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第33章:太郎は悩む
突出・1
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1559年5月2日卯の刻(午前6時)
上野国東甘楽先の戦場より10町西
上泉秀胤
(もう一端の参謀)
「殿! 既に間に合いませぬ。それに危険すぎまする!!」
甘楽郡を東西に延びる下仁田街道。
ここを数騎で駆け抜けた。
しかも夜だ。
朝方、倉賀野の開城を待って降伏した敵に寝返った者への差配も草々に、馬に飛び乗り近習のみで飛び出したのだ。
「だってお仁王様、武田の策に引っかかり大敗戦したっていうから。
早く行って助けなくっちゃ!」
しかし殿の先を行くものは近習3人と政影殿のみ。
後ろから300程はついてこようか?
親衛隊が大きく出遅れていた。
多分、我先にと大渋滞を起こしているのであろう。
「殿! 冷静に!! 殿だけ行かれても殆ど……」
役には立たないと言おうとしたが、流石に主君に対して言う言葉ではない。
その代わりに質問をした。
「先に行かれて何をなさるおつもりでしょうか!?」
そう。
300騎だけでできることは限られている。
それなのになぜ急がれるのか?
「ひとつ!
お仁王様が半兵衛ちゃんのいう事を聞かない可能性高い!
ふたつ!
敵の赤備えは初見殺し! 赤い色の恐怖。
みっつ!
あの地は大胡に靡いていない!」
そういう事か。
昨日急に戦場の民心を下問された。
その結果東甘楽の代官が私腹を肥やしていたことが判明。
直ちに那和から近郷の元地侍で方々へ派遣されている優秀な内政官を派遣した。
民心がどちらにあるかで戦の様相が一変すると書物に書いてあった。
「木部ちゃんが到着していれば半兵衛ちゃんが何かしてくれるだろうけど、そこまでできないかも。まだ初陣だからなぁ、グキッ」
急いでの乗馬中に喋るから舌を噛んでしまわれたらしい。
とりあえず治療を……
「殿! 先程通過いたしました場所。大胡兵の躯が多数!
既に戦闘が行われ、お味方撤退の様子。皆後ろから槍で突かれ太刀で斬られて南へ向かい倒れておりまする!」
!!
では、間に合わないばかりか突出した可能性がある。
「政影殿。殿を強引にでもお止めしてくだされ!」
某は道端により周囲を見渡した。既に朝日が昇って周囲の視界が開けている。
ここは後藤殿の隊が守備している筈の隘路より10町は西へ来てしまったところらしい。南西に大胡の軍勢らしき一団がいる。
戦場は既に移動したのだ。
それも敗戦らしい。
とするとこの先には敵しかおらぬ。
「殿。突出してしまいました。この先には大胡の兵は、前線はありませぬ。
後藤殿の隊は南西に。すぐに後退を!」
政影殿に轡を持たれて強引に止められた殿に声をおかけすると辺りを見渡している。
「だって。さっきの斥候兵。この先で敵と対陣中と……」
殿と二人で顔を見合わせてしまった。
先の斥候。
符丁は合っていたが甲冑の大きさが合っていなかった。
斥候が狩られて偽報の計に嵌まったか?
「敵陣らしきもの。遠方約5町! 赤備えが向かってきます。その数、およそ100騎!」
最先頭で馬を駆っていた近習が叫ぶ。
赤備えが突撃してくる。
既に3町無い。
「御免なさい! 逃げる!!」
武田の偽報にまんまと嵌まった。殿と大胡の信念「味方は助ける」を逆手に取られたか。だが、まさか殿自身が最先頭を走っているとは思ってはいまい。
いや。先ほどの偽兵。
あれが報告していればまずい。
どうすればよい??
お味方はこの街道を西へひた走っている。
そこへ逆に走り込むのは大渋滞を起こして、それこそ敵の餌だ。
ここは南へ逃げるしかない。
「南西に逃げるしかありませぬ。鏑川の屈曲部は深みがございまする。ですから浅瀬のある筈の直線部分を渡河。馬が足を踏み外せば、落馬してそのまま下流へ流されましょうぞ。水練には良い季節かと」
まだ早いとは思うが、そのくらいの気持ちでやらねばならぬ。
「政影殿は殿を頼みまする。某はここで移動指示を。100騎程は犠牲になることご覚悟ください」
急に殿の眉毛と口がふにゅっと「への字」になる。
「殿、泣くのは後で。某も夜泣き蕎麦に参加させていただきたく。今は逃げる事です!」
後ろをしきりと気にする殿の轡を持って強引に川へ向かう政影殿。既にこの辺りは2~30騎の兵が渋滞を起こしている。これを整理せねば。
「罠にはまった!
西方より武田の赤備え100程急襲!
散開して騎幕を張れ!
中隊長はいるか?
1個分隊、南西に逃げる殿を守れ。
赤備えは手槍装備。こちらは騎兵銃だ。
負けはせぬ。
手槍の届く前に仕留めよ!
射撃後はそのまま抜刀突撃。敵後続を断つ。
中隊長。
こここで死ね!
この時の為の命、殿に捧げよ!」
おおおおおおおおお!!!!!!!!!
某の声に聞こえる範囲のもののふの上げる咆哮が、朝焼けの甘楽の谷間に響き渡る。
……某はこんなにも大きな声を出せるのか?
今はそんなことはどうでもよい。
殿に追随してこれたものは300全てが騎兵。
これに作戦指示をする。
参謀の職責ではないが、ここは頑としても通させていただく。
「敵は鋒矢の陣であろう。こちらの陣形中央に次から次へと新しい敵が突撃してくる。これを徒になって正確に狙撃する。
暴発覚悟で二連弾、火薬は5割増し。
馬を倒せ。
さすれば次の敵もその馬に躓く。中隊長、後の指揮を!」
親衛隊随一の俊英中隊長が即座に作戦に最適な陣形を組みたて、皆に合図をする。
「これより死地に入る!
あの世まで同行せよ。
御恩をここで返せ!
どうせ孤児のまま、あの世へ旅立った身。
殿に意義のある死に方を頂けた!
敵を粉砕せよ!
赤備えを潰せ!
赤備えがどうした!
高々100騎。
こちらは50騎にも満たぬが、手槍の届かぬ先から倒せばよい!
日頃の訓練の成果をここで敵に見せてやれ。
この世で最後に見た物は大胡の銃口だった、と閻魔大王に申告させろ!
第1分隊左翼。
第2分隊右翼。
第3と第4は中央で鴨撃ちだ。
突撃! ……前へ~~~!!!!」
黒と赤の衝突が始まった。
◇ ◇ ◇ ◇
「例の角川映画」
カナダがロケ地だったかな?
壮大なスケールだったのですが、
「いや、それは日本じゃないでしょ?」的な
大草原での槍の突き合いの中を騎馬が駆け抜けていく。
ついでに少しよく見ると
「これ、どう見ても日本人じゃないよね」的な人が
へっぴり腰で戦っているw
「300騎の旗本」
じゅ、十分強力なのだが……
問題は街道なんですよ。
あまり広くない。
そこを夜間行軍?
騎馬で?
よくできたもんだよ。
だからついてこれたのが非常に少ないと……
上野国東甘楽先の戦場より10町西
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(もう一端の参謀)
「殿! 既に間に合いませぬ。それに危険すぎまする!!」
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ここを数騎で駆け抜けた。
しかも夜だ。
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しかし殿の先を行くものは近習3人と政影殿のみ。
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多分、我先にと大渋滞を起こしているのであろう。
「殿! 冷静に!! 殿だけ行かれても殆ど……」
役には立たないと言おうとしたが、流石に主君に対して言う言葉ではない。
その代わりに質問をした。
「先に行かれて何をなさるおつもりでしょうか!?」
そう。
300騎だけでできることは限られている。
それなのになぜ急がれるのか?
「ひとつ!
お仁王様が半兵衛ちゃんのいう事を聞かない可能性高い!
ふたつ!
敵の赤備えは初見殺し! 赤い色の恐怖。
みっつ!
あの地は大胡に靡いていない!」
そういう事か。
昨日急に戦場の民心を下問された。
その結果東甘楽の代官が私腹を肥やしていたことが判明。
直ちに那和から近郷の元地侍で方々へ派遣されている優秀な内政官を派遣した。
民心がどちらにあるかで戦の様相が一変すると書物に書いてあった。
「木部ちゃんが到着していれば半兵衛ちゃんが何かしてくれるだろうけど、そこまでできないかも。まだ初陣だからなぁ、グキッ」
急いでの乗馬中に喋るから舌を噛んでしまわれたらしい。
とりあえず治療を……
「殿! 先程通過いたしました場所。大胡兵の躯が多数!
既に戦闘が行われ、お味方撤退の様子。皆後ろから槍で突かれ太刀で斬られて南へ向かい倒れておりまする!」
!!
