首取り物語~北条・武田・上杉の草刈り場でざまぁする~リアルな戦場好き必見!

👼天のまにまに

文字の大きさ
上 下
120 / 339
第13章:氏康君、首もらっちゃうよ♪【北条編佳境】

初期故障はデフォです

しおりを挟む
 1553年11月下旬
 上野国厩橋城北東5町(500m)
 上泉秀胤
(大胡の参謀。ちょっと自信がない若者)


 殿からの指示が無い。
 前方1町もない中州で巨大な何かが固定され始めた。何か途方もないことが起こる予感がする。

 既にここからでは竹束の山と矢盾により遮られ鉄砲による銃撃が出来ない。殿の予見した通り、竹束の防盾ぼうじゅんは銃撃では貫通不可能だ。
 100発以上当てて竹を弾けさせ破壊するしかない。

 あそこに並べられている矢盾は大胡でも使用されているが、所々を鉄で覆ったものだろう。重く鈍重で普通には持ち運べないが、支え棒などを使用して少しずつ前進させれば移動できる。

 その矢盾は既に中洲のこちら側の水際まで移動して来ていた。

 厩橋城からの銃撃が始まった。
 2町の距離があるので、斜め上からの射撃でも威力があるとは思えない。
 それでも、牽制のための射撃をするということは、相当な危険が迫っているということだ。

 後退の準備をさせるべきか?

 しかし信号は依然出されていない。重大な局面で某が決断せねばならなくなった。

 若輩者には荷が重い。胸がドキドキして、頭が働かない。目の前が真っ白になりそうだ。

 もう一度城の櫓を見る。
 殿の姿は見当たらない。

 殿ならばどうするだろう?

 そうか……
 殿はいつもこのような極限の状況で決断をなされていたのか。川越でも松山でも那波・館林でも。

 某はその決断を実施部隊に伝達をしていただけだ。
 それなのに皆、一端いっぱしの参謀になった、良い面構えの武将になったと褒めてくれた。

 今、某の顔はどのような色をしているだろうか?
 これを見ている皆はどう思うだろうか。

 いけない。
 殿になった気持ちで考えるのだ。

「ここは一時的な防衛線で~す。てきと~に敵に損害を与えればそれでおけ~♪ 
 すぐに後退して次の作戦に移るのが吉。損害を抑えて最終決戦をしましょ~よ~」

 要約すれば、殿はこのようなことを仰っておられた。つまりこのような状況では後退の準備はしておくべきだ。

「使い番。
 各隊に連絡。
 後退準備。
 命令があり次第、すぐに第2線陣地まで後退できるように準備せよ」

 自分の決断がどのような結果をもたらすかは分からない。無駄に後退したことで、折角の地形的有利を捨ててしまうのかもしれない。
 だがもし、逆にあの巨大な兵器(!)がお味方に大損害を与えるような攻撃をして来たら?

 その時は殿の目論見を大幅に逸脱する。

 ……これでいいはずだ。
 直感を信じよう。

 迷った際には直感を信じて拙速でも行動しないといけないと、何かの戦術書に書いてあった。

「各隊。後退準備が出来ました!」

 また城の櫓を見る。

 !!??

 殿の姿の代わりに信号係が旗を振っているのが見えた。
 信号用の旗を持っていかなかったのか、何かの白い布で急遽作ったらしい。
 両方とも白いが左右がわかる距離だ。
 読むことはできる。

「きんきゅう。
 すぐにてったいせよ。
 だいにせんまでこうたい」

 やはり!
 次の信号からすると、殿はこちらへ向かっているらしい。

った……」

 指令を伝達しようとした某の口が固まった。

 5つの巨大な竹の腕が、こちらへ何かを放り投げてきた! 
 お味方第2部隊(是政隊)が配置されている自然堤防のあたりに5つとも落ちる。

 どど~~~~ん!!!!!!
 ボワッ!!

 爆発と共に火の手が上がる。
 当たり所が悪かったのか、数名の兵が吹き飛ばされ、または火だるまになる。2つは外れたが油が入っていたのか、周りに飛び散り火炎を撒き散らす。
 これを2回3回と食らえば士気旺盛な大胡勢でもたちまち壊乱する!

 ここはもう防御線としては機能しない。
 すぐさま撤退だ。

「撤退! 
 第2線まで後退。
 すぐに陣形を整えよ。
 負傷者は可能な限り連れていけ!」

 使い番が走る。
 まごまごしている暇はない。

 矢盾などは放棄だ。
 身軽に行動せねば。

 全部隊が予定よりも早く、そして撤退時に収容・破壊するはずの物資をそのままで後退していく。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

国虎の楽隠居への野望・十七ヶ国版

カバタ山
ファンタジー
信長以前の戦国時代の畿内。 そこでは「両細川の乱」と呼ばれる、細川京兆家を巡る同族の血で血を洗う争いが続いていた。 勝者は細川 氏綱か? それとも三好 長慶か? いや、本当の勝者は陸の孤島とも言われる土佐国安芸の地に生を受けた現代からの転生者であった。 史実通りならば土佐の出来人、長宗我部 元親に踏み台とされる武将「安芸 国虎」。 運命に立ち向かわんと足掻いた結果、土佐は勿論西日本を席巻する勢力へと成り上がる。 もう一人の転生者、安田 親信がその偉業を裏から支えていた。 明日にも楽隠居をしたいと借金返済のために商いに精を出す安芸 国虎と、安芸 国虎に天下を取らせたいと暗躍する安田 親信。 結果、多くの人を巻き込み、人生を狂わせ、後へは引けない所へ引き摺られていく。 この話はそんな奇妙なコメディである。 設定はガバガバです。間違って書いている箇所もあるかも知れません。 特に序盤は有名武将は登場しません。 不定期更新。合間に書く作品なので更新は遅いです。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

【完結】サキュバスでもいいの?

月狂 紫乃/月狂 四郎
恋愛
【第18回恋愛小説大賞参加作品】 勇者のもとへハニートラップ要員として送り込まれたサキュバスのメルがイケメン魔王のゾルムディアと勇者アルフォンソ・ツクモの間で揺れる話です。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派
ファンタジー
 勇者と魔王の戦いの舞台となっていた、"ルクガイア王国"  その戦いは多くの犠牲を払った激戦の末に勇者達、人類の勝利となった。  そんなところに現れた一人の中年男性。  記憶もなく、魔力もゼロ。  自分の名前も分からないおっさんとその仲間たちが織り成すファンタジー……っぽい物語。  記憶喪失だが、腕っぷしだけは強い中年主人公。同じく魔力ゼロとなってしまった元魔法使い。時々訪れる恋模様。やたらと癖の強い盗賊団を始めとする人々と紡がれる絆。  その先に待っているのは"失われた過去"か、"新たなる未来"か。 ◆◆◆  元々は私が昔に自作ゲームのシナリオとして考えていたものを文章に起こしたものです。  小説完全初心者ですが、よろしくお願いします。 ※なお、この物語に出てくる格闘用語についてはあくまでフィクションです。 表紙画像は草食動物様に作成していただきました。この場を借りて感謝いたします。

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

処理中です...