首取り物語~北条・武田・上杉の草刈り場でざまぁする~リアルな戦場好き必見!

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第16章:黒幕は堺!

撤退戦と言えば『あれ』ですよね

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 1555年11月下旬
 美濃国関ケ原東端十九女池つづらいけ北方
 上泉伊勢守
(剣聖改め戦闘狂)


 嫌な予感がする。
 石堂殿へ視線を向けると、こちらへ同意の視線が返ってきた。周囲をそれとなく見やり、不審な者がいないか気配を探る。

 夕刻、旅の者の影は少なくなっている。既にこの先1里にある垂井の宿で足を休めているであろう。東海道を行き交うものは、その殆どが近在の農民であろうか。

 鋤鍬を担いで家路を急いでいる……!?
 ここは関ケ原から垂井へ抜ける隘路だ。
 なぜ百姓が家に帰るのに、ここを通るのだ!?

 石堂殿も気づいたのか、空かさず殿と秀胤に状況を説明する。護衛の総指揮は儂が取ることになっている。
 殿が連れてきた太田殿の犬に、用意しておいた手紙を付けて放す。

 まだ草どもには気取られていない。
 ここからが勝負だ。

(防御陣。三の型。展開)

 を意味する「はんどさいん」を周囲の親衛隊と鉄砲隊に目立たぬように送り、会談の場であった小高い丘から降りる道で陣形を整える。
 

 やはり来た。

 街道西方より200以上の足軽。
 旗差し物は六角。
 幸い弓は少ない。

 殿はあらかじめ、背負子に乗っていただいている。

 連れてきた馬は4頭。2頭は先行して救援を求めるための騎馬。残り2頭に殿を乗せるのは危険だ。狙ってくれと言っているようなもの。

「今だ! 
 垂井まで一気に駆ける!
 殿の露払い親衛隊1班。
 2班は左右。
 後ろは手筈通り鉄砲隊!!」

 蔵田屋と磐梯屋はこのような危険を回避するため、先に垂井へ行ってもらったためその分こちらの出立が遅くなった。それが幸いして移動中に襲われずに済んだ。

 魚鱗の陣の如く殿を護衛しながらひた走る。

 鉄砲隊は……捨て奸すてがまり(注1)だ。

 那和を発つに当たり、皆から志願者を募った。すると定員20名にもかかわらず1200名もの志願者が出た。それを聞いた殿は、茫然と立ち続け目を開けたまま無言で泣き続けた。

 その志願者の中から特に優秀な鉄砲兵を連れてきた。

 秀胤は反対した。凄腕の射手を蜥蜴の尻尾のように捨ててしまえば、今後の戦いに狙撃手が不足すると。
 儂は思い切りぶん殴った。
 「殿がいなくなって何が今後の戦だ!!」
 と。

 今、その者たち20名が「つーまんせる」にて、街道脇に伏せている。

 せめて必死(必ず死ぬ)の作戦ではなく、生き残る可能性を残してくれとの殿のお言葉から、交互に後退することにしている。
 逢魔が刻にはまだ遠い。垂井までならばすぐに着くであろうが……

「岩手殿。この近在で信頼できる国衆・豪族は何方であろうか?」

 先の若侍に聞く。
 図らずもこの迷惑な来客が大事な情報源となった。

「確実に頼りになる国衆は、大垣城の氏家直元殿」
「大垣城までの距離は?」
「およそ3里。大きな障害は、垂井のすぐ向こうに流れる相川とその向こう杭瀬川!」

 駆けながら冷静に応対する。

 12にしてはよい武士じゃ。後々大成するであろう。少々、ひ弱そうだが殿の例もある。全てにおいて秀でる必要はない。

「殿。大垣でよろしゅうござるな。それ以上は後衛が持ちませぬ」

 殿はいつもと違い、後ろを見られるように座っている。
 返事はないが、はんどさいん」で是と答えてきた。

 きっと
「できうる限り後衛の雄姿を目に焼き付けたい」
 と願っているのであろう。

 親衛隊から2人を選び大垣城へ2騎を走らせる。
 既に両側の山中では石堂殿の配下と、甲賀の三雲衆との壮絶な戦いが繰り広げられているのであろう。

 儂は見落としがないか周りに気を配り、東へ向けてひた走った。

 ◇ ◇ ◇ ◇

 同日同刻同場所
 網走在施符
(大胡最高のスナイパー)


 なんでこうなっちまったのかなぁ。
 自分から死にに行くような志願、する気はなかったんだがな。酒の勢いに任せて志願しちまった。後から「あれは戯言であった」というのも気が引けると思ったんだ。

 以前なら体面とか意地とかは全く関係ない暮らしをしていたのだが。
 周りのもんが、あまりにも大胡への愛情が深くなったんで感化されていたのか? 

 将又はたまた、今頃になって得度とくどした頃の清々しい心を持ちたいと思っちまったのか、自分でもさっぱりわからん。

 兎に角、俺はここにいる。
 もう逃げも隠れもしないぜ。

 仲間を逃がす。
 この一点だけ、考えることはこの一点だけだ。
 これをするために生きてきたんか、俺は。

 どうしようもない人生だったが、最後の最後にいいことしたら仏さんがよくしてくれるんか?

 いや、弁天様がいいか。
 ……最後まで、助兵衛は治らんな。

 ◇ ◇ ◇ ◇

「網走の。来たぞ。先に俺が撃つ。
 5丁撃ったら後は任せた」

 隣に座っている相方が笑顔で声を掛けてくる。おい、なんでそんなに嬉しそうにしているんだよ。
 これから死ぬんだぞ?

 まあ、先に俺が死ぬんだろうがな。

「おうよ。またあの世で一緒に酒を飲むか?」
「いや。今度は女子に囲まれて楽しく飲むわい」

 俺と似たような奴だから似たようなこと考えてるな、やっぱり。

 そして。
 来た。

 西から足軽の集団が300程度。
 率いている武者をまずは倒していく。
 
  ズガ~~~~ン!!!!

 外しやがったよ。
 こんな大事なところで。

 まだ遠すぎる。
 50間以上あるからな。

 地面に並べられている鉄砲を立て続けに5丁放ってから後退。物頭を2人倒したため、一時的に進撃が止む。
 撃ち終わった鉄砲を背負った鉄砲入れに納めてから東へと向かう。
 何も重い鉄砲を持ち帰る必要もないのだが、これからどれだけ長期戦になるやもしれぬ。少しでも鉄砲を持ち帰らねば、撃ち手がいても交戦できないからな。

 遂に敵が動き出した。
 敵も鉄砲を持ち出してきやがった。
 10丁程か。

 当たるとは思っていないが、こちらは1人で敵の目の前に居るんだ、
 怖えーよ。
 だが、手は震えてはいない。

 尻を下ろして座り、左膝を立てその膝上に左腕を乗せる。

 その左腕で引き金に掛けた右手をしっかりと肩に固定する。
 息を整えていく。

 ここまでの動作を何度したか。
 数限りなく訓練し、今は勝手に体が動く。

 50間を切った。
 息を殺すと「射線が見える」。

 これは俺だけに見えるらしい。
 鉄砲は30間を超えると、ほとんど当たらない。
 弾がどこへ行くかわからず、どれだけ狙いを定め銃身を固定してもほぼ外れる。

 だが、鉄砲を撃ち始めてもう12年。
 ある時、次に放つ弾がどこを通るか分かるようになった。
 赤い線が見えるんだ。
 その通りに撃つと百発百中、外したことがねえ。

 今回も5発が5発とも先頭を行く足軽の頭に風穴を開けてやった。
 しかしよぅ、これから後退という時に、遠矢が腕に刺さっちまいやがった。

 此畜生!
 体のつり合いが取れねぇ。
 歩きにくい。

 5丁の鉄砲を置いていくことにしたが、そうこうするうちに敵が近づいてきた。
 もう5間もねえか。
 いい人生ではなかったが、最後の12年間は楽しかったぜ。

 女も抱けたし、いい仲間もできた。
 できればもう一度、女を抱きたかったが。

 ??

 東向こうから、男装をしたちっこい別嬪が駆けてきた。

 頭の両側で結った明るい色の髪を揺らしながら、背負ったえびらから
(矢筒の矢を取りやすくした物)次々に矢を番え、敵へと放ちながら走って来る。

 ああ、あいつか。
 大人嫌いの弓使い。

 おいおい。嬢ちゃんよ。
 こんなところで俺の様なおっさんのために命を張るんじゃねぇ。

 すぐ近くへと近づいてきた娘にそう言おうとしたが、それを察したか、

「別にあんたのために助けるんじゃないんだからね! 殿さまの戦力を弱めないようにと思っただけさ。だから、早くしなさいよ。私が敵を食い止めている間に、次の射撃地点に!!」

 左肩を抑えながら後退する間、少しだけ後ろを振り返ると鉄砲よりも遠い60間もの距離から、顔面を射抜いていやがる。


 此奴は人か?
 まさか人型の絡繰りじゃないだろうな。

 ◇ ◇ ◇ ◇

 同日同刻

 杭瀬川西3町
 長野政影
(政賢の「自家用者」兼側使え)


 抜かった。
 街道両側の茂みから吹矢で狙撃された。

 太腿ふとももをやられた。どうやら毒が仕込まれていたらしい。段々と熱が出てきているのを感じた。

 それに気づいた上泉殿が肩代わりを申し出てくれたが、殿は最近重くなられた。某以外に背負える者がいない。唯一某と同じ背丈の宮川殿は乱戦に強い最大戦力だから先陣を受け持っている。

 断りを入れて走り続ける。
 あと半里もないと若侍が言う。そのくらいならば駆け抜けられるであろう。

 喉が渇く。
 どうやら相当早く回る毒らしい。
 しかし既に目の前に最後の難関、杭瀬川が見えている。これを越えれば大垣城まで10町もない。
 それに先ぶれが先行し、迎えの手勢を寄こしてくれるよう頼んでいる筈。

「殿。いつもよりも揺れまするが後暫し辛抱してくだされ。この川を越えればあと少しにござりまする」

 河岸を急いで駆けつつ、声を掛ける。

 ……返事がない。
 ぶつぶつと念仏の様なまじないのような声は聞こえるが、某の声は全く聞こえていないようだ。

 捨て奸の兵を惜しんでいらっしゃるのか?
 しかし、この呪いの文言、どこかで聞いたような気がする……
 はるか昔、今と同じように危険な状況で。

 返事がないのを不審に思った親衛隊の者が傍らで再度声をお掛けする。

「大変です!! 
 殿が青い顔で汗を流しておりまする!!」

 しまった! 
 毒矢が殿にも刺さっていたか!?

 その時、河原の泥に足を取られてしまった!!
 殿と一緒に夕闇迫る川面に投げ出されてしまう。

「殿! 
 ご無事ですか!? 
 今、お助けいたす!!」

 皆が殿へ手を差し伸べるも、泥に覆われた腕は掴む傍から滑り、殿は下流へと流されていく。某を始め、親衛隊の皆は河に入り必死で殿に近づこうとするも、河の流れが速い。
 殿が泳げない事がこんなにも悔やまれるとは!!

 そうこうするうちに鉄砲隊も徐々に追いついてきた。つまり六角の兵か甲賀の者が近づいてきたということ。
 上泉殿は兵を二手に分け5名にて殿を追う。某も体が動かなくなってきた。

 痺れる。

 早く毒を吸わねば(注)殿の体は命は……
 いや、なんとしても守るっ!
 それなのに体が動かぬ。

 渡し場は夕暮れの中、鉄砲隊が奮戦するも、もう近接戦となる。数と得物で押され、下手をすると全滅……
 嫌な想像が頭を駆け巡った。

「そこなるは六角の兵か? 
 斎藤の領地での横暴は許さぬっ! 早々に立ち去れい!!」

 東から100名ほどの兵を率いた武将が騎乗して駆けつけてきた。

 助かった。

「某。大胡左中弁が臣。長野政影! 馬を暫しお貸しいただきたい! 大胡政賢、今、河に流されており申す。流れを先回りせねば助けられず!!」

「おお!
 然らば、某がお助けいたす。これでも水練には自信があり申す。安心いたせ」

 その武将、30がらみの眉目秀麗な男が鮮やかな騎乗を見せ、河下へ向かう。

「有難し!
 お名前をお聞かせ願いたい!!」

 その武将は馬を走らせながら腕を上げて、任せろと言わんとばかりに名乗った。

「某、斎藤家家臣。美濃可児郡明智城城主、明智十兵衛光秀と申す。
 以後お見知りおきを!!」

 薄れゆく意識の中で、「お若いのに髪の毛が寂しいな」などと、訳の分からない感想を抱いていた。


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