首取り物語~北条・武田・上杉の草刈り場でざまぁする~リアルな戦場好き必見!

👼天のまにまに

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第12章:高度成長します!

やっぱり欲しいよ鉄鉱石

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 1552年9月下旬
 上野国沼田利根川河岸段丘
 太助
(後に塩原という苗字を名乗るのか?)


「どこも戦続きじゃ。
 来年も今年みちょうみたいにに豊作というわけねえから、今のうちに早く刈り取って大事に仕舞っとくんべ」

 俺は立ち上がり腰を伸ばしながら。連れ合いのあゆに話しかけた。鮎は刈り取った稲をはざ掛けにしながら無言で頷いた。

 鮎は殆ど口がきけねえ。

 おしというほどじゃねえが、皆から白い目で見られる。

 噂では南の大胡では、唖でもかたちんばかたあしでも、皆生き生きと働き生活していて、他のもんと同じ扱いを受けているという。
 俺たちもそんなところで住みたいやな。

 でもうちの殿さんは俺たち百姓の事なんざ、年貢を取るための生き物としか見ていねえ。

 どの殿さんも似たようなもんかのう。


 山の冬は早い。

 ここいらじゃ早稲わせの刈り取りが普通だ。この時期に日干しをできないとえれえ目に遭う。
 急に後ろで稲を干していたはずの鮎が、俺の着物の裾を引っ張る。

 何かと思い後ろに振り返ると、東の丘の上にある沼田のお城の南に見慣れねえ旗がぎょうさん動いている。

 それが止んだ途端に、
 ばばばば~ん、
 という音が沼田の谷に木霊する。

 何じゃろ?

 その後に、
 ズド~~ン! 
 という音が何度も聞こえ、
 鬨の声が聞こえた。

 俺も何度か戦に駆り出された事がある。
 沼田の城が攻められている!?

 えれえこっちゃ。
 早く逃げなくちゃ。

 でも、刈り取りがまだ半分残っている!

 まごまごしているうちに、お城の騒ぎは収まったようだ。

 もう落ちたのか?
 それとも敵が撃退された?

 疑問に思っていると、丘の上から大きな声が聞こえた。

「沼田のみなさ~~~~ん。
 お元気ですかぁ~~~!?
 僕は大胡の政賢といいま~す。
 お仕事ごくろ~ちゃんです。
 そのまま手を止めずに聞いてね~。

 今日からこの沼田は大胡の領地となりました~~~。
 で、その御祝儀で
 今年の年貢は無~し~!
 今年の年貢は無~し~!
 大事なことなので2回言いました~。

 僕が沼田領から追い出されなければ、
 来年からずっと年貢は4割にするからね~~~!
 いっぱい穫ってみんなで豊かに暮らそ~ね~~!!
 で、毎年収穫祭で楽しも~ね~~~~!!!!」

 なんか若者の声らしいな。
 大胡の殿様が、なんでこんな北の外れに来るん? 
 沼田の殿様はどうなったんじゃろ? 
 何だかよう分からん。

 とりあえず村の集会する広場に行ってみんべえ。

 噂の大胡の殿様。
 ここも大胡のような極楽になるんか?

 少しワクワクしながら、鮎の手を取って歩き出した。

 ◇ ◇ ◇ ◇

 同日1刻後
 沼田城本丸
 矢沢綱頼
(念願の?沼田城を手に入れた!)

 ほんの四半刻で落城した。

 城に着くまでにも、峠に配置された関に数名の足軽が居たが、狙撃手がこんぱうんどぼうにて音もなく倒した。

 その後は誰にも不審がられずに北上した。
 領民はせっせと刈り入れに没頭し、その中には士分らしきもの者もいた。殆どの足軽は刈り取りに出ていた。

 城門まで到着後、さすがにこちらの侵攻に気付いたか、城詰めの者たちが城門を閉め応戦の準備をするも、弓の弦すら張っていない。

 脅しのために300丁の鉄砲を3回に分け斉射した後、城門の破壊に荷駄で持ってきた80匁(2kg・西洋の4ポンド砲程度)の大筒4門を発砲。

 城門を破壊。
 抜刀隊100が突入。
 制圧した。

「沼田顕泰殿でござるな? 
 関東管領様のご下令により、内乱を起こし北条方に通じた罪により捕縛いたす。
 大胡政賢様のお情けにより縄は打たぬ」

 儂が言うと、沼田殿は吠えた。

「何をぬかす! 
 儂が北条に通じるなどあるか!? 
 この越後に近い北の外れで孤立するような真似をする国衆など居るはずがないわ!!」

「お主に放逐された左衛門三郎殿の証言と北条との密書が見つかっておる! 
 観念せい」

 もちろん偽の書状じゃ。
 まだ騒いでいる沼田殿を連れだした後で、殿にささやいた。

「これでよろしいでしょうか? この後の処理は?」

 殿は大きく頷き、にっこりとして儂の顔を見つめた。

「うん。いいねぇ。
 これからね、つなちゃんがここ治めやすいように大見栄え切るから、その後の細々こまごまとしたこと頼むね~♪」

 そして今年の年貢免除と来年からの年貢4割を大声で宣言した。

 儂が一城の主か。
 兵も200預けられた。
 200丁の鉄砲付きだ。

 この堅城ならば、10倍の敵が来ても支えられる。

 兵は1年後返さねばならぬから、すぐに雑兵を集め鉄砲の訓練をせねば。
 当分敵は来ないと殿の見立てだ。

 まずは内政重視で行こうと思った。
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