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第11章:逆転だぁ!
大事な魚を逃がしちゃいました
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1552年6月中旬
上野国松井田五料宿
山本勘助
(言わずと知れた武田の軍師。この作品では一介の足軽大将の筈だが……)
「よくお越しくださった。
武田殿への取り成しを反故にしてしまいましたから、呆れて来て下さらぬかと思うておりました」
目の前に座った福々しい顔の武士、真田幸綱が頭を軽く下げて出迎えてくれた。儂も宿の人払いを済ませ、囲炉裏の前で儘ならぬ足を延ばさせてもらう。
「いえ。それは気にせんで頂けると、こちらも気が楽というもの」
河越の戦の前後、御屋形様からの下知で幸綱殿の調略を試みた。
臣従し、功績あれば上田を返すという条件であった。
国衆としては複雑な思いであったに違いない。
余所者である甲斐の者が、
「信州の領土を切り取って他の国衆を攻撃占領すれば、己の領地を返すから臣従せよ」
と言っているのだ。
憤怒・恨みを乗り越えて決断するのは容易ではなかろう。
国衆はその地に根を生やしているものだ。そこを離れて暮らすこと、さぞ辛かろう。そこを突いた。
旨く行くと思うていたが……
「して、大胡の暮らしはいかがかな? 上田を諦めてもそこにいるということは、相当な魅力があるのでしょうな」
「ふむ。まずは大胡では上下身分の差が無い。殿はすべてが平等と申して居られる。もちろん浮浪者やかたわの者でも差別なさらぬ。
その者のできる範囲で皆の役に立つように努力するのが一番の幸せじゃ、と殿は申しておられる」
幸綱殿は、儂の潰れた目とびっこを引く足を暗に指して言うているのであろう。
今川はかたわの儂を毛嫌いし、武田の中でも不気味がる者が多い。儂はそれを努力で跳ね除けてきた。
しかし、儂の場合は運が良かった。人一倍頭が回ることと、軍略を習う環境、そして努力を惜しまぬ性格。それらがあって初めて、今の地位がある。
片目を失えば、もののふとしてもう役には立たぬ。
ましてや片足では戦場で足手まといになる。
それが普通じゃ。
「足の無い者は足が無くても出来る仕事。
目が見えぬ者には目が見えずとも出来る仕事。
これを作り出して仕事に就かせることで、自分も皆の役に立っているとの思いを持ってもらう。
皆が幸せになれるように考えてくださる大名が、大胡の殿以外にいようか?
儂にはいるとは思えぬ」
そこに惚れ込んだか。
確かに魅力的じゃ。
武田のやり様と全く違う。
その違いを見てしまったのか。
これはもう調略は無理かもしれぬ。
逆にこちらが調略されるわい。
「此度は、調略というても勘助殿への調略ではござらぬ。信濃の事じゃ」
「と、申されると?」
「北信濃には知り合いがたくさんおりまする。そこへの調略を儂がするならこうする、という事をお伝えさせていただきたく、此度はお会いしようと思いました」
幸綱殿は北信濃の国衆豪族の好き嫌い、性格、家族、縁戚関係などを事細かに論い、その調略方法の例を挙げていった。
いちいち頷くものばかりであった。
「なぜこのような大事を、上野と敵対している武田方である儂に教えてくれるのかな? 単刀直入に聞くが」
「まずは我攻めなどで人死にが出ないためにでござる。儂の知り合いが多いゆえにじゃ。
また、殿の下知に従っているだけなのでござるが、儂の見立てでは多分、越後対策かと。それと武田と敵対しているのは、上杉家であって大胡ではない」
なんと!
大胡は上杉から独立を考えていると、仄めかしているのか?
