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第25章:大胡最大の?ピンチ
庶民が世界を動かしているんだよ
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1557年9月中旬
摂津国堺
今井宗久
「なんですと?
日ノ本中で大胡札が無くなりつつあると?」
情報を取り扱う番頭がそう伝えてきました。
番頭さんの顔が青ざめています。原因は報告内容にでしょうか?
それとも私が怖くてでしょうか?
私も落ち着かなくては。
「は……はい。
下関や品川の情報が伝わるのに4日以上かかります。
気づいた時にはもう遅く」
大胡のような伝書鳩の準備は出来ませんでした。せめてもと鷹を使って邪魔をしましたが、それも途中からできなくなりました。
何か別の方法で情報を伝えているようですね。
「京と堺ではどうなのです?」
「各宗門の邪魔立てにより、京にて鉄を捌くことが出来ず淀川を遡っての売り捌きはあまりできませんでした。堺では大胡札は出回っていません故……」
それで気づくのが遅れたと。
もっと多くの場所で鉄の暴落を起こせばよかった?
いえいえ、それでは暴落にはなりません。
少ない場所で大量に売るため暴落するのですから。
大胡札を増やすか、銭を減らすかしなければ。
大胡札を増やす方法はありません。
ですから市中に出回る銭を減らす。
これしかない。
今回のことで、もう堺の売り物が殆ど売れなくなっています。
庶民や商人が銭を退蔵しているのです。だから商売には大胡札が使われます。
これは巡り巡ってあの小賢しい公界市とやらに吸収されていってしまう。どうやらあそこではまだ大胡札と銭を交換しているらしい。
こうなったらこちらでも銭を大胡札に替える反対売買をするしかない。
「大番頭さん。使える銭はあといくらくらいあります?」
「予定していた銭はもう使い切りました。あとは今後の運営資金だけです」
「その額は?」
焦りが声に出てしまいました。
大番頭さんの顔が引きつります。
「は、5千貫文と少しです」
それをつぎ込むか?
ここでそれを使ってしまっては失敗した時は、物価を上げるために買い占めた商品をあとで売って回収すればよい。あの『おぷしょん価格』さえ何とかなれば問題はない筈。
「あの男を呼びなさい」
連れてこられた男の目は死んでいた。
アヘンでやられた目です。
息も臭い。
「あれをくれ。……ください。
お願いします。
何でもします……」
ここまで中毒になるとは恐ろしい。
でもこれがなければ『おぷしょん』の仕組みと為替相場との関連などが分からなかった。
「明日。取引が再開された時、どのくらいの利益が出ますか?」
「……わからない。もっと情報がないと。それとあれがないともう仕事は出来ない」
つかえない!
『おぷしょん取引』で大胡に多額の借金を作らせて破産させる事、それが出来るまで銭の力で押し切るか?
もうそれしか道は残されていない?
ここで私が引き下がったら大胡札の信用は回復してしまうかもしれません。
銭が足りないのですから、大胡札を使わざるを得ないでしょう。
やるしかない!
残る銭で京にて大胡札を買い占める。
それを公界市へ持って行き交換を迫る。
私はそう大番頭さんに指示を出した。
京で大胡札を買い占める事を。
明日で間に合うか?
重い銭や銀を舟に積んで公界市まで運べるか?
◇ ◇ ◇ ◇
最終日午後
市庁舎前
厩橋義衛門
「御山から220貫文、強引に奪い取ってきた。
これを足してあといくらくらい必要だ?」
先程、人力車で金策のために走り回っていた磐梯屋さんが正門へ到着しました。
私はそれを待ちきれずここに立っています。
「今数えている所ですが、大胡札を銭に替えようと交換所に並んでいる人の総額は、〆て2210貫文です。これさえ捌ければ、明日の『おぷしょん価格』は堺に大損をさせられるところまで行くでしょう。
そこから大胡札の再出発が可能となります」
「そして東国経済圏が救われると。
……悪いな、今まで黙っていたんだが、まだ磐梯屋の運転資金が残っているんだ。
870貫文、これを使ってくれ」
そんなことをしたら、もう藤兵衛さんは生きていられなくなる!
やめてください、と言いましたが、
「いや。俺をここまでにしてくれたのは大胡の殿さまだ。その大胡が潰れて俺が生き残るなんざぁ俺には出来ねぇ。これを使って納屋の奴を破産させてやろうぜ」
……銭とは恐ろしいものですね。
人を殺す。
しかし生かすこともできる。
こんな1枚の小さな平たいものがそんな力を持つ世。
この力、悪意を持つ者に渡すわけにはいきません。
これは商人の戦です。
その場では血は流れない。
しかし多くの者を不幸のどん底に突き落とし、自死する者も多く出るでしょう。
お侍さんの決戦と何も変わらない。
「わかりました。使わせていただきましょう。
私の財産、少なくなってしまいましたが110貫文。
これも使いましょう。これで残り1230貫文。
あと1刻で集めねば!」
大声をあげて気合を入れる。
でも交換所の正門へ入る気力も残されていない。
門番の椅子を借りて座り、そこから市の賑わいを眺めていた。
今日を無事やり過ごせば道は開ける。
ですが……
この公界にはもう銭が残っていない。
今日交換停止となれば明日からの大胡札の信用がガタ落ちで、おぷしょん価格が堺側に有利に跳ね上がる。
ここぞとばかりにあの憎らしい宗久が注文を出すでしょう。
それで仕舞。
逆にここを凌いで明日を迎えれば納屋は莫大な損失を被る。
絶望感と共に日が暮れていく。
いえ、あることにはあります、銭が。
でもそれは両替座に預けられている公界市の人々からの大事な預かりもの。
このようなものは使えません。
もしそれを使ったとしてうまく行っても多分、大胡様はそれはもうお怒りになるでしょう。
「それは泥棒だ!」と。
「市長さん。うちの売上金使ってください。両替座に11貫文あります」
市庁舎のすぐ隣で店を構えた団子屋の女将が声を掛けてきた。
いつも休ませてもらっている店です。
まだまだ借金の返済など出来ていない筈。
その売り上げを使ったら……
「いいんですよ。どうせ私は2年前、川に身を投げる所を練習所の先生に声を掛けられ『どうせ死ぬんだったら、借金してでもできることをしてから死になさい』
と言われ、たった一人で店を開きました。
ここで借金を踏み倒して死罪になると誰かに迷惑が掛かると思いますが、それで救われる人がいるのならそれもよい事なんじゃないかなって。
この公界市があれば沢山の人が助かりますから」
女将は照れたように明るい声で言う。
だが目は座っている。
本気だ。この人は本気で生きている!
ならばこの好意、受け取るしかあるまい。
「ありがたい。少しでもこの公界市を長く続けましょう」
「あの、市長殿。某の俸給もお返しいたします。どうせ酒に使っちまう銭です。必要な銭に比べるとたったの800文ですがお使いください」
門番の男だ。
大声でそう私に申し出てきた。
大声のやり取りを聞きつけたこの辺りに店を出している者たちが、次第に我も我もとばかりに集まってきた。
もう十分だ。
十分に今日の分を交換できる銭が集まった。
でもそれを告げようにも感極まって声が出ない。
と、その時私の袖が引かれた。
振り返ってみるが誰もいない?
いえ、下に小さな顔が見えます。
いつも麦湯を運んでくれる花だ。
「市長様。これ使ってください。
あたし、これしか持っていないの。
母ちゃんが死ぬまで決して使っちゃいけないって、腰帯に縫い付けてくれた。
でもこれ上げる」
握られた手を開けると、そこには6枚の永楽銭。
「これ無くても三途の川、渡れるよね?
泳ぐのは得意だから」
小さな手のひらに載せられている6つの平たい金属を、そっと自分の手に載せてから、思いっきり握った。
そして大きな力をくれた小さな身体をギュッと抱きしめた。
小さな英雄は、私の泣き声に何が起きたのか分からないという表情を見せてから、にっこりと笑った。
摂津国堺
今井宗久
「なんですと?
日ノ本中で大胡札が無くなりつつあると?」
情報を取り扱う番頭がそう伝えてきました。
番頭さんの顔が青ざめています。原因は報告内容にでしょうか?
それとも私が怖くてでしょうか?
私も落ち着かなくては。
「は……はい。
下関や品川の情報が伝わるのに4日以上かかります。
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何か別の方法で情報を伝えているようですね。
「京と堺ではどうなのです?」
「各宗門の邪魔立てにより、京にて鉄を捌くことが出来ず淀川を遡っての売り捌きはあまりできませんでした。堺では大胡札は出回っていません故……」
それで気づくのが遅れたと。
もっと多くの場所で鉄の暴落を起こせばよかった?
いえいえ、それでは暴落にはなりません。
少ない場所で大量に売るため暴落するのですから。
大胡札を増やすか、銭を減らすかしなければ。
大胡札を増やす方法はありません。
ですから市中に出回る銭を減らす。
これしかない。
今回のことで、もう堺の売り物が殆ど売れなくなっています。
庶民や商人が銭を退蔵しているのです。だから商売には大胡札が使われます。
これは巡り巡ってあの小賢しい公界市とやらに吸収されていってしまう。どうやらあそこではまだ大胡札と銭を交換しているらしい。
こうなったらこちらでも銭を大胡札に替える反対売買をするしかない。
「大番頭さん。使える銭はあといくらくらいあります?」
「予定していた銭はもう使い切りました。あとは今後の運営資金だけです」
「その額は?」
焦りが声に出てしまいました。
大番頭さんの顔が引きつります。
「は、5千貫文と少しです」
それをつぎ込むか?
ここでそれを使ってしまっては失敗した時は、物価を上げるために買い占めた商品をあとで売って回収すればよい。あの『おぷしょん価格』さえ何とかなれば問題はない筈。
「あの男を呼びなさい」
連れてこられた男の目は死んでいた。
アヘンでやられた目です。
息も臭い。
「あれをくれ。……ください。
お願いします。
何でもします……」
ここまで中毒になるとは恐ろしい。
でもこれがなければ『おぷしょん』の仕組みと為替相場との関連などが分からなかった。
「明日。取引が再開された時、どのくらいの利益が出ますか?」
「……わからない。もっと情報がないと。それとあれがないともう仕事は出来ない」
つかえない!
『おぷしょん取引』で大胡に多額の借金を作らせて破産させる事、それが出来るまで銭の力で押し切るか?
もうそれしか道は残されていない?
ここで私が引き下がったら大胡札の信用は回復してしまうかもしれません。
銭が足りないのですから、大胡札を使わざるを得ないでしょう。
やるしかない!
残る銭で京にて大胡札を買い占める。
それを公界市へ持って行き交換を迫る。
私はそう大番頭さんに指示を出した。
京で大胡札を買い占める事を。
明日で間に合うか?
重い銭や銀を舟に積んで公界市まで運べるか?
◇ ◇ ◇ ◇
最終日午後
市庁舎前
厩橋義衛門
「御山から220貫文、強引に奪い取ってきた。
これを足してあといくらくらい必要だ?」
先程、人力車で金策のために走り回っていた磐梯屋さんが正門へ到着しました。
私はそれを待ちきれずここに立っています。
「今数えている所ですが、大胡札を銭に替えようと交換所に並んでいる人の総額は、〆て2210貫文です。これさえ捌ければ、明日の『おぷしょん価格』は堺に大損をさせられるところまで行くでしょう。
そこから大胡札の再出発が可能となります」
「そして東国経済圏が救われると。
……悪いな、今まで黙っていたんだが、まだ磐梯屋の運転資金が残っているんだ。
870貫文、これを使ってくれ」
そんなことをしたら、もう藤兵衛さんは生きていられなくなる!
やめてください、と言いましたが、
「いや。俺をここまでにしてくれたのは大胡の殿さまだ。その大胡が潰れて俺が生き残るなんざぁ俺には出来ねぇ。これを使って納屋の奴を破産させてやろうぜ」
……銭とは恐ろしいものですね。
人を殺す。
しかし生かすこともできる。
こんな1枚の小さな平たいものがそんな力を持つ世。
この力、悪意を持つ者に渡すわけにはいきません。
これは商人の戦です。
その場では血は流れない。
しかし多くの者を不幸のどん底に突き落とし、自死する者も多く出るでしょう。
お侍さんの決戦と何も変わらない。
「わかりました。使わせていただきましょう。
私の財産、少なくなってしまいましたが110貫文。
これも使いましょう。これで残り1230貫文。
あと1刻で集めねば!」
大声をあげて気合を入れる。
でも交換所の正門へ入る気力も残されていない。
門番の椅子を借りて座り、そこから市の賑わいを眺めていた。
今日を無事やり過ごせば道は開ける。
ですが……
この公界にはもう銭が残っていない。
今日交換停止となれば明日からの大胡札の信用がガタ落ちで、おぷしょん価格が堺側に有利に跳ね上がる。
ここぞとばかりにあの憎らしい宗久が注文を出すでしょう。
それで仕舞。
逆にここを凌いで明日を迎えれば納屋は莫大な損失を被る。
絶望感と共に日が暮れていく。
いえ、あることにはあります、銭が。
でもそれは両替座に預けられている公界市の人々からの大事な預かりもの。
このようなものは使えません。
もしそれを使ったとしてうまく行っても多分、大胡様はそれはもうお怒りになるでしょう。
「それは泥棒だ!」と。
「市長さん。うちの売上金使ってください。両替座に11貫文あります」
市庁舎のすぐ隣で店を構えた団子屋の女将が声を掛けてきた。
いつも休ませてもらっている店です。
まだまだ借金の返済など出来ていない筈。
その売り上げを使ったら……
「いいんですよ。どうせ私は2年前、川に身を投げる所を練習所の先生に声を掛けられ『どうせ死ぬんだったら、借金してでもできることをしてから死になさい』
と言われ、たった一人で店を開きました。
ここで借金を踏み倒して死罪になると誰かに迷惑が掛かると思いますが、それで救われる人がいるのならそれもよい事なんじゃないかなって。
この公界市があれば沢山の人が助かりますから」
女将は照れたように明るい声で言う。
だが目は座っている。
本気だ。この人は本気で生きている!
ならばこの好意、受け取るしかあるまい。
「ありがたい。少しでもこの公界市を長く続けましょう」
「あの、市長殿。某の俸給もお返しいたします。どうせ酒に使っちまう銭です。必要な銭に比べるとたったの800文ですがお使いください」
門番の男だ。
大声でそう私に申し出てきた。
大声のやり取りを聞きつけたこの辺りに店を出している者たちが、次第に我も我もとばかりに集まってきた。
もう十分だ。
十分に今日の分を交換できる銭が集まった。
でもそれを告げようにも感極まって声が出ない。
と、その時私の袖が引かれた。
振り返ってみるが誰もいない?
いえ、下に小さな顔が見えます。
いつも麦湯を運んでくれる花だ。
「市長様。これ使ってください。
あたし、これしか持っていないの。
母ちゃんが死ぬまで決して使っちゃいけないって、腰帯に縫い付けてくれた。
でもこれ上げる」
握られた手を開けると、そこには6枚の永楽銭。
「これ無くても三途の川、渡れるよね?
泳ぐのは得意だから」
小さな手のひらに載せられている6つの平たい金属を、そっと自分の手に載せてから、思いっきり握った。
そして大きな力をくれた小さな身体をギュッと抱きしめた。
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