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第26章:四境戦争
変な武将が出現
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すみません。
ここから完全にパロディが沢山出る作品となりますm(__)m
1559年4月上旬
真岡城
芳賀高定
(ザ、忠臣!)
ようやっと首を縦に振ってくれた。
無理もないとは思う。
殿の御病弱。神仏に祈るしかないお気持ち、十分過ぎるくらい分かる。
それに儂に背負われての幼少期の落城した宇都宮からの逃避。
これらが相まって伊勢信仰に走るのも頷ける。
その後の宇都宮城の奪還に成功した際にもお伊勢様の御加護だと仰られていた。
お伊勢様には逆らえぬ。
西を攻めてはならぬとのご神勅。
だがそれが大胡の調略であるのは明白。
それを幾ら諭しても聞いていただけなんだ。
しかし此度は、今まで大胡に絡めとられていた古河公方の足利晴氏様の命という名分にて、関東管領になられた上杉様からのご下知。
大胡追討令。
これを無視するわけにはいかぬ。
総動員して大胡を叩く。
一口味噌汁を啜った後、膳を下げさせ昼餉を終える。
そして近習の者に伝える。
「赤井を呼べ」
近習に襖を開けられて入ってきた武士。
一見、僧侶とも見える装束ではある。
目を引くのはその真っ白な頭巾だ。
布で覆われていない部分がない。
只一点、布がない目元も遮光器という、横に筋がついている所から外が見える面を付けている。
日光にさらされると皮膚がただれるという。
普段は禅僧のような禅衣を纏っている。
今年20というがとてもそのような若さには見えぬ手練れた戦をするため、儂の戦名代として雇った。
顔は見たことは無い。
当人は戦で顔に大やけどを負ったというが真かどうかは知らぬ。
大胡の華蔵寺で戦の修行をしていたと真面目に申告してきた。
それでも構わぬか?
それならば仕官いたすと。
儂は雇うた。
なぜならばその出自がすぐに知れたからだ。
あの赤井だ。
館林の国衆。
大胡と由良、佐野に滅ぼされた。
叔母が由良に嫁いでその娘が大胡政賢の正室となっている。
その赤井の世継ぎだ。
何故それが分かったか。
それは異様に白い左手に『指が六本』あったからだ。
このような者はそうそう居ないであろう。
「赤井文六推政、罷り越しました」
目に前に腰を降ろし、赤井の嫡男であった武士が両拳を床に付き深い礼をとった。
「兵の錬成は、どうじゃ」
この者を雇うて1年。
兵が見違えるくらい精強になった。
下野の兵はあまり強いとは言えぬ。
北条や佐竹に比べ見劣りがしていたが、今では士気も旺盛。
長柄でのたたき合い。
弓兵の練度。
そして移動力が見違えるほど改善した。
この前など、1里の道を普通ならば半刻は掛かろうかという道のり通常の3倍の速さで駆け抜け、そのまま合戦の訓練に入った。
驚いたわ。
一人が太鼓をたたきながら行軍の音頭をとる。
そして皆が足並みを揃えて、同じ歌を歌い士気を高めていく。
「合戦は神速が大事。捕まらねば負けませぬ。そして敵の痛い所を叩く。このように軍勢を仕上げ申した」
という。
「この場でご下知あれば、すぐさま駆け出せるように準備整えてありまする。して此度は攻城戦にはなりまするか?」
攻城ともなるとその神速、生かせまい。
よって違う策を採るというが……
「うむ。宇都宮の戦名代は儂の甥、高継が務める。あ奴は心根が気になるが戦はうまい。儂と対局じゃな。もっと儂に武威があれば……」
いかぬ。
家臣の前でいう台詞ではなかった。
「お任せあれ。外様の新参者が言う台詞ではござらぬが、確と監視したしまする故、ご安心召され。それよりも宇都宮城を堅固に守ること重要でござる。
先のような……
失礼いたした」
乗っ取られては困るか。
ここはこの者に任せるしかあるまい。
儂が戦に出ても大した働きは出来ぬ。
「攻城戦になるであろう。佐野が第一の目標にならざるを得ぬ。佐野、足利、館林、新田金山の順じゃ。佐野は大胡に降り大胡の兵が駐屯している。多分、堅城、唐沢山城に立て籠るであろう。
あそこは厄介じゃ。何か策はあるか?」
推政は下を向きつつ、しばし考えた後、こう言い放った。
「これもお任せを。1か月のうちに貫いて見せましょう」
なんと。
大した大口じゃな。
「そのような大口、叶わなんだら如何いたす?」
「その時には如何様にも」
また潔いというか、命知らずというか。
この男の事、何か既に仕組んでいるか?
「その代わり。もし1か月以内に落城させたならば……」
「お家の復興じゃな。館林が手に入ったらそこを与える。そう必ずや広継様に確約させよう」
赤井は白い頭巾を床に近づけ再び礼をとった。
◇ ◇ ◇ ◇
同日
赤井推政
(なんと読むでしょう?)
芳賀の爺さんの所から帰ってすぐに水浴びをした。
周りは人払いをして天幕で何重にも覆っての水浴び。火照った体に水が心地よい。素っ裸になるにはこのような天幕が必要だ。
館林城だと?
要らぬ。
もう過去は捨てた。
私は自分の力だけで生きていく。どこまで駆け上がれるかは分からないが、折角この乱世に生を受けたのだ。思うように生きていく。
そのための仕官。
そのための兵の訓練。
そのための功名。
大胡は確かに心地よかった。
だが物足りぬ。
平等だと?
福祉だと?
甘い。
できる者、強いものがその努力でのし上がっていく事、何が悪いのか。
叔母上にも会わなかった。
どうせ一方的に頭を押さえつけられるだけだ。
だから学ぶだけ学んで仕官せずに放浪に出た。
こんな私を使ってくれる場所を探しに。
そこで力を付ける。
功名。
これがないと天下を駆けあがれぬ。
どうせそう長くは生きられない。
このような体に生まれてはたかが知れている。
体は素早く動くが力がない。
打たれれば切られればそれで仕舞い。
だが当たらなければどうということは無い。
素早さだ。
素早さこそすべて。
どれだけ早く功名をたててどこまで天下に近づくか。
やってみるのも面白いではないか。
私は体を柔らかい布で拭いた。
強く拭くと途端に皮膚が赤くなる。
この真っ白な体。
この真っ赤な目。
皆が目を背けるか好奇の目を向けてくる。
最後に真っ白な、妹に言わせると
「金色の髪の毛」
の水気をゆっくりと布に吸わせてから服を着る。
皮膚が外に露出しないように注意しながら。
詮の無いことだな。
これだけは速くできない。
そうか、逆なのか。
この毎日の所作が遅い事を補うためにそれ以外を早く、速くする工夫をし始めて今に至るのか。
ならばそれでよい。
体を動かさずともよい。
自分が動かなくとも人を動かす。
その達人となってやろう。
最後に白い越後上布の頭巾を被り思った。
この白い頭巾が赤く染まる時まで。
人の3倍の速さの人生を送ってやる、
と。
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1559年4月上旬
真岡城
芳賀高定
(ザ、忠臣!)
ようやっと首を縦に振ってくれた。
無理もないとは思う。
殿の御病弱。神仏に祈るしかないお気持ち、十分過ぎるくらい分かる。
それに儂に背負われての幼少期の落城した宇都宮からの逃避。
これらが相まって伊勢信仰に走るのも頷ける。
その後の宇都宮城の奪還に成功した際にもお伊勢様の御加護だと仰られていた。
お伊勢様には逆らえぬ。
西を攻めてはならぬとのご神勅。
だがそれが大胡の調略であるのは明白。
それを幾ら諭しても聞いていただけなんだ。
しかし此度は、今まで大胡に絡めとられていた古河公方の足利晴氏様の命という名分にて、関東管領になられた上杉様からのご下知。
大胡追討令。
これを無視するわけにはいかぬ。
総動員して大胡を叩く。
一口味噌汁を啜った後、膳を下げさせ昼餉を終える。
そして近習の者に伝える。
「赤井を呼べ」
近習に襖を開けられて入ってきた武士。
一見、僧侶とも見える装束ではある。
目を引くのはその真っ白な頭巾だ。
布で覆われていない部分がない。
只一点、布がない目元も遮光器という、横に筋がついている所から外が見える面を付けている。
日光にさらされると皮膚がただれるという。
普段は禅僧のような禅衣を纏っている。
今年20というがとてもそのような若さには見えぬ手練れた戦をするため、儂の戦名代として雇った。
顔は見たことは無い。
当人は戦で顔に大やけどを負ったというが真かどうかは知らぬ。
大胡の華蔵寺で戦の修行をしていたと真面目に申告してきた。
それでも構わぬか?
それならば仕官いたすと。
儂は雇うた。
なぜならばその出自がすぐに知れたからだ。
あの赤井だ。
館林の国衆。
大胡と由良、佐野に滅ぼされた。
叔母が由良に嫁いでその娘が大胡政賢の正室となっている。
その赤井の世継ぎだ。
何故それが分かったか。
それは異様に白い左手に『指が六本』あったからだ。
このような者はそうそう居ないであろう。
「赤井文六推政、罷り越しました」
目に前に腰を降ろし、赤井の嫡男であった武士が両拳を床に付き深い礼をとった。
「兵の錬成は、どうじゃ」
この者を雇うて1年。
兵が見違えるくらい精強になった。
下野の兵はあまり強いとは言えぬ。
北条や佐竹に比べ見劣りがしていたが、今では士気も旺盛。
長柄でのたたき合い。
弓兵の練度。
そして移動力が見違えるほど改善した。
この前など、1里の道を普通ならば半刻は掛かろうかという道のり通常の3倍の速さで駆け抜け、そのまま合戦の訓練に入った。
驚いたわ。
一人が太鼓をたたきながら行軍の音頭をとる。
そして皆が足並みを揃えて、同じ歌を歌い士気を高めていく。
「合戦は神速が大事。捕まらねば負けませぬ。そして敵の痛い所を叩く。このように軍勢を仕上げ申した」
という。
「この場でご下知あれば、すぐさま駆け出せるように準備整えてありまする。して此度は攻城戦にはなりまするか?」
攻城ともなるとその神速、生かせまい。
よって違う策を採るというが……
「うむ。宇都宮の戦名代は儂の甥、高継が務める。あ奴は心根が気になるが戦はうまい。儂と対局じゃな。もっと儂に武威があれば……」
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家臣の前でいう台詞ではなかった。
「お任せあれ。外様の新参者が言う台詞ではござらぬが、確と監視したしまする故、ご安心召され。それよりも宇都宮城を堅固に守ること重要でござる。
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ここはこの者に任せるしかあるまい。
儂が戦に出ても大した働きは出来ぬ。
「攻城戦になるであろう。佐野が第一の目標にならざるを得ぬ。佐野、足利、館林、新田金山の順じゃ。佐野は大胡に降り大胡の兵が駐屯している。多分、堅城、唐沢山城に立て籠るであろう。
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大した大口じゃな。
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この男の事、何か既に仕組んでいるか?
「その代わり。もし1か月以内に落城させたならば……」
「お家の復興じゃな。館林が手に入ったらそこを与える。そう必ずや広継様に確約させよう」
赤井は白い頭巾を床に近づけ再び礼をとった。
◇ ◇ ◇ ◇
同日
赤井推政
(なんと読むでしょう?)
芳賀の爺さんの所から帰ってすぐに水浴びをした。
周りは人払いをして天幕で何重にも覆っての水浴び。火照った体に水が心地よい。素っ裸になるにはこのような天幕が必要だ。
館林城だと?
要らぬ。
もう過去は捨てた。
私は自分の力だけで生きていく。どこまで駆け上がれるかは分からないが、折角この乱世に生を受けたのだ。思うように生きていく。
そのための仕官。
そのための兵の訓練。
そのための功名。
大胡は確かに心地よかった。
だが物足りぬ。
平等だと?
福祉だと?
甘い。
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叔母上にも会わなかった。
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どうせそう長くは生きられない。
このような体に生まれてはたかが知れている。
体は素早く動くが力がない。
打たれれば切られればそれで仕舞い。
だが当たらなければどうということは無い。
素早さだ。
素早さこそすべて。
どれだけ早く功名をたててどこまで天下に近づくか。
やってみるのも面白いではないか。
私は体を柔らかい布で拭いた。
強く拭くと途端に皮膚が赤くなる。
この真っ白な体。
この真っ赤な目。
皆が目を背けるか好奇の目を向けてくる。
最後に真っ白な、妹に言わせると
「金色の髪の毛」
の水気をゆっくりと布に吸わせてから服を着る。
皮膚が外に露出しないように注意しながら。
詮の無いことだな。
これだけは速くできない。
そうか、逆なのか。
この毎日の所作が遅い事を補うためにそれ以外を早く、速くする工夫をし始めて今に至るのか。
ならばそれでよい。
体を動かさずともよい。
自分が動かなくとも人を動かす。
その達人となってやろう。
最後に白い越後上布の頭巾を被り思った。
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彼は情報の重要性を誰よりも重視し、巧みに情報を利用した謀略で敵を混乱させ、更に戦場では敵の意表を突く戦術を駆使して勝利に貢献していく……。
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あらすじにある通り、主人公にあるのは日本で得た中途半端な知識のみで、チートに類する卓越した能力はありません。基本的には政略・謀略・軍略といったシリアスな話が主となる予定で、恋愛要素は少なめ、ハーレム要素はもちろんありません。前半は裏方に徹して情報収集や情報操作を行うため、主人公が出てくる戦闘シーンはほとんどありません。
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