154 / 339
第15章:修学旅行の気分?で上洛
なぜそこまでして市をたてる?
しおりを挟む
1555年11月下旬
近江国琵琶湖上
智円(最近外交陰陽師という新しいジャンルを開発しようとして政賢に拒否られた外交僧)
「ほ~し~い~~~~!」
殿は先ほどからこればかり言っている。この大きな湖、淡海・琵琶湖が欲しいと。
「信ナガンが、ここを重要視したわけだよね~。安土城ガンガンに重要じゃん。坂本城と長浜城で完璧とらいあんぐる! 京の喉元締め上げてるし、東海道握っていたら流通の利、がっつり独り占め。防備も完璧!」
坂本に城?
それは重要だが、
長浜?
安土?
どこであろうか。
それにのぶながんとは?
織田殿か?
どうせ聞いてもはぐらかされるだけ。ここが流通と経済の要であるということは拙僧でもわかる。
「殿。日枝神社に上野と新しき市への勧請(分祀)を願い出て、寄進をされたのは如何なる狙いなのでござるか?
某、外交は不勉強にて」
政影殿が確認の意味を込めて、殿へご説明していただこうと声を掛けた。
「んとね。比叡山が京の町へ繰り出して僧兵が悪さするでしょ? その時の大義名分と最強兵器が、日枝神社の神輿なんです。それを新しい大胡市に向けられたら怖いでしょ?
あとはね。東国の山伏の皆様へのさあびす。
山王権現ですから、山岳信仰に結びついちゃっているわけ。その中心地を上野にもこさえちゃおうかなと。でも一番重要なのは本願寺の真似かなぁ」
「それは如何様な真似でござろうか?」
拙僧にも分かりかねぬので、つい口を挟んでいた。殿は乗っている船の舷側から身を乗り出そうとして、政影殿に止められている。
「本願寺がなぜ儲かっているか?
今までの比叡山とか京都五山は関を作り座を作り、そこから銭を収めさせることで裕福になっていったけど、本願寺は全く別。
関を廃止し、寺の周りの町では売買自由、それでいて他の町では当たり前の武士による襲撃・脅しによる矢銭の要求から守ってくれる。だから人と物・銭が集まる。
ぷらす宗教という人寄せ絡繰りがあるんだよなぁ。そこに発展があれば、皆さん有難がって自発的に寄進するでしょ? ということで、現在の所、最強経済勢力となったわけ。
ついでに言えばその寺内町を徐々に増やしていって網の目のように張り巡らすことでその地方の経済を支配しちゃう。
なので大胡としては、最初は山岳信仰から情報を集め物流を握る。
まずは先物市場?
債券交換所?
兌換紙幣の発行所?
こんなの作っちゃう。
そのうち発展の基礎出来るから、大胡の平等意識注入してさ、山岳信仰と言えばサンカでしょ? 日枝大社は猿が神聖なものだしね。結構、山と関係あるんだ。だからその伝手で下賤の者とされている芸能に長けている人々呼び寄せちゃう。
猿楽・狂言?
蹴鞠大会なんかいいかなぁ。
ふっと猿大会!
なんちって、ははは。
みんなで遊べる場所作って益々繁栄。
これが僕の狙い」
相当念入りな戦略があるようだ。
流石殿といったところであるが、拙僧ら側近はその穴を見つけ塞がねばならぬ。
これからはさらに精進せねばならぬ。
「しかし殿。六角殿は本当に危害を与えてくる恐れがあるのでしょうか? 六角家が大胡に敵対する理由が見当たりませぬ。あまり利益がなさそうですが」
現在、船で琵琶湖を東進している。
本隊は陸路を東へ向かっているが、もしもの時に備えて精鋭10名のみにて殿と共に船に乗って堅田から琵琶湖東岸の朝妻湊(現在の米原北部)へ向っている。
六角家は三好と対立している。
その三好と会合し、何らかの合意を取り付けてきた大胡を、歓待する素振りをして取り込む可能性もある。それを未然に防いで、無駄な時を過ごさないようにこの道を通っている。
流石に50万石の大身大名に
「無礼な!」とは
「表立っては」言えぬであろう。
下手に遺恨は作りたくない。
何かがある前に、さっさと畿内を出よう。ここは大きな勢力が入り乱れており、何があるかわからぬ。
殿のお傍近くに控え、身辺警護に徹している信綱殿に目で念を押し、先行させた鉄砲隊20人が待つ朝妻湊を見据えた。
近江国琵琶湖上
智円(最近外交陰陽師という新しいジャンルを開発しようとして政賢に拒否られた外交僧)
「ほ~し~い~~~~!」
殿は先ほどからこればかり言っている。この大きな湖、淡海・琵琶湖が欲しいと。
「信ナガンが、ここを重要視したわけだよね~。安土城ガンガンに重要じゃん。坂本城と長浜城で完璧とらいあんぐる! 京の喉元締め上げてるし、東海道握っていたら流通の利、がっつり独り占め。防備も完璧!」
坂本に城?
それは重要だが、
長浜?
安土?
どこであろうか。
それにのぶながんとは?
織田殿か?