それに越後対策。
村上はもう2年と持たぬであろう。善光寺平(長野盆地)の国衆を調略できれば、武田に降る……
いや、越後に逃げるか。
御屋形様は北信濃の完全支配を考えておいでだ。
されど儂は反対して居る。
何故なら、信濃の北端、飯山城は越後長尾の春日山城から南へわずか6里しか離れておらぬ。
そのような本拠地に近いところに大勢力の大名の領地が隣接することになったら、武田であっても己を守るための戦を仕掛けるであろう。
村上は多分越後に逃げ込み、長尾に旧領奪還を頼むと見ている。
長尾はその村上の旧領回復を大義名分とするじゃろう。
が、村上に頼まれずとも長尾が北信濃に侵攻するのは目に見えている。
じゃが、儂ごとき下っ端のいう事、このような大方針への意見は武田の評定では取り上げられぬ。
皆、目の前の事しか見えておらぬ。相手も人間であり、その者の立場・思惑がそれぞれあることに誰も目を向けぬ。
御屋形様も北信濃の切り取りはもう決めたことと仰って居る。
やはり海を手に入れたいのであろう。
御旗盾無にも誓ったことだと。
もう動かせぬ。
「それで大胡の殿は、越後の景虎殿とは親しいとのこと。武田とぶつける気じゃな?」
「狭い日ノ本、いつかはぶつかる。近ければなおさら。此度は大義名分もできよう。 然らば当然のこと。
と、申しておりました」
「先の上野への長尾殿の越山。関東管領殿の救援が大義名分でありましたな」
「どうやらあの御仁は毘沙門天を奉っておられるゆえ、『義』というものがお好きなようですな。武田の為にとっては、村上殿にはできるだけ越後以外へ退転していただくのが良策かと」
その考えには同意するが、されどそれは叶うまい。
信濃最北端、飯山城の高梨へ落ちるしか、安全な道はなかろう。
そして高梨も武田を前にしては耐えられまい。
「大胡の殿は今後、どうなさるおつもりですかな。北条とは断絶状態。武田とは上杉家との関係もある。御屋形様を頼り逃げてきた小幡殿が失地回復に執念を燃やしておりまするぞ」
返答が帰ってくることは期待せず、疑問に思っていることを口に出した。
「儂が思うに、殿は氏康が首、死んでも取るおつもりと見ております」
150万石を超える大大名の首を、高々5万石に満たぬ国衆が獲る。このような大言壮語、誰も聞く耳持たんじゃろう。
普通ならば。
しかし既に北条の先手衆の旗頭を2人倒して居る。本気で狙っているのかもしれぬ。会談を終え、碓井峠を越える支度をしながら、儂は偶さかそれが起こった際の武田の外交を、ずっと考えていた。
上野国松井田五料宿
山本勘助
(言わずと知れた武田の軍師。この作品では一介の足軽大将の筈だが……)
「よくお越しくださった。
武田殿への取り成しを反故にしてしまいましたから、呆れて来て下さらぬかと思うておりました」
目の前に座った福々しい顔の武士、真田幸綱が頭を軽く下げて出迎えてくれた。儂も宿の人払いを済ませ、囲炉裏の前で儘ならぬ足を延ばさせてもらう。
「いえ。それは気にせんで頂けると、こちらも気が楽というもの」
河越の戦の前後、御屋形様からの下知で幸綱殿の調略を試みた。
臣従し、功績あれば上田を返すという条件であった。
国衆としては複雑な思いであったに違いない。
余所者である甲斐の者が、
「信州の領土を切り取って他の国衆を攻撃占領すれば、己の領地を返すから臣従せよ」
と言っているのだ。
憤怒・恨みを乗り越えて決断するのは容易ではなかろう。
国衆はその地に根を生やしているものだ。そこを離れて暮らすこと、さぞ辛かろう。そこを突いた。
旨く行くと思うていたが……
「して、大胡の暮らしはいかがかな? 上田を諦めてもそこにいるということは、相当な魅力があるのでしょうな」
「ふむ。まずは大胡では上下身分の差が無い。殿はすべてが平等と申して居られる。もちろん浮浪者やかたわの者でも差別なさらぬ。
その者のできる範囲で皆の役に立つように努力するのが一番の幸せじゃ、と殿は申しておられる」
幸綱殿は、儂の潰れた目とびっこを引く足を暗に指して言うているのであろう。
今川はかたわの儂を毛嫌いし、武田の中でも不気味がる者が多い。儂はそれを努力で跳ね除けてきた。
しかし、儂の場合は運が良かった。人一倍頭が回ることと、軍略を習う環境、そして努力を惜しまぬ性格。それらがあって初めて、今の地位がある。
片目を失えば、もののふとしてもう役には立たぬ。
ましてや片足では戦場で足手まといになる。
それが普通じゃ。
「足の無い者は足が無くても出来る仕事。
目が見えぬ者には目が見えずとも出来る仕事。
これを作り出して仕事に就かせることで、自分も皆の役に立っているとの思いを持ってもらう。
皆が幸せになれるように考えてくださる大名が、大胡の殿以外にいようか?
儂にはいるとは思えぬ」
そこに惚れ込んだか。
確かに魅力的じゃ。
武田のやり様と全く違う。
その違いを見てしまったのか。
これはもう調略は無理かもしれぬ。
逆にこちらが調略されるわい。
「此度は、調略というても勘助殿への調略ではござらぬ。信濃の事じゃ」
「と、申されると?」
「北信濃には知り合いがたくさんおりまする。そこへの調略を儂がするならこうする、という事をお伝えさせていただきたく、此度はお会いしようと思いました」
幸綱殿は北信濃の国衆豪族の好き嫌い、性格、家族、縁戚関係などを事細かに論い、その調略方法の例を挙げていった。
いちいち頷くものばかりであった。
「なぜこのような大事を、上野と敵対している武田方である儂に教えてくれるのかな? 単刀直入に聞くが」
「まずは我攻めなどで人死にが出ないためにでござる。儂の知り合いが多いゆえにじゃ。
また、殿の下知に従っているだけなのでござるが、儂の見立てでは多分、越後対策かと。それと武田と敵対しているのは、上杉家であって大胡ではない」
なんと!
大胡は上杉から独立を考えていると、仄めかしているのか?
それに越後対策。
村上はもう2年と持たぬであろう。善光寺平(長野盆地)の国衆を調略できれば、武田に降る……
いや、越後に逃げるか。
御屋形様は北信濃の完全支配を考えておいでだ。
されど儂は反対して居る。
何故なら、信濃の北端、飯山城は越後長尾の春日山城から南へわずか6里しか離れておらぬ。
そのような本拠地に近いところに大勢力の大名の領地が隣接することになったら、武田であっても己を守るための戦を仕掛けるであろう。
村上は多分越後に逃げ込み、長尾に旧領奪還を頼むと見ている。
長尾はその村上の旧領回復を大義名分とするじゃろう。
が、村上に頼まれずとも長尾が北信濃に侵攻するのは目に見えている。
じゃが、儂ごとき下っ端のいう事、このような大方針への意見は武田の評定では取り上げられぬ。
皆、目の前の事しか見えておらぬ。相手も人間であり、その者の立場・思惑がそれぞれあることに誰も目を向けぬ。
御屋形様も北信濃の切り取りはもう決めたことと仰って居る。
やはり海を手に入れたいのであろう。
御旗盾無にも誓ったことだと。
もう動かせぬ。
「それで大胡の殿は、越後の景虎殿とは親しいとのこと。武田とぶつける気じゃな?」
「狭い日ノ本、いつかはぶつかる。近ければなおさら。此度は大義名分もできよう。 然らば当然のこと。
と、申しておりました」
「先の上野への長尾殿の越山。関東管領殿の救援が大義名分でありましたな」
「どうやらあの御仁は毘沙門天を奉っておられるゆえ、『義』というものがお好きなようですな。武田の為にとっては、村上殿にはできるだけ越後以外へ退転していただくのが良策かと」
その考えには同意するが、されどそれは叶うまい。
信濃最北端、飯山城の高梨へ落ちるしか、安全な道はなかろう。
そして高梨も武田を前にしては耐えられまい。
「大胡の殿は今後、どうなさるおつもりですかな。北条とは断絶状態。武田とは上杉家との関係もある。御屋形様を頼り逃げてきた小幡殿が失地回復に執念を燃やしておりまするぞ」
返答が帰ってくることは期待せず、疑問に思っていることを口に出した。
「儂が思うに、殿は氏康が首、死んでも取るおつもりと見ております」
150万石を超える大大名の首を、高々5万石に満たぬ国衆が獲る。このような大言壮語、誰も聞く耳持たんじゃろう。
普通ならば。
しかし既に北条の先手衆の旗頭を2人倒して居る。本気で狙っているのかもしれぬ。会談を終え、碓井峠を越える支度をしながら、儂は偶さかそれが起こった際の武田の外交を、ずっと考えていた。
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