首取り物語~北条・武田・上杉の草刈り場でざまぁする~リアルな戦場好き必見!

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第23章:桶狭間の戦闘状況が全然正史と違う【桶狭間の戦い】

その頃周辺では

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 1556年4月下旬
 信濃国海津城
 高坂昌信
(いつの間にか高坂になっている!)


 品川崩れの後、勘助殿の描いた縄張りを大幅に改めてこの海津城を作っているが誠に厳しい。

 銭が無いという事はこんなにも厳しいことなのか。
 人足が雇えぬ。
 土地の者を働かせようにも、この辺りの国衆の動向が予断を許さぬ。
 今は善光寺平の南半分が武田に靡いて居るが、先の大敗北が知れ渡るようになると賦役をさぼるようになってきた。

 このままでは城が使えるようになるには何年かかるか。

 有難いことは、御屋形様の外交にて六角家を通じて義妹である如春尼と本願寺の顕如との婚儀を執り行えた。
 これにより本願寺との姻戚関係を作ったことで、一向宗を手駒にすることが可能となった。

 3月下旬、越後長尾景虎の再上洛を阻害できればよかったが間に合わず、景虎が上杉憲政の養子として関東管領職を継ぐことが決定した。
 これにより上杉政虎と名乗るようになった景虎は、坂東に向かうと思いきや信州の平定に動き出す気配を見せた。

 それを見た御屋形様は、上杉の庇護下にある越中の椎名を神保長職に攻めさせ、その矛先を越中に向けさせることに成功した。

 やはり御屋形様の外交は並外れている。
 その戦の中に加賀の一向宗を神保方として参戦させた。
 これは多大なる努力が必要であったらしい。

 北陸の真宗高田派は一独立勢力であり、本願寺の命令を聞くことは稀だ。
 誰かがこの裏で蠢いたらしいが儂にはわからぬ。

 現在、越中は血みどろの戦いとなっているであろう。
 あの朝倉宗滴殿すら泥沼に足を取られたまま生涯を終えた。
 越後の龍も飛べぬように一向宗という泥沼に嵌まっていてほしいが。

 三河でも一向宗は蜂起しているようだし、これからは一向宗が世を騒がしてくるのであろう。ここ信州以東は信者が少ない故、安心していられる。

 龍が居ぬ間に海津城を難攻不落にせねば。
 鉄砲隊の力を余すところなく使える城にしよう。
 品川での戦訓を生かして、鉄壁の城塞を作ろうぞ。

 ◇ ◇ ◇ ◇

 1556年5月上旬
 武蔵国江戸城
 里見義堯
(外交で敵を振り回すつもりで振り回されている人)


 宇都宮が動かぬ!
 何が「伊勢神宮の御神勅」じゃ! 

 どうせ大胡の差配に相違ない。あれだけの支援をしたのにもかかわらず、この仕打ち。あとでほえ面かかせてやるわ。

 内政は未だ安定せぬ。
 大胡の支配地になった所は誠に優秀な内政を司る者が配備されているという。
 どんどん改革を始めて民心を掴み始めているらしい。

 それに対し江戸周辺の民心が急速に離れつつある。
 これでは折角終わった領地安堵の差配が無駄になる。
 国衆の中の幾人かは河越の太田の所へ密かに繋ぎを付けている節がある。

 大胡と越後の長尾をぶつける企みも、政賢の疾風のごとき越後との同盟締結により空振りに終わった。漁夫の利を得るつもりが何のことは無い、大胡の一人勝ちをもたらしただけじゃった。

 大胡も品川での消耗と忍城での大量の火薬消費で、大分戦力が低下していよう。

 来年まではこちらへ手が出せぬ。こちらも江戸周辺の内政に掛かりっきりとなる。

 そのような時に今川から協調して大胡叩きだと? 
 無理と言うてやったわ。

 すると矢銭10000貫文出すという。
 内政に費やせる銭は魅力的だ。

 先の西国商人からの10000貫文は全て内政につぎ込んだ。
 治水と新田開墾にお救い米。
 座への奨励金。
 もうすっからかんじゃい。

 しかしその成果が来年以降効果を出してこようて。
 此度の10000貫文はきちんと仕事をせねばならぬ。

 先の日和見で大分里見の信用は落ちた。
 無理じゃな。
 今は動けぬ。

 しかもあの一瞬で堅城の筈であった忍城を陥落させた大胡の大筒に撃たれたら江戸城などひとたまりもなかろう。
 野戦でけりを付けようとしても同数の合戦では不安じゃ。

 後ろが利根川で遮られて、逃げ場を失うような敗戦をすれば里見は立ち直れぬ。
 北条の二の舞は避けねば。

 動くならば宇都宮を動かさねばならぬ。
 何か良い方法は……

 ふむ。

 政賢の義父が忍城で死んだの。
 これで由良の領地がどうなるか?
 併合となると調略の手が入れられるか? 

 そこから佐野を戦に引き込み芋づる式に宇都宮を防衛戦に引っ張り出すか?

 佐竹にも合力させねば。
 那須を黙らせればこの絵は描けよう。

 面白うなって来たな。
 早速、祐筆を呼ぼう。

 ◇ ◇ ◇ ◇

 1556年5月上旬
 下総国関宿城
 山科言継
(結構、優秀なスパイ)


「内蔵頭殿。これで帝の宸襟を安んじられませ」

 古河公方、足利晴氏殿が目録を載せた三宝を私の前に小姓に運ばせる。

 断りを入れて、中を確かめる。
 銭で1000貫文、その他関東における名産が書かれている。

 有難し。

 お礼の言上を述べた後、大胡殿に頼まれていた下総から下野、常陸の様子をそれとなく聞いてみた。

 あまりおしゃべりになりたがらないのか、将又知らぬのか? 
 大した話は聞けなかったが、里見の悪口は聞けた。

 関宿から下流の利根川の利権が欲しいというても、全く相手にせぬと怒っておられる。欲しい欲しいだけではいかぬと家臣に言われているであろうに。
 大胡からの献金も全て寺社に喜捨してしまうらしい。

 己の名誉欲の亡者だな。
 里見と宇都宮の足を引っ張ってくれる大胡にとっては誠に有難い存在であろう。
 銭は掛かるが……

「そうじゃ。言継卿はこれから上野を通り越後へ行くと聞いたが、大胡と長尾に伝えてくれぬか? 鎌倉にて早う関東管領への就任を宣言せよと」

 そのお気持ちは分かるが、北陸は戦乱の最中。
 大胡も何時里見と戦が始まるとも知れぬ状況。
 東海でも大胡の去就が問われている最中だ。

 今行動できる時期ではないこと、家臣が忠言せねばならぬところだが、きっと聞かぬのであろう。

「早う強き関東管領が必要じゃ。それを補佐する大胡も頼りになる。これで鎌倉公方の威光も……
 ゲフッ、ごぼっ……」

 強い酒に噎せている。

 常時酒を飲んでいるらしいな。
 酒毒で指が震えている。
 長くはない。

「公方様。先のウコン、お飲みなされておじゃりまするか? あれはお神酒の飲み過ぎに良う効きまする」

「あれは苦くての。もっと甘い薬はないかの?」

 良薬口に苦し、という言葉は通用しないと見える。とりあえず五苓散ごれいさんという新しき薬を置いていく。

 徳本殿が調合された薬だ。
 これも結局苦いのだが。

 あと1~2年の間に関東管領の就任が出来るかの、政虎殿は?

 間に合わなくなるぞ、このお方は。

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