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第13章:氏康君、首もらっちゃうよ♪【北条編佳境】
これが大胡の戦力だぞ!
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1553年11月下旬
上野国和田城(現高崎群馬音楽センター)
小幡憲重
(元西上野の国衆。痔尻持ち(+_+)。ちょっと単純)
「小幡殿。先導ご苦労であった。感謝いたす」
武田晴信殿が儂に礼を言う。
6000もの信濃の軍勢が碓井峠を越えるのは至難の業だ。
所々、崖が崩れ危険な場所があるが、それを知らずに進軍すれば思わぬ被害を出してしまう。戦わぬ内から損害が出ては士気に関わる。
もし西上野の国衆が奇襲を仕掛けたなら容易に壊乱するであろう。
そこを先導するのは大事な役目じゃ。
ひとまず最低限の功は上げた。
「小幡殿。西上野の国衆の内、北条に臣従したこと疑わしいものはどの者かの?」
「はっ。まず箕輪長野の業政。こ奴は面従腹背の輩。努々御信じ召されぬよう。既に一族の厩橋長野は大胡に付いて居り申す。
その次に惣社長尾。
これは家宰の足利長尾の一族にて管領家への忠誠が篤い家柄。
それから……」
儂は大まかな国衆の状況を伝えていった。これも大事な役目じゃ。
「して、この和田城は西上野国衆に睨みを利かせる上で良き場所であるかの?
倉賀野よりも良いか?」
倉賀野は要地じゃ。
ここは押さえねばならぬ重要な交通の要衝。
じゃが今回の晴信殿は西上野に睨みを利かせることが目的じゃと聞く。
ならばここが一番じゃろう。
そう申し上げた。
「ふむ。相分かった。
倉賀野に国衆の質が居ると聞いての。その方が良かろうと思っておったのだが。地場の者が申すのであれば、そうなのであろう」
確かに。
人質は倉賀野城に集められている。倉賀野16騎はここ和田城に移され、倉賀野には北条の兵が詰めている。それを直接見たいとの仰せか?
「倉賀野の人質をこちらへ呼ぶ必要がございまするか?」
晴信殿は、すこし呆れたような眼で儂を見た。
そうじゃった。
あの質は北条に差し出された者たちじゃ。
儂としたことが!
これは評価が下がった。
「まあ質は安全な所に居ればよし。
武田はこの西上野に睨みを利かせるだけ。それが氏康殿から要望された出陣の目的じゃ。ゆるりと手並みを拝見するとしよう」
この間にも物見が四方八方へ派遣され、頻繁に出入りをしている。
さすが武田の軍じゃ。
諜報に余念がない。
「御屋形様に至急!」
「通せ」
「昨夜。
倉賀野に幽閉されていた西上野国衆の人質。
その全てが闇に紛れて逃亡!
北条の兵が追っておりますが、依然行方が不明とのこと!」
これは!
今はもう午の刻(12時)を廻っている。そこまで気づかなんだとは。相当な念の入れ様。かなり前から手引きが為されていたと見られる。
「ここの国衆、もう北条に愛想を尽かしたか。武田と上杉と天秤に掛けようとしておるか。変わり身が早いというか、あっさりしているというか」
晴信殿も信州の国衆相手に泥沼のような合戦をしてきた。国衆の生き残りが悲惨な事、熟知しているに違いない。
だったら
「人質を見殺しにする」ことが当たり前な事など知悉していよう。
西上野の衆は気質があっさりとしているが、生き残りに関しては泥臭いものじゃ。
それが今回はなぜ、このように素早く人質を引き払った?
ここは北条にも賭けておくべきではないか?
今回だけ違う意図があるのか?
「これは、箕輪城を囲む方が良かろうかの?
勘助」
「御意」
晴信殿の脇に控えている隻眼の男が答えた。
あれが山本勘助か。
西上野の国衆には、あの者が訪ねて廻ったという。
……なぜ儂の所には来なんだ?
嫌な奴じゃ。
◇ ◇ ◇ ◇
1553年11月下旬
上野国箕輪城
長野業政
(そろそろ黄斑に成れるか?)
真田殿の素ッ破の手引きで人質が帰ってきた。
本来ならば人質を見捨てる覚悟で臨むべきじゃ。そんな状況に来ておる。
じゃが大胡の政賢殿は、自信たっぷりに
「絶対にこてんぱんに叩き潰しますので、皆さまは武田に目を光らせていてくださいませ」
と密書を送って寄越した。
そこまでの自信はどこから出てくるのか知らぬ。
そう思っていた、次の日。
更なる密書が届けられた。
こちらは絶対に奪われてはいけないとの念を押され、厳重な警戒と共に届けられた。
その内容は、大胡の兵力概要じゃった。
沼田城駐屯兵
300
岩櫃城駐屯兵
200
渋川白井城駐屯兵
100
箱田駐屯兵
100
厩橋守備隊(長野勢)
500
上泉城守備隊
200
大胡留守居隊
200
華蔵寺駐屯兵団
1100
赤石城守備隊
100
那波城駐留兵団
2500
機動兵団
2500
以上7300(+500の厩橋長野勢)
内訳
常備兵5000
後備予備兵2300
鉄砲常備7000丁
予備……な~いしょ♪
その他いろいろ
だから安心してね。
絶対勝つからね。
皆で自由な上野作りましょ~!
これはまた……
言葉が出なんだ。
いつの間に7000名以上の兵を養えるまでになっていたのだ??
それもあの高価な鉄砲を7000丁以上!
一人1丁。
さらに長柄や大胡の代名詞となってきた弩弓が配備されているのであろう。
この軍備に立ち向かう氏康が哀れになってきた。
しかし、戦は戦。何が起きるか分からぬ。とんだ落とし穴が待っている時もしばしばある。
政賢殿は才があるが、まだ経験が乏しい。儂が近くにいてやれればよいのだが、遠くで見守るしかない。
それよりも……
武田がこの城に迫っている知らせも来ている。己が城を守れんようでは、人の心配など出来んわ。
この城、1800が守っておれば3年は戦えるわ!
かかってこい、武田晴信!!
上野国和田城(現高崎群馬音楽センター)
小幡憲重
(元西上野の国衆。痔尻持ち(+_+)。ちょっと単純)
「小幡殿。先導ご苦労であった。感謝いたす」
武田晴信殿が儂に礼を言う。
6000もの信濃の軍勢が碓井峠を越えるのは至難の業だ。
所々、崖が崩れ危険な場所があるが、それを知らずに進軍すれば思わぬ被害を出してしまう。戦わぬ内から損害が出ては士気に関わる。
もし西上野の国衆が奇襲を仕掛けたなら容易に壊乱するであろう。
そこを先導するのは大事な役目じゃ。
ひとまず最低限の功は上げた。
「小幡殿。西上野の国衆の内、北条に臣従したこと疑わしいものはどの者かの?」
「はっ。まず箕輪長野の業政。こ奴は面従腹背の輩。努々御信じ召されぬよう。既に一族の厩橋長野は大胡に付いて居り申す。
その次に惣社長尾。
これは家宰の足利長尾の一族にて管領家への忠誠が篤い家柄。
それから……」
儂は大まかな国衆の状況を伝えていった。これも大事な役目じゃ。
「して、この和田城は西上野国衆に睨みを利かせる上で良き場所であるかの?
倉賀野よりも良いか?」
倉賀野は要地じゃ。
ここは押さえねばならぬ重要な交通の要衝。
じゃが今回の晴信殿は西上野に睨みを利かせることが目的じゃと聞く。
ならばここが一番じゃろう。
そう申し上げた。
「ふむ。相分かった。
倉賀野に国衆の質が居ると聞いての。その方が良かろうと思っておったのだが。地場の者が申すのであれば、そうなのであろう」
確かに。
人質は倉賀野城に集められている。倉賀野16騎はここ和田城に移され、倉賀野には北条の兵が詰めている。それを直接見たいとの仰せか?
「倉賀野の人質をこちらへ呼ぶ必要がございまするか?」
晴信殿は、すこし呆れたような眼で儂を見た。
そうじゃった。
あの質は北条に差し出された者たちじゃ。
儂としたことが!
これは評価が下がった。
「まあ質は安全な所に居ればよし。
武田はこの西上野に睨みを利かせるだけ。それが氏康殿から要望された出陣の目的じゃ。ゆるりと手並みを拝見するとしよう」
この間にも物見が四方八方へ派遣され、頻繁に出入りをしている。
さすが武田の軍じゃ。
諜報に余念がない。
「御屋形様に至急!」
「通せ」
「昨夜。
倉賀野に幽閉されていた西上野国衆の人質。
その全てが闇に紛れて逃亡!
北条の兵が追っておりますが、依然行方が不明とのこと!」
これは!
今はもう午の刻(12時)を廻っている。そこまで気づかなんだとは。相当な念の入れ様。かなり前から手引きが為されていたと見られる。
「ここの国衆、もう北条に愛想を尽かしたか。武田と上杉と天秤に掛けようとしておるか。変わり身が早いというか、あっさりしているというか」
晴信殿も信州の国衆相手に泥沼のような合戦をしてきた。国衆の生き残りが悲惨な事、熟知しているに違いない。
だったら
「人質を見殺しにする」ことが当たり前な事など知悉していよう。
西上野の衆は気質があっさりとしているが、生き残りに関しては泥臭いものじゃ。
それが今回はなぜ、このように素早く人質を引き払った?
ここは北条にも賭けておくべきではないか?
今回だけ違う意図があるのか?
「これは、箕輪城を囲む方が良かろうかの?
勘助」
「御意」
晴信殿の脇に控えている隻眼の男が答えた。
あれが山本勘助か。
西上野の国衆には、あの者が訪ねて廻ったという。
……なぜ儂の所には来なんだ?
嫌な奴じゃ。
◇ ◇ ◇ ◇
1553年11月下旬
上野国箕輪城
長野業政
(そろそろ黄斑に成れるか?)
真田殿の素ッ破の手引きで人質が帰ってきた。
本来ならば人質を見捨てる覚悟で臨むべきじゃ。そんな状況に来ておる。
じゃが大胡の政賢殿は、自信たっぷりに
「絶対にこてんぱんに叩き潰しますので、皆さまは武田に目を光らせていてくださいませ」
と密書を送って寄越した。
そこまでの自信はどこから出てくるのか知らぬ。
そう思っていた、次の日。
更なる密書が届けられた。
こちらは絶対に奪われてはいけないとの念を押され、厳重な警戒と共に届けられた。
その内容は、大胡の兵力概要じゃった。
沼田城駐屯兵
300
岩櫃城駐屯兵
200
渋川白井城駐屯兵
100
箱田駐屯兵
100
厩橋守備隊(長野勢)
500
上泉城守備隊
200
大胡留守居隊
200
華蔵寺駐屯兵団
1100
赤石城守備隊
100
那波城駐留兵団
2500
機動兵団
2500
以上7300(+500の厩橋長野勢)
内訳
常備兵5000
後備予備兵2300
鉄砲常備7000丁
予備……な~いしょ♪
その他いろいろ
だから安心してね。
絶対勝つからね。
皆で自由な上野作りましょ~!
これはまた……
言葉が出なんだ。
いつの間に7000名以上の兵を養えるまでになっていたのだ??
それもあの高価な鉄砲を7000丁以上!
一人1丁。
さらに長柄や大胡の代名詞となってきた弩弓が配備されているのであろう。
この軍備に立ち向かう氏康が哀れになってきた。
しかし、戦は戦。何が起きるか分からぬ。とんだ落とし穴が待っている時もしばしばある。
政賢殿は才があるが、まだ経験が乏しい。儂が近くにいてやれればよいのだが、遠くで見守るしかない。
それよりも……
武田がこの城に迫っている知らせも来ている。己が城を守れんようでは、人の心配など出来んわ。
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