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第12章:高度成長します!
ロスチャイルドさん、先にやらせていただきます
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1553年7月中旬
厩橋城下うまやばし屋
蔵田屋五郎左衛門
(政賢の陰謀に付き合わされる善人)
「久しぶりの大胡の殿さまですね。この前は米の価格操作の仕組みを作った時でしたかな」
隣に座る梁田屋さんがにこにこしてほうじ茶を口に含む。
初めて大胡様にお会いしてから、東国の豪商と言われる商人を全てこの大商いに誘い終わるまで4年かかった。
昨年から米の値段を始め様々なモノの値段を入札して決めることになった。
ここ大胡・厩橋は東国の真ん中といってもよい場所にある。人を走らせればいち早く情報が集まる。
どこで米の値段が高くなっているか?
今後どう変化するかをそれぞれの商人が予想して様々な取引をする。それで利益を出す者、損をする者もいるが、元の使い方は「保険」という仕組みだ。
秋に「この値段で買う権利」を手に入れるため。
「売る権利」も売買される。
そして、抜け目のないのは大胡の殿だ。
その売買に拘わり一定の手数料を貰うことになる。博打でいう所の「寺銭」である。これで一定の収入が毎月大胡の懐に入ることになる。
これがすごい収入となっている。
もう大大名など足元にも及ばぬほどの収入であろう。
「待たせちゃった~~?
ごめんね~」
殿が入室し上座に座る。
前は
「上座なんかやめて~」
と辞退していたが、毎度のことで面倒臭くなったのか、今はおっしゃらなくなった。
「政賢様、本日は如何様な案を思いつかれましたのでしょうか?
ここまで足を運んでいる最中ずっとお話を聞くのが待ち遠しく思いました」
私が言うと、政賢様は熱いほうじ茶を飲み、
「アチアチ」
と言いながら話し始めた。
「うんうん。
今度も面白いこと思いついちゃったんだぁ。策謀、策略の類なんだけどね。お金は儲かると思うよ。
でも民を困らせることにならないといいんだけどね」
いつも政賢様はどんなに妙案でも、民に迷惑が掛ける・掛けないかで最終判断をする。
「実はね。もう気付いていると思うけど、今年秋には北条との最終?決戦をすることになるよ。その時には北条はもう経済的に土台がすっかり傾いているから、あまり心配ないんだけどね。でもそれに合わせて武田が出てくると思うんだ」
やはり秋か。
小田原の宇野屋さんからもそのような話が入ってきている。甲斐の坂田屋さんからは、まだ何も聞いていないが……
「多分、まだ内密で事を運んでいると思うし、そんなに大規模な出兵はしないと思うけど、碓井峠を越えて来ると思う。
兵3000も来れば、西上野の国衆は味方してくれなくなるなぁ。
シクシク」
泣いた振りをしているが、多分勝算がお有りなのだろう。それはこれからの話で分かるだろう。
「でね。兵3000以上来られると拙いんで、ちょっと細工をね~♪」
「では米の値段を吊り上げるとか?」
「それやると甲斐信濃のお百姓さんたちが困る~。
だから、武田家の帳簿を直撃する策を撃ちまぁ~す!」
何をするのでしょうか?
なんだかワクワクしますね。
「あのね。武田の出した借入証書。この値段を暴落させるの。
すると…… 」
!!
「武田には、誰も何も売りませぬな。信用が失くなると当然そうなるでしょうな」
「うんうん。
荷止めよりもシビア……
きついよ、きっと。
だからもう春からやっちゃおうかと。それで来てもらったの。みんなで武田の証文を空売りするの。これ時間がかかるでしょ?」
いつもとてつもないことを考える方だ。
これでどちらが勝とうが、兵が無事であった武田の証文は暴騰。戦の終わり間際に買い戻せば大儲けとなろう。
新たに借りるとすれば年利40割などということになろうか。
商人にはそれとなく寺や土倉・国衆に、一時的に売りつけるように示唆しておこう。
こうして政賢様は天下を裏から支配するおつもりか?
はたしてこの仕組みに気付き、対抗する大名は出てくるのであろうか?
気づけるのはあきんど的な考えを持つ者だけだろう。
気づいた大名国衆は大胡の味方にしていくのであろう。それ以外は潰してしまうおつもりのようだ。
厩橋城下うまやばし屋
蔵田屋五郎左衛門
(政賢の陰謀に付き合わされる善人)
「久しぶりの大胡の殿さまですね。この前は米の価格操作の仕組みを作った時でしたかな」
隣に座る梁田屋さんがにこにこしてほうじ茶を口に含む。
初めて大胡様にお会いしてから、東国の豪商と言われる商人を全てこの大商いに誘い終わるまで4年かかった。
昨年から米の値段を始め様々なモノの値段を入札して決めることになった。
ここ大胡・厩橋は東国の真ん中といってもよい場所にある。人を走らせればいち早く情報が集まる。
どこで米の値段が高くなっているか?
今後どう変化するかをそれぞれの商人が予想して様々な取引をする。それで利益を出す者、損をする者もいるが、元の使い方は「保険」という仕組みだ。
秋に「この値段で買う権利」を手に入れるため。
「売る権利」も売買される。
そして、抜け目のないのは大胡の殿だ。
その売買に拘わり一定の手数料を貰うことになる。博打でいう所の「寺銭」である。これで一定の収入が毎月大胡の懐に入ることになる。
これがすごい収入となっている。
もう大大名など足元にも及ばぬほどの収入であろう。
「待たせちゃった~~?
ごめんね~」
殿が入室し上座に座る。
前は
「上座なんかやめて~」
と辞退していたが、毎度のことで面倒臭くなったのか、今はおっしゃらなくなった。
「政賢様、本日は如何様な案を思いつかれましたのでしょうか?
ここまで足を運んでいる最中ずっとお話を聞くのが待ち遠しく思いました」
私が言うと、政賢様は熱いほうじ茶を飲み、
「アチアチ」
と言いながら話し始めた。
「うんうん。
今度も面白いこと思いついちゃったんだぁ。策謀、策略の類なんだけどね。お金は儲かると思うよ。
でも民を困らせることにならないといいんだけどね」
いつも政賢様はどんなに妙案でも、民に迷惑が掛ける・掛けないかで最終判断をする。
「実はね。もう気付いていると思うけど、今年秋には北条との最終?決戦をすることになるよ。その時には北条はもう経済的に土台がすっかり傾いているから、あまり心配ないんだけどね。でもそれに合わせて武田が出てくると思うんだ」
やはり秋か。
小田原の宇野屋さんからもそのような話が入ってきている。甲斐の坂田屋さんからは、まだ何も聞いていないが……
「多分、まだ内密で事を運んでいると思うし、そんなに大規模な出兵はしないと思うけど、碓井峠を越えて来ると思う。
兵3000も来れば、西上野の国衆は味方してくれなくなるなぁ。
シクシク」
泣いた振りをしているが、多分勝算がお有りなのだろう。それはこれからの話で分かるだろう。
「でね。兵3000以上来られると拙いんで、ちょっと細工をね~♪」
「では米の値段を吊り上げるとか?」
「それやると甲斐信濃のお百姓さんたちが困る~。
だから、武田家の帳簿を直撃する策を撃ちまぁ~す!」
何をするのでしょうか?
なんだかワクワクしますね。
「あのね。武田の出した借入証書。この値段を暴落させるの。
すると…… 」
!!
「武田には、誰も何も売りませぬな。信用が失くなると当然そうなるでしょうな」
「うんうん。
荷止めよりもシビア……
きついよ、きっと。
だからもう春からやっちゃおうかと。それで来てもらったの。みんなで武田の証文を空売りするの。これ時間がかかるでしょ?」
いつもとてつもないことを考える方だ。
これでどちらが勝とうが、兵が無事であった武田の証文は暴騰。戦の終わり間際に買い戻せば大儲けとなろう。
新たに借りるとすれば年利40割などということになろうか。
商人にはそれとなく寺や土倉・国衆に、一時的に売りつけるように示唆しておこう。
こうして政賢様は天下を裏から支配するおつもりか?
はたしてこの仕組みに気付き、対抗する大名は出てくるのであろうか?
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