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第12章:高度成長します!
国民皆保険を目指そう
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1553年1月元旦
上野国大胡城
大胡道定
(大胡の厚生労働大臣?)
「「「新年。明けましておめでとうございます!!」」」
家臣一同、新たに拡張した大広間で上座に座る殿に新年の挨拶をする。
沼田に詰めている矢沢綱頼殿と岩櫃の候補生たちが居らぬ以外は、全員が集まっている。
今や総勢300名を超える大所帯となっている。
入りきれずにはみ出した者は寒空の元、炭団や練炭を周りに置き、地面に簀の子を敷き座っている。
思えば殿が入城をする際、ここに26名の者しかおらなんだ。後先考えぬ動員をしても総員200名足らず。それが今では常備兵だけでも4000を超える。
その指揮をする者だけがここに集まっている。
もう来年はここでは手狭になるじゃろう。殿もそろそろ居城を移すことをお考えになっているようじゃ。
「おめでとう!
今年もよろしくね~、で……」
殿が真面目な顔になり、
「多分今年は北条との決戦をすることになる。
心して掛かるように。
それに勝てば晴れて西上野は独立勢力になる!
上野の民による上野の為の政が出来る!」
おおおおおおおおおおおおお!!!!!!
皆が雄たけびを上げる。
昨年の北条の西上野への侵攻により、再び関東管領上杉憲当は越後に逃げた。
渋川の南の利根川西岸はすべて北条方となっている。
しかし生き残った国衆
「箕輪と厩橋長野、惣社長尾、和田、倉賀野16騎」
は全て大胡に通じ、
いざという時に備えて雌伏している。
皆、狩られる者から、狩る側に豹変する時を待っているのだ。
「見通しでは今年の秋、最終決戦となろう。
その時まで死ぬ気で準備せよ。
急いで待て! じゃ」
政影殿が、きっと【急いで待て】という言葉を書きつけているであろう。
最近は名言集なるものも記しているらしい。
先だって、ちらと見させていただけた。
「百年兵を養うはただ平和を守るためにて」
とか
「面白いから軍備を続ける者はいない。
恐ろしいから軍備をするのだ」
など、
誰もが唸るような言葉ばかり並んでいた。
いつものように
「総員かかれぃ!」の号令と共に、
皆が酒に向かって突撃していく。
もちろん儂と瀬川殿は、ほうじ茶と雑煮を突つきつつ駄弁っている。
すると必ず殿が、果汁入りの銚子をもってやってくるのだ。
「道定のおいちゃん。
今年もよろしくね。
皆の健康管理ありがと。
保健所順調に活動し始めた?」
昨年から儂の管轄で保健所なるものを開設した。
領地が広くなり領民の数が多くなるにつれ、病気や怪我で死ぬ者や中々元に戻らぬ者が多くなってきた。
それらを大胡の施設に集めて治療療養させると共に、医師薬師看護を行う者などを養成するようになった。
甲斐に行った菊蔵が考案した傷を縫うことも、より膿まない方法も試行している。
傷などを清潔に保つために或粉保琉を塗るのに使う綿も工夫しているところだ。
ワタはそのままでは油を多く含み、或粉保琉が染み込まないのだ。
殿が
「多分石鹸を作るときの灰か、畑にまく消石灰を使うと何とかなるんじゃないの?」
ということを言って居ったので、
その2つによる綿の加工を試しているところだ。
こうして大胡領は、ますます他の領地と比べて住みよい土地となっていく。
それが殿の願いでもあり、今やここにいるすべての者の願いでもある。
この願いがある限り儂らから裏切り者は出ぬし、死ぬ気でここ大胡を守ろうとするじゃろう。
儂も同じじゃ。
そう瀬川殿と共に殿に申し上げた。
このような仕事にも似た会話が儂らにとってこの上もない酒の肴じゃな。
ほんと、酒よりも酔えるわい。
◇ ◇ ◇ ◇
1553年1月中旬
上野国厩橋城
長野道安
(人間的には大好きです。この人)
松の位牌の前に水を置き、改めて手を合わせる。
遂にお前の子が上野4郡(注)の太守となったぞ。
詳しくは分らぬが、その兵力から推し量るに15万石は下るまい。
兵にして4000名以上。
儂らの厩橋の軽く8倍になる。
最近は厩橋の兵が北条の目を盗んで100程度、交代で大胡の山奥にて鉄砲の訓練に出ている。
今日は実際に城に300丁の鉄砲と煙硝、弾の型などが運び込まれた。
厩橋も常備兵を300とし、招集する農民兵を200の定員とした。
その300の常備兵が籠城の際には城壁から寄せてくる敵を狙い撃ちする。
狙えなくとも面制圧射撃できればよいとのこと。
また城の土塀に屋根を設け、雨風にも強い鉄砲隊になった。
これで兵糧と煙硝さえ持てば、たとえ万の大軍でもこの坂東有数の堅城、落とされない自信がある。
続々と運び込まれる鉄砲の入った長持を見て、娘の松に話しかけた。
「お前の子が、もしかすると西上野を支配する大名となるやもしれん。今年の決戦如何によってはあるいは……」
北の敷島の松林から一陣の風が吹いてきた。
きっと松の返事であろう。
◇ ◇ ◇ ◇
1553年3月下旬
上野国倉賀野城
葵
(多分一度きりの端役?)
