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第26章:四境戦争
損失は坂東で起きてるんじゃない。堺でだ!
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1559年4月上旬
摂津国堺
魚屋
(またの名を……)
「では、今回の鎌倉公方足利晴氏様、関東管領上杉政虎様による大胡追討令を機に、大胡札への攻撃を東国でも開始するという事でよろしいでしょうか?」
宗久さんが会合衆の寄合にて決を採る。
なぜか最近は裏で手を回したのか、はたまた顕如様の手を借りたのか、堺を牛耳るようになってきましたね。
今年1月、三好長慶様が幕府の相伴衆に任ぜられ、それと同時に帝から嫡子の義興様が御伽衆に任ぜられました。
対立する細川様は衰退一方。それに連なる本願寺勢力も商圏を伸ばせないでいます。ここは三好様に庇護を受けるのが商人としての手でしょうに。
寄合がお開きとなり帰る道すがら、納屋衆(倉庫業。堺の中心人物の集まり)の主計さんと和泉屋さんが私の方へ近寄ってきた。
私の背丈が6尺もあるため、お二方が足早になってしまいました。
ゆっくりと歩かねば。
「魚屋さん。儲かっていますか?」
渋い顔で話しかけてくる。
「ぼちぼち……と言いたいところですが、あきません」
三好様が淀川の通行権を京の角倉屋さんに与えました。
元々堺がその権利をお認め頂こうとしていたもの。
ですが先の為替戦争で宗久さんが三好様に莫大な被害を与えてしまいました。
なんとかその処理は出来たものの堺の印象は最悪となり、三好様は大胡寄りとなりました。
「堺~京間での物品の商いが厳しくなったのは痛いですな。米の方も東国の商人に先を越されることが多くて利が乗りませんね。俵物(干物)はいかがです?」
私の商いの中心は海産物です。
主に干鰯や干鮑の俵を日ノ本だけでなく、唐国で密輸する倭寇との取引もして稼いでいます。
そちらも滞っていることを伝えると
「……ところでいつから堺はお侍の街になったのですかな? 最近、そういう疑問が出て参りました。少し遅かった」
「そうですね。いままで損した、投入した富を回収することに躍起になっていました(注1)」
あとは大胡様への復讐心でありますね。あの落ち着いていた宗久さんは何処へ行ってしまわれたのか。
「与四郎さん。弟弟子の貴方から見て、今の宗久さんは如何に見えます?」
主計屋さんが私を幼名で呼ぶ。
父と祖父を相次いで亡くし絶望に暮れていた時資金を用立てていただき、最後の賭けに出る事を認めてくれた命の恩人です。
「悲しい限りです。あの詫びの世界、いったいどこへ行ったのでしょう。人の想念とは恐ろしいものです」
同じ(武野)紹鴎先生を師と仰ぐ者として、ただただ哀れと思う。私も一歩間違えれば、あのような道に転げ落ちていたかもしれない。
あの文が届かなかったら……
「そろそろあの人には舞台から降りていただきましょうか。あまりにも深入りし過ぎる。確かに大胡様が滅べばそれに連なる東国の豪商の鎬が手に入る。
しかし堺の本来の商いは西国の筈。最近はそこを大胡札に浸食されている。もうどちらが勝ちどちらが負けているのか全くわかりません。
ですがこれだけは言えます。
大胡札が出来て以来、日ノ本の景気は良くなってきた。それに堺は乗り遅れている」
「そうですね。大胡様の骨を断つつもりで、こちらの肉をごっそり持って行かれています。これは商人の戦い方ではありませんね。どちらへ転んでも儲かるようにせねば」
お二人が堺の本来の商いを確認しています。
今は宗久さんが表で堺を取り仕切っていますが、実際にはこのお二方が実権を握っています。納屋衆10名の殆どの喉元を握っているのですから。
私の喉元も。
「ところで魚屋さん。南蛮船との商売は如何です?」
南蛮船が堺へ年に2度来るようになりました。
これで様々な商品が日ノ本へ入ってくるのを期待していましたが、売り上げの半分以上は硝石。それも利の乗らない相手、武田等に優先的に売っています。
唐国からの密輸品。
磁器や絹なども大胡のものが出回り、利が乗らなくなりつつあります。
「それからこれは定かではないのですが、先月マカオから南蛮船が1隻、品川へ到着したとか。すでにこれで2隻目とも聞き及びます。何を売買しているのかはわかりませんが、南蛮との貿易も特権的なものではなくなりますね」
「それは困りますね。何か策を考えねば」
様々な思惑が入り乱れているようです。
小西屋さんが南蛮、しかもキリスト教寄り。
大きな声では言えませんが博多の神屋さんが大胡様に近寄っているとか。金山の関係で不自然ではないのですが、何やら密約もあるようです。
そういう私も久々に大胡様と連絡を取らねば。
天文(1540年)の大災害を事前にそのことを文で知らせていただき、魚屋が潰れる危機を回避し、剰え米の商売で大儲けさせていただいた命の恩人である政賢様。
何かご恩返しがしたいと申し出ましたが、いつも「何もしなくていいよ~」と仰って下さった。
私もそろそろ地盤がしっかりしてきました。茶の湯も皆さまをお慰めできることもできるまでになった筈。
「旦那様方。この後お時間を少々いただけますか?
少しお茶でも差し上げたいのですが」
私は動くことにしました。
◇ ◇ ◇ ◇
翌日
摂津国堺
小西隆佐
(いつ肝が据わるのかな。この人)
昨日に引き続き、急な会合ですね。
なんだか東国で大きな動きがあったとか。既に大戦になると予想されて様々な大商いの準備がなされています。
今更、これ以上大きな動きとはいったい何を指すのでしょう?
「皆、御集りのようですね。では時は金なり。皆さんで算盤勘定を致しましょう」
納屋衆筆頭の主計屋さんが口火を切る。
算盤勘定?
「先日、関宿のお城にて古河公方、足利晴氏様がお亡くなりになりました。そしてその死因が刺殺。その下手人は……」
皆さんの喉が、ゴクリと鳴る。
「関東管領の上杉政虎様との噂が流れておりまする」
なんと!
皆が驚いている。
いや、納屋衆の3人を除いてです。
主計屋さん、和泉屋さん、そして魚屋さん以外。
「勿論、ただの噂かもしれません。ですが噂でもそれが本当になることもございます。商いの基本ですね。
先物が現物を決めている。噂が現実を変えます。よって我が堺衆もこの影響で変わる損得勘定をしなければなりますまい。
既に私と和泉屋さん、魚屋さんは勘定を致しました。もう大胡様と争うのは下策中の下策。大胡様の庇護下に入り大胡札を普及させた方が大きな利益を得る事は必定。
商人は意地を張ってはいけません。
利益のある方へ転ぶ。今はその転がる方が利益になります。今なら堺が他の商人に先んじて利益を得ることも可能です。私どもは大胡様と手を握ることを提案いたしますぞ」
皆が主計屋さんと和泉屋さん魚屋さんを見た後、顔を宗久さんに向けた。
その先には……
憤怒で今にも燃え上がりそうな赤い顔があった。
「なんですと!? 今までの苦労を全て捨て去り、銭を富をどぶに捨てよと? あの大胡さえいなくなれば再び日ノ本中の商圏を堺が握ることも可能!
何故今頃になって。
大胡は既に風前の灯火! 周りを大勢力に囲まれ、総攻撃を受けるばかり。
あと一押しですぞ。あと少し矢銭を貸し与えて……」
「その矢銭、回収できなかったら如何いたします? 堺は壊滅いたしますぞ? 私どもは商人です。決して武士ではない。
手にする武器は銭と商品、そして算盤です。
宗久さん。貴方のように武士や草を雇って敵を倒すような方はもう商人とは言わないのでは?」
茶の湯で弟弟子である魚屋さんが性格に似合わず、ぴしりと言う。
巨躯から放つこの言葉、商人とは思えない迫力。いつもの物静かな方には到底思えません。
「な、なにを言う! お前まで大胡の味方をするのですか!?」
宗久さんは目の前に対座していた魚屋さんに詰め寄る。
「宗久さん。貴方の出されるお茶、おいしゅうございました。今はどのようなお味なのでしょう?」
姿勢よく優しい目つきになった魚屋さんに向かって宗久さんが叫んだ。
「利休!
お前さんは私の味方ではなかったのですか?
あれほど侘び寂びの世界を追求しようと誓った仲。この戦が終わったらそれを……」
魚屋さんは言葉を遮るようにこういった。
「戦は茶の湯とは正反対。そこへ私は行きたくはありませぬ。もうどうかお戻りください。これが最後の機会かと」
捲し立てる宗久さんの顔の高さと同じくらいの場所に利休さんの顔がある。
唾が利休さんの顔にかかる。
宗久さんの動く方の左手で襟元を掴まれた時、利休さんは唾を拭う事もせず徐に立ち上がった。宗久さんはそのはずみで尻もちをつく。
「ご退場願いなさい」
広間の外に控えていた武士たちに引きずられて外へ連れられて行く宗久さんの声が遠ざかっていく。
「覚えていろ!
堺の奴ら!
利休!
お前は絶対に許さん!
許さんぞ!
今度顔を見たら……して……」
襖が閉じられたのち、短いため息を吐はかれた主計屋さんが宣言した。
「商人ではなくなった方に去っていただきました。それでは商人は商人の道を進みましょう。儲かる道は、どのような道でしょうかな?」
主計屋さんの温厚な顔の裏に獣の顔があるのを知った瞬間でした。銭が全てであるとは思っていましたが、銭は夜動くのでしょうか。
ああ、私は昼間にデウス様に見守られて生きていたい。
◇ ◇ ◇ ◇
注1)コンコルド効果といいます。「せっかくここまで費用をかけて成してきたのだから最後までやり抜くぞ。そう言って多額の出費を出し続ける心理」を言います。
注2)勿論、正史を色々と弄ってあります。様々な研究成果があるようでどの説をとったらよいかわかりませんので、てきと~にストーリー性重視で書き換えましたww
摂津国堺
魚屋
(またの名を……)
「では、今回の鎌倉公方足利晴氏様、関東管領上杉政虎様による大胡追討令を機に、大胡札への攻撃を東国でも開始するという事でよろしいでしょうか?」
宗久さんが会合衆の寄合にて決を採る。
なぜか最近は裏で手を回したのか、はたまた顕如様の手を借りたのか、堺を牛耳るようになってきましたね。
今年1月、三好長慶様が幕府の相伴衆に任ぜられ、それと同時に帝から嫡子の義興様が御伽衆に任ぜられました。
対立する細川様は衰退一方。それに連なる本願寺勢力も商圏を伸ばせないでいます。ここは三好様に庇護を受けるのが商人としての手でしょうに。
寄合がお開きとなり帰る道すがら、納屋衆(倉庫業。堺の中心人物の集まり)の主計さんと和泉屋さんが私の方へ近寄ってきた。
私の背丈が6尺もあるため、お二方が足早になってしまいました。
ゆっくりと歩かねば。
「魚屋さん。儲かっていますか?」
渋い顔で話しかけてくる。
「ぼちぼち……と言いたいところですが、あきません」
三好様が淀川の通行権を京の角倉屋さんに与えました。
元々堺がその権利をお認め頂こうとしていたもの。
ですが先の為替戦争で宗久さんが三好様に莫大な被害を与えてしまいました。
なんとかその処理は出来たものの堺の印象は最悪となり、三好様は大胡寄りとなりました。
「堺~京間での物品の商いが厳しくなったのは痛いですな。米の方も東国の商人に先を越されることが多くて利が乗りませんね。俵物(干物)はいかがです?」
私の商いの中心は海産物です。
主に干鰯や干鮑の俵を日ノ本だけでなく、唐国で密輸する倭寇との取引もして稼いでいます。
そちらも滞っていることを伝えると
「……ところでいつから堺はお侍の街になったのですかな? 最近、そういう疑問が出て参りました。少し遅かった」
「そうですね。いままで損した、投入した富を回収することに躍起になっていました(注1)」
あとは大胡様への復讐心でありますね。あの落ち着いていた宗久さんは何処へ行ってしまわれたのか。
「与四郎さん。弟弟子の貴方から見て、今の宗久さんは如何に見えます?」
主計屋さんが私を幼名で呼ぶ。
父と祖父を相次いで亡くし絶望に暮れていた時資金を用立てていただき、最後の賭けに出る事を認めてくれた命の恩人です。
「悲しい限りです。あの詫びの世界、いったいどこへ行ったのでしょう。人の想念とは恐ろしいものです」
同じ(武野)紹鴎先生を師と仰ぐ者として、ただただ哀れと思う。私も一歩間違えれば、あのような道に転げ落ちていたかもしれない。
あの文が届かなかったら……
「そろそろあの人には舞台から降りていただきましょうか。あまりにも深入りし過ぎる。確かに大胡様が滅べばそれに連なる東国の豪商の鎬が手に入る。
しかし堺の本来の商いは西国の筈。最近はそこを大胡札に浸食されている。もうどちらが勝ちどちらが負けているのか全くわかりません。
ですがこれだけは言えます。
大胡札が出来て以来、日ノ本の景気は良くなってきた。それに堺は乗り遅れている」
「そうですね。大胡様の骨を断つつもりで、こちらの肉をごっそり持って行かれています。これは商人の戦い方ではありませんね。どちらへ転んでも儲かるようにせねば」
お二人が堺の本来の商いを確認しています。
今は宗久さんが表で堺を取り仕切っていますが、実際にはこのお二方が実権を握っています。納屋衆10名の殆どの喉元を握っているのですから。
私の喉元も。
「ところで魚屋さん。南蛮船との商売は如何です?」
南蛮船が堺へ年に2度来るようになりました。
これで様々な商品が日ノ本へ入ってくるのを期待していましたが、売り上げの半分以上は硝石。それも利の乗らない相手、武田等に優先的に売っています。
唐国からの密輸品。
磁器や絹なども大胡のものが出回り、利が乗らなくなりつつあります。
「それからこれは定かではないのですが、先月マカオから南蛮船が1隻、品川へ到着したとか。すでにこれで2隻目とも聞き及びます。何を売買しているのかはわかりませんが、南蛮との貿易も特権的なものではなくなりますね」
「それは困りますね。何か策を考えねば」
様々な思惑が入り乱れているようです。
小西屋さんが南蛮、しかもキリスト教寄り。
大きな声では言えませんが博多の神屋さんが大胡様に近寄っているとか。金山の関係で不自然ではないのですが、何やら密約もあるようです。
そういう私も久々に大胡様と連絡を取らねば。
天文(1540年)の大災害を事前にそのことを文で知らせていただき、魚屋が潰れる危機を回避し、剰え米の商売で大儲けさせていただいた命の恩人である政賢様。
何かご恩返しがしたいと申し出ましたが、いつも「何もしなくていいよ~」と仰って下さった。
私もそろそろ地盤がしっかりしてきました。茶の湯も皆さまをお慰めできることもできるまでになった筈。
「旦那様方。この後お時間を少々いただけますか?
少しお茶でも差し上げたいのですが」
私は動くことにしました。
◇ ◇ ◇ ◇
翌日
摂津国堺
小西隆佐
(いつ肝が据わるのかな。この人)
昨日に引き続き、急な会合ですね。
なんだか東国で大きな動きがあったとか。既に大戦になると予想されて様々な大商いの準備がなされています。
今更、これ以上大きな動きとはいったい何を指すのでしょう?
「皆、御集りのようですね。では時は金なり。皆さんで算盤勘定を致しましょう」
納屋衆筆頭の主計屋さんが口火を切る。
算盤勘定?
「先日、関宿のお城にて古河公方、足利晴氏様がお亡くなりになりました。そしてその死因が刺殺。その下手人は……」
皆さんの喉が、ゴクリと鳴る。
「関東管領の上杉政虎様との噂が流れておりまする」
なんと!
皆が驚いている。
いや、納屋衆の3人を除いてです。
主計屋さん、和泉屋さん、そして魚屋さん以外。
「勿論、ただの噂かもしれません。ですが噂でもそれが本当になることもございます。商いの基本ですね。
先物が現物を決めている。噂が現実を変えます。よって我が堺衆もこの影響で変わる損得勘定をしなければなりますまい。
既に私と和泉屋さん、魚屋さんは勘定を致しました。もう大胡様と争うのは下策中の下策。大胡様の庇護下に入り大胡札を普及させた方が大きな利益を得る事は必定。
商人は意地を張ってはいけません。
利益のある方へ転ぶ。今はその転がる方が利益になります。今なら堺が他の商人に先んじて利益を得ることも可能です。私どもは大胡様と手を握ることを提案いたしますぞ」
皆が主計屋さんと和泉屋さん魚屋さんを見た後、顔を宗久さんに向けた。
その先には……
憤怒で今にも燃え上がりそうな赤い顔があった。
「なんですと!? 今までの苦労を全て捨て去り、銭を富をどぶに捨てよと? あの大胡さえいなくなれば再び日ノ本中の商圏を堺が握ることも可能!
何故今頃になって。
大胡は既に風前の灯火! 周りを大勢力に囲まれ、総攻撃を受けるばかり。
あと一押しですぞ。あと少し矢銭を貸し与えて……」
「その矢銭、回収できなかったら如何いたします? 堺は壊滅いたしますぞ? 私どもは商人です。決して武士ではない。
手にする武器は銭と商品、そして算盤です。
宗久さん。貴方のように武士や草を雇って敵を倒すような方はもう商人とは言わないのでは?」
茶の湯で弟弟子である魚屋さんが性格に似合わず、ぴしりと言う。
巨躯から放つこの言葉、商人とは思えない迫力。いつもの物静かな方には到底思えません。
「な、なにを言う! お前まで大胡の味方をするのですか!?」
宗久さんは目の前に対座していた魚屋さんに詰め寄る。
「宗久さん。貴方の出されるお茶、おいしゅうございました。今はどのようなお味なのでしょう?」
姿勢よく優しい目つきになった魚屋さんに向かって宗久さんが叫んだ。
「利休!
お前さんは私の味方ではなかったのですか?
あれほど侘び寂びの世界を追求しようと誓った仲。この戦が終わったらそれを……」
魚屋さんは言葉を遮るようにこういった。
「戦は茶の湯とは正反対。そこへ私は行きたくはありませぬ。もうどうかお戻りください。これが最後の機会かと」
捲し立てる宗久さんの顔の高さと同じくらいの場所に利休さんの顔がある。
唾が利休さんの顔にかかる。
宗久さんの動く方の左手で襟元を掴まれた時、利休さんは唾を拭う事もせず徐に立ち上がった。宗久さんはそのはずみで尻もちをつく。
「ご退場願いなさい」
広間の外に控えていた武士たちに引きずられて外へ連れられて行く宗久さんの声が遠ざかっていく。
「覚えていろ!
堺の奴ら!
利休!
お前は絶対に許さん!
許さんぞ!
今度顔を見たら……して……」
襖が閉じられたのち、短いため息を吐はかれた主計屋さんが宣言した。
「商人ではなくなった方に去っていただきました。それでは商人は商人の道を進みましょう。儲かる道は、どのような道でしょうかな?」
主計屋さんの温厚な顔の裏に獣の顔があるのを知った瞬間でした。銭が全てであるとは思っていましたが、銭は夜動くのでしょうか。
ああ、私は昼間にデウス様に見守られて生きていたい。
◇ ◇ ◇ ◇
注1)コンコルド効果といいます。「せっかくここまで費用をかけて成してきたのだから最後までやり抜くぞ。そう言って多額の出費を出し続ける心理」を言います。
注2)勿論、正史を色々と弄ってあります。様々な研究成果があるようでどの説をとったらよいかわかりませんので、てきと~にストーリー性重視で書き換えましたww
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更に彼は生まれつき身体が弱く、武術も魔導の才もないというハンディキャップを抱えていた。また、日本で得た知識を使った技術革新も、世界を崩壊させる危険な技術として封じられてしまう。
彼の代名詞である“微笑み”も単に苦し紛れの策に対する苦笑に過ぎなかった。
マティアスは愛する家族や仲間を守るため、大賢者とその配下の凄腕間者集団の力を借りつつ、優秀な友人たちと力を合わせて強大な敵と戦うことを決意する。
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■■■
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