では、間に合わないばかりか突出した可能性がある。
「政影殿。殿を強引にでもお止めしてくだされ!」
某は道端により周囲を見渡した。既に朝日が昇って周囲の視界が開けている。
ここは後藤殿の隊が守備している筈の隘路より10町は西へ来てしまったところらしい。南西に大胡の軍勢らしき一団がいる。
戦場は既に移動したのだ。
それも敗戦らしい。
とするとこの先には敵しかおらぬ。
「殿。突出してしまいました。この先には大胡の兵は、前線はありませぬ。
後藤殿の隊は南西に。すぐに後退を!」
政影殿に轡を持たれて強引に止められた殿に声をおかけすると辺りを見渡している。
「だって。さっきの斥候兵。この先で敵と対陣中と……」
殿と二人で顔を見合わせてしまった。
先の斥候。
符丁は合っていたが甲冑の大きさが合っていなかった。
斥候が狩られて偽報の計に嵌まったか?
「敵陣らしきもの。遠方約5町! 赤備えが向かってきます。その数、およそ100騎!」
最先頭で馬を駆っていた近習が叫ぶ。
赤備えが突撃してくる。
既に3町無い。
「御免なさい! 逃げる!!」
武田の偽報にまんまと嵌まった。殿と大胡の信念「味方は助ける」を逆手に取られたか。だが、まさか殿自身が最先頭を走っているとは思ってはいまい。
いや。先ほどの偽兵。
あれが報告していればまずい。
どうすればよい??
お味方はこの街道を西へひた走っている。
そこへ逆に走り込むのは大渋滞を起こして、それこそ敵の餌だ。
ここは南へ逃げるしかない。
「南西に逃げるしかありませぬ。鏑川の屈曲部は深みがございまする。ですから浅瀬のある筈の直線部分を渡河。馬が足を踏み外せば、落馬してそのまま下流へ流されましょうぞ。水練には良い季節かと」
まだ早いとは思うが、そのくらいの気持ちでやらねばならぬ。
「政影殿は殿を頼みまする。某はここで移動指示を。100騎程は犠牲になることご覚悟ください」
急に殿の眉毛と口がふにゅっと「への字」になる。
「殿、泣くのは後で。某も夜泣き蕎麦に参加させていただきたく。今は逃げる事です!」
後ろをしきりと気にする殿の轡を持って強引に川へ向かう政影殿。既にこの辺りは2~30騎の兵が渋滞を起こしている。これを整理せねば。
「罠にはまった!
西方より武田の赤備え100程急襲!
散開して騎幕を張れ!
中隊長はいるか?
1個分隊、南西に逃げる殿を守れ。
赤備えは手槍装備。こちらは騎兵銃だ。
負けはせぬ。
手槍の届く前に仕留めよ!
射撃後はそのまま抜刀突撃。敵後続を断つ。
中隊長。
こここで死ね!
この時の為の命、殿に捧げよ!」
おおおおおおおおお!!!!!!!!!
某の声に聞こえる範囲のもののふの上げる咆哮が、朝焼けの甘楽の谷間に響き渡る。
……某はこんなにも大きな声を出せるのか?
今はそんなことはどうでもよい。
殿に追随してこれたものは300全てが騎兵。
これに作戦指示をする。
参謀の職責ではないが、ここは頑としても通させていただく。
「敵は鋒矢の陣であろう。こちらの陣形中央に次から次へと新しい敵が突撃してくる。これを徒になって正確に狙撃する。
暴発覚悟で二連弾、火薬は5割増し。
馬を倒せ。
さすれば次の敵もその馬に躓く。中隊長、後の指揮を!」
親衛隊随一の俊英中隊長が即座に作戦に最適な陣形を組みたて、皆に合図をする。
「これより死地に入る!
あの世まで同行せよ。
御恩をここで返せ!
どうせ孤児のまま、あの世へ旅立った身。
殿に意義のある死に方を頂けた!
敵を粉砕せよ!
赤備えを潰せ!
赤備えがどうした!
高々100騎。
こちらは50騎にも満たぬが、手槍の届かぬ先から倒せばよい!
日頃の訓練の成果をここで敵に見せてやれ。
この世で最後に見た物は大胡の銃口だった、と閻魔大王に申告させろ!
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第2分隊右翼。
第3と第4は中央で鴨撃ちだ。
突撃! ……前へ~~~!!!!」
黒と赤の衝突が始まった。
◇ ◇ ◇ ◇
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壮大なスケールだったのですが、
「いや、それは日本じゃないでしょ?」的な
大草原での槍の突き合いの中を騎馬が駆け抜けていく。
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「これ、どう見ても日本人じゃないよね」的な人が
へっぴり腰で戦っているw
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