首取り物語~北条・武田・上杉の草刈り場でざまぁする~リアルな戦場好き必見!

👼天のまにまに

文字の大きさ
上 下
180 / 339
第19章:激戦!【品川包囲戦】

目と目で通じ合う・・・涙

しおりを挟む
 国王陛下の生誕の式典の晩餐会も無事に終わって、わたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんは部屋に下がっていた。クリスタちゃんは王族の席でほとんど料理は食べられなかったようでお腹を空かせていた。

「クリスタ様、ハインリヒ殿下より言付かっております」
「ありがとうございます」

 王宮の召使が持って来てくれたのはクリスタちゃんのための軽食だった。サンドイッチとキッシュという簡素なものだが、夜遅くに食べるのでこれくらいがちょうどいいのだろう。
 紅茶も添えられていて、クリスタちゃんは椅子に座ってサンドイッチとキッシュを食べていた。

「わたくしも来年社交界デビューを果たしますが、昼食会や晩餐会に出るのを楽しみにしていましたが、楽しいことばかりではないようですね」
「レーニちゃんは楽しんだらいいと思います。わたくしはハインリヒ殿下の婚約者なので王族の席に座って皆様をもてなさなければいけませんから」
「クリスタちゃんだけ大変で申し訳ないですわ」
「ハインリヒ殿下は式典とは別の日に式典の料理を用意させて食べさせてくれることがあるのです。わたくしにはわたくしの楽しみがあるので、レーニちゃんは気にしなくていいのですよ」

 自分だけ食べるのは申し訳ないと思っているレーニちゃんに、クリスタちゃんは明るく答えていた。
 順番に部屋についているお風呂に入って、わたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんは休んだ。
 朝になってふーちゃんとまーちゃんとデニスくんとゲオルグくんが部屋のドアをノックするまで、わたくしたちはぐっすりと眠っていた。

「エリザベートお姉様、クリスタお姉様、レーニちゃん、お散歩に行きましょう!」
「お姉様たちの準備が終わるまでいい子で待っていますわ」
「おねえさま、あさのおさんぽです」
「きょうもゆきがっせんがしたいの」

 元気な声に起こされて準備をして庭に出て行くと、エクムント様の姿があった。

「エクムント様!?」
「王宮では毎朝この時間に散歩に出ているのですね。ご一緒したくて私も散歩に出てみました」
「朝からお会いできて嬉しいですわ」

 エクムント様はわたくしたちを待っていてくれたようだ。
 細身の長身の体にブルーグレイのロングコートがとてもよく似合う。マフラーと手袋は白で格好よく決まっている。

「エクムントさま、わたしたち、フランツどのとマリアじょうとゆきがっせんをします!」
「みていてください!」
「今日は負けません!」
「お兄様、頑張りましょう!」

 雪合戦を始めるデニスくんとゲオルグくんとふーちゃんとまーちゃんを見ながら、わたくしはエクムント様に問いかける。

「王宮の庭を散歩されるのは初めてですか?」
「早朝に起きて散歩するのは初めてですね。王宮の庭は雪が積もっていない時期は美しいのでしょうね」
「季節の花々が咲いてとても美しいのですよ」
「次回から私も散歩をご一緒してもいいですか?」
「喜んで」

 次に王宮に招かれるのはハインリヒ殿下とノルベルト殿下のお誕生日の式典だろうが、そのときにはエクムント様と朝の散歩をご一緒できる。わたくしは今からそれが楽しみだった。

「エリザベート嬢の見る景色を私も一緒に見てみたいのです」
「嬉しいことを言ってくださいますね」
「エリザベート嬢は私の婚約者ですからね」

 わたくしの見る景色を見たいというのは、わたくしに興味があるということに他ならなかった。
 胸がときめいていると、雪合戦が中断されている。

「おねえさま、おてあらいにいきたくなっちゃった」
「どうしましょう。部屋まで我慢できますか、ゲオルグ?」
「がまんできない! もれちゃうー!」

 半泣きになっているゲオルグくんに、動いたのはエクムント様だった。

「ここからだと私の部屋が一番近いですね。私の部屋においでください」
「おねえさまといっしょじゃないといやー!」
「皆様でおいでください」

 さすがに未婚の妙齢のレーニちゃんを部屋に招くのはよくないと思ったのか、エクムント様はわたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんとふーちゃんとまーちゃんとデニスくんとゲオルグくんの全員を部屋に招いてくれた。
 大急ぎでエクムント様の部屋に行くと、ゲオルグくんはお手洗いを貸してもらっていた。
 ゲオルグくんが手を洗って出て来ると、恥ずかしそうにデニスくんも申し出る。

「じつは、わたしもおてあらいにいきたくなって」
「私もです」
「わたくしも」

 寒い中外に出たのでゲオルグくんだけでなくデニスくんもふーちゃんもまーちゃんもお手洗いに行きたくなっていたようだ。

「どうぞ、お使いください」
「ありがとうございます、エクムントさま」
「使わせていただきます。マリア、先に使っていいからね」
「お兄様、ありがとうございます」

 エクムント様の部屋のお手洗いに並んで、デニスくんとまーちゃんとふーちゃんが順番にお手洗いを使っていた。
 手を洗って一息つくと、デニスくんとゲオルグくんはエクムント様の部屋の中が気になっているようだ。

「おおきなまどがあります」
「このまどからテラスにでられるのですね」
「テラスに出てみますか?」
「いいのですか?」
「テラスにゆきがつもっています」

 興味津々のデニスくんとゲオルグくんにもエクムント様は優しかった。
 エクムント様の部屋に入ってみたいが、それを口に出すのははしたないと思っていたわたくしは、思わぬところでエクムント様のお部屋を訪問できて嬉しく思っていた。
 テラスからは庭が見下ろせる。
 デニスくんとゲオルグくんとふーちゃんとまーちゃんが雪合戦をしていた場所も見えていた。

「おねえさま、おにわがみえるこのおへやにとまれませんか?」
「ここは辺境伯家の方が泊まる部屋なので、無理ですね」
「そうですか。とまりたかったな」

 デニスくんとゲオルグくんは庭に面したこの部屋が気に入ったようだった。
 客間にもランクがあって、辺境伯家はここ、公爵家はここというのが決まっている。
 辺境伯家の割り当てられた部屋にリリエンタール家が泊まるのは難しかった。

 庭に戻ると再び雪合戦の続きが行われた。
 今回はふーちゃんとまーちゃんも作戦を立てて、ふーちゃんが雪玉を丸めて、まーちゃんが元気いっぱい投げていた。
 デニスくんとゲオルグくんは昨日と同じ、ゲオルグくんが雪玉を丸めて、デニスくんが投げている。

「これは勝負がつきませんわね」
「同点ということにしましょう」

 いつまで経っても終わらない雪合戦に、レーニちゃんとクリスタちゃんは同点だということにしてデニスくんとゲオルグくん、ふーちゃんとまーちゃんに雪合戦を終わらせていた。

「朝食の時間になるので失礼します。楽しい朝のお散歩でした」
「またお会いしましょう、エリザベート嬢」

 エクムント様にお辞儀をして部屋に戻ると、エクムント様は手を振って見送って下さっていた。
 レーニちゃんとデニスくんとゲオルグくんはリリエンタール家の部屋で、わたくしとクリスタちゃんとふーちゃんとまーちゃんはディッペル家の部屋で朝食を取る。
 朝食が終われば、荷物を纏めて王宮から帰る時間になる。

 身分からいってディッペル家が一番最初に馬車を用意される。
 わたくしとクリスタちゃんとふーちゃんとまーちゃんと両親が馬車に乗り込んでいると、国王陛下と王妃殿下が両親に話しかけている。

「今年も無事に生誕の式典が終わってよかった。ディッペル家のエリザベートも正式に社交界デビューを果たせてよかったな」
「ありがとうございます、国王陛下」
「ハインリヒとノルベルトの誕生日のときには、またマリア嬢のお誕生日のお茶会を開きましょうね」
「そのときにはよろしくお願いいたします、王妃殿下」

 両親が頭を下げて挨拶をしていると、ハインリヒ殿下がクリスタちゃんに声をかける。

「冬休み明けに、また学園でお会いしましょう」
「はい、ハインリヒ殿下」

 手を振るハインリヒ殿下に、クリスタちゃんは馬車の中からずっと手を振っていた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

国虎の楽隠居への野望・十七ヶ国版

カバタ山
ファンタジー
信長以前の戦国時代の畿内。 そこでは「両細川の乱」と呼ばれる、細川京兆家を巡る同族の血で血を洗う争いが続いていた。 勝者は細川 氏綱か? それとも三好 長慶か? いや、本当の勝者は陸の孤島とも言われる土佐国安芸の地に生を受けた現代からの転生者であった。 史実通りならば土佐の出来人、長宗我部 元親に踏み台とされる武将「安芸 国虎」。 運命に立ち向かわんと足掻いた結果、土佐は勿論西日本を席巻する勢力へと成り上がる。 もう一人の転生者、安田 親信がその偉業を裏から支えていた。 明日にも楽隠居をしたいと借金返済のために商いに精を出す安芸 国虎と、安芸 国虎に天下を取らせたいと暗躍する安田 親信。 結果、多くの人を巻き込み、人生を狂わせ、後へは引けない所へ引き摺られていく。 この話はそんな奇妙なコメディである。 設定はガバガバです。間違って書いている箇所もあるかも知れません。 特に序盤は有名武将は登場しません。 不定期更新。合間に書く作品なので更新は遅いです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

【完結】サキュバスでもいいの?

月狂 紫乃/月狂 四郎
恋愛
【第18回恋愛小説大賞参加作品】 勇者のもとへハニートラップ要員として送り込まれたサキュバスのメルがイケメン魔王のゾルムディアと勇者アルフォンソ・ツクモの間で揺れる話です。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

グライフトゥルム戦記~微笑みの軍師マティアスの救国戦略~

愛山雄町
ファンタジー
 エンデラント大陸最古の王国、グライフトゥルム王国の英雄の一人である、マティアス・フォン・ラウシェンバッハは転生者である。  彼は類い稀なる知力と予知能力を持つと言われるほどの先見性から、“知将マティアス”や“千里眼のマティアス”と呼ばれることになる。  彼は大陸最強の軍事国家ゾルダート帝国や狂信的な宗教国家レヒト法国の侵略に対し、優柔不断な国王や獅子身中の虫である大貴族の有形無形の妨害にあいながらも、旧態依然とした王国軍の近代化を図りつつ、敵国に対して謀略を仕掛け、危機的な状況を回避する。  しかし、宿敵である帝国には軍事と政治の天才が生まれ、更に謎の暗殺者集団“夜(ナハト)”や目的のためなら手段を選ばぬ魔導師集団“真理の探究者”など一筋縄ではいかぬ敵たちが次々と現れる。  そんな敵たちとの死闘に際しても、絶対の自信の表れとも言える余裕の笑みを浮かべながら策を献じたことから、“微笑みの軍師”とも呼ばれていた。  しかし、マティアスは日本での記憶を持った一般人に過ぎなかった。彼は情報分析とプレゼンテーション能力こそ、この世界の人間より優れていたものの、軍事に関する知識は小説や映画などから得たレベルのものしか持っていなかった。  更に彼は生まれつき身体が弱く、武術も魔導の才もないというハンディキャップを抱えていた。また、日本で得た知識を使った技術革新も、世界を崩壊させる危険な技術として封じられてしまう。  彼の代名詞である“微笑み”も単に苦し紛れの策に対する苦笑に過ぎなかった。  マティアスは愛する家族や仲間を守るため、大賢者とその配下の凄腕間者集団の力を借りつつ、優秀な友人たちと力を合わせて強大な敵と戦うことを決意する。  彼は情報の重要性を誰よりも重視し、巧みに情報を利用した謀略で敵を混乱させ、更に戦場では敵の意表を突く戦術を駆使して勝利に貢献していく……。 ■■■  あらすじにある通り、主人公にあるのは日本で得た中途半端な知識のみで、チートに類する卓越した能力はありません。基本的には政略・謀略・軍略といったシリアスな話が主となる予定で、恋愛要素は少なめ、ハーレム要素はもちろんありません。前半は裏方に徹して情報収集や情報操作を行うため、主人公が出てくる戦闘シーンはほとんどありません。 ■■■  小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも掲載しております。

処理中です...