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第13章:氏康君、首もらっちゃうよ♪【北条編佳境】
最後は勘と運
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1553年12月1日未の刻(午後2時)
上野国桃ノ木川決戦場北条方中軍後方次鋒
玉縄八幡
(玉縄衆北突入隊指揮官)
お味方が押されていると思っていたが、徐々に大胡勢が疲れを見せていたのか?
敵の中軍が崩れた。
罠か?
しかし、それでも敵方右翼との間にできた間隙を逃すことは出来ぬ。
北突入隊500に号令を掛ける。
「左翼突入隊、突っ込め!
綱成様の仇を討つのは今ぞ!!」
この日のために、毎日毎日、体を鍛え技を鍛え、そして心も鍛えてきた。
士分はもとより、今までは招集された兵であった農民兵も一緒になり毎日、日が暮れるまで訓練した。
手槍1本で、前線を突破しその後方に出る。
そして前線を後ろから襲い、裏崩れを起こさせることで大胡勢を一気に敗走させる。これのみに特化し、錬成をしてきた。
皆、体に合った愛用の手槍を持ち、いつでも暴れまわれるよう体を解していたため、すぐに駆け出し前線を突破できた。
しかし!!
あの黒光りする一団はなんだ?
あの松山と那波で猛威を振るったという者どもか? 赤い肩の印が不気味に光る。
奴らへの対策は……
「皆の者!
前方の敵備え。
甲冑が固い!
足を突け!!」
一斉に襲い掛かろうとするも、相手の槍が邪魔して足を突けない。
「槍を払え!
敵は片手で槍を持っている!
思いっきり薙ぎ払えば隙が出来る!
そこを突け!!」
皆が敵の槍を払った。
すると、味方の兵1人につき1人が槍と盾を捨て前進。
槍を元に戻そうとしているうちに接近して、分厚い段びらで味方を叩き伏せてきた。
逃げる訳には行かぬ。
槍の懐に入られたからには、槍を捨て太刀で応戦するも、全く歯が立たぬ。
そうこうするうちに槍を捨てなかった敵が前進してきて、槍を捨てた味方の兵を槍で突いてくる!
何とか直ぐに対策を考えねば崩れる!
回り込むしかない!
「敵の右に回り込め。盾と槍が回せぬ方向じゃ!
足を使え!!」
その時間を稼ぐために儂は数名を連れて、正面の敵の槍を次々に払い落としていった。急に隣にいた兵が仰け反り膝から崩れ落ちた。
!?
顔に矢が刺さっている!
弩弓か!?
と思った瞬間、足に激痛が走る。目の前にいた敵兵が槍と盾を手放し、小型の弩弓を構えているのに気が付いた。
次に見えたものは……
赤く染まった空だった。
◇ ◇ ◇ ◇
同日同刻
北条氏康本陣
北条氏康
(瀕死の相模の獅子)
「玉縄衆の突撃。跳ね返され申した。
右から後藤透徹の突貫にございます。左はあの鉄に覆われた甲冑武者の備えにて」
(大道寺)盛昌が状況を知らせてきた。
ええい。
直接見なければ、何も出来ぬ。
「指揮を執る! 馬を曳けい!!」
「お辞めください! もし落馬しようものなら、お味方の士気が!」
「儂の腰を鞍に結びつけよ。落馬はせぬ」
やっと戦場の景色が見えた。
なんとも拙い状況じゃ。
中軍が包囲され完全に士気が消し飛んでいる。
崩れようにも退く場が無い。
このままでは四方に逃げ散り、そのまま敵の餌であろう。
もう富永の指揮する中軍は今まで対峙していた正面の敵中軍の全力攻撃を受けて散り散りになってきているが、敵の本陣から派兵された足軽に西へ追い返されていた。
残る次鋒の玉縄衆1000へと突入を開始する後藤。
あの鉄武者の備えもそのまま次鋒として控えている残りの玉縄衆目掛けて突っ込む。
中軍は陣が完全に崩れている。
裏崩れだ。
立て直しはまず無理だ。
あの後藤と鉄武者を潰さぬ限り、中軍は役には立たぬ。
「本陣の騎馬武者を50ほど割いて中軍左翼に急行。
あの鉄武者の後背を衝け。
倒す必要はない。
慌てさせるだけでよい。
その後すぐに戻れ」
盛昌が指示を出す。
あの忌々しい鉄武者の備えは、これで一時的に無力化できる。
あとは敵の中軍がこちらの中軍を押し込んでくることを覚悟して対策を練る。
!!!!
盛昌め、何故気づかなんだ!?
ぬかったわ。
儂が最初から見ておれば、あの「左にできた間隙」、見逃すはずもない。
今は徐々にこちらのごり押しで敵右翼が後退し、開けた土地に出ている。
雑木林との間隙が出来つつある。
あそこを突けば包囲できる!
「鉄鎧の陣と後藤は玉縄衆に任せる。
本隊旗本より500抽出。
最左翼の間隙を突け。
右回りに敵右翼の後背に出て、敵右翼を包囲殲滅せよ」
敵の右翼は300も居まい。
後ろに兵500が回り込めば潰走する。
戦の終末が見えた。
◇ ◇ ◇ ◇
その15分後
旗本500が
北の雑木林との間に出来た間隙に突入する。
本陣も500に減ったが、もう敵の切っ先が儂の喉元に届く前に向こうの前線が崩壊するじゃろう。
そう思うた一瞬後……
上野国桃ノ木川決戦場北条方中軍後方次鋒
玉縄八幡
(玉縄衆北突入隊指揮官)
お味方が押されていると思っていたが、徐々に大胡勢が疲れを見せていたのか?
