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第13章:氏康君、首もらっちゃうよ♪【北条編佳境】
しっかりしてよ御爺様
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1553年11月下旬
厩橋の町南方5町
長野道安
(謹厳実直だけが取り柄の政賢のお爺様)
政賢からの使い番が伝えてきた、
「無条件開城・町引き渡し」
を躊躇しつつも受け入れ、北条方へ使者を送り南方へ退避した。
壊されていく自分の城を見て憤懣やるかたない。
しかし、またすぐに取り返す。
北対岸で先ほど鉄砲の連射音を聞き、砂埃の中での戦いを目にした。
政賢が上手くやったようだ。
これ程の戦上手は見たことも聞いたこともない。
そのうち日ノ本中が
「張子房か諸葛孔明か?」
と騒ぎ出すであろう。
この後、政忠の討ち取られた、あの渡し場で決戦をする。
その時まで儂は自分の城を南から睨みを利かせ、少しでも多くの北条の兵を拘束することだ。
そして勝利の暁には……
「殿! 血まみれの使い番が。大胡の使い番のようです!」
「通せ」
「政賢様からの重要な伝言! グフッ……。お城の煙硝はすべて水を掛けて使えなくしてほしいとのこと、ウウ。
くれぐれも……」
ばたり、と倒れる。
敵の物見にでも襲われたか。旧利根を必死で渡り、辿り着いたのであろう。体中の血が抜けたような青い顔をしている。
「すぐ介抱してやれ」
しかし遅かった。
すでに煙硝は敵の手に渡ったであろう。
抜かったわ。
まだ火薬の扱いに慣れていないなどとそのような言い訳、戦には通用せぬ。
これは急いで政賢に知らせねば。儂は使い番を3人向かわせることとした。
◇ ◇ ◇ ◇
翌日
厩橋城二の丸
北条氏康
(大分お疲れの御様子な相模の獅子)
側仕えを下がらせ、床にごろりと横になる。
床几に座るのも辛い。横になったまま口に含んだ綿を出す。多分、益々頬がこけているであろう。
しかし!
最大の難所であった堅城厩橋城を手に入れた。もっと喜ばしいのは、火薬を大量に手に入れたことだ。
これで飛砲の威力が数倍となろう。
あとは大胡城を吹き飛ばす。いや、その前にまだ川があるか。その渡河にも使えるであろう。
まだ儂にも運が残っている。
大胡を潰せば一息つける。儂はどうなるかしれぬが、3年は死を秘せば内政も落ち着き、長綱叔父に支えられあの頼りない氏政もやっていけるだろう。
儂の近くにただ一人立っている「影武者」にだれも寄せ付けないように指示し、少しばかり眠りについた。
◇ ◇ ◇ ◇
翌日午の刻(午前11時)
氏康の影武者
(臆病な田舎侍)
氏康様が死んだようにお眠りになっている。
寝る前に寝具を用意し、お使いになる様に申し上げると幽鬼のように寝具に横になった。
この刻間まで横になったまま動かない。
心配になった俺は側仕えに声をかけ、侍医を呼んだ。
まだ確と息がある。もう少し休ませるほうが良いとのこと。
今日一日、休ませると大道寺殿が決断し、明日に向けての準備を差配し始めた。
「その方はこれから殿の影として本陣に居よ。儂も殿として扱う。その旨、確と心得よ」
相模の地侍の一人だった俺が北条100万石のお殿様!?
勤まるもんじゃあねぇ。
しかしこれまで2年間、ずっと傍に仕えてきた。仕草、癖、言葉使いをじっくりと真似る時間はあった。
だが心根は真似できる訳がない。
戦の本陣でじっと座っているなど出来るのか?
なんとか引っ込んでいられないか?
明日は決戦場まで進軍するという。
馬も乗るらしい。
見破られないでいられるか心配だが。もし見破られても俺のせいじゃねえぞ。
◇ ◇ ◇ ◇
大胡勢 備え戦力
機動部隊
総員2550
後藤一番隊600
是政二番隊600
東雲三番隊300
太田四番隊600
佐竹鉄人隊200
親衛隊100
斬り込み隊100
物見軽騎兵50
厩橋の町南方5町
長野道安
(謹厳実直だけが取り柄の政賢のお爺様)
政賢からの使い番が伝えてきた、
「無条件開城・町引き渡し」
を躊躇しつつも受け入れ、北条方へ使者を送り南方へ退避した。
壊されていく自分の城を見て憤懣やるかたない。
しかし、またすぐに取り返す。
北対岸で先ほど鉄砲の連射音を聞き、砂埃の中での戦いを目にした。
政賢が上手くやったようだ。
これ程の戦上手は見たことも聞いたこともない。
そのうち日ノ本中が
「張子房か諸葛孔明か?」
と騒ぎ出すであろう。
この後、政忠の討ち取られた、あの渡し場で決戦をする。
その時まで儂は自分の城を南から睨みを利かせ、少しでも多くの北条の兵を拘束することだ。
そして勝利の暁には……
「殿! 血まみれの使い番が。大胡の使い番のようです!」
「通せ」
「政賢様からの重要な伝言! グフッ……。お城の煙硝はすべて水を掛けて使えなくしてほしいとのこと、ウウ。
くれぐれも……」
ばたり、と倒れる。
敵の物見にでも襲われたか。旧利根を必死で渡り、辿り着いたのであろう。体中の血が抜けたような青い顔をしている。
「すぐ介抱してやれ」
しかし遅かった。
すでに煙硝は敵の手に渡ったであろう。
抜かったわ。
まだ火薬の扱いに慣れていないなどとそのような言い訳、戦には通用せぬ。
これは急いで政賢に知らせねば。儂は使い番を3人向かわせることとした。
◇ ◇ ◇ ◇
翌日
厩橋城二の丸
北条氏康
(大分お疲れの御様子な相模の獅子)
側仕えを下がらせ、床にごろりと横になる。
床几に座るのも辛い。横になったまま口に含んだ綿を出す。多分、益々頬がこけているであろう。
しかし!
最大の難所であった堅城厩橋城を手に入れた。もっと喜ばしいのは、火薬を大量に手に入れたことだ。
これで飛砲の威力が数倍となろう。
あとは大胡城を吹き飛ばす。いや、その前にまだ川があるか。その渡河にも使えるであろう。
まだ儂にも運が残っている。
大胡を潰せば一息つける。儂はどうなるかしれぬが、3年は死を秘せば内政も落ち着き、長綱叔父に支えられあの頼りない氏政もやっていけるだろう。
儂の近くにただ一人立っている「影武者」にだれも寄せ付けないように指示し、少しばかり眠りについた。
◇ ◇ ◇ ◇
翌日午の刻(午前11時)
氏康の影武者
(臆病な田舎侍)
氏康様が死んだようにお眠りになっている。
寝る前に寝具を用意し、お使いになる様に申し上げると幽鬼のように寝具に横になった。
この刻間まで横になったまま動かない。
心配になった俺は側仕えに声をかけ、侍医を呼んだ。
まだ確と息がある。もう少し休ませるほうが良いとのこと。
今日一日、休ませると大道寺殿が決断し、明日に向けての準備を差配し始めた。
「その方はこれから殿の影として本陣に居よ。儂も殿として扱う。その旨、確と心得よ」
相模の地侍の一人だった俺が北条100万石のお殿様!?
勤まるもんじゃあねぇ。
しかしこれまで2年間、ずっと傍に仕えてきた。仕草、癖、言葉使いをじっくりと真似る時間はあった。
だが心根は真似できる訳がない。
戦の本陣でじっと座っているなど出来るのか?
なんとか引っ込んでいられないか?
明日は決戦場まで進軍するという。
馬も乗るらしい。
見破られないでいられるか心配だが。もし見破られても俺のせいじゃねえぞ。
◇ ◇ ◇ ◇
大胡勢 備え戦力
機動部隊
総員2550
後藤一番隊600
是政二番隊600
東雲三番隊300
太田四番隊600
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親衛隊100
斬り込み隊100
物見軽騎兵50
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