博打英雄

海川鮮魚

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第六話 依頼と魔物

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冒険者ギルドでDランクの依頼『セロラの実』の採取を受注した七三とヤクモはセロラの実がある森へ向かっていた。

「そういえばヤクモ」

「何だ?」

「ヤクモは魔法とスキルが使えるの?」

「あぁ、私は両方とも使えるぞ...と言っても魔法は風属性以外は適性が無いし、そもそも風属性の魔法も滅多には使わんがな」

「へぇ魔法を使うには適性がいるの?」

「別に無くとも使えはするが適性の無い魔法は魔力の効率が悪いし威力も遥かに落ちるから基本的に使うことは無いな」

「まぁ、私の場合は魔法を使うよりも剣とスキルの方が遥かに良いがな」

「ヤクモもスキル使えるんだね」

「あぁ!魔力を消費して半透明の頑丈な壁を作り出せる能力でな!なかなかに便利なんだ」

「ところで、その口ぶりだと七三もスキルを持ってるのか?」

「もちろん!ただ俺のは運要素が強すぎて自分でもまだよく分かってないんだ」

「だとしてもスキルは持ってること自体が珍しいからな!」

「おっ!目的地が見えてきたぞ」

ヤクモの目線の先には広大な森が広がっていた。

「ここ崖になってたんだな」

「あぁ、落ちるなよ」

「向こう岸からが目的地の森のはずだけど、ここからどうやって行くんだ?」

見渡した限り今いる崖と森がある方には十数メートルの距離があり、その間を繋ぐ橋なども無かった。

「どうやって?それは当然跳んで行くんだよ」

「は⁉︎この距離をか⁉︎」

「?もちろんそうだけど」

「マジかよ...」

「じゃあ私はお先に行くね」

そう言うとヤクモは軽々と十数メートルはある崖を跳んで渡った。

「おおーい!早く君も来い!」

(この距離をあっさり行くのかよ!いや、でも魔力の使い方は覚えた。今の俺ならこのくらい行けるはず...)

「ふぅーーっ...よし!」

深呼吸をした後魔力を全身に巡らして力強く地面を蹴った。すると体は高く前に跳び上がりヤクモのいる場所を遥かに超え、元いた位置から4,50メートル先にあった大きな木に顔から激突した。

「痛ってーー‼︎」

あまりの衝撃と痛さに叫んで悶えているとすぐにヤクモが駆け寄ってきた。

「だ、大丈夫か?」

「この状況見て大丈夫に見えるのか?...」

「す、すまん。まだ魔力操作覚えたてで加減を覚えてないのを忘れていた」

「まぁヤクモに魔力のこと教えてもらわなきゃそもそもこの森に来れなかったしな...」

「いや、その場合はちょっと離れた場所にある橋を使うが?」

「橋あるのかよ!何で先に言わなかったんだよ!」

「いや、こっちの方が時短になるんだよ」

「ま、まぁ来れたから良しとするか...」

「ところでセロラの実ってどこにあるんだ?」

「そこまでは私も分からない。しらみつぶしに探すしか無いな」

「セロラは赤くて小さい実だよな?」

「あぁセロラの木は人の背丈くらいの高さしかないから歩いてればそのうち見つかるはずだ」

「それよりも問題なのは...」

「あぁ魔物だな」

「そんなすぐに出くわすことはないだろうが警戒はしとけよ」

「分かった」

「怪しいものを見つけたらすぐ魔力の特徴を確かめるんだ」

「?魔力の特徴ってどうやったら分かるんだ?」

「?あぁそう言えば詳しく教えてなかったな」

「魔力を目に集中させて私を見てみろ」

ヤクモの言う通り目に魔力を込めてヤクモを見てみた。するとヤクモから白い色をした魔力が立ち昇っているのが見えた。

「どうだ?見えたか?」

「あ、あぁ白色の魔力がヤクモから出てるのが見えたが...」

「それが魔力の特徴だ。正確には魔力はそいつ特有の色を有していて基本は半透明だがより洗練された魔力ほど濃い色を発するようになる」

「七三の魔力は私と同じ白色をしているな。洗練はされてないから殆ど透明に近いが魔力の量は私より多い」

「なるほど...」

「さ、引き続きセロラの実を探そう」

そう言いヤクモは歩き出しその後を追うようについて行きセロラの実を探していると30分ほど探してようやく見つけた。

「見つけたな...」

「だけどあれって...」

「あぁ、小さいがゴブリンとオーガの集落だな。ゴブリンが10匹にオーガが2体」

ようやく見つけたセロラの実がなる木はゴブリンとオーガの集落のすぐ側に生えていた。

(ゴブリンとオーガ...両方とも本で見たな。ゴブリンは人間の子供くらいの大きさで知能は低いが身体能力は並の一般男性くらいでオーガは知能こそゴブリンと同程度くらいしかないが体長2m以上で素の力が強い...)

「どうするヤクモ、迂回して別のを探すか?」

「いや、次にセロラの実を見つけるのがいつになるか分からない。見つけるまでにもっと厄介な魔物に遭遇するかもしれないしな。ここで殺る!」

「分かった」

「七三、君は左側にいるゴブリン6匹を担当してくれ。私は残りを殺る」

「了解」

「行くぞ!」

ヤクモの声を合図に同時に隠れていた木の影から飛び出し、それぞれ左右に分かれた。

「まず...1匹!」

そう言いながら七三は魔力で身体を強化しながら短剣でゴブリンの首を切ると少し遅れて周りにいた5匹のゴブリンが声を上げて一斉に襲いかかってきた。

「グッッ!ギギッッ!」
「グガッ!」
「ギッ!ギギッ!」

「あっぶね!」

「おらよっ!」

ゴブリンの攻撃を慌てて避けると一番近くのゴブリンの腹を魔力を込めて思いっきり殴りつけ、勢いよく吹っ飛んだゴブリンはもう一匹を巻き込んで木に激突した

「よしっ!あと2匹!」

「ヤクモの方は!?」

見るとヤクモのは1体のオーガと向かい合っており、その側にはゴブリン4匹とオーガ1体の死体が転がっていた。

「早いな...俺も負けてらんねぇ」

再びゴブリン2匹と向き合うと足に魔力を込め一匹の懐へ飛び込み喉に短剣を突き刺し、即座に引き抜いて短剣をもう1匹のゴブリンの頭へ投げつけた。

「よしっ!終わった...」

「そっちも終わったみたいだね」

振り返ると刀についた血を拭いているヤクモが立っていた。

「あぁ、にしてもオーガ2体いてよくこんな早く終わるな...」

「まぁね!冒険者登録は最近したばかりでEランクだけど剣と魔力の修行は何年も前からしてるからね」

「こいつらの死体はどうするんだ?」

「そのままでいいよ。体の殆どが魔力で構成されてる魔物とか魔族は死後数分で体が自然に消滅して最後は魔石っていう魔力の結晶みたいなのだけ残るから」

「後はその石と目的の実を回収して帰りるだけだよ」

「了解」

数分後セロラの実とゴブリンとオーガの魔石を回収し2人は帰路に着こうとしたが

「よし!ヤクモ、そろそろ帰ろう」

「あぁ......待て!何かいる!」

ヤクモが気付いたと同時に森から地響きと木が薙ぎ倒される音がした。
そして『それ』はすぐに姿を現した。

「何だ⁉︎アイツ...」

「七三!逃げろ!あれはキュクロープス...冒険者ギルドの討伐依頼でBランクに位置する魔物だ」

目の前に現れたのは体長10メートルはありそうな一つ目の巨人だった。
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