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第25章:大胡最大の?ピンチ
観音像と巻物がキーアイテム
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1557年9月中旬
上野国和田証券取引所
坂田屋甚八
(経済の裏社会の怖さを実感中の頭取)
殿が見えられた。
「浮かない顔だね、じんぱっちゃん。
今日もどこかで大暴落してるん?」
いつもならば笑える殿の仕草とセリフ。
今は
「何を言っている! この深刻な時に!」
と気に障る。
「はい。既に日ノ本中で鉄の相場が6割程度に下落。大胡札の取り付け騒ぎは京の都だけでなく東国にも及んでおります」
いつもの殿ならばこのような時は髷を搔きむしるのだが、
今回は……
「京にいない僕が出来る事って何かあるかなぁ。指図した所で早くても1日遅れ。とてもじゃないけど間に合わない。
じんぱっちゃんと、
とーべぇちゃん(磐梯屋)、
あとともちゃん(友野屋)
に委ねるしかないよ。
大胡のすべてを使ってこの崩壊を止めて。お願いだからさ。東国、いや日ノ本の混乱を収めてよ。この通り!」
腰を直角に折られて頭を向けてくる殿。
別に私は殿の家臣ではないのですが、『同志』として遇されてきた。
その同志が
『自分のすべてを使って止めて』
と言われれば、やるしかないですね。
これをやらねば、うちのカミさんに家をおん出されます。
私は知らないうちに、この上野の『義理人情』の世界が好きになりました。
やってやりましょう!
「殿。伝書用弩弓は全て使います。伝書犬もお貸しください。
それから殿の借用書作成のご用意を。できる限りの銭を集めます」
殿がおずおずと頭をあげて、涙を拭きながら言った。
「お願いします。この世界から悪徳商人を根絶やしにする作戦を開始しよう」
出会った時から相も変わらず泣き虫な殿に、私はゆっくりと頷きました。
◇ ◇ ◇ ◇
前日深夜
大胡城政賢寝所
福
急に殿さんに呼び出され、政影様の馬に乗せられて懐かしい大胡城へ戻ったはいいけんど、なにするんかいね。
殿さんは奥の間の仏壇の前でずっとお祈りをしている。
念仏のような低い声で何かを言っているなぁ。
仏壇にはお松様とご主人さまの永野様のご位牌、そしてお松様が永野様より頂いたという観音様の質素な木像。
手造りだとか。
ここには私のほかには政影様のみ。
3人でいるのは久しぶりじゃなぁ。
殿さんの後ろ姿が暗いよ、何かあったな。
「取り敢えずやってみる。
観音様はもう救ってはくれないと思うけれど、ちょっとだけチートできればなぁ、と思うんだよ。
もう限界なんだ。この苦境で自分が保てない。政影くんさ、5日前の日記持っている? それお福に渡して」
政影様の巻物になっている日記。
毎月私が殿さんの寝所の地下へ安置するんだけど、これはまだ書いている途中。
手渡された巻物を見ていると殿さんが
「お福。5日前の章を声に出して読んでくれる?
僕に聞かせて」
殿さん、声が震えている。
なんだか大変なことが起きているんみたいだなぁ。
私のできること、今はこの日記を
『前のように』
殿さんに読み聞かせすることだけだ。
読み上げ始めると、殿さんは目を瞑りうつらうつらとしはじめた。
前へ倒れ込む直前に政影様が身体を支えたけんど、やっぱりこれは観音様のお力か?
前みたいに殿さん、
元気になってよ。
◇ ◇ ◇ ◇
翌朝
長野政影
初秋にはまだ早いが、今日は空が高くなると思わせる日差しが開け放たれた障子の間から優しく広縁を照らす。
清々しい風が大胡から南に見える上野の原から穏やかに吹き寄せ、殿のお顔の汗を持って行く。
福が朝餉を持ってきた。
殿が毎月うなされている時に作る粥だ。
その匂いで目を覚まされたのか?
殿が目を擦り、背を思いっきり伸ばしながら半身を起こされた。
「ああ、俺は眠ったのか、あれから。……この世界線の未来には運営はいない筈なんだが」
殿は目を覚まされてすぐなのか。いつもとはまるで違う雰囲気だ。そしてその言葉もいつもよりおかしい。
「……やはりもう接着剤は出来ないし要らないのか。
もう自分は政賢だ。
そうだよ。
哀れな末路をたどった無邪気で陽気な松風ではない。
復讐に燃えた愚かな奴でもない。
ましてやNPCではない。
僕は僕だ。
もうこの世界の一員だ。観音様はもういらない。自分だけの力でこの世界を生きていくんだよね」
何を言っておられるか全くわからぬ。
いつものボケとは違うようだ。
しかしこれだけは言える。
「殿。まだ仰れるか?
殿は一人ではない。
福は殿が生まれてからずっと、某は3つの時からずっと一緒でござった。
それからどんどん殿と一緒にこの世を楽しむ遊び友達ができました筈。
たしか以前『ふれんど』とか申していたかと。
悲しいこともござろう。
辛いこともござろう。
失敗などいつもの事。
ですがいつも楽しさをも分けあって来た筈。
殿が何者かは知り申さぬ。ですがそれは問題ではござらぬ。
殿は殿。皆の殿でござる。
もう以前のようにお一人で悩まれますな。
皆が支えて行き申す。此度の堺との戦もなるようにしかなりませぬ。
皆で全力を尽くすのみ!」
殿は某を見、そして福の顔を見た後、申された。
「うん。もう完全な異世界だからセーブ機能やロードシステムなんかじゃない。僕の友達で大事な家族だよ。これでやっと未練はなくなった。ではこれから堺との大勝負、行こうか。
でも、それならやっぱり楽しんじゃお~♪」
殿が子供の頃感じていた、殿の中に『幾人もの者がいる』印象。
それは変わらない。
が、何かが変わった。
しかし、殿がやっと自分を
『認め』
『許し』
『前へ進もう』
としていることは伝わってきた。
「でも還暦近くになって、やっと開き直れるって遅すぎ~。泰然自若には程遠いけど、ケセラセラだね」
やっと普通のボケらしき事を仰った。
「殿。還暦を過ぎると毛はサラサラにはなり申さぬ。まだまだ泰然自若に関してはツルツルの智円殿には遠く及ばぬかと」
思いっきり転がった殿を笑いながら、福と共に朝餉の準備を始めた。
上野国和田証券取引所
坂田屋甚八
(経済の裏社会の怖さを実感中の頭取)
殿が見えられた。
「浮かない顔だね、じんぱっちゃん。
今日もどこかで大暴落してるん?」
いつもならば笑える殿の仕草とセリフ。
今は
「何を言っている! この深刻な時に!」
と気に障る。
「はい。既に日ノ本中で鉄の相場が6割程度に下落。大胡札の取り付け騒ぎは京の都だけでなく東国にも及んでおります」
いつもの殿ならばこのような時は髷を搔きむしるのだが、
今回は……
「京にいない僕が出来る事って何かあるかなぁ。指図した所で早くても1日遅れ。とてもじゃないけど間に合わない。
じんぱっちゃんと、
とーべぇちゃん(磐梯屋)、
あとともちゃん(友野屋)
に委ねるしかないよ。
大胡のすべてを使ってこの崩壊を止めて。お願いだからさ。東国、いや日ノ本の混乱を収めてよ。この通り!」
腰を直角に折られて頭を向けてくる殿。
別に私は殿の家臣ではないのですが、『同志』として遇されてきた。
その同志が
『自分のすべてを使って止めて』
と言われれば、やるしかないですね。
これをやらねば、うちのカミさんに家をおん出されます。
私は知らないうちに、この上野の『義理人情』の世界が好きになりました。
やってやりましょう!
「殿。伝書用弩弓は全て使います。伝書犬もお貸しください。
それから殿の借用書作成のご用意を。できる限りの銭を集めます」
殿がおずおずと頭をあげて、涙を拭きながら言った。
「お願いします。この世界から悪徳商人を根絶やしにする作戦を開始しよう」
出会った時から相も変わらず泣き虫な殿に、私はゆっくりと頷きました。
◇ ◇ ◇ ◇
前日深夜
大胡城政賢寝所
福
急に殿さんに呼び出され、政影様の馬に乗せられて懐かしい大胡城へ戻ったはいいけんど、なにするんかいね。
殿さんは奥の間の仏壇の前でずっとお祈りをしている。
念仏のような低い声で何かを言っているなぁ。
仏壇にはお松様とご主人さまの永野様のご位牌、そしてお松様が永野様より頂いたという観音様の質素な木像。
手造りだとか。
ここには私のほかには政影様のみ。
3人でいるのは久しぶりじゃなぁ。
殿さんの後ろ姿が暗いよ、何かあったな。
「取り敢えずやってみる。
観音様はもう救ってはくれないと思うけれど、ちょっとだけチートできればなぁ、と思うんだよ。
もう限界なんだ。この苦境で自分が保てない。政影くんさ、5日前の日記持っている? それお福に渡して」
政影様の巻物になっている日記。
毎月私が殿さんの寝所の地下へ安置するんだけど、これはまだ書いている途中。
手渡された巻物を見ていると殿さんが
「お福。5日前の章を声に出して読んでくれる?
僕に聞かせて」
殿さん、声が震えている。
なんだか大変なことが起きているんみたいだなぁ。
私のできること、今はこの日記を
『前のように』
殿さんに読み聞かせすることだけだ。
読み上げ始めると、殿さんは目を瞑りうつらうつらとしはじめた。
前へ倒れ込む直前に政影様が身体を支えたけんど、やっぱりこれは観音様のお力か?
前みたいに殿さん、
元気になってよ。
◇ ◇ ◇ ◇
翌朝
長野政影
初秋にはまだ早いが、今日は空が高くなると思わせる日差しが開け放たれた障子の間から優しく広縁を照らす。
清々しい風が大胡から南に見える上野の原から穏やかに吹き寄せ、殿のお顔の汗を持って行く。
福が朝餉を持ってきた。
殿が毎月うなされている時に作る粥だ。
その匂いで目を覚まされたのか?
殿が目を擦り、背を思いっきり伸ばしながら半身を起こされた。
「ああ、俺は眠ったのか、あれから。……この世界線の未来には運営はいない筈なんだが」
殿は目を覚まされてすぐなのか。いつもとはまるで違う雰囲気だ。そしてその言葉もいつもよりおかしい。
「……やはりもう接着剤は出来ないし要らないのか。
もう自分は政賢だ。
そうだよ。
哀れな末路をたどった無邪気で陽気な松風ではない。
復讐に燃えた愚かな奴でもない。
ましてやNPCではない。
僕は僕だ。
もうこの世界の一員だ。観音様はもういらない。自分だけの力でこの世界を生きていくんだよね」
何を言っておられるか全くわからぬ。
いつものボケとは違うようだ。
しかしこれだけは言える。
「殿。まだ仰れるか?
殿は一人ではない。
福は殿が生まれてからずっと、某は3つの時からずっと一緒でござった。
それからどんどん殿と一緒にこの世を楽しむ遊び友達ができました筈。
たしか以前『ふれんど』とか申していたかと。
悲しいこともござろう。
辛いこともござろう。
失敗などいつもの事。
ですがいつも楽しさをも分けあって来た筈。
殿が何者かは知り申さぬ。ですがそれは問題ではござらぬ。
殿は殿。皆の殿でござる。
もう以前のようにお一人で悩まれますな。
皆が支えて行き申す。此度の堺との戦もなるようにしかなりませぬ。
皆で全力を尽くすのみ!」
殿は某を見、そして福の顔を見た後、申された。
「うん。もう完全な異世界だからセーブ機能やロードシステムなんかじゃない。僕の友達で大事な家族だよ。これでやっと未練はなくなった。ではこれから堺との大勝負、行こうか。
でも、それならやっぱり楽しんじゃお~♪」
殿が子供の頃感じていた、殿の中に『幾人もの者がいる』印象。
それは変わらない。
が、何かが変わった。
しかし、殿がやっと自分を
『認め』
『許し』
『前へ進もう』
としていることは伝わってきた。
「でも還暦近くになって、やっと開き直れるって遅すぎ~。泰然自若には程遠いけど、ケセラセラだね」
やっと普通のボケらしき事を仰った。
「殿。還暦を過ぎると毛はサラサラにはなり申さぬ。まだまだ泰然自若に関してはツルツルの智円殿には遠く及ばぬかと」
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