248 / 339
第26章:四境戦争
な~む~
しおりを挟む
1559年4月中旬
下総国関宿城
足利晴氏
(こういうキャラとは作者も知らず……)
そろそろお迎えかの。
よう生きたわ。
戦は下手じゃった。
足利の家に生まれ鎌倉公方となった。
あっちへ担がれ、こっちに良いように扱われて、様々な神輿に乗った。
そんな儂の事を皆
「阿呆公方」
「酔いどれ鎌倉殿」
「昼行燈」と呼んでいた。
儂は阿呆に徹した。
儂は木石じゃ。
若い頃は、小弓(公方)の義明を打倒するため(北条)氏綱と組んで奴を滅ぼした。
だがそれも氏綱の傀儡だったの。
それ以降は単なる神輿じゃ。
国府台の戦以降は家臣どもが後北条の連中憎しで対抗していたが、儂の心は冷えていた。内紛などもういい加減にせい。
儂の生涯は常に内憂外患。
弟(上杉憲寛)と争ったのが止めを刺した。
儂の心は折れた。
もう嫌じゃ。
人と争う事、耐えられぬ。
酒に逃げた。
それでも戦は追ってくる。
河越でも担がれた。
今度は後北条ではなく関東管領に無理やり引っ張られた。
そして河越で敗戦。
古河公方の権威が失われた。
よいではないか。
足利の世はもう過去のもの。
老廃物じゃ。
消え失せて当然。
新しきものがこれからは日ノ本を新しく生き生きと産まれ変わらせるべきじゃ。
河越で威勢の良い童を見た。
それが見る見るうちに頭角を現し、あの後北条を滅ぼした。
祇園精舎の鐘の音じゃな。
諸行は無常なり。
あの若者に後を譲ろうと思うた。公方などというものではない。この坂東を、じゃ。それが儂のできる唯一の歴史に残る大仕事なのだと思うた。
だから大胡から多額の献金をもろうたことを理由に大胡に有利な外交を進めた。
宇都宮の足を止める。里見の地盤である上総国衆に内々にちょっかいを出す。
宇都宮と佐竹を引き離す。
我ながらようやったわ。
もうそろそろいいかの。
大胡からの献金は全て関宿寺の開山に費やした。
儂の供養寺と称して大建設工事。
関宿の治水もその寺の参拝客の安全を高めると称して行った。
そのお陰で関宿は以前にも増して繁栄した。
もうそろそろいいかの。
関宿寺は浄土宗にした。
儂は専修念仏だけでなく人助けもできたかの。
昨年だったか。大胡の使者として拝謁していった赤い模様の装束を纏った厳めしい武者も浄土宗の信者だという。
「必ずや、公方様は御仏の手にて救い上げられましょうぞ」と、
儂の病状を見てか、そういいおった。
もうそろそろ……
「上様! 関東管領様とご嫡男、藤氏様が見えられました!」
枕元に足音がする。
もう目は見えぬが上杉の奴かのう。
一言言うてやるか。
「政虎殿。関東管領として息子を頼む……
というと思うたか。
この阿呆が。
わざわざ病身の儂を鎌倉まで引きずっていきおって。それ程大胡が羨ましいか? お前よりも器の大きい者が。誠に大きい者がいる事、許せぬか。
哀れよの、お前の中にいるのは毘沙門天では決してないぞ。
修羅じゃ。それも帝釈天と争う悪鬼の方じゃ。
お前にはそれが乗り移ってお……
ぐぅ」
此奴。
儂を刺しおったか。
悪鬼の顔が見える。
儂の最後に見る顔……
修羅か。
もう嫌じゃ。
南阿弥陀……
足利晴氏
享年53。
死因、刺殺。
◇ ◇ ◇ ◇
同日同場所
足利藤氏
修羅がこちらを向いた!
「公方様。あの者はどうやら既に抜け殻となり妖気が漂うておりました故、乗り移りし妖を成敗いたしました。既に実質、上様が鎌倉公方でござる。
某が関東管領としてお支え致す。そのお手にて、坂東の平和を乱す大胡を打ち払いましょうぞ!」
ひぃいい。
儂はこれから此奴に担がれ、生きていくことになるのか?
