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第29章:謙信と真っ向勝負
赤岩上陸作戦
しおりを挟む1559年4月下旬
武蔵国忍城西方1里半
東雲尚政
強ええ。
甘く見ていた。やはり軍神といわれる筈だ。
越後勢も強靭な継戦能力がある。
左翼の揚北衆とかいう奴ら。
強いとは聞いていたが、まさか中央突破され背面展開後の壊乱にも耐えやがった。
一時後退した後、再度編成しなおしていた。
指揮官は誰だ?
新田の奴は仕留めたと言っていたが生き残っているだろう。
そうでなければ、これ程素早くは再編できまい。
そしてだ。
先程、驚くべき情報が入ってきた。
こちらも装備を捨てた兵もいたために、再編すべく時間を費やしてしまった。その間、第4大隊に戦線を維持、徐々に後退させていく指示を出した。こちらの主力第1第2第3大隊が泥濘に嵌まったからだ。
高々、2日。2日だ!
その間に第4大隊の後背に敵の揚北衆らしき2000近くの上杉勢が上陸してきやがった。
第4が危ぶねえ。
囲まれる。
後背には別府城があるが、高々国衆の館だ。
300も入れまい。
駐留していた兵が100。
輜重隊300が補給のため東部近郊に駐留していた。
それを急行させたが輜重兵は戦闘要員ではない。
鉄砲を撃ってもあたらねえ。
城にも籠れず敵の襲来を押さえられない。
それにその伝令も間に合うかどうか?
来たら逃げろと伝えたいが、泥濘で伝令も急行できない。煙弾では細かい指示は出せねえから、とにかく急いで第4の後詰だ。
別府城東は少し台地となっている。畑が広がっていたからそうであろう。
そこが戦場となろう。
第4が騎兵幕を張って守るか。
それとも方陣を組むか。
高崎の奴に全てが掛かっちまいやがった。彼奴は大隊長の中でも一番融通が利かねえ。
皆から「トロい」とよく言われる。
だが肝は据わっている。
俺以上かもしれん。鈍感なだけかもしれんが。
とにかく一刻も早く第4の南に出て、できれば敵の左翼を潰す。
それまで何とか耐えてくれ!
高崎、お前のトロさを生かしてくれ!!
◇ ◇ ◇ ◇
別府城東方半里
高崎権兵衛
(百姓上がりの最古参)
おうおう。
上杉ってえ奴らは騎馬よりも速いんか?
旅団長たちよりも早く着いたなぁ。
そうか。
他の大隊は泥濘に嵌まったのか。
伝令も来ないところを見ると相当な泥濘だな。
という事はだ。
あの優に7000以上いる越後の兵を、俺の竜騎兵1000で防ぐってか?
旅団長ならなにかすげ~作戦をすぐに考えるんだろうな。
吾妻の奴もそうだ。
新田の奴も丸顔を膨らませて鼻息荒く思いついたことを自慢するだろうな。
中之条は……いい奴だった。
頭も切れるし度胸もある。
ついでに顔もいい。
いや、
「よかった」だ。
死んだらおしまいだ。
あの世っていうものがあるという連中に聞きたい。
それを見に行ったのか?
見に行ったとかいう奴の言葉は信じねえなぁ。
証明が出来ないことは信じない。
だから部下を死なせたくない。
どんくさいと言われようとも、竜騎兵の機動性を削ぐなよと言われてもなんでもいい。
とにかく重装甲と火力を欲した。
それが殿さんに認められた。
その装備の出番だ。
これがどれだけ役に立つか、
天下に示してやるぜ。
ああ。
俺は名無しの権兵衛か。
轟かせる名前もないなぁ。
今度やっぱり諱を付けてもらうか?
いや、男は一度決めたことは必ず通すべきだ。
それが俺の生きざまだ。
俺は大隊長の印が全くついていない装備で最前列に立ち、全く威厳がないであろう百姓面を上杉勢を睨みつづけた。
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