「……手筈は以上。秋までに支度せよ」
床下からの声が止んだ。私はすっと音もなく立ち上がり、目立たないように台所を通り姫様の元へ向かう。
倉賀野城の二の丸にあたる、ここ足軽の住まいを増築したような長屋。
ここに箕輪長野家の一の姫、お鶴さまを始めとして西上野一帯の国衆が北条に差し出した人質が集められている。
私は真田様の命を受け、お鶴様の付き人としてついてきた石堂様配下の者。任務は時が来たら人質を無事に脱出させること。あと半年で手配をせねばならぬ。
まだ半年、されど半年「しかない」。
出入りの商人や百姓などに片端から使えるものはないか見極め準備していく。
重要な役割だ。
皆が大胡のように平和に豊かに暮らせるようにするための戦いだ。
私の命など惜しくはない。
私は嫌疑をかけられぬように、人質の皆様の着物の洗濯をするために抜け道を探りながら、
城の脇を流れる水路に向かった。
注)勢多郡・那波郡・片品郡・吾妻郡。
現在の伊勢崎市・渋川市・沼田市・吾妻中之条・沼田から日光方面。あと大胡。
上野国大胡城
大胡道定
(大胡の厚生労働大臣?)
「「「新年。明けましておめでとうございます!!」」」
家臣一同、新たに拡張した大広間で上座に座る殿に新年の挨拶をする。
沼田に詰めている矢沢綱頼殿と岩櫃の候補生たちが居らぬ以外は、全員が集まっている。
今や総勢300名を超える大所帯となっている。
入りきれずにはみ出した者は寒空の元、炭団や練炭を周りに置き、地面に簀の子を敷き座っている。
思えば殿が入城をする際、ここに26名の者しかおらなんだ。後先考えぬ動員をしても総員200名足らず。それが今では常備兵だけでも4000を超える。
その指揮をする者だけがここに集まっている。
もう来年はここでは手狭になるじゃろう。殿もそろそろ居城を移すことをお考えになっているようじゃ。
「おめでとう!
今年もよろしくね~、で……」
殿が真面目な顔になり、
「多分今年は北条との決戦をすることになる。
心して掛かるように。
それに勝てば晴れて西上野は独立勢力になる!
上野の民による上野の為の政が出来る!」
おおおおおおおおおおおおお!!!!!!
皆が雄たけびを上げる。
昨年の北条の西上野への侵攻により、再び関東管領上杉憲当は越後に逃げた。
渋川の南の利根川西岸はすべて北条方となっている。
しかし生き残った国衆
「箕輪と厩橋長野、惣社長尾、和田、倉賀野16騎」
は全て大胡に通じ、
いざという時に備えて雌伏している。
皆、狩られる者から、狩る側に豹変する時を待っているのだ。
「見通しでは今年の秋、最終決戦となろう。
その時まで死ぬ気で準備せよ。
急いで待て! じゃ」
政影殿が、きっと【急いで待て】という言葉を書きつけているであろう。
最近は名言集なるものも記しているらしい。
先だって、ちらと見させていただけた。
「百年兵を養うはただ平和を守るためにて」
とか
「面白いから軍備を続ける者はいない。
恐ろしいから軍備をするのだ」
など、
誰もが唸るような言葉ばかり並んでいた。
いつものように
「総員かかれぃ!」の号令と共に、
皆が酒に向かって突撃していく。
もちろん儂と瀬川殿は、ほうじ茶と雑煮を突つきつつ駄弁っている。
すると必ず殿が、果汁入りの銚子をもってやってくるのだ。
「道定のおいちゃん。
今年もよろしくね。
皆の健康管理ありがと。
保健所順調に活動し始めた?」
昨年から儂の管轄で保健所なるものを開設した。
領地が広くなり領民の数が多くなるにつれ、病気や怪我で死ぬ者や中々元に戻らぬ者が多くなってきた。
それらを大胡の施設に集めて治療療養させると共に、医師薬師看護を行う者などを養成するようになった。
甲斐に行った菊蔵が考案した傷を縫うことも、より膿まない方法も試行している。
傷などを清潔に保つために或粉保琉を塗るのに使う綿も工夫しているところだ。
ワタはそのままでは油を多く含み、或粉保琉が染み込まないのだ。
殿が
「多分石鹸を作るときの灰か、畑にまく消石灰を使うと何とかなるんじゃないの?」
ということを言って居ったので、
その2つによる綿の加工を試しているところだ。
こうして大胡領は、ますます他の領地と比べて住みよい土地となっていく。
それが殿の願いでもあり、今やここにいるすべての者の願いでもある。
この願いがある限り儂らから裏切り者は出ぬし、死ぬ気でここ大胡を守ろうとするじゃろう。
儂も同じじゃ。
そう瀬川殿と共に殿に申し上げた。
このような仕事にも似た会話が儂らにとってこの上もない酒の肴じゃな。
ほんと、酒よりも酔えるわい。
◇ ◇ ◇ ◇
1553年1月中旬
上野国厩橋城
長野道安
(人間的には大好きです。この人)
松の位牌の前に水を置き、改めて手を合わせる。
遂にお前の子が上野4郡(注)の太守となったぞ。
詳しくは分らぬが、その兵力から推し量るに15万石は下るまい。
兵にして4000名以上。
儂らの厩橋の軽く8倍になる。
最近は厩橋の兵が北条の目を盗んで100程度、交代で大胡の山奥にて鉄砲の訓練に出ている。
今日は実際に城に300丁の鉄砲と煙硝、弾の型などが運び込まれた。
厩橋も常備兵を300とし、招集する農民兵を200の定員とした。
その300の常備兵が籠城の際には城壁から寄せてくる敵を狙い撃ちする。
狙えなくとも面制圧射撃できればよいとのこと。
また城の土塀に屋根を設け、雨風にも強い鉄砲隊になった。
これで兵糧と煙硝さえ持てば、たとえ万の大軍でもこの坂東有数の堅城、落とされない自信がある。
続々と運び込まれる鉄砲の入った長持を見て、娘の松に話しかけた。
「お前の子が、もしかすると西上野を支配する大名となるやもしれん。今年の決戦如何によってはあるいは……」
北の敷島の松林から一陣の風が吹いてきた。
きっと松の返事であろう。
◇ ◇ ◇ ◇
1553年3月下旬
上野国倉賀野城
葵
(多分一度きりの端役?)
「……手筈は以上。秋までに支度せよ」
床下からの声が止んだ。私はすっと音もなく立ち上がり、目立たないように台所を通り姫様の元へ向かう。
倉賀野城の二の丸にあたる、ここ足軽の住まいを増築したような長屋。
ここに箕輪長野家の一の姫、お鶴さまを始めとして西上野一帯の国衆が北条に差し出した人質が集められている。
私は真田様の命を受け、お鶴様の付き人としてついてきた石堂様配下の者。任務は時が来たら人質を無事に脱出させること。あと半年で手配をせねばならぬ。
まだ半年、されど半年「しかない」。
出入りの商人や百姓などに片端から使えるものはないか見極め準備していく。
重要な役割だ。
皆が大胡のように平和に豊かに暮らせるようにするための戦いだ。
私の命など惜しくはない。
私は嫌疑をかけられぬように、人質の皆様の着物の洗濯をするために抜け道を探りながら、
城の脇を流れる水路に向かった。
注)勢多郡・那波郡・片品郡・吾妻郡。
現在の伊勢崎市・渋川市・沼田市・吾妻中之条・沼田から日光方面。あと大胡。
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更に彼は生まれつき身体が弱く、武術も魔導の才もないというハンディキャップを抱えていた。また、日本で得た知識を使った技術革新も、世界を崩壊させる危険な技術として封じられてしまう。
彼の代名詞である“微笑み”も単に苦し紛れの策に対する苦笑に過ぎなかった。
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あらすじにある通り、主人公にあるのは日本で得た中途半端な知識のみで、チートに類する卓越した能力はありません。基本的には政略・謀略・軍略といったシリアスな話が主となる予定で、恋愛要素は少なめ、ハーレム要素はもちろんありません。前半は裏方に徹して情報収集や情報操作を行うため、主人公が出てくる戦闘シーンはほとんどありません。
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