首取り物語~北条・武田・上杉の草刈り場でざまぁする~リアルな戦場好き必見!

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第26章:四境戦争

水陸両用戦できるとこは強い

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 1559年3月下旬
 下総国小弓城
 里見義堯


 政虎の奴。
 とんだ食わせものだな。いかれておる。
 自分に酔うておるだけならよいが、それを自覚できぬとは。
 神仏が宿っているだと?

 そう簡単に神仏が宿るわけがなかろう。

 自分で言うて自分で納得するとは。しかも涎を流して目が虚空を見ていたわ。

 ……じゃが彼奴、戦は強い。

 配下の者もその強さが『神仏が宿っている』と信じさせる。
 だから勝つ。
 これの繰り返しよ。

 精々こっちはそれを利用させてもらおう。

 4年越しの外交でようやっと坂東に引きずり出せたのだ。
 それを大胡にぶつける。

 大胡がこれ以上大きくなったら、たとえ周りの大名が総掛かりでも潰せんところまで来ておった。

 関東管領の威光も少しは役に立とう。
 これで大胡に味方は居らぬ。
 ああ遠くに1人いたな。
 織田という奴が。

 じゃがあれだけ遠いと、どうにもならぬであろう。
 東海道を通ろうにも、まだ今川が最後の踏ん張りを見せているから思うに任せぬであろう。

 海で兵を派遣するにしても精々3000程度。
 それも相模湾に入ればこちらの水軍に襲われる可能性がある。
 一気に輸送は出来まいて。

 大胡の水軍、元は北条と今川の水軍じゃ。

 伊勢湾の佐治水軍もいるそうじゃが、こちらへ来るには伊勢湾の情勢が気に掛かろうて。

 今川と北条の水軍は歴史が浅い。
 銭に飽かせて寄せ集めた大型の関船をこちらの倍は持っていよう。
 更に瀬戸内で作られ始めた安宅船も何艘か持っている。

 今はどうやら西伊豆の入り江で多数の船を作っているようじゃが、そうそう優秀な船乗りが育つわけもない。

 こちらの小早は数で同等。
 船乗りの練度と士気も高い。

 しかしあの関白は大胡贔屓じゃな。
 しつこかった。

 あの船を臨検し女子に狼藉をした件。
 しらを切り通すにもその女子と船がおらん。

 冷泉家を通して関白の使者を引き取らせた。
 銭がかかったわ。

 里見は水軍を持って江戸湾を制覇する。
 沿岸の何処へでも上陸すると見せかけ脅かすだけでよい。
 その内大胡の本隊が武田と上杉に撃破されるであろう。

 その時に再度江戸城をいただく。
 ついでに品川もな。

 そのためには確実に制海権を取ることが必要。
 三浦半島よりこちらへは向かわせぬ。

 半島の先端、三崎城か油壷。

 この辺りを落とすか。
 ここに集中じゃ。

 陸からは攻められぬ場所。
 小早ならば陸へ寄っていき上陸して一気に落とせよう。

 利根川沿いには囮で5000もいればよかろう。

 あの大河は容易には越えられぬ。
 ましてや制海権を取られていると思うていたら尚更じゃ。
 残り15000。

 これを江戸湾越しに大胡領へ流し込む。

 後は……。

 あの酒飲み鎌倉公方がいつくたばるかだ。
 その時が開戦時期であろう。

 そうだな。
 関宿も欲しい。
 宇都宮にくれてやるには惜しい要所じゃ。

 迷うのう。
 楽しい迷いぞ。

 はははは。

 ◇ ◇ ◇ ◇

 1559年3月下旬
 甲斐国躑躅が崎館
 武田信玄


 遂に来たか! 
 この時が。

 長尾、ではないか。
 上杉が関東管領になって最初に行ったこと。

 それが大胡の追討令。
 甲斐は関東ではないが誘いはきた。既に堺と本願寺を通じて内々に打診があったが。

 東は里見と宇都宮。
 それに佐竹も呼応するという。
 あの曲者の里見は多分水軍を前面に押し立て相模湾か三浦を制覇するであろう。
 その間に江戸湾沿岸を掠めるに違いない。

 関宿を宇都宮と争わねば良いが。
 この辺りは大胡の智円というたか、外交僧が出張って調略をせぬとも限らぬ。

 様子を探らせねば戦線にほころびが出る。

 ふふふ。政賢。
 調子に乗って領国を広げすぎたな。
 柔らかい腹が丸見えじゃ。
 武田は何処へでも出ていける。

 碓井峠を通って西上野か。
 大菩薩峠、笹子峠を通って西武蔵。
 岩殿を通り相模へ。
 富士川を下り駿河へ。

 このすべてに大胡の兵を張り付ける事能わぬ。
 素早く動ける騎馬隊が2群いるが箱根がある故、移動は難しいじゃろう。

 その内の1群。
 鬼美濃。あ奴を調略できぬか?

 この前は息子を使い何とかしようと思うたがその前に品川方面が崩れた。

 此度は彼奴がいる場所を三ツ者に探らせて、策を練ろう。

 勘助がおらぬが悔しい。
 このような時調略を任せられる者がおらぬ。

 あ奴も替えの利かぬ者であったか。
 無くなった時に分かるの、その有難さが。

 人は城。
 人は石垣じゃな。

 忘れておった。
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