どうせ聞いてもはぐらかされるだけ。ここが流通と経済の要であるということは拙僧でもわかる。
「殿。日枝神社に上野と新しき市への勧請(分祀)を願い出て、寄進をされたのは如何なる狙いなのでござるか?
某、外交は不勉強にて」
政影殿が確認の意味を込めて、殿へご説明していただこうと声を掛けた。
「んとね。比叡山が京の町へ繰り出して僧兵が悪さするでしょ? その時の大義名分と最強兵器が、日枝神社の神輿なんです。それを新しい大胡市に向けられたら怖いでしょ?
あとはね。東国の山伏の皆様へのさあびす。
山王権現ですから、山岳信仰に結びついちゃっているわけ。その中心地を上野にもこさえちゃおうかなと。でも一番重要なのは本願寺の真似かなぁ」
「それは如何様な真似でござろうか?」
拙僧にも分かりかねぬので、つい口を挟んでいた。殿は乗っている船の舷側から身を乗り出そうとして、政影殿に止められている。
「本願寺がなぜ儲かっているか?
今までの比叡山とか京都五山は関を作り座を作り、そこから銭を収めさせることで裕福になっていったけど、本願寺は全く別。
関を廃止し、寺の周りの町では売買自由、それでいて他の町では当たり前の武士による襲撃・脅しによる矢銭の要求から守ってくれる。だから人と物・銭が集まる。
ぷらす宗教という人寄せ絡繰りがあるんだよなぁ。そこに発展があれば、皆さん有難がって自発的に寄進するでしょ? ということで、現在の所、最強経済勢力となったわけ。
ついでに言えばその寺内町を徐々に増やしていって網の目のように張り巡らすことでその地方の経済を支配しちゃう。
なので大胡としては、最初は山岳信仰から情報を集め物流を握る。
まずは先物市場?
債券交換所?
兌換紙幣の発行所?
こんなの作っちゃう。
そのうち発展の基礎出来るから、大胡の平等意識注入してさ、山岳信仰と言えばサンカでしょ? 日枝大社は猿が神聖なものだしね。結構、山と関係あるんだ。だからその伝手で下賤の者とされている芸能に長けている人々呼び寄せちゃう。
猿楽・狂言?
蹴鞠大会なんかいいかなぁ。
ふっと猿大会!
なんちって、ははは。
みんなで遊べる場所作って益々繁栄。
これが僕の狙い」
相当念入りな戦略があるようだ。
流石殿といったところであるが、拙僧ら側近はその穴を見つけ塞がねばならぬ。
これからはさらに精進せねばならぬ。
「しかし殿。六角殿は本当に危害を与えてくる恐れがあるのでしょうか? 六角家が大胡に敵対する理由が見当たりませぬ。あまり利益がなさそうですが」
現在、船で琵琶湖を東進している。
本隊は陸路を東へ向かっているが、もしもの時に備えて精鋭10名のみにて殿と共に船に乗って堅田から琵琶湖東岸の朝妻湊(現在の米原北部)へ向っている。
六角家は三好と対立している。
その三好と会合し、何らかの合意を取り付けてきた大胡を、歓待する素振りをして取り込む可能性もある。それを未然に防いで、無駄な時を過ごさないようにこの道を通っている。
流石に50万石の大身大名に
「無礼な!」とは
「表立っては」言えぬであろう。
下手に遺恨は作りたくない。
何かがある前に、さっさと畿内を出よう。ここは大きな勢力が入り乱れており、何があるかわからぬ。
殿のお傍近くに控え、身辺警護に徹している信綱殿に目で念を押し、先行させた鉄砲隊20人が待つ朝妻湊を見据えた。
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説

国虎の楽隠居への野望・十七ヶ国版
カバタ山
ファンタジー
信長以前の戦国時代の畿内。
そこでは「両細川の乱」と呼ばれる、細川京兆家を巡る同族の血で血を洗う争いが続いていた。
勝者は細川 氏綱か? それとも三好 長慶か?
いや、本当の勝者は陸の孤島とも言われる土佐国安芸の地に生を受けた現代からの転生者であった。
史実通りならば土佐の出来人、長宗我部 元親に踏み台とされる武将「安芸 国虎」。
運命に立ち向かわんと足掻いた結果、土佐は勿論西日本を席巻する勢力へと成り上がる。
もう一人の転生者、安田 親信がその偉業を裏から支えていた。
明日にも楽隠居をしたいと借金返済のために商いに精を出す安芸 国虎と、安芸 国虎に天下を取らせたいと暗躍する安田 親信。
結果、多くの人を巻き込み、人生を狂わせ、後へは引けない所へ引き摺られていく。
この話はそんな奇妙なコメディである。
設定はガバガバです。間違って書いている箇所もあるかも知れません。
特に序盤は有名武将は登場しません。
不定期更新。合間に書く作品なので更新は遅いです。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
【完結】サキュバスでもいいの?
月狂 紫乃/月狂 四郎
恋愛
【第18回恋愛小説大賞参加作品】
勇者のもとへハニートラップ要員として送り込まれたサキュバスのメルがイケメン魔王のゾルムディアと勇者アルフォンソ・ツクモの間で揺れる話です。


だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる