首取り物語~北条・武田・上杉の草刈り場でざまぁする~リアルな戦場好き必見!

👼天のまにまに

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第12章:高度成長します!

うまく行ってる時間稼ぎ

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 1552年11月上旬
 大胡城松の間
 智円
(大分大胡になじんできた外交僧)


 北毛は全て大胡の実質的な領土となった。その進撃の間に、北条勢は西上野を席巻。再び上杉憲当を追い出した。
 管領殿は這う這うの体で、雪が降る前に三国山脈を越えていった。

 長野をはじめとした西上野の国衆は、またもや狸寝入りを始めた。
 しかしこれは長く続くまい。

「さて~。第何回だっけ?
 円卓会議始めちゃいましょ~♪」

「殿。38回でござる」

 書記の政影殿が生真面目に答える。堅いところは拙僧と同じだ。
 秀胤殿も堅いが、その分殿が3人分柔らかいので十分釣り合いが取れている。

「では拙僧から武蔵の近況をお伝えし申す。
 今年の収穫は豊作で北条方は一息ついた模様。
 ですが、此度の西上野への出兵で相当な銭の出費があり申した。小田原の宇野屋の話によると、既に5万貫文以上の借財があるとのこと。その殆どが年利20割を超すものだとか。
 また北武蔵での年貢の取り立ては6~8割に引き上げられたため、さらに大胡領への人の流出が起こっていまする」

「これはもう、こっちの策謀と気取られちゃったよねぇ。
 で、今川は動くのん?」

「未だ、確認はとれておりませぬ。西の織田信秀の容態次第かと。徳本殿に話を聞ければわかるのですが……」

 殿は磐梯屋を通じて徳本殿には、自らだけでなく多くの商人から銭を集めて、新しい薬の開発費や診療所の運営費、医者・薬師の育成などに投資させている。

 しかしその見返りは全く要求しない。

 すべては民のためになる。
 徳本殿も自分の為ではないと利益を手にするのを拒み、戦の事についてもかかわらないように心がけている。

 多くの大名武将も一人の人間として診療している。


「仕方ないよね。あと1~2年の間、天寿を全うしてもらいましょ。その間に北条との決着付けちゃいます♪
 で、武田は?」

 蕎麦茶を美味しそうにすすりながら殿。

「はい。
 どうやら北条方より矢銭が送られた模様にて。どのような取り決めが為されたかまでは探れませぬ」

 殿はお茶うけとして置かれている煎り豆をポリポリと噛みながら考えている。
 たまに上に放り投げて落ちてきた豆を口に入れている。

「もう氏康ちゃんは大胡を潰す仕掛けを作り始めているよ。
 では晴信ちゃんに何を頼んだと思う?
 たねちゃん」

 急に話を向けられた秀胤殿。
 一呼吸おいて答える。
 なかなかの瞬発力を身につけてきたようだ。

「考えられることは。
 一に婚儀の取り決め。
 二には今川との同盟の斡旋。
 三には来るべき大胡討伐への援軍」


「すごい! 
 たねちゃん、いつのまにか成長したね~。
 頼もし~。
 そうそれ。
 多分3つ目だと思う~」

 援軍か。
 同盟を組んで後々それに縛られるのは困る。
 今川もすぐには話に乗ってくるまい。

 武田には大人しくしていてもらうだけでも北条にとってはありがたい。

 できれば碓井峠から西上野に侵入し、国衆の裏切りを防止することだけしてもらえば戦わせる必要はない。

 大胡のみ、あるいは由良をけん制しつつ大胡を潰すか。

「だから既に氏康ちゃんは領国の慰撫と軍備に全力挙げてるね。
 同時に里見や佐竹・佐野・那須・宇都宮とかにも調略、外交でからめとろうとしているんじゃない?
 あの人外交の鬼だからなぁ。
 ああ、あと古河公方忘れていた、
 テヘッ」

 1年間だけじっとしてもらうために、大幅な譲歩をしているであろう。

「本当に北条が休戦の約定を破ると? 」

 秀胤殿が確かめの言葉を口にする。
 休戦明けは再来年元旦。
 これを破れば、後々北条の調略や外交に信用度がガタ落ちだ。

「うん。背に腹は代えられない。
 それにこっちが油断していると思うと誘惑に掛かりやすいね~。
 なので、こっちも酒場作戦の成果。偽情報を二重間諜使ってバンバン流してね。
 この時のためにただ酒飲ましてんだからぁ♪」

 前にも増して北条の手の者が入ってきているが、そのほとんどがこちらへ寝返っている。
 寝返らないものは「わざと誘っていない者」だ。
 殿に言わせると全部嘘の情報よりも、たまに本当の情報を流した方が敵をかく乱させると。

 確かにそうだ。
 拙僧でもそれをされると、何が本当なのか確認することすら覚束ぬ。

「じゃあ、人知れず、軍備増強よろぴこ~♪」

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