首取り物語~北条・武田・上杉の草刈り場でざまぁする~リアルな戦場好き必見!

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第25章:大胡最大の?ピンチ

リザルト回?・2

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 久々の前説。
 やっぱ佐藤大輔テイストには欠かせない。

 生菊っち。
 万能になってきたww
 https://kakuyomu.jp/users/pon_zu/news/16816927860451689966

 ◇ ◇ ◇ ◇

「次は大胡道定殿の代理として、永田生菊殿」

 道定殿は品川を中心とした相模と武蔵南部の内政を取り仕切っている。
 本来の医療・厚生部門の後進が育っていないため、甲斐より帰参した永田生菊殿に殿たっての頼みとして、一時的に厚生部門を取り仕切っていただいている。

 本来なら研究に没頭したいところであろう。
 その方がが日ノ本の為でもある。

「はい。石鹸での手洗いが習慣として定着いたしました。それだけで大分罹患する者が減りました。これはぜひ日ノ本中に広めたいです。
 或粉保流と脱脂綿による雑菌排除の効果は驚異的です。熱消毒が出来ない場合には必需品。傷を縫合する技術も10名以上の者が身につけ、現在多くの者に教えております。その際に動脈を縫う作業が出来ることにより多くの者が救えるようになりました」

 これを聞いた殿の目にはうっすらと涙が。

「生まれてきた甲斐があった……」
 と小声で言われている。

「親や兄弟を戦で無くした者の中には医の道を志すものが多く、また女子にも多いため内科医や看護婦として育成しています。流石に手足を切る事、女子には難しく、また体力のいる作業である故」

 女子の中には体力のある者もいるがやはり難しいか。
 人それぞれの適材適所だ。

「人の病の原因で一番多いのは腹下しで栄養が取れぬこと。よって腹の薬を作り申した。反魂丹と申します。
 薬種は永田徳本先生の伝手にて入手したものと山科屋さんから常時入手できます故、大量に作れまする。これをどこかの人出の多い場所にて内職にするのもよかろうかと」

 この先生は、どんどん色々な物を発明してくれる。
 得難き人材だ。
 決してなくしてはならぬ。

「また各地に医師を派遣。診療所を開設できるまでになって参りました。坂東くらいの広さならばそれは可能かと。それ以上は今暫しお待ちください。
 あと数年すれば、相当な人数の医療関係の人材が輩出できるかと。
 しかしそれも各地で実際に経験していかねば一人前にはなりますまい」

 やはり厳しい。
 永田徳本先生の元で、そう育てられたか。

「軍医はまだまだ不足です。外科的手術が出来るものはまだ10名程。大胡の軍勢を支える数になるまではあと数年は掛かります。これは永遠の課題でしょう。
 またどうしても不具の者が出ましょう。その者のための義足等を作る者も必要。やることは山積しておりまする」

 こちらへ戻ってきて1年余り。
 研究の合間にそこまで道定殿と詰めてこられたか。
 頭が下がる。

「では真田幸綱殿から外交も含めて諜報について。
 お願いいたす」

 司会の拙僧が言うのを避け、真田殿にお願いする。

「承知いたした。
 現在の同盟国は越後長尾家と尾張織田家。長尾家は来年にも上杉の名跡を継ぐ見通し。越後の方針、わかり申した。来年春から秋にかけ越中に一大攻勢を掛けまする。
 その攻勢終末点が何処かは確とは分かりませぬが、どうやら加賀と越前北部を支配する一向宗高田派を攻め滅ぼす勢いとなること必定。
 そのための外交調略を石山本願寺に仕掛けている模様。
 大胡に取り危険やもしれませぬ。
 長尾が本願寺けんにょと和解する可能性が出て参りました」

 これが危険だ。
 元々本願寺の顕如と加賀土一揆の高田派とはそりが合わぬ。
 ここを如何なる方法かひびを入れたのか。

 大きな激突が発生するか。
 しかし越後長尾家の動員力は、せいぜい15000。
 行動できるのは10000程度であろう。
 その程度では20万以上の一揆衆に勝てようか?

「織田は三河を完全に手中に収めました。
 松平元信は信康と名を改め織田に臣従いたし、曳馬城を与えられ遠江攻略の最前線にて働いているとの事。
 今川は本拠を掛川城に移し徹底抗戦の構え。大胡へは構っていられぬ様子。
 また鉄砲の威力は抜群にて。置いて来た鉄砲と合わせて1000丁による攻撃で堅城高天神城も陥落したとの事。今川滅亡までもう時間の問題かと」

 しかし織田にはもう火薬が残っていまい。

 あとは包囲戦で落とすであろう。織田の軍は大胡と同じ常備軍だ。
 補給が続く限り攻囲できる。

「問題は東でござる。里見の動向、芳しくあり申さぬ。江戸城は退去させ小弓城に本拠を移し申した。現在宇都宮の家臣を調略し、対大胡戦へと方針を改めさせつつあり申す。
 そして古河公方を隠居させようとの動きも。これに成功すれば関宿で交通を遮断されまする。
 また房総水軍への調略は未だ功を奏さず。依然江戸湾の制海権は里見が握っており申す。利根川下流域は一度戦端を開けば、完全に通行不可能となりまする」

 里見の厄介さはその水軍にある。

 それから関宿。
 古河公方を味方に付ければその閉鎖は可能。
 まさか弑逆は出来まいが、それ以外の手を使って来るだろう。
 今後の坂東の計略。
 この関宿が焦点となろう。

「由良殿の領土と足利長尾領。
 それに加え佐野殿の領土を併合した事により完全に宇都宮と敵対することになり申したが、当主宇都宮広綱のみが大胡との断交に消極的。
 外交を担当する芳賀高定に翻意を求められておりまするが未だ首を縦に振らず。
 その間にも芳賀は佐竹との同盟をさらに固くし対大胡の戦、準備をしておりまする」

 織田殿はお市様との婚姻で強固な結びつきがあるが、景虎殿が危険だ。
 この御仁が『もし』同盟を破るようなことあれば、大胡は四方に敵を作ることになる。

 その時、敵を取りまとめる者がいれば……
 その時こそが大胡にとっての大峠となろう。

 好物の高野豆腐を口に入れるが味はしなかった。


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