「上様、宜しいですな?」
儂は只々頷き、小声で
「よ、良きに計らえ」
というのが精いっぱいだった。
下総国関宿城
足利晴氏
(こういうキャラとは作者も知らず……)
そろそろお迎えかの。
よう生きたわ。
戦は下手じゃった。
足利の家に生まれ鎌倉公方となった。
あっちへ担がれ、こっちに良いように扱われて、様々な神輿に乗った。
そんな儂の事を皆
「阿呆公方」
「酔いどれ鎌倉殿」
「昼行燈」と呼んでいた。
儂は阿呆に徹した。
儂は木石じゃ。
若い頃は、小弓(公方)の義明を打倒するため(北条)氏綱と組んで奴を滅ぼした。
だがそれも氏綱の傀儡だったの。
それ以降は単なる神輿じゃ。
国府台の戦以降は家臣どもが後北条の連中憎しで対抗していたが、儂の心は冷えていた。内紛などもういい加減にせい。
儂の生涯は常に内憂外患。
弟(上杉憲寛)と争ったのが止めを刺した。
儂の心は折れた。
もう嫌じゃ。
人と争う事、耐えられぬ。
酒に逃げた。
それでも戦は追ってくる。
河越でも担がれた。
今度は後北条ではなく関東管領に無理やり引っ張られた。
そして河越で敗戦。
古河公方の権威が失われた。
よいではないか。
足利の世はもう過去のもの。
老廃物じゃ。
消え失せて当然。
新しきものがこれからは日ノ本を新しく生き生きと産まれ変わらせるべきじゃ。
河越で威勢の良い童を見た。
それが見る見るうちに頭角を現し、あの後北条を滅ぼした。
祇園精舎の鐘の音じゃな。
諸行は無常なり。
あの若者に後を譲ろうと思うた。公方などというものではない。この坂東を、じゃ。それが儂のできる唯一の歴史に残る大仕事なのだと思うた。
だから大胡から多額の献金をもろうたことを理由に大胡に有利な外交を進めた。
宇都宮の足を止める。里見の地盤である上総国衆に内々にちょっかいを出す。
宇都宮と佐竹を引き離す。
我ながらようやったわ。
もうそろそろいいかの。
大胡からの献金は全て関宿寺の開山に費やした。
儂の供養寺と称して大建設工事。
関宿の治水もその寺の参拝客の安全を高めると称して行った。
そのお陰で関宿は以前にも増して繁栄した。
もうそろそろいいかの。
関宿寺は浄土宗にした。
儂は専修念仏だけでなく人助けもできたかの。
昨年だったか。大胡の使者として拝謁していった赤い模様の装束を纏った厳めしい武者も浄土宗の信者だという。
「必ずや、公方様は御仏の手にて救い上げられましょうぞ」と、
儂の病状を見てか、そういいおった。
もうそろそろ……
「上様! 関東管領様とご嫡男、藤氏様が見えられました!」
枕元に足音がする。
もう目は見えぬが上杉の奴かのう。
一言言うてやるか。
「政虎殿。関東管領として息子を頼む……
というと思うたか。
この阿呆が。
わざわざ病身の儂を鎌倉まで引きずっていきおって。それ程大胡が羨ましいか? お前よりも器の大きい者が。誠に大きい者がいる事、許せぬか。
哀れよの、お前の中にいるのは毘沙門天では決してないぞ。
修羅じゃ。それも帝釈天と争う悪鬼の方じゃ。
お前にはそれが乗り移ってお……
ぐぅ」
此奴。
儂を刺しおったか。
悪鬼の顔が見える。
儂の最後に見る顔……
修羅か。
もう嫌じゃ。
南阿弥陀……
足利晴氏
享年53。
死因、刺殺。
◇ ◇ ◇ ◇
同日同場所
足利藤氏
修羅がこちらを向いた!
「公方様。あの者はどうやら既に抜け殻となり妖気が漂うておりました故、乗り移りし妖を成敗いたしました。既に実質、上様が鎌倉公方でござる。
某が関東管領としてお支え致す。そのお手にて、坂東の平和を乱す大胡を打ち払いましょうぞ!」
ひぃいい。
儂はこれから此奴に担がれ、生きていくことになるのか?
