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第28章:泥沼の忍城
忍城・11
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1559年4月下旬
武蔵国忍城北方半里
網走在施符
(完全にゲームかアニメの狙撃兵のようなチーター)
肩の調子は万全だ。生菊先生には感謝しかねえぜ。
普通ならば左肩が腐っていてもおかしくなかった。なんでも鏃を引っこ抜いたでかい穴を縫い付けて塞いだとか。よくわからんが血が止まって安静にしていたら治っちまったよ。
なんだかよう。
皆に助けられて変な気持ちだ。
だからといっちゃあなんだが、今回は張り切って仕事するぜ。
褒美は要らねえ。
……だが酒をちょっとと、
女子の匂いだけでも……
いかん。
そんなことを考えている余裕はねえ。
ここから北1町(100m)の所に猛煙が上がっている。
そこから徒になった騎馬武者らしき上杉の奴らが抜け出して来る。
あそこしかもう通れる道はねえ。第1大隊の残りの皆は殆ど西へ逃げられた。
第4中隊の連中はついてなかったな。
荒川を泳いで渡っている。
水泳にはまだ早いぜ。
また出てきやがった。
2人か。
まずは左の奴に狙いを定める。昨年配備された冬木式は普通の奴らじゃまだ扱えねえな。
殆ど当たらねえ。
まあ射程距離と弾幕張るための長銃身銃だからな。
いつもの様に尻を地につけて左足を立てる。
ゲッ、尻が冷てえ。
もうこんなに水が流れ込んでいるか。
ここもいつまで通れるか。
それまで連中を足止めすれば任務完了だ。
銃に付いている革の肩掛けの帯紐を左手の甲にぐるりと巻き付け、銃身を右に引っ張り固定。
左膝の上に乗せた銃身の照星と照門を合わせる。
いつもの様に赤い線が見えた。
引き金を落とす。
ズガン!
反動がすげえ。
8匁(30g)弾が上杉の武者が着ている甲冑に大穴を空けた。
いつもながらすげえ威力だ。
4匁弾の倍どころじゃねえ反動だが当たればこの通りだ。
もう一人の武者が沼地になりつつある地面に伏せる。
そんなことしても無駄だぜ。
後ろから弾込め係の奴が次の銃を渡して来る。
それを使って顔を上げている武者の兜を打ち抜く。
武者は顔を泥水で顔を洗いたかったらしい。
それとも飲みたかったのか?
ずっとそっこで飲んでな。
そろそろ大剣の煙が薄れてきた。あと何人か殺れば、終わりにできるか?
幸い敵は騎馬武者だけだ。槍なんざもう騎兵では通用しないんだよ。
せめて弓兵を騎馬させるとかするしかねえ、そんな時代になったんだ。
その後3人倒したとき、後ろから声が掛かった。
「おい。網走。よく当てるなぁ、相変わらず赤いのが見えてるんか?
帰ったら奢ってやる。肴は何がいい?」
第1大隊長の吾妻のあんちゃんだ。
どうやら最後尾で殿軍を指揮して来たらしい。
「おっ、いいねぇ。鮎が獲れていたら鮎の塩焼き。だめなら鰻の蒲焼なんかくれますかい?」
大隊長は撤収の指揮をしつつこっちを向いてそれに答えた。
「高けえもんばっかり注文しやがって! この時期若鮎はまだ獲れねえだろうが。まあ売ってれば奢るぜ。
蒲焼は脂がのってないかもしれんが。それに皆につつかれてあっという間になくなるぞ?」
俺は3年前には絶対言えない言葉を口にした。
「いやぁ、皆には世話になっているからな。これは俺の驕りだよ」
すると大隊長は
「俺の銭だっつーの!」
とぶつくさ言いながらも笑顔で撤退指揮を再び開始した。
武蔵国忍城北方半里
網走在施符
(完全にゲームかアニメの狙撃兵のようなチーター)
肩の調子は万全だ。生菊先生には感謝しかねえぜ。
普通ならば左肩が腐っていてもおかしくなかった。なんでも鏃を引っこ抜いたでかい穴を縫い付けて塞いだとか。よくわからんが血が止まって安静にしていたら治っちまったよ。
なんだかよう。
皆に助けられて変な気持ちだ。
だからといっちゃあなんだが、今回は張り切って仕事するぜ。
褒美は要らねえ。
……だが酒をちょっとと、
女子の匂いだけでも……
いかん。
そんなことを考えている余裕はねえ。
ここから北1町(100m)の所に猛煙が上がっている。
そこから徒になった騎馬武者らしき上杉の奴らが抜け出して来る。
あそこしかもう通れる道はねえ。第1大隊の残りの皆は殆ど西へ逃げられた。
第4中隊の連中はついてなかったな。
荒川を泳いで渡っている。
水泳にはまだ早いぜ。
また出てきやがった。
2人か。
まずは左の奴に狙いを定める。昨年配備された冬木式は普通の奴らじゃまだ扱えねえな。
殆ど当たらねえ。
まあ射程距離と弾幕張るための長銃身銃だからな。
いつもの様に尻を地につけて左足を立てる。
ゲッ、尻が冷てえ。
もうこんなに水が流れ込んでいるか。
ここもいつまで通れるか。
それまで連中を足止めすれば任務完了だ。
銃に付いている革の肩掛けの帯紐を左手の甲にぐるりと巻き付け、銃身を右に引っ張り固定。
左膝の上に乗せた銃身の照星と照門を合わせる。
いつもの様に赤い線が見えた。
引き金を落とす。
ズガン!
反動がすげえ。
8匁(30g)弾が上杉の武者が着ている甲冑に大穴を空けた。
いつもながらすげえ威力だ。
4匁弾の倍どころじゃねえ反動だが当たればこの通りだ。
もう一人の武者が沼地になりつつある地面に伏せる。
そんなことしても無駄だぜ。
後ろから弾込め係の奴が次の銃を渡して来る。
それを使って顔を上げている武者の兜を打ち抜く。
武者は顔を泥水で顔を洗いたかったらしい。
それとも飲みたかったのか?
ずっとそっこで飲んでな。
そろそろ大剣の煙が薄れてきた。あと何人か殺れば、終わりにできるか?
幸い敵は騎馬武者だけだ。槍なんざもう騎兵では通用しないんだよ。
せめて弓兵を騎馬させるとかするしかねえ、そんな時代になったんだ。
その後3人倒したとき、後ろから声が掛かった。
「おい。網走。よく当てるなぁ、相変わらず赤いのが見えてるんか?
帰ったら奢ってやる。肴は何がいい?」
第1大隊長の吾妻のあんちゃんだ。
どうやら最後尾で殿軍を指揮して来たらしい。
「おっ、いいねぇ。鮎が獲れていたら鮎の塩焼き。だめなら鰻の蒲焼なんかくれますかい?」
大隊長は撤収の指揮をしつつこっちを向いてそれに答えた。
「高けえもんばっかり注文しやがって! この時期若鮎はまだ獲れねえだろうが。まあ売ってれば奢るぜ。
蒲焼は脂がのってないかもしれんが。それに皆につつかれてあっという間になくなるぞ?」
俺は3年前には絶対言えない言葉を口にした。
「いやぁ、皆には世話になっているからな。これは俺の驕りだよ」
すると大隊長は
「俺の銭だっつーの!」
とぶつくさ言いながらも笑顔で撤退指揮を再び開始した。
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