敵の中軍が崩れた。
罠か?
しかし、それでも敵方右翼との間にできた間隙を逃すことは出来ぬ。
北突入隊500に号令を掛ける。
「左翼突入隊、突っ込め!
綱成様の仇を討つのは今ぞ!!」
この日のために、毎日毎日、体を鍛え技を鍛え、そして心も鍛えてきた。
士分はもとより、今までは招集された兵であった農民兵も一緒になり毎日、日が暮れるまで訓練した。
手槍1本で、前線を突破しその後方に出る。
そして前線を後ろから襲い、裏崩れを起こさせることで大胡勢を一気に敗走させる。これのみに特化し、錬成をしてきた。
皆、体に合った愛用の手槍を持ち、いつでも暴れまわれるよう体を解していたため、すぐに駆け出し前線を突破できた。
しかし!!
あの黒光りする一団はなんだ?
あの松山と那波で猛威を振るったという者どもか? 赤い肩の印が不気味に光る。
奴らへの対策は……
「皆の者!
前方の敵備え。
甲冑が固い!
足を突け!!」
一斉に襲い掛かろうとするも、相手の槍が邪魔して足を突けない。
「槍を払え!
敵は片手で槍を持っている!
思いっきり薙ぎ払えば隙が出来る!
そこを突け!!」
皆が敵の槍を払った。
すると、味方の兵1人につき1人が槍と盾を捨て前進。
槍を元に戻そうとしているうちに接近して、分厚い段びらで味方を叩き伏せてきた。
逃げる訳には行かぬ。
槍の懐に入られたからには、槍を捨て太刀で応戦するも、全く歯が立たぬ。
そうこうするうちに槍を捨てなかった敵が前進してきて、槍を捨てた味方の兵を槍で突いてくる!
何とか直ぐに対策を考えねば崩れる!
回り込むしかない!
「敵の右に回り込め。盾と槍が回せぬ方向じゃ!
足を使え!!」
その時間を稼ぐために儂は数名を連れて、正面の敵の槍を次々に払い落としていった。急に隣にいた兵が仰け反り膝から崩れ落ちた。
!?
顔に矢が刺さっている!
弩弓か!?
と思った瞬間、足に激痛が走る。目の前にいた敵兵が槍と盾を手放し、小型の弩弓を構えているのに気が付いた。
次に見えたものは……
赤く染まった空だった。
◇ ◇ ◇ ◇
同日同刻
北条氏康本陣
北条氏康
(瀕死の相模の獅子)
「玉縄衆の突撃。跳ね返され申した。
右から後藤透徹の突貫にございます。左はあの鉄に覆われた甲冑武者の備えにて」
(大道寺)盛昌が状況を知らせてきた。
ええい。
直接見なければ、何も出来ぬ。
「指揮を執る! 馬を曳けい!!」
「お辞めください! もし落馬しようものなら、お味方の士気が!」
「儂の腰を鞍に結びつけよ。落馬はせぬ」
やっと戦場の景色が見えた。
なんとも拙い状況じゃ。
中軍が包囲され完全に士気が消し飛んでいる。
崩れようにも退く場が無い。
このままでは四方に逃げ散り、そのまま敵の餌であろう。
もう富永の指揮する中軍は今まで対峙していた正面の敵中軍の全力攻撃を受けて散り散りになってきているが、敵の本陣から派兵された足軽に西へ追い返されていた。
残る次鋒の玉縄衆1000へと突入を開始する後藤。
あの鉄武者の備えもそのまま次鋒として控えている残りの玉縄衆目掛けて突っ込む。
中軍は陣が完全に崩れている。
裏崩れだ。
立て直しはまず無理だ。
あの後藤と鉄武者を潰さぬ限り、中軍は役には立たぬ。
「本陣の騎馬武者を50ほど割いて中軍左翼に急行。
あの鉄武者の後背を衝け。
倒す必要はない。
慌てさせるだけでよい。
その後すぐに戻れ」
盛昌が指示を出す。
あの忌々しい鉄武者の備えは、これで一時的に無力化できる。
あとは敵の中軍がこちらの中軍を押し込んでくることを覚悟して対策を練る。
!!!!
盛昌め、何故気づかなんだ!?
ぬかったわ。
儂が最初から見ておれば、あの「左にできた間隙」、見逃すはずもない。
今は徐々にこちらのごり押しで敵右翼が後退し、開けた土地に出ている。
雑木林との間隙が出来つつある。
あそこを突けば包囲できる!
「鉄鎧の陣と後藤は玉縄衆に任せる。
本隊旗本より500抽出。
最左翼の間隙を突け。
右回りに敵右翼の後背に出て、敵右翼を包囲殲滅せよ」
敵の右翼は300も居まい。
後ろに兵500が回り込めば潰走する。
戦の終末が見えた。
◇ ◇ ◇ ◇
その15分後
旗本500が
北の雑木林との間に出来た間隙に突入する。
本陣も500に減ったが、もう敵の切っ先が儂の喉元に届く前に向こうの前線が崩壊するじゃろう。
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