「上様、宜しいですな?」
儂は只々頷き、小声で
「よ、良きに計らえ」
というのが精いっぱいだった。
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説

国虎の楽隠居への野望・十七ヶ国版
カバタ山
ファンタジー
信長以前の戦国時代の畿内。
そこでは「両細川の乱」と呼ばれる、細川京兆家を巡る同族の血で血を洗う争いが続いていた。
勝者は細川 氏綱か? それとも三好 長慶か?
いや、本当の勝者は陸の孤島とも言われる土佐国安芸の地に生を受けた現代からの転生者であった。
史実通りならば土佐の出来人、長宗我部 元親に踏み台とされる武将「安芸 国虎」。
運命に立ち向かわんと足掻いた結果、土佐は勿論西日本を席巻する勢力へと成り上がる。
もう一人の転生者、安田 親信がその偉業を裏から支えていた。
明日にも楽隠居をしたいと借金返済のために商いに精を出す安芸 国虎と、安芸 国虎に天下を取らせたいと暗躍する安田 親信。
結果、多くの人を巻き込み、人生を狂わせ、後へは引けない所へ引き摺られていく。
この話はそんな奇妙なコメディである。
設定はガバガバです。間違って書いている箇所もあるかも知れません。
特に序盤は有名武将は登場しません。
不定期更新。合間に書く作品なので更新は遅いです。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

【完結】サキュバスでもいいの?
月狂 紫乃/月狂 四郎
恋愛
【第18回恋愛小説大賞参加作品】
勇者のもとへハニートラップ要員として送り込まれたサキュバスのメルがイケメン魔王のゾルムディアと勇者アルフォンソ・ツクモの間で揺れる話です。

グライフトゥルム戦記~微笑みの軍師マティアスの救国戦略~
愛山雄町
ファンタジー
エンデラント大陸最古の王国、グライフトゥルム王国の英雄の一人である、マティアス・フォン・ラウシェンバッハは転生者である。
彼は類い稀なる知力と予知能力を持つと言われるほどの先見性から、“知将マティアス”や“千里眼のマティアス”と呼ばれることになる。
彼は大陸最強の軍事国家ゾルダート帝国や狂信的な宗教国家レヒト法国の侵略に対し、優柔不断な国王や獅子身中の虫である大貴族の有形無形の妨害にあいながらも、旧態依然とした王国軍の近代化を図りつつ、敵国に対して謀略を仕掛け、危機的な状況を回避する。
しかし、宿敵である帝国には軍事と政治の天才が生まれ、更に謎の暗殺者集団“夜(ナハト)”や目的のためなら手段を選ばぬ魔導師集団“真理の探究者”など一筋縄ではいかぬ敵たちが次々と現れる。
そんな敵たちとの死闘に際しても、絶対の自信の表れとも言える余裕の笑みを浮かべながら策を献じたことから、“微笑みの軍師”とも呼ばれていた。
しかし、マティアスは日本での記憶を持った一般人に過ぎなかった。彼は情報分析とプレゼンテーション能力こそ、この世界の人間より優れていたものの、軍事に関する知識は小説や映画などから得たレベルのものしか持っていなかった。
更に彼は生まれつき身体が弱く、武術も魔導の才もないというハンディキャップを抱えていた。また、日本で得た知識を使った技術革新も、世界を崩壊させる危険な技術として封じられてしまう。
彼の代名詞である“微笑み”も単に苦し紛れの策に対する苦笑に過ぎなかった。
マティアスは愛する家族や仲間を守るため、大賢者とその配下の凄腕間者集団の力を借りつつ、優秀な友人たちと力を合わせて強大な敵と戦うことを決意する。
彼は情報の重要性を誰よりも重視し、巧みに情報を利用した謀略で敵を混乱させ、更に戦場では敵の意表を突く戦術を駆使して勝利に貢献していく……。
■■■
あらすじにある通り、主人公にあるのは日本で得た中途半端な知識のみで、チートに類する卓越した能力はありません。基本的には政略・謀略・軍略といったシリアスな話が主となる予定で、恋愛要素は少なめ、ハーレム要素はもちろんありません。前半は裏方に徹して情報収集や情報操作を行うため、主人公が出てくる戦闘シーンはほとんどありません。
■■■
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも掲載しております。

だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる