首取り物語~北条・武田・上杉の草刈り場でざまぁする~リアルな戦場好き必見!

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第13章:氏康君、首もらっちゃうよ♪【北条編佳境】

怒涛の氏康狩り、始まる!【ついに北条との決戦!】

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 1553年11月上旬
 信濃国佐久上田
 武田晴信
(戸惑う虎さん)


「尾張のうつけが弟信勝の軍勢を打ち破り、敗死させたとの知らせが」

 早いな。

 2年伏せっていた信秀が死んだのが1月前。どうやら儂も世話になっている永田徳本が足繫あしげく通っていたらしい。

 あ奴は居なくなれば困るが、居れば居ったでそれも困る。
 良薬口に苦しか。

 織田は嫡男の信長がうつけと聞いた。尾張が荒れるな、そう思うていたが見事収めてしもうた。
 信秀が死ぬ前に既に謀反を企てていた弟の信勝とその勢力を暴発させ一気に葬ったか。

 尾張の虎が死ぬのを今か今かと待ちわびていたであろう今川義元の悔しがる顔が目に浮かぶわ。多分西が安全になったら東、北条の伊豆辺りを掠め取ろうと企んでいたに違いない。

 今川が信勝を支援したことが明るみに出て一気に情勢が変わった。
 
 馬鹿め。策謀はもっと綿密にやるものよ。
 太原雪斎も衰えたな。


 もう北条は後がない。
 領国の荒廃が凄まじい。儂の甲斐も決して良いとは言えぬが、それと比べても地獄と言えよう。

 逃散は頻発し、所々で一揆が発生する。
 既に何年もの時間と銭を費やし、内政に専念せねば再生は出来ぬまでになっている。

 周囲の勢力に大幅な譲歩をし、講和を勝ち取ったか。そこまでして態勢を整え、上杉を支える大胡を葬るため、これから決戦に赴く。儂にも兵を出せと3000貫文送ってよこした。返事は保留しておったが、善光寺平では長尾との戦、痛み分けで終わった。

 しばらく越後は雪に閉ざされ、長尾勢は休止だ。
 氏康殿には援軍を出すと10月上旬に返事の使いを出した。


 しかし、景虎め。
 御用商人の蔵田屋を使い、こちらの信用を貶める手に出るとは。商人が物を売るのを渋るようになった。

 金か銭との直接交換でしか物を売らなくなった。それも割り増しの値段だ。銭を借りようにも年利20割とか法外な利息を取られる。

 あ奴、戦だけでなく外交調略も得意と見える。直江景綱という懐刀の策か?

 幸い堺の豪商、納屋今井宗久が米や革などの必要品を売ってきたので事無きを得ている。鉄砲の調達にも協力しておる。

 いっそ御用商人を坂田屋から納屋に完全に替えるべきか? いずれにせよ交易についての情勢を探らねば足元を掬われる。

 それにしても大胡は本当に上杉の臣下か?
 やることがまちまちで儂にも判らぬ。

 上田原での鉄砲による狙撃。
 未だ右足がよう動かぬ。
 鉄砲の威力が身に染みる。

 多分、あれは大胡の手によるもの。
 大胡が大々的に鉄砲を使い始めて、初めて確信が持てたわ。
 山内上杉の家臣ならばそれは当然。

 しかし砥石城からの兵の引き抜きや善光寺平南部の国衆への調略に手を貸すなど、儂に寄すようなこともする。
 勘助の言う通り独立を狙っておるのやもしれぬ。

 だが、あの三方を武田・北条・長尾に囲まれた上野で独立を保てるのか? 
 関東管領の権威をってしても叶わなんだ。

 それだけの実力を蓄えたら独立か。此度の戦で北条に勝てば、それも考えうる。

 その見極めも兼ねて、本来ならば弟の信繁あたりに兵3000程度を預け、出兵させて様子を伺うのが定石であろう此度の戦。

 だが、出費はかさむが、儂自ら兵6000を率いて西上野まで出ていく。

 上野を掠め取れる機会があるやもしれぬからな。


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