首取り物語~北条・武田・上杉の草刈り場でざまぁする~リアルな戦場好き必見!

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第15章:修学旅行の気分?で上洛

なぜそこまでして市をたてる?

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 1555年11月下旬
 近江国琵琶湖上
 智円(最近外交陰陽師という新しいジャンルを開発しようとして政賢に拒否られた外交僧)


「ほ~し~い~~~~!」

 殿は先ほどからこればかり言っている。この大きな湖、淡海・琵琶湖が欲しいと。

「信ナガンが、ここを重要視したわけだよね~。安土城ガンガンに重要じゃん。坂本城と長浜城で完璧とらいあんぐる! 京の喉元締め上げてるし、東海道握っていたら流通の利、がっつり独り占め。防備も完璧!」

 坂本に城? 
 それは重要だが、
 長浜? 
 安土? 
 どこであろうか。

 それにのぶながんとは? 
 織田殿か?

 どうせ聞いてもはぐらかされるだけ。ここが流通と経済の要であるということは拙僧でもわかる。

「殿。日枝ひえ神社に上野と新しき市への勧請かんじょう(分祀)を願い出て、寄進をされたのは如何なる狙いなのでござるか?
 某、外交は不勉強にて」

 政影殿が確認の意味を込めて、殿へご説明していただこうと声を掛けた。

「んとね。比叡山が京の町へ繰り出して僧兵が悪さするでしょ? その時の大義名分と最強兵器が、日枝神社の神輿なんです。それを新しい大胡市に向けられたら怖いでしょ?
 あとはね。東国の山伏の皆様へのさあびす。
 山王権現ですから、山岳信仰に結びついちゃっているわけ。その中心地を上野にもこさえちゃおうかなと。でも一番重要なのは本願寺の真似かなぁ」

「それは如何様な真似でござろうか?」

 拙僧にも分かりかねぬので、つい口を挟んでいた。殿は乗っている船の舷側から身を乗り出そうとして、政影殿に止められている。

「本願寺がなぜ儲かっているか? 
 今までの比叡山とか京都五山は関を作り座を作り、そこから銭を収めさせることで裕福になっていったけど、本願寺は全く別。
 関を廃止し、寺の周りの町では売買自由、それでいて他の町では当たり前の武士による襲撃・脅しによる矢銭の要求から守ってくれる。だから人と物・銭が集まる。
 ぷらす宗教という人寄せ絡繰りがあるんだよなぁ。そこに発展があれば、皆さん有難がって自発的に寄進するでしょ? ということで、現在の所、最強経済勢力となったわけ。
 ついでに言えばその寺内町を徐々に増やしていって網の目のように張り巡らすことでその地方の経済を支配しちゃう。
 なので大胡としては、最初は山岳信仰から情報を集め物流を握る。
 まずは先物市場?
 債券交換所? 
 兌換紙幣の発行所?
 こんなの作っちゃう。
 そのうち発展の基礎出来るから、大胡の平等意識注入してさ、山岳信仰と言えばサンカでしょ? 日枝大社は猿が神聖なものだしね。結構、山と関係あるんだ。だからその伝手で下賤の者とされている芸能に長けている人々呼び寄せちゃう。
 猿楽・狂言? 
 蹴鞠大会なんかいいかなぁ。
 ふっと猿大会! 
 なんちって、ははは。
 みんなで遊べる場所作って益々繁栄。
 これが僕の狙い」

 相当念入りな戦略があるようだ。
 流石殿といったところであるが、拙僧ら側近はその穴を見つけ塞がねばならぬ。
 これからはさらに精進せねばならぬ。

「しかし殿。六角殿は本当に危害を与えてくる恐れがあるのでしょうか? 六角家が大胡に敵対する理由が見当たりませぬ。あまり利益がなさそうですが」

 現在、船で琵琶湖を東進している。
 本隊は陸路を東へ向かっているが、もしもの時に備えて精鋭10名のみにて殿と共に船に乗って堅田から琵琶湖東岸の朝妻湊(現在の米原北部)へ向っている。

 六角家は三好と対立している。
 その三好と会合し、何らかの合意を取り付けてきた大胡を、歓待する素振りをして取り込む可能性もある。それを未然に防いで、無駄な時を過ごさないようにこの道を通っている。

 流石に50万石の大身大名に
「無礼な!」とは
「表立っては」言えぬであろう。
 下手に遺恨は作りたくない。

 何かがある前に、さっさと畿内を出よう。ここは大きな勢力が入り乱れており、何があるかわからぬ。
 殿のお傍近くに控え、身辺警護に徹している信綱殿に目で念を押し、先行させた鉄砲隊20人が待つ朝妻湊を見据えた。


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