簡単だ。
私の前世である光希は、ギル様の『瞳の“色”が特に好き』だった。
ゲーム画面のギル様を見ながら「吸い込まれそうに綺麗な色だわぁ~‥」と、ギル様のドアップでプレイ中の画面を止めて見続けるくらい、光希は『碧緑』が大大大好きな“色”だった。
そして私は、生まれた時から“青みがかった緑色”が一番ホッと感じて落ち着ける色だ。
【問題】
“そのことが何を意味するのか。”
前世の光希の“色”の好みと、現世の私の好きな“色”が、
光希の記憶を取り戻す前から、一緒だったってことはよ?
────つまり私は。
【回答】
光希の好みを
『そのまま“引き継いでる”』ことになるんだよおおおぉぉおぉーーーー…。
だけならまだしも、光希の記憶まで取り戻しちゃった私の脳内は、相乗効果でギル様が光って見えちゃってる訳だよおおおぉぉおぉーーーー…。
‥はははは…。‥くっそ笑えないジョークだわ‥。
本当にマジで私の人生、終わったわ・・・・泣。。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

婚約破棄の、その後は
冬野月子
恋愛
ここが前世で遊んだ乙女ゲームの世界だと思い出したのは、婚約破棄された時だった。
身体も心も傷ついたルーチェは国を出て行くが…
全九話。
「小説家になろう」にも掲載しています。

【完結】望んだのは、私ではなくあなたです
灰銀猫
恋愛
婚約者が中々決まらなかったジゼルは父親らに地味な者同士ちょうどいいと言われ、同じ境遇のフィルマンと学園入学前に婚約した。
それから3年。成長期を経たフィルマンは背が伸びて好青年に育ち人気者になり、順調だと思えた二人の関係が変わってしまった。フィルマンに思う相手が出来たのだ。
その令嬢は三年前に伯爵家に引き取られた庶子で、物怖じしない可憐な姿は多くの令息を虜にした。その後令嬢は第二王子と恋仲になり、王子は婚約者に解消を願い出て、二人は真実の愛と持て囃される。
この二人の騒動は政略で婚約を結んだ者たちに大きな動揺を与えた。多感な時期もあって婚約を考え直したいと思う者が続出したのだ。
フィルマンもまた一人になって考えたいと言い出し、婚約の解消を望んでいるのだと思ったジゼルは白紙を提案。フィルマンはそれに二もなく同意して二人の関係は呆気なく終わりを告げた。
それから2年。ジゼルは結婚を諦め、第三王子妃付きの文官となっていた。そんな中、仕事で隣国に行っていたフィルマンが帰って来て、復縁を申し出るが……
ご都合主義の創作物ですので、広いお心でお読みください。
他サイトでも掲載しています。

婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでのこと。
……やっぱり、ダメだったんだ。
周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中
※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる