首取り物語~北条・武田・上杉の草刈り場でざまぁする~リアルな戦場好き必見!

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第19章:激戦!【品川包囲戦】

長沼挺身隊もどき

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 1556年1月8日午の刻(午前12時)
 相模国相模原
 東雲尚政
(今の所最強機動部隊の大隊長・36歳♂)


「よし。襲撃完了。足軽は逃がしてやるのを忘れるな。徒武者は止めを刺してやれ」

 一見残酷なようにも見えるが、既に武者は息絶えているか手負いとなっている。
 それも深手だ。
 そこまで抵抗せずに、すぐ降れば良さそうなものだが、意地とやらを張ったのであろう。

 大胡はその冷酷な武者への扱いから、自らが虜囚となることを良しとしない傾向がある。

 別に命令しているわけではないが、戦場へ出る前にその覚悟の有無を問う。

 殊に機動大隊である東雲隊は敵地へ赴く。故に捕虜となる確率は他の大胡兵よりも遥かに高い。
 それも憎悪と復讐に燃えた武士が支配する土地だ。帰れぬ覚悟はせねばならぬ。
 戦はそんなに甘くないのだ。

 特に殿と俺たちの戦っている「武士階級の絶滅」作戦は、自分の死を覚悟せねばならぬ。

「大隊長。これで俺たち大胡竜騎兵はまた鬼神の如く恐れられますね。もう鬼神も裸足で逃げだすか」

 第5中隊隊長の中之条政春が、お道化て皆を笑わす。
 こいつは冷静な判断が出来るいい指揮官だ。
 部下思いだし根性もある。

 もう少し経験を積んで戦場の機微を身につければ、俺の後釜も狙えるだろう。

「おう。俺たちはもっともっと恐れられねばな。それが大胡のためになる。鬼神そのものになるんだよ。
 人じゃねえ、人じゃあこの戦場はやっていけねぇ」

 皆が同意の返事をする。

 血なまぐさい戦場であった畑を更に血で染める作業を部下がしている間に、三方向から戻ってきた索敵班からの報告を聞く。

 この班は索敵と同時に村々を廻り高札を立ててきた。


『民に告ぐ。
 既に武士の時代は過ぎ去った。これからは我ら百姓ひゃくせいが世の主流となろう。天子様の下、一つの纏まりとなりて安寧で平和・豊かな国造りをするものは共に戦おう!
 いざ、大胡へ。実力で自治を勝ち取れ!!』


 まあ、扇動だね~、と殿は言っていた。
 どんな時代でも使われる敵を弱体化させる方法と仰る。

 これも超限戦か。
 北条領へは歩き巫女と御師を使った極秘裏の浸透工作であったが、此度は完全なる戦闘状態になっている為、俺たち武装している機動大隊が行っている。

 総員1000名の内、輜重小隊を除く800名を100名ずつ8個臨時中隊に分け、各個遊撃任務にあたっている。 

 竜騎兵が100名もいれば500人程度の足軽兵相手ならば、包囲されずに逃げることも混乱させ撃退することもできる。

 無人の荒野を行くが如しだ。
 油断はせぬがな。

 この相模野などは西上野と比べれば、なだらかな地形だから騎馬による機動にはもってこいだ。

 我らを捕捉できる敵などいないだろう。

「大隊長。
 合計7カ村が大胡への忠誠を誓うそうです」

 12カ村の内の7カ村か。
 まさかこれ程とはな。

 嬉しい悲鳴とは是の事か。
 供給する予定の武器が足りなくなる。

 かといって村の警護など出来はしない。
 機動が本分である竜騎兵が馬を降りて一地点を死守するのは無謀だ。

「戦場で胡坐かいて酒飲んでいられるくらいの大物でない限りやっちゃダメ」
 と言われている。

 どこかの竜騎兵を率いていた酒飲み古武士の事を例にしていると言っていたが。

「秋山中隊と長沼中隊は輜重中隊の護衛で各村に武器を配布。
 それ以外の中隊は品川西方にて集合せよ」

 各地へと散らばっている中隊へ伝令を送る。

 さて次は襲撃だ。
 今度は品川後方の小荷駄を狙う。

 武田信繁の本陣から、すぐ西に配備されているとのこと。

 急襲し即座に逃げる。
 これの繰り返し。

 足を止められなければ成功するが、罠などが仕掛けられていれば泥沼試合となるからな。

 念には念を入れて索敵をしようか。

 ◇ ◇ ◇ ◇

 2刻後申の刻(午後4時)
 品川北西方5町(500m)
 東雲尚政
(罠にかかりにくい狐、36歳♂)


 やはり罠があるな。

 地面に綱と小さな穴が掘ってある。知らずにこれに突っ込めば落馬し機動力を失う。馬を失えば重い鉄砲を持っている分、長柄足軽よりも足が遅くなる。

 現在公園にて「騎兵銃」を開発している。

 しかしあと2~3年は掛かるとのこと。軽量で騎乗したままでも取り扱い易いものを要求しているが、まだ重要な素材が足りない。

 それが入手出来次第、試験製造を開始するとのこと。
 大隊の皆が期待している。

「進路確保! 
 これから目印を付けます。その後は1列のみ進軍可能!!」

 戦闘工兵を兼ねている分隊から報告があった。

 引き連れてきた3個中隊400名の内、100名を率いて台地の西から谷間を降り、幅1間半(3m)の狭い安全帯を通過、輜重隊の後方に出て焙烙を投げ入れ急襲。

 下馬してからの一斉射撃を3射行い、逃げる。

 武田の騎馬武者が後をってくるようならば、伏せている300名の射撃で討ち取る。

 夕日を背にするから、まずは見つからずに埋伏できよう。
 これで今日は仕舞だ。

 明日も同じことをする陽動作戦をすれば1000名程度の兵は引きつけられるであろう。

 これで品川への圧迫は少なくなる。
 小荷駄も損害が出ていれば長期戦は出来まい。

 完璧だな。
 おっと、いつの間にか髭を触ってしまった。
 12号は改良されたとはいえ触れば落ちる。気を付けねば……

 ◇ ◇ ◇ ◇

 同日同刻
 品川北西方武田信繫本陣
 山本勘助
(INT98という設定!)


 後方との連絡が取れぬ。
 いくら騎馬の伝令を出しても三ツ者の伝令を出しても復命がない。

 狭山へも三浦へも連絡がつかぬ。
 眼を潰された軍の戦いは手探りで手足を振り回しているようなもの。
 危険極まりない。

 大胡の後方攪乱か。

 素ッ破の暗躍はもとより、大胡の戦力には竜騎兵なるものがあるという。長距離を移動し時にはその鉄砲で襲撃を繰り返す。
 各地の豪族国衆には農民を招集し、いつでも出兵できるように指令を出している。

 無下には跳梁を許すとは思えぬが、鉄砲を持った兵が100騎も突如として現れれば、たとえ500の兵があろうとも防御が精いっぱいであろう。
 下手に追えば全滅するやもしれぬ。

 竜騎兵を指揮するのは鬼美濃殿かと思うたが、似合わない付け髭を付けた馬面の武将と聞く。この者が策を用いて地黄八幡の猛将、北条綱成を追い詰めたとの報告があった。もしこれが品川の後方を侵すとなれば、攻略はとん挫するであろう。

 そう判断して典厩(信繁)様に、後方への罠の設置を進言した。
 後方に罠など張れば、退き陣の際に目も当てられぬ一大事となるため判断に迷われたが、後方から襲撃されれば全軍崩壊となる。

 覚悟を決めるとともに念には念を入れる事とした。

 典厩様は、
「あと2日で品川を落とす。
 どうせならば小荷駄を囮に
 後ろ備えを北西へ向けて埋伏させよ」
 と決断を下された。

 そろそろ陽が沈む。
 夜襲は無かろう。

 あと半刻じゃ。
 西日が眩しい。

 もし今日襲撃があるとすれば、この好機を逃すはずはない。

 後ろ備え400に静寂を保つように使いを出すとともに、本陣全ての何時でも
 後方への攻撃が出来るように準備をするよう伝えた。


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