首取り物語~北条・武田・上杉の草刈り場でざまぁする~リアルな戦場好き必見!

👼天のまにまに

文字の大きさ
上 下
108 / 339
第12章:高度成長します!

研究学園町

しおりを挟む
 1553年10月上旬
 上野国華蔵寺公園
 原虎胤
(初代鬼美濃。その戦働き、鬼の様)


 この寺は本当に寺なのか? 
 はたまた城塞か?

 2重の堀と塀が張り巡らされている。城の二ノ丸に当たる部分が広く、各宗派の道場修練・説教場となっている。

 学問所もある。
 他にも周りの集落には、寺子屋と呼ばれる子供向けの学問所や僧房、その他いろいろな施設が集まっている。

 それぞれの規模は小さいものの、各種多様な施設が集まっている様は日ノ本広しと言えども中々お目に掛かれないものであろうか。

「ようこそおいで下さった。この施設はいかが見られたかな?」

 儂の前に座っている齢20手前の若き国衆、いやもう15万石を超えているそうじゃから立派な大名じゃな。
 その大胡政賢殿が儂に声を掛けてきた。

「はっ。誠に……珍しい様にて呆然といたしました」

「それだけではないであろうに。率直に申してほしい」

 政賢殿は、儂の見立てが知りたいようじゃな。
 儂を見定める気か。

 されば、

「相当な銭を使うておると見ました。
 大胡は豊かであると同時に懐が深い」

「その心は?」

「15万石では利きますまい。他に金の成る木があろうかと」

 ホウ、と政賢殿が顎をひねる。
 どうやら当たりじゃな。

「ところで晴信殿は、日蓮宗がお好きとのこと。其処許そこもとを追い出すほどなのかな。大功のある武将であると聞いておったが」

「某の信ずる法然様の教え。どの衆生もすべて同じ。助け合って生きていかねばならぬもの。敵を助けた某を、晴信様は良しとはされませなんだ」

 政賢殿はじっと、儂の顔を見ている。

 しばらくそうしてから、おもむろに相好を崩し、言った。

「じゃあ、うちにおいで~。うちはね、そんな人ばっかだよ~。僕も含めてみんな敵を助けちゃって苦労してるんだぁ~♪」

 急に態度が変わった政賢殿は、座ったまま飛び上がり儂の目の前に着地した。
 そして儂の手を取り、こう言った。

「この上野から始まって、日ノ本全体を極楽浄土にしたいのが僕のもくひょ~。
 だからね、それに反対する人を減らしていく。例えば大名、武将その他諸々には居なくなってもらう。けど殆どの百姓ひゃくせいには仏の様に手を差し伸べる! 
 これが大胡! 
 大胡政賢ですっ!!」

 これがこの方の魅力なのであろう。

 上田の豪族・真田が武田でなく大胡に臣従し、その伝手で憎しみに染まった強硬な佐久の衆を引き抜いたおかげで、易々と砥石城が落ちた。

 山本殿の話では、その真田の情報を元に北信濃の国衆を次々と寝返らせることに成功したという。

 山本殿は真田がそれを漏らした理由を儂だけに教えてくれた。それが今、政賢殿が仰ったこととそっくり同じじゃった。

 「日ノ本の全ての民が平和で豊かな暮らしを送れる」
 そんな時代を作っていく。

 これを高々1万石程度の国衆だった頃から目標に掲げていたという。そしてその階段を己が手で着々と作り上げ、昇って行こうとしている。

 信虎様とも晴信様とも違う
 ……いや全く別じゃ。

 多分、今川北条斎藤とも違う。
 みな自分の領国を増やすために富を蓄えている。

 この大胡はどうなのか?
 少し見てみとうなった。

 その時を見計らったかのように政賢殿は立ち上がり、手に取っていた儂の腕を引っ張り、こう言った。

「では、これから極楽浄土とは行かないまでも、住民が生き生きと明るく住まっている様を一緒に見学しに行こ~♪ 
 楽しいよ。うひひ」

 突拍子もない、半ば道化のような仕草に隠された意図。

 人誑ひとたらしの業。

 その19にはとても見えぬ小さき体から周囲を巻き込む温かな何かを振り撒き、それが儂に絡みついてくるような感じを覚えたが、悪い気持ちにはならなんだ。

 己が人生の在り様。
 法然様の指し示す人生をここでならば歩んでいけるのでは、と儂は感じていた。


しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

国虎の楽隠居への野望・十七ヶ国版

カバタ山
ファンタジー
信長以前の戦国時代の畿内。 そこでは「両細川の乱」と呼ばれる、細川京兆家を巡る同族の血で血を洗う争いが続いていた。 勝者は細川 氏綱か? それとも三好 長慶か? いや、本当の勝者は陸の孤島とも言われる土佐国安芸の地に生を受けた現代からの転生者であった。 史実通りならば土佐の出来人、長宗我部 元親に踏み台とされる武将「安芸 国虎」。 運命に立ち向かわんと足掻いた結果、土佐は勿論西日本を席巻する勢力へと成り上がる。 もう一人の転生者、安田 親信がその偉業を裏から支えていた。 明日にも楽隠居をしたいと借金返済のために商いに精を出す安芸 国虎と、安芸 国虎に天下を取らせたいと暗躍する安田 親信。 結果、多くの人を巻き込み、人生を狂わせ、後へは引けない所へ引き摺られていく。 この話はそんな奇妙なコメディである。 設定はガバガバです。間違って書いている箇所もあるかも知れません。 特に序盤は有名武将は登場しません。 不定期更新。合間に書く作品なので更新は遅いです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

【完結】サキュバスでもいいの?

月狂 紫乃/月狂 四郎
恋愛
【第18回恋愛小説大賞参加作品】 勇者のもとへハニートラップ要員として送り込まれたサキュバスのメルがイケメン魔王のゾルムディアと勇者アルフォンソ・ツクモの間で揺れる話です。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

グライフトゥルム戦記~微笑みの軍師マティアスの救国戦略~

愛山雄町
ファンタジー
 エンデラント大陸最古の王国、グライフトゥルム王国の英雄の一人である、マティアス・フォン・ラウシェンバッハは転生者である。  彼は類い稀なる知力と予知能力を持つと言われるほどの先見性から、“知将マティアス”や“千里眼のマティアス”と呼ばれることになる。  彼は大陸最強の軍事国家ゾルダート帝国や狂信的な宗教国家レヒト法国の侵略に対し、優柔不断な国王や獅子身中の虫である大貴族の有形無形の妨害にあいながらも、旧態依然とした王国軍の近代化を図りつつ、敵国に対して謀略を仕掛け、危機的な状況を回避する。  しかし、宿敵である帝国には軍事と政治の天才が生まれ、更に謎の暗殺者集団“夜(ナハト)”や目的のためなら手段を選ばぬ魔導師集団“真理の探究者”など一筋縄ではいかぬ敵たちが次々と現れる。  そんな敵たちとの死闘に際しても、絶対の自信の表れとも言える余裕の笑みを浮かべながら策を献じたことから、“微笑みの軍師”とも呼ばれていた。  しかし、マティアスは日本での記憶を持った一般人に過ぎなかった。彼は情報分析とプレゼンテーション能力こそ、この世界の人間より優れていたものの、軍事に関する知識は小説や映画などから得たレベルのものしか持っていなかった。  更に彼は生まれつき身体が弱く、武術も魔導の才もないというハンディキャップを抱えていた。また、日本で得た知識を使った技術革新も、世界を崩壊させる危険な技術として封じられてしまう。  彼の代名詞である“微笑み”も単に苦し紛れの策に対する苦笑に過ぎなかった。  マティアスは愛する家族や仲間を守るため、大賢者とその配下の凄腕間者集団の力を借りつつ、優秀な友人たちと力を合わせて強大な敵と戦うことを決意する。  彼は情報の重要性を誰よりも重視し、巧みに情報を利用した謀略で敵を混乱させ、更に戦場では敵の意表を突く戦術を駆使して勝利に貢献していく……。 ■■■  あらすじにある通り、主人公にあるのは日本で得た中途半端な知識のみで、チートに類する卓越した能力はありません。基本的には政略・謀略・軍略といったシリアスな話が主となる予定で、恋愛要素は少なめ、ハーレム要素はもちろんありません。前半は裏方に徹して情報収集や情報操作を行うため、主人公が出てくる戦闘シーンはほとんどありません。 ■■■  小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも掲載しております。

処理中です...