首取り物語~北条・武田・上杉の草刈り場でざまぁする~リアルな戦場好き必見!

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第13章:氏康君、首もらっちゃうよ♪【北条編佳境】

帰ってくれば=フラグ?

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 1553年11月下旬
 上野国と武蔵国境、八斗島の渡し
 北条長綱
(幻庵宗哲になるまで生き残れるか?)


 50艘近い河船が目の前の桟橋に繋がれている。
 もともとこれらの舟の船主の殆どは関宿を拠点とした商人たちだ。しかし最近になって大胡に靡く者が後を絶たない。本拠をこちらへ移した者も多いと聞く。

 その川船衆を強引に総動員した。
 関宿の主、古河公方足利晴氏は半分北条の虜であるが未だ独立勢力。
 それを動かすにあたり、人質に取ってあった梅千代王丸を送り返した。そこまでして初めてこの強引な舟の動員が可能となった。
 もう本当に己が身を喰らって生き延びるたこの様じゃ。

 後がないのだ。
 儂の指揮の元、寄せ集めの軍団10000が続々と河を渡っていく。

 此度も情報が少ない。
 風魔からの連絡が途絶えた。もうほとんど使える者がいなくなっているとの報告を最後に繋ぎが取れなくなった。

 騎馬武者による物見を出し、向こう岸を探った。

 討ち取られる者も出たが、大胡の兵は殆どが那波城に引き籠っているらしいことが確認されたのは十分な成果じゃ。

 さらに何度にも渡り、四方八方に物見を出す。
 奇襲は受けぬぞ。


 此度は那波城を囲むことにした。
 南に儂の本陣5000
 東に2500
 北に2500

 西は旧利根川が北西に伸びて自然の防壁となっている。

 後詰が来るとすれば北側から。そこには急いで柵を作る。ここには黒鍬衆と、この軍団で最精鋭の小田原衆2000を配置した。


 那波城。
 妙な城じゃ。

 どう見ても径3町足らずの低い土塁に囲まれた丸い城だ。

 いや丸くはないのかもしれぬ。所々角張っている。矢倉はそれなりにあるが、周りが平地すぎて中身が見えぬ。

 平城の防御力が弱い性質を利根川から引いた幅広い堀で補っているらしい。

 もっと特徴的なのは周りに町がなく、建物も茂みもない。どうやら大胡ご自慢の鉄砲による攻撃力を最大限に生かす造りらしい。

「長綱様。風魔の小太郎が報告に参ったようです」

 今頃まで何をしていた?
 使える配下がいなくなったのではないのか?

「長綱様。小太郎にございます。
 遅くなり申した。那波城の中の様子わかり申した」

 小太郎はそこかしこに傷を負っていた。
 腕と足を血止めの縄で結んでいる。
 相当な戦闘を繰り広げてきたようだ。

「どうした? 
 城まで忍び込めたのか?」

「は。首尾よく敵素ッ破の頭目を生け捕りに。
 それを囮に内部を見て参りました」

 よくもそんな強硬手段に出たな。
 もう風魔もなりふり構わぬか。

「那波城の手勢、僅か400。それも招集した農民兵で長柄も弓も持っておりませぬ。聞くところによると常備の主力は、全て厩橋方面に集中しているとのこと」

 400か?
 いくら小さい城で堀が深いとはいえ、それでは守り切れまい。

 そうか。偽兵の計をしているつもりか。
 あんなに多くの幟を立てて、炊事の煙も多く立ち上っている。

 あれも偽計か。

 そう言えばわざとらしい場所が何か所もある。最たるものは、目聡い者が見つけた城に向かう道。

 北には豪華な煉瓦? 敷かれており、そこに泥で足跡がついていた。雨の少ないこの時期、泥で汚れた足の兵などおらぬわ。それが城の中まで沢山向かっていた。

 これは一当たりして様子を見るか。もしこの情報が本当ならば、すぐにぼろが出よう。

 儂は仕寄りの準備を命令した。

 ◇ ◇ ◇ ◇

 大胡城奥の間
 楓
(これからきっとしっかりした母親になるに違いない。意味深)


「楓様。大丈夫ですよ。
 お殿様は強い御方。皆そうおっしゃります。
 今まで負けたことはないと。
 きっと今回も勝ってお帰りになります」

 絹が声を掛け慰めてくれます。
 大胡へ来てもう4年。
 大胡には大変慣れてきました。
 もうここが私の故郷と思っております。

 殿は明るくて、いつも私に優しくしてくれ、お付きの絹にすら気さくに声を掛けてくれます。

 しかし、残念なことにまだ子宝に恵まれません。
 私がいけないのでしょうか?
 毎日お社に参り、祈りを捧げております。

 殿は
「大丈夫。いつかは生まれるから。だいじょ~ぶよ♪」
 と毎回慰めてくれます。

 それなのに、今回は大戦おおいくさに出かけると聞き、政賢様のお世継ぎが産まれずに傷を負われたり、万が一お亡くなりになるようなことがあれば!

 そう思うと自然と涙が零れてしまうのです。
 せめてお世継ぎが出来ていれば安心して戦えるのでは、と思ってしまうのです。

 その時、勝手の方から声がして、殿の乳母である福が入ってきました。

「奥方様ぁ。
 そんなに気にすることはないですよぉ。
 殿さまには強~いおまじないが掛かっているから
 大丈夫だよぉ」

「そのおまじないとは何でしょうか?」

「それはな、お母様の松様の願いじゃ。
 そう簡単には死にませんよぉ」

 そんなに強い願いなのでしょうか?
 私の願いなどよりも強く長く届くのでしょうか?
 私にもその強さが欲しい!

 その思いが顔に出たのか。
 福が言いました。

「いやいや。
 殿さんはきっと今の奥方様が一番好きだと言うんじゃあないかなぁ。
 強すぎるのも問題だよぅ」

 福は何か知っているようです。
 問い詰めるつもりでいると、福が襟元から奉書を出してこう言いました。

「この手紙。殿から預かっているんだぁ。
 奥方様が不安で不安で堪らない時はこれ出してね、と。
 できれば読ませたくないけど、と言ってたよぉ」

 震える手で急いで中の手紙を出し、読み始めました。

「かえでちゃ~ん。
 心配させてごめんね。そしてありがとね。
 こんなこと言うとフラグが立つので言いたくないのですが、この戦が終わったらきっと子供を授かると思うのです。そういう仕組みになっているので。詳しくは言えないんだけどね。
 ちゃんと僕たちの未来をこれから切り開いていくから。
 一緒に歩いてくれると嬉しいな。末永くお付き合いしてくださいな。
 よろしくね!」

 意味は半分も読み取れませんでしたが、政賢様は必ず勝って戻ってくるつもりであることは、私の胸にスッと染み込んできたのです。


 お待ち申し上げております。
 私の政賢さま。

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