首取り物語~北条・武田・上杉の草刈り場でざまぁする~リアルな戦場好き必見!

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第26章:四境戦争

やっぱり出てくるこのチート野郎

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 1559年3月下旬
 武蔵国滝山城
 上泉秀胤


「本当に宜しかったのですか? 
 すんなりと帰してしまわれて。今攻撃すれば袋の鼠。必ずや上杉勢、討ち果たせましょう」

 赤くなっていた顔の腫れが徐々に青く、そして黄色に変わってきている殿に念を押した。

 牢に入るまでにも大分殴打されていたらしい。これを見たら大胡のものは、どのような怒りを見せるか。
 少々恐ろしくもある。

 化粧坂切通での追っ手は、父上が殿を務めて難を逃れた。

 この切通は他の切通と比べ、1人で大軍を防げる程の狭き通路。手練れ一人を置いて封鎖していたか。父上と引き分けるとは余程の剛の者。
 時間切れでお互いに無傷で槍を収めた。

 戦い方を見たかったがそれは某の仕事ではない。その場にいても役に立たぬ者は危険な所には居てはいかぬ。

 父上の言うには相当な手練れらしい。父上と20合も槍を合わせて無傷とは!
 その者を配置することで油断したか。このように殿に逃げられること想定していたのであろうか?

 しかしそのお陰でその武将を追い払う事で山を登らずに切通を通ることが出来たのは幸いであった。

 その時玉縄に集結していた大胡勢約2万。それ以外にも周囲の城に1万以上いた。
 それに対し上杉勢8000弱。
 揉みつぶすことも可能であったろう。

「いいのいいの。
 今、関東管領攻撃しちゃったら完全に大胡は賊軍よん。だから受けて立つ姿勢が大事。そして……領民には悪いけど乱取りしてもらう。
 逃げるように指示してからね。物だけ取ってもらいましょう。
 兎に角、関東管領の権威を完全に潰して、こちらに同情する世論を作り出す! これだけ悪い子ちゃんぽいんと累積しちゃうとどっちみち総攻撃されるから。
 だったら民を味方につけるだけです」

 布団に寝たまま左腕だけ、拳を上へ振り上げる殿。


「では、不自然にならぬように上杉勢の兵糧が無くなる手配を。そして何処かの城からちょっかいを出させるのが良かろうかと。もしくはそのまま越後なり信濃なりへと一時的に退散していただくか」

 同席している真田幸綱殿が仰る。

 ここ殿の寝所には、4名の家臣がいる。
 真田幸綱殿と某。

 そして幸綱殿の三男で政幸殿(で、出た!チート野郎!読み仮名は同じだ)某の隣には竹中半兵衛殿。

 この二人は殿直々の命にて、以後このような元円卓会議の密談に呼ばれることとなった。どうやら殿は、この二人を高く買っているらしい。

 当分は
「読み專じゃなかった、聞き専だよ~」
 だそうだ。

「豪華メンバー」と喜んでおられた。

「ん~。ちょっといんぱくと弱いねぇ。もっとこうガツン!
 と世の中がひっくり返るような事件が欲しいなぁ。でもやりすぎるとどうしても領民の虐殺とかになっちゃうし。それはヤダヨ」

 虐殺については政虎は加賀で既に多数の一向宗を惨殺しているので今更な気がする。
 
 皆が腕組をしている。新顔の二人も真剣に考えている。

 16と14か。
 某の若い頃とはだいぶ違うな。
 やはり殿の見立ては凄い。

「殿。先にお考えをお聞きかせくださいませ。上杉は何故この時期を見計らい同盟を解消したのか? 大胡領の真っただ中ではござらぬか?」

「え~と。軍神でも間違えあるっしょ。僕を逃がしたとしても、取り敢えず里見領へ逃げる手もあるし。それから江戸城攻めるとか江戸湾乗り越えてどっかに上陸。
 再戦を期す。
 そう思っているんじゃないの?」

 殿は気楽に仰られるが、何か見落としはないか?

「……風。あ、いや……」

 つい口に出てしまったのであろう。
 口元を押さえてしまったという顔をする政幸殿。

「いいよいいよ。だれも無理に無口でいろとは言っていないよん。気づいたことは言ってね」

「はっ。この季節、南風が強くなる筈。関宿から一気に上野へ船で遡上できませぬか?」

「あ……それ来るね。
 きっと。
 古河公方も味方にできるし、あの領地接収できるかも。これまた厳しい手を。
 ひぃ」

 殿は動く方の左手で顔を覆った。
 固定していた右手を動かそうとして
「ひぃ」
 と言ったのかは分からぬが。

 痛かったことは確かだ。

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