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第13章:氏康君、首もらっちゃうよ♪【北条編佳境】
右斜め上行っちゃったよ
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1554年11月下旬
上野国厩橋城
長野政影
(政賢君の物見櫓)
竹束を担いだ兵を鉄砲にて撃退している様子を見て、殿はいつもの様に余裕な様子。道安様はその様子を見ても浮かれずに北条方を見つめている。
「政賢殿。次の竹束が来ますぞ」
いつの間にか、次の列が西側本流を渡ってきた。
これも先の竹束の二の舞であろう。
しかし……この列は縦隊から横隊に変化して、横一線にその竹束を積み上げ始めた!
次々とその列が竹束の壁を作り上げていく。
その隙間を縫うように矢盾が前進してきた。
これは支流に架かる橋の袂まで進み、そこで横に並べられている。
その間にも断続的に大胡の銃撃は続くが、竹束の数に圧倒され始めた。
矢盾は鉄で覆われているらしい。
貫通できないでいる。
そこまでの距離、大胡の銃隊が並ぶ自然に盛り上がった堤防まで20間!
やはり橋は落としておくべきであったのか?
殿と某は竹束と矢盾の進撃に目を奪われていた。
その時、道安様が鋭い声で警戒を呼び掛けた。
「何かが来る!
あれはなんじゃ!?」
中州をちょうど渡り切ったあたりに目を移すと、何か巨大なものがだんだんと近づいてくる。
それも5つ。
下には修羅をつけ、上には大きな杓子がついている。
その物は殆どが竹で出来ているらしい。
素早く殿を天車して川を見通せるようにした。
それを見た殿が叫んだ。
「ああああ。
こうきたかぁああ!
城攻めじゃないのにぃいい!!
よく動かせるなぁ」
よく見るとそれほど大きくないのかもしれぬ。しかし50名ほどで引いているのだから、その巨大さは目を疑う。
前方に突き出ている重りらしき石は、相当な重さであろう。それを幾本かの竹筒にて支えながら徐々に東岸に近づいていく。
「お爺様。直ぐに鉄砲で横撃して!
当たらなくてもいいから行動を阻害しないと。たねちゃんに信号機で一時後退の指示を! 2町は引かないと危険だぁ」
直ぐに信号係に指示を出そうとしたが、その兵はまごついている。
そして悲鳴に似た返事が聞こえてきた。
「殿! 信号機、故障してございまする!!」
「ひゃああああ~。声で届くか??」
いや、もう北風が強くなってきた。
銃撃音も大きい。
いくら殿の大声でも聞こえないであろう。
少しでも早く、本陣へと戻らねばならぬ。
某は殿を背負子に乗せ、本陣へと急いだ。
◇ ◇ ◇ ◇
北条本陣
北条氏康
(歴史を勉強していて助かった相模の獅子)
上手く行ったわ。
唐の史記の書に出ていた飛砲(投石機)。
応仁の乱でも使われたという。
本来は城攻めに使うものであるが、その大きさを少し小さめにして修羅で引くことにより、移動がしやすくなった。
このごろた石、野戦で防盾を潰す弾にも使える。
移動にも都合が良かった。
滑りを良くするために油も使うたが、意外とすんなりと動いた。
飛ばせる物と飛距離が満足できるものではないが、あの銃列に突進するよりは遥かにましじゃ。
まずは列を崩す。
そのためには、大胡勢が纏まって布陣している場所でなければいかぬ。渡河とはちょうどよい場面があったわい。こちらが大利根を渡るときは、この狭い一帯に大胡は布陣するしかない。そこまでこの投石機を運べば、無事に渡河できる公算は高くなる。
敵は逃げねば一方的に叩かれるだけ。
投石機は石の代わりに、油壷と(高価な)火薬の入った焙烙。
これらを3町(300m)くらいは遠くまで投げることができる。
あの自然にできた堤防の上に敵がいなくなれば、安全に渡河できよう。
厩橋城から銃撃が始まった。そこからでは狙い撃つこと能わぬわ。側撃でも矢盾がある程度防いでくれる。
そろそろ準備ができたようじゃ。
綱成を始めとした諸将の恨みを込めた火薬、受けて見よ!!
上野国厩橋城
長野政影
(政賢君の物見櫓)
竹束を担いだ兵を鉄砲にて撃退している様子を見て、殿はいつもの様に余裕な様子。道安様はその様子を見ても浮かれずに北条方を見つめている。
「政賢殿。次の竹束が来ますぞ」
いつの間にか、次の列が西側本流を渡ってきた。
これも先の竹束の二の舞であろう。
しかし……この列は縦隊から横隊に変化して、横一線にその竹束を積み上げ始めた!
次々とその列が竹束の壁を作り上げていく。
その隙間を縫うように矢盾が前進してきた。
これは支流に架かる橋の袂まで進み、そこで横に並べられている。
その間にも断続的に大胡の銃撃は続くが、竹束の数に圧倒され始めた。
矢盾は鉄で覆われているらしい。
貫通できないでいる。
そこまでの距離、大胡の銃隊が並ぶ自然に盛り上がった堤防まで20間!
やはり橋は落としておくべきであったのか?
殿と某は竹束と矢盾の進撃に目を奪われていた。
その時、道安様が鋭い声で警戒を呼び掛けた。
「何かが来る!
あれはなんじゃ!?」
中州をちょうど渡り切ったあたりに目を移すと、何か巨大なものがだんだんと近づいてくる。
それも5つ。
下には修羅をつけ、上には大きな杓子がついている。
その物は殆どが竹で出来ているらしい。
素早く殿を天車して川を見通せるようにした。
それを見た殿が叫んだ。
「ああああ。
こうきたかぁああ!
城攻めじゃないのにぃいい!!
よく動かせるなぁ」
よく見るとそれほど大きくないのかもしれぬ。しかし50名ほどで引いているのだから、その巨大さは目を疑う。
前方に突き出ている重りらしき石は、相当な重さであろう。それを幾本かの竹筒にて支えながら徐々に東岸に近づいていく。
「お爺様。直ぐに鉄砲で横撃して!
当たらなくてもいいから行動を阻害しないと。たねちゃんに信号機で一時後退の指示を! 2町は引かないと危険だぁ」
直ぐに信号係に指示を出そうとしたが、その兵はまごついている。
そして悲鳴に似た返事が聞こえてきた。
「殿! 信号機、故障してございまする!!」
「ひゃああああ~。声で届くか??」
いや、もう北風が強くなってきた。
銃撃音も大きい。
いくら殿の大声でも聞こえないであろう。
少しでも早く、本陣へと戻らねばならぬ。
某は殿を背負子に乗せ、本陣へと急いだ。
◇ ◇ ◇ ◇
北条本陣
北条氏康
(歴史を勉強していて助かった相模の獅子)
上手く行ったわ。
唐の史記の書に出ていた飛砲(投石機)。
応仁の乱でも使われたという。
本来は城攻めに使うものであるが、その大きさを少し小さめにして修羅で引くことにより、移動がしやすくなった。
このごろた石、野戦で防盾を潰す弾にも使える。
移動にも都合が良かった。
滑りを良くするために油も使うたが、意外とすんなりと動いた。
飛ばせる物と飛距離が満足できるものではないが、あの銃列に突進するよりは遥かにましじゃ。
まずは列を崩す。
そのためには、大胡勢が纏まって布陣している場所でなければいかぬ。渡河とはちょうどよい場面があったわい。こちらが大利根を渡るときは、この狭い一帯に大胡は布陣するしかない。そこまでこの投石機を運べば、無事に渡河できる公算は高くなる。
敵は逃げねば一方的に叩かれるだけ。
投石機は石の代わりに、油壷と(高価な)火薬の入った焙烙。
これらを3町(300m)くらいは遠くまで投げることができる。
あの自然にできた堤防の上に敵がいなくなれば、安全に渡河できよう。
厩橋城から銃撃が始まった。そこからでは狙い撃つこと能わぬわ。側撃でも矢盾がある程度防いでくれる。
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