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第20話:最終局面
トゥーハンド
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1556年1月9日巳の刻(午前10時)
武蔵国品川湊北大手門
冬木梨花
(戦場に咲く花。20歳♀)
大手門の補強で、外には土嚢が重ねてある、
いや「あった」。
門は観音開きで外へ向かって開くから、門の前には土嚢が2つ重ねで重しとしていた。
それが既に除けられている。
あとは閂と蝶番の強度頼りとなっている。
破城槌を寄せ付けないように、数少ない火薬を使い鉄砲が火を噴いている。
この2つはなんとしても守らねば。
「こんくりいと」でできた、この3間の高さを持つ櫓から、断続的に射撃をするけれど弩弓での反撃を受け、味方の兵は次第にその数を減らしている。
徐々に、北側に配備されていた兵が集まってくる。
だけれどその数は少ない。
その訳を聞くと、やはり業政様の仇を討つと、東へ向かうものが多かったとのこと。
もはやこの大手門左右の櫓2つだけに、残兵は集中している。
大手門を中から開けられないように、下で陣取っているのは政綱様。
100程に撃ち減らされた総予備を、弟の昌輝様より引継ぎ、矢盾を立てて今にでも押し寄せてくるであろう、搦め手から侵入した武田の兵の攻撃に備えている。
激突はもうすぐだ。
「もう落とすものがございません!
鉄砲の弾・火薬も残りわずか!」
「いや~。これはしんどいね」
政輝様が弱音を吐く。
そんな言葉を兵に聞かせるなんて!
「でもさ、これ凌いで品川守り切ったら、俺たちって偉くね?
きっと皆手放しで喜ぶね。女子にすり寄られて困り放題!
だから生き延びよう!!」
なんだか殿のような言いぐさ。
少し下品だけれど、大胡の兵はその様な言葉で、士気を保つのに慣れている。
少し皆に笑顔が戻る。
「ちょっと数人でさ。防壁の上にある武田が投げてきた鉤縄集めて来て。何かに使えると思うんで」
何に使うか聞きたかったけれど、門の外と中で動きがあった。
攻勢が始まった。いよいよか。
腹を決めましょう。
砥石城の時と同じ。
粘って粘って粘り抜く。
そうすればあの……
村上ではなく大胡の緑の狐様が助けてくれる。
「政輝!
梨花!
上は頼む。
ここは通さぬ。
逐一外の状況を知らせてくれ」
目の前に迫って来た敵を見据えたまま
政綱様が大声で叫ぶ。
?
梨花?
私の名前を呼んだ?
冬木ではなく?
村上でもなく冬木でもなく、
梨花と。
嬉しさがと開放感が込み上げてくる。
ああ、初めて私個人を見てくれる人に出会えた。
それがこんなにもうれしいとは!
心が弾み、解放された体が何時でも、全力で動くことが出来そう!
「兄貴。
無茶すんじゃねえぞ、できるだけ長く持たせるんだ。
いつもの様に先走るなよ」
政輝様が政綱様に注意を促す。
本当に良い組み合わせの御兄弟。
同じ隊を一緒に率いれば、相当強い部隊が出来そう。
きっと殿は見抜くでしょうけれど、無事この戦闘が終われば上奏しましょう。
下で弓合わせが終わり、武田兵が突っ込んでくる。
政綱様は槍が得手。
次から次へと足軽を屠っていく。
見るに見かねた相手の先手を指揮する武者が、前に出て相手をするも、ほぼ2合で退ける。槍をいなしてからの突きで勝負が決まる。
しかし今度は人の数で、押し込む作戦に出てきた。
押され始める。
全てのお味方が槍を前方へ向け、必死に戦っている。
その時、すぐ近くにいた大胡兵があたりに散乱していた縄を城壁に結び、それを両手に掴み勢いよく壁内へ向けて跳んだ!?
その小柄な体は途中で、綱に引っ張られ振り子のように大手門にぶつかる……
いや止まったらしい。
下を見ると、両足で大手門にぶつかるのを防ぎ、素早く閂を上げ始めた!
あれは1人では上げられないけど、周りから2人の兵が近づいて、3人で閂を外そうとしている。
間者?
下にいる兵は防戦に手いっぱい。
上の兵は外から登ってくる敵を、振り落とすのに手いっぱい。
どうすれば?
「政輝様。ここの指揮はお任せします。下へ行きます。大手門が危ない!」
急がねば。
周りを見ると鉤縄がいくつかある。
先ほど集めていたものだ。
括り付けている暇はない。
屋根の梁に鉤を引っかけ、先の兵と同じように勢いをつけて壁内へ跳ぶ。
コワイ
でも怖いのはひと時。
すぐに頭は戦いへ切り替えられる。
ガクン、と綱に引っ張られる。
そして体が勢いよく大手門へ。
正面に大手門と、内応者であろう敵兵3人が見える。
真ん中の敵に身体ごと突っ込む。
息が詰まりそうな衝撃を堪え、その敵を吹き飛ばす。
跳ね飛ぶ様に身を起こし、体勢を立て直す。
腰の後ろの革帯に手を伸ばし、2丁の“ふりんとろっく”を引き抜く。
撃鉄を草摺の端に引っかけて上げる。
カチリという感触。
後は火花を願うだけ。
両側の二人が放心から我に帰る。
閂から手を離し、脇差に手を伸ばす。
遅い。
私は銃口を突きつけ、左右の銃の引き金を引く。
火花が散る。
轟音。
バラ玉が敵の顔面を吹き飛ばす。
二つの死体はどうと地に倒れる。
火花がちゃんと、火薬に火をつけたのは偶然?
この試作品、拳銃という。
火縄ではなく火打石を使う。
「ふりんとろっく」という。
まだまだ火花が上手く散らないそうだ。
日ノ本の石では無理であろうと、義父様が仰っていた。
義父様、貴方の愛が、私の命を助けてくださいました。
今度、そう伝えよう。
足元からの殺気。
私は咄嗟に飛び退く。
けれど、間に合わない。
気を抜いたツケが脛に刻まれた。
鋭い痛み。
おぼつかない足で身構え、敵を見据える。
脛を斬りつけたのは、最初に吹き飛ばした敵だった。
体格は私より小柄だ。
五尺三寸以下の子供の様な体躯。
小柄な敵は低姿勢で匕首を構える。
厄介だ。
地に足つけた戦い方。
石堂様や修験者達もよく仰ることだ。
『近接格闘の時には、低姿勢で敵を見据え、目を離すな。
地に足を付け、全てを見渡せ』
私もそれに倣い、低く構える。
拳銃の一丁を腰に挿し直し、代わりに疋田刀を引き抜く。
両刃で刃渡り6寸(18cm)の特注品。
足の痛みは緊張と興奮に呑み込まれている。
体格は勝っている。
間合いは私の方が広い。
此方から距離を詰め、一撃で突き殺す。
嫌なものが視界の端に写る。
二人の敵が閂に手をかけている。
優先順位は明白だった。
一も二もなく叫んだ。
「大手門危険! 即刻、射殺して!」
明確な隙。
敵はすかさず突いてくる。
怪我を負った左足側から飛び込んでくる。
私は拳銃を勢いよく向ける。
敵は弾が出るという万が一に恐怖した。
一瞬の気の迷い。
歩幅がズレる。
重心が揺れる。
私は拳銃をそのまま投げ放った。
顔面目掛け飛翔する鉄塊。
敵は大きくそれを避ける。
片足だけが、地に残っている。
自殺行為だ。
私は右足を使い、全力で飛び込んだ。
痛みを無視し、疋田刀を突き出した。
敵はそれを翳した右手で受けた。
刃は右腕に突き立ち、止まった。
穿った穴の向こうに手甲が覗いた。
無傷?
私は更に疋田刀を押し込む。
腰の拳銃に手を伸ばす。
敵の左手の匕首が突き出されてくる。
私はもう一丁の拳銃を抜き放ち、それを打ち払う。
疋田刀を急に引き戻す。
敵の手甲は肩透かしを食わされ、敵がタタラを踏む。
私は拳銃の重い銃身で、その顎をかち上げる。
敵の上半身が跳ね飛ぶ。
海老反りになる。
そして後ろ向きに吹っ飛ぶ。
追撃しようとした。
けれど、敵はバク転して、衝撃を殺した。
再び地面に両足をついた。
追撃は危険だった。
間違いなく傷は浅い。
軽い脳震盪がいいところだろう。
疋田刀でしっかり突き殺すべきだった。
敵が体勢を立て直す。
構えは先程の安定性を欠いている。
脳震盪でふらついているのか?
そして、銃身の一撃によって敵の顔を覆っていた布がずり落ち、敵の素顔が見えた。
女?
それも、少女というべき程の幼さ。
少女は構えながら、大手門の方をチラリと見据えると、突然脱兎の如く逃げ出した。
凄じい速度。
だが、敵から“目を逸らすな”という鉄則を忘れているようだ。
私は肩に掛けていた
「参謀憲章」
を引きちぎり、
錘の付いた方を回して投擲する。
回転を繰り返し飛翔、少女の足に絡みつく。
少女がもんどりうって倒れる。
すかさず、少女に駆け寄り、落ちた匕首を遠くに蹴飛ばす。
馬乗りになり、抵抗する少女の両肩を、両膝で押さえ付ける。
そして拳銃の銃床を、側頭部に叩き込む。
少女の意識が飛んだよう。
体は脱力し、抵抗しようと伸ばした手は、パタリと地についた。
やっと終わった。
安堵と共に、大手門を振り返る。
しかし……
そこには悪夢のような光景が見える。
軋みを上げ、開き始める大手門。
撒きあがる敵の怒号と喚声。
どうしようもない絶望が広がる。
門は開いてしまった。
もう、町への道に渡るものは何も無い……
武蔵国品川湊北大手門
冬木梨花
(戦場に咲く花。20歳♀)
大手門の補強で、外には土嚢が重ねてある、
いや「あった」。
門は観音開きで外へ向かって開くから、門の前には土嚢が2つ重ねで重しとしていた。
それが既に除けられている。
あとは閂と蝶番の強度頼りとなっている。
破城槌を寄せ付けないように、数少ない火薬を使い鉄砲が火を噴いている。
この2つはなんとしても守らねば。
「こんくりいと」でできた、この3間の高さを持つ櫓から、断続的に射撃をするけれど弩弓での反撃を受け、味方の兵は次第にその数を減らしている。
徐々に、北側に配備されていた兵が集まってくる。
だけれどその数は少ない。
その訳を聞くと、やはり業政様の仇を討つと、東へ向かうものが多かったとのこと。
もはやこの大手門左右の櫓2つだけに、残兵は集中している。
大手門を中から開けられないように、下で陣取っているのは政綱様。
100程に撃ち減らされた総予備を、弟の昌輝様より引継ぎ、矢盾を立てて今にでも押し寄せてくるであろう、搦め手から侵入した武田の兵の攻撃に備えている。
激突はもうすぐだ。
「もう落とすものがございません!
鉄砲の弾・火薬も残りわずか!」
「いや~。これはしんどいね」
政輝様が弱音を吐く。
そんな言葉を兵に聞かせるなんて!
「でもさ、これ凌いで品川守り切ったら、俺たちって偉くね?
きっと皆手放しで喜ぶね。女子にすり寄られて困り放題!
だから生き延びよう!!」
なんだか殿のような言いぐさ。
少し下品だけれど、大胡の兵はその様な言葉で、士気を保つのに慣れている。
少し皆に笑顔が戻る。
「ちょっと数人でさ。防壁の上にある武田が投げてきた鉤縄集めて来て。何かに使えると思うんで」
何に使うか聞きたかったけれど、門の外と中で動きがあった。
攻勢が始まった。いよいよか。
腹を決めましょう。
砥石城の時と同じ。
粘って粘って粘り抜く。
そうすればあの……
村上ではなく大胡の緑の狐様が助けてくれる。
「政輝!
梨花!
上は頼む。
ここは通さぬ。
逐一外の状況を知らせてくれ」
目の前に迫って来た敵を見据えたまま
政綱様が大声で叫ぶ。
?
梨花?
私の名前を呼んだ?
冬木ではなく?
村上でもなく冬木でもなく、
梨花と。
嬉しさがと開放感が込み上げてくる。
ああ、初めて私個人を見てくれる人に出会えた。
それがこんなにもうれしいとは!
心が弾み、解放された体が何時でも、全力で動くことが出来そう!
「兄貴。
無茶すんじゃねえぞ、できるだけ長く持たせるんだ。
いつもの様に先走るなよ」
政輝様が政綱様に注意を促す。
本当に良い組み合わせの御兄弟。
同じ隊を一緒に率いれば、相当強い部隊が出来そう。
きっと殿は見抜くでしょうけれど、無事この戦闘が終われば上奏しましょう。
下で弓合わせが終わり、武田兵が突っ込んでくる。
政綱様は槍が得手。
次から次へと足軽を屠っていく。
見るに見かねた相手の先手を指揮する武者が、前に出て相手をするも、ほぼ2合で退ける。槍をいなしてからの突きで勝負が決まる。
しかし今度は人の数で、押し込む作戦に出てきた。
押され始める。
全てのお味方が槍を前方へ向け、必死に戦っている。
その時、すぐ近くにいた大胡兵があたりに散乱していた縄を城壁に結び、それを両手に掴み勢いよく壁内へ向けて跳んだ!?
その小柄な体は途中で、綱に引っ張られ振り子のように大手門にぶつかる……
いや止まったらしい。
下を見ると、両足で大手門にぶつかるのを防ぎ、素早く閂を上げ始めた!
あれは1人では上げられないけど、周りから2人の兵が近づいて、3人で閂を外そうとしている。
間者?
下にいる兵は防戦に手いっぱい。
上の兵は外から登ってくる敵を、振り落とすのに手いっぱい。
どうすれば?
「政輝様。ここの指揮はお任せします。下へ行きます。大手門が危ない!」
急がねば。
周りを見ると鉤縄がいくつかある。
先ほど集めていたものだ。
括り付けている暇はない。
屋根の梁に鉤を引っかけ、先の兵と同じように勢いをつけて壁内へ跳ぶ。
コワイ
でも怖いのはひと時。
すぐに頭は戦いへ切り替えられる。
ガクン、と綱に引っ張られる。
そして体が勢いよく大手門へ。
正面に大手門と、内応者であろう敵兵3人が見える。
真ん中の敵に身体ごと突っ込む。
息が詰まりそうな衝撃を堪え、その敵を吹き飛ばす。
跳ね飛ぶ様に身を起こし、体勢を立て直す。
腰の後ろの革帯に手を伸ばし、2丁の“ふりんとろっく”を引き抜く。
撃鉄を草摺の端に引っかけて上げる。
カチリという感触。
後は火花を願うだけ。
両側の二人が放心から我に帰る。
閂から手を離し、脇差に手を伸ばす。
遅い。
私は銃口を突きつけ、左右の銃の引き金を引く。
火花が散る。
轟音。
バラ玉が敵の顔面を吹き飛ばす。
二つの死体はどうと地に倒れる。
火花がちゃんと、火薬に火をつけたのは偶然?
この試作品、拳銃という。
火縄ではなく火打石を使う。
「ふりんとろっく」という。
まだまだ火花が上手く散らないそうだ。
日ノ本の石では無理であろうと、義父様が仰っていた。
義父様、貴方の愛が、私の命を助けてくださいました。
今度、そう伝えよう。
足元からの殺気。
私は咄嗟に飛び退く。
けれど、間に合わない。
気を抜いたツケが脛に刻まれた。
鋭い痛み。
おぼつかない足で身構え、敵を見据える。
脛を斬りつけたのは、最初に吹き飛ばした敵だった。
体格は私より小柄だ。
五尺三寸以下の子供の様な体躯。
小柄な敵は低姿勢で匕首を構える。
厄介だ。
地に足つけた戦い方。
石堂様や修験者達もよく仰ることだ。
『近接格闘の時には、低姿勢で敵を見据え、目を離すな。
地に足を付け、全てを見渡せ』
私もそれに倣い、低く構える。
拳銃の一丁を腰に挿し直し、代わりに疋田刀を引き抜く。
両刃で刃渡り6寸(18cm)の特注品。
足の痛みは緊張と興奮に呑み込まれている。
体格は勝っている。
間合いは私の方が広い。
此方から距離を詰め、一撃で突き殺す。
嫌なものが視界の端に写る。
二人の敵が閂に手をかけている。
優先順位は明白だった。
一も二もなく叫んだ。
「大手門危険! 即刻、射殺して!」
明確な隙。
敵はすかさず突いてくる。
怪我を負った左足側から飛び込んでくる。
私は拳銃を勢いよく向ける。
敵は弾が出るという万が一に恐怖した。
一瞬の気の迷い。
歩幅がズレる。
重心が揺れる。
私は拳銃をそのまま投げ放った。
顔面目掛け飛翔する鉄塊。
敵は大きくそれを避ける。
片足だけが、地に残っている。
自殺行為だ。
私は右足を使い、全力で飛び込んだ。
痛みを無視し、疋田刀を突き出した。
敵はそれを翳した右手で受けた。
刃は右腕に突き立ち、止まった。
穿った穴の向こうに手甲が覗いた。
無傷?
私は更に疋田刀を押し込む。
腰の拳銃に手を伸ばす。
敵の左手の匕首が突き出されてくる。
私はもう一丁の拳銃を抜き放ち、それを打ち払う。
疋田刀を急に引き戻す。
敵の手甲は肩透かしを食わされ、敵がタタラを踏む。
私は拳銃の重い銃身で、その顎をかち上げる。
敵の上半身が跳ね飛ぶ。
海老反りになる。
そして後ろ向きに吹っ飛ぶ。
追撃しようとした。
けれど、敵はバク転して、衝撃を殺した。
再び地面に両足をついた。
追撃は危険だった。
間違いなく傷は浅い。
軽い脳震盪がいいところだろう。
疋田刀でしっかり突き殺すべきだった。
敵が体勢を立て直す。
構えは先程の安定性を欠いている。
脳震盪でふらついているのか?
そして、銃身の一撃によって敵の顔を覆っていた布がずり落ち、敵の素顔が見えた。
女?
それも、少女というべき程の幼さ。
少女は構えながら、大手門の方をチラリと見据えると、突然脱兎の如く逃げ出した。
凄じい速度。
だが、敵から“目を逸らすな”という鉄則を忘れているようだ。
私は肩に掛けていた
「参謀憲章」
を引きちぎり、
錘の付いた方を回して投擲する。
回転を繰り返し飛翔、少女の足に絡みつく。
少女がもんどりうって倒れる。
すかさず、少女に駆け寄り、落ちた匕首を遠くに蹴飛ばす。
馬乗りになり、抵抗する少女の両肩を、両膝で押さえ付ける。
そして拳銃の銃床を、側頭部に叩き込む。
少女の意識が飛んだよう。
体は脱力し、抵抗しようと伸ばした手は、パタリと地についた。
やっと終わった。
安堵と共に、大手門を振り返る。
しかし……
そこには悪夢のような光景が見える。
軋みを上げ、開き始める